【2023年最新】BCP対策に活用できる助成金・補助金一覧!
各自治体では、BCP対策を推進するための助成金・補助金制度を実施しています。企業が、より実効性のあるBCPを策定するためには、助成金や補助金の活用は欠かせません。本記事では、BCP対策に活用できる助成金・補助金について、対象者や対象経費などを徹底解説していきます。
目次
BCP対策とは?
BCP対策は自然災害・サイバー攻撃・感染症拡大など、緊急事態が発生した際、どのような対応を行うかを記載した計画書のことです。従業員の安全確保・状況把握・被害拡大防止など、防災計画や事業復旧に向けた活動内容も記載します。
東日本大震災や新型コロナウイルス感染症拡大の発生に伴い、BCP対策の重要性が高まりました。BCP対策を講じておくメリットは、自然災害や職場内クラスターが発生したとしても素早く対処でき、最短での事業復旧が望める点です。
BCPでは、取るべき行動の順序や内容が明確になっており、従業員に迷う時間を与えません。安定して事業を継続できる組織体制が確立されると、取引先や顧客からの信頼が高まります。
BCP実践促進助成金とは?
BCP実践促進助成金は都内の中小企業を対象に、BCPの実践に必要な設備・物品の購入を支援する制度です。東京都及び公益財団法人東京都中小企業振興公社が管轄しています。
経費対象は、自家発電装置・安否確認システム・オンラインストレージなどで、最大1,500万円の助成金が支給されます。
表:BCP実践促進助成金の助成金額と助成率
中小企業 | 小規模事業者 | |
---|---|---|
助成率 | 1/2以内 | 2/3以内 |
助成額 | 10万~1,500万円 | |
備考 |
|
[出典:東京都「BCP(事業継続計画)の促進に関する助成金募集のお知らせ」]
[出典:公益財団法人東京都中小企業振興公社「BCP実践促進助成金」]
助成金の対象者
BCPを策定した上で、下記5つの要件を満たした中小企業及び組織団体が該当します。
- 都内で同事業を一年以上継続
- 法人の場合は、都内に本社または支店を設置
- 個人の場合は開業届を提出した上で、都内で営業
- 東京都中小企業振興公社総合支援課が実施したBCP策定支援事業(BCP策定講座・BCP策定コンサルティング)を受けた上で、BCPを策定
- 事業継続力強化計画の認定を受けた上で、BCPを策定
[出典:公益社団法人東京都中小企業振興公社「BCP 実践促進助成金【募集要項】」]
助成対象の経費
助成対象経費と認定されている設備・物品は、以下になります。
表:助成対象経費
対象 | 主な具体例 | 備考 |
---|---|---|
電力装置 |
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安否確認 |
|
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データバックアップ |
| |
地震対策 |
| |
従業員用備品 |
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感染症対策 |
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災害対策全般 |
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|
助成対象外の経費
本助成金制度では、電力確保・自然災害・感染症対策などに該当する設備や物品が、助成金対象に設定されています。上記に該当しない分野の設備や物品は、基本的に支給対象外となります。
具体的には、保険料、ドキュメントの作成費や操作などにおける教育費、消耗品(感染症対策のためのマスクや消毒液などは対象内)、機器にかかる経費(乾電池、文房具類、金庫など)」などが対象外です。
また、グループ会社との共同利用を目的とした購入は、認められません。
申請方法
下記の流れに沿って、申請を行います。
- BCP策定
- 申請予約
- 申請
- 審査会
- 交付決定
- 事業実施
- 完了報告
- 完了検査
- 助成金額確定
- 助成金請求
- 助成金支払
BCP策定支援事業や事業継続力強化計画の認定を受けていることが、前提になります。また、申請する際は申請日の予約が必要になるので注意しましょう。
2022年度(令和4年度)の申請スケジュールは下表のとおりです。
表:申請スケジュール
期 | 予約受付期間 | 申請受付期間 | 交付決定日 | 助成対象期間 |
---|---|---|---|---|
6月募集 | 6/16~6/21 | 6/24~7/4 | 2022年9月上旬 | 交付決定日~2023年1月 |
10月募集 | 9/26~9/29 | 10/3~10/12 | 2022年12月上旬 | 交付決定日~2023年4月 |
1月募集 | 12/20~12/23 | 2023/1/11~1/19 | 2023年3月上旬 | 交付決定日~2023年7月 |
BCP対策に活用できる各地方自治体の補助金・助成金
BCP対策に活用可能な補助金・助成金制度の事例を地方自治体ごとに、4つ紹介します。
- 東京都江戸川区
- 大阪府摂津市
- 静岡県焼津市
- 新潟県長岡市
各制度の内容を一つひとつみていきましょう。
事業継続計画(BCP)の策定にかかる助成金:東京都江戸川区
東京都江戸川区に本社を置く中小企業を対象に、BCP策定にかかる費用を援助する制度です。最大20万円の助成金を受け取れます。年度内に策定できる計画立案と助成金申請書の提出が必要です。
表:BCPの策定にかかる助成金の概要
要件 | 内容 |
---|---|
助成対象 |
|
助成対象者 |
|
助成上限額 | 20万円 |
助成率 | 2/3以内(1,000円未満切り捨て) |
対象経費 |
※コンサルタントは商業・法人登記をしている法人または開業届を提出している個人事業者に限る
※間接経費は対象外 |
利用回数 | 同一年度内で1回 |
問い合わせ窓口 | 江戸川区役所 産業経済部産業経済課計画係 |
[出典:東京都江戸川区「事業継続計画(BCP)の策定にかかる助成金」]
摂津市新型コロナウイルス感染症対策介護サービス事業所等支援補助金:大阪府摂津市
大阪府摂津市では、介護サービスを提供する事業所に対し、新型コロナウイルス感染防止対策に向けた補助金制度を用意しています。最大50万円まで支援が受けられる補助金制度です。主な対象経費は、BCP計画策定や衛生用品購入などが該当します。
なお、訪問介護・通所リハビリテーション・介護老人福祉施設など、提供する介護サービスの内容に応じて、補助金額が異なるため、注意してください。
表:摂津市新型コロナウイルス感染症対策介護サービス事業所等支援補助金の概要
要件 | 内容 |
---|---|
実施機関 | 大阪府摂津市 |
補助対象者 | 大阪府摂津市に拠点を置く企業 |
上限額 | 最大50万円 |
実施期間 | 2022年8月1日~2023年3月31日 |
補助率 | 提供サービスによって変動 |
対象事業 | 医療と福祉 |
備考 |
|
[出典:大阪府摂津市「摂津市新型コロナウイルス感染症対策介護サービス事業所等支援補助金」]
表:補助対象
種類 | 主な該当品 |
---|---|
オンライン環境等整備事業 |
|
BCP計画の作成補助事業 |
|
衛生用品等購入事業 |
※PCR検査費用は対象外 |
表:補助対象サービスと上限額
サービスの種類 | 施設事例 | 上限額 |
---|---|---|
訪問系 |
| 50,000円 |
通所系 |
| 15万円 |
施設系・地域密着型 |
| 30万円 |
施設系・地域密着型以外 |
| 50万円 |
中小企業等BCP策定等支援補助金:静岡県焼津市
BCP策定の支援を行う中小企業等を対象とした補助金事業です。対象事業は、BCPの啓発を目的としたセミナー・勉強会の開催、BCP策定の指導、フォローアップなどです。補助率は4/5で、上限額は8万円となっています。
表:BCP策定支援事業補助金
要件 | 内容 |
---|---|
補助対象事業 |
|
補助対象者 |
|
補助対象経費 |
|
補助率 | 4/5以内 |
補助上限 | 8万円 |
申込期限 | 事業開始日または2023年3月1日のいずれか早い日まで(郵送の場合は必着) ※先着順で受付を行うため、募集枠に達した時点で終了 |
注意点 | 1年度あたり1回が限度 |
問い合わせ先 | 焼津市経済部商工課 企業誘致政策担当 |
[出典:静岡県焼津市「BCP策定支援事業補助金について」]
BCP・事業承継補助金:新潟県長岡市
自然災害への対策強化やスムーズな事業承継を実現するため、BCP強化に励む企業を支援する制度です。事業を1年以上営み、長岡市内に本社を置く企業が対象となります。BCP型は最大30万円、事業承継型(特例)は最大50万円の補助金を受給できます。
表:BCP・事業継承補助金の概要
種類 | 補助対象事業 | 補助対象 | 補助率 | 上限金額 |
---|---|---|---|---|
BCP型 |
|
| 1/2以内 | 30万円 |
事業承継型 |
|
| 2/3以内 | 30万円 |
事業承継型特例 |
|
| 2/3以内 | 50万円 |
事業承継型特例 |
|
| 2/3以内 | 50万円 |
※各研修は、キャリアアップや技能習得等、補助対象事業に直接関係のないものは対象外
[出典:新潟県長岡市「BCP・事業承継補助金(事業継続・事業承継計画策定推進補助金)」]
BCP対策に活用できるその他の補助金・助成金
「IT導入補助金」と「テレワーク促進助成金」は、BCP関連ツールやクラウドサービスの導入に利用できる制度です。2つの制度の概要を詳しくみていきましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金は一般社団法人サービスデザイン推進協議会が管轄する補助金制度で、ITツールの導入を検討している中小企業や小規模事業者を支援する制度です。ITツール導入に必要な資金を一部援助し、業務効率化や労働力不足解消を促進します。
IT導入補助金でBCP対策として利用できるのは下記2種類です。
- 通常枠(A枠・B枠)
- セキュリティ対策推進枠
通常枠(A枠・B枠)
通常枠はA枠とB枠の2種類から選択でき、A枠は最大150万円、B枠は最大450万円の補助金を受け取れます。A枠はプロセス数が1以上、B枠はプロセス数が4以上必要です。
プロセス数とは、導入しようとしているITツールが、特定の業務プロセスの効率化に貢献するかどうかを判断する要件です(下表参照)。
表:ITツールの要件(プロセス)
種別 | Pコード | プロセス名 | |
---|---|---|---|
業務プロセス | 共通プロセス | 共P-01 |
|
共P-02 |
| ||
共P-03 |
| ||
共P-04 |
| ||
共P-05 |
| ||
業種特化型プロセス | 各業種-P06 | ・業種固有プロセス | |
汎用プロセス | 汎P-07 |
|
例えば、BCP対策に寄与するツールとしては、グループウェアや安否確認システムなどが挙げられます。これらのツールは、共通プロセスの「情シス」部分に該当します。
オンラインストレージやビジネスチャットもBCP対策に関連しますが、どちらも汎用プロセスに該当するツールです。汎用プロセスに該当するツールは、単独では補助金申請ができません。つまり、グループウェア+オンラインストレージといった、複数のツールを同時に購入する必要があります。
ただし、B枠を利用する場合は、2つでは足りず、4つのプロセスをクリアしないといけません。そのため他分野の業務プロセス効率化に寄与するシステムを購入する必要があります。給与計算システムやSFAなど、複数のシステムを導入する予定がない限り、A枠を選択することになります。
表:通常枠(A枠・B枠)
通常枠 | ||
---|---|---|
種類 | A枠 | B枠 |
補助額 | 30万~150万円未満 | 150万~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | |
プロセス数 | 1以上 | 4以上 |
ITツール要件(目的) | 類型ごとのプロセス要件を満たし、労働生産性の向上に資するITツール | |
賃上げ目標 | 加点 | 必須 |
補助対象 |
|
[出典:一般社団法人サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金」]
[出典:一般社団法人サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金2022(公募要領)」]
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、最大100万円の補助金を受給できる制度です。
ランサムガードやEDR用監視サービスなどを導入し、自社のセキュリティ対策強化とBCP確保につなげることが目的です。ただし、「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に記載されているツールでないと、補助金対象となりません。
表:セキュリティ対策推進枠
種類 | セキュリティ対策推進枠 |
---|---|
補助額 | 5万円~100万円 |
補助率 | 1/2以内 |
機能要件 | 「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービス |
補助対象 | サービス利用料(最大2年分) |
テレワーク促進助成金
テレワーク促進助成金は、東京しごと財団が管轄する助成金です。都内の中小企業や中堅企業をターゲットに、テレワークの環境整備に必要な資金を援助する制度です。
従業員の規模が2人以上〜30人未満の場合は最大150万円、30人以上〜999人以下の場合は最大250万円の助成金を受け取れます。ノートPCの購入費やVPN環境構築に必要な機器などが、助成金の主な対象です。要件は次のとおりです。
<助成対象事業者の要件>
- 常時雇用する労働者が2名以上かつ999名以下の企業
- 都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業
- 都が実施する「テレワーク東京ルール実践企業宣言制度」に登録し、「テレワーク推進リーダー設置」表示のある宣言書がウェブサイト上で発行されている状態
表:テレワーク促進助成金の概要
常時雇用している従業員数 | 助成額の上限 | 助成率 |
---|---|---|
30~999人 | 250万円 | 1/2 |
2~29人 | 150万円 | 2/3 |
[出典:東京しごと財団「テレワーク促進助成金」]
表:助成金対象
科目 | 内容 | 主な事例 |
---|---|---|
消耗品購入費 |
|
|
購入費 |
|
|
委託費 |
|
|
|
| |
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| |
貸借料 |
|
|
使用料 |
|
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BCP対策を実施する際は補助金や助成金を活用しよう
今回は以下の3点について解説してきました。
- BCP実践促進助成金の概要
- 各地方自治体のBCP対策の支援制度
- BCP対策に活用できる制度
BCP対策を講じておくと、自然災害や職場内クラスターなど、緊急事態が発生しても、ダメージを最小限に抑えられます。安定して事業継続が見込める企業としても評価され、取引先との信頼関係がより強固になります。
BCP対策を講じるには、自家発電装置・安否確認システム・オンラインストレージなど、多くの設備購入が必要です。また、BCPの策定方法や盛り込むべき内容について、学ばなければなりません。
今回の記事で紹介した制度には、外部コンサルタントの研修費用や金融機関への業務委託料など、幅広い内容が盛り込まれています。自社が必要としている内容を把握し、上手に補助金や助成金を活用してください。
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