【BCP対策】3つのR「RPO・RTO・RLO」とは?意味や設定方法を解説

最終更新日時:2023/02/13

BCP対策

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BCP対策を実施する上で重要な指標に、「RPO」「RTO」「RLO」という3つのRがあります。BCPを策定する際は、これら3つの目標値をあわせて設定することが重要です。本記事では、そんなBCPにおける3つのRについて、意味や設定方法などを詳しく解説していきます。

BCPとは?

BCP(Business Continuity Plan)とは、日本語では「事業継続計画」と訳され、災害などの緊急事態下における事業継続を目的とし、損害の最小化や早期復旧を図るための計画書を指します。

自然災害が発生しやすい日本においては、平時より、地震や津波、水害などの災害が発生した際の対応策と体制を整えておくことが大切です。

BCPを策定しておくことで、非常事態に直面しても、迅速かつ的確に必要な措置をとることができます。その結果、従業員や経営資産を守り、事業縮小や倒産・廃業のリスクを回避することができるのです。

複雑化・多様化するリスクに備えるためのBCP対策

長らく「自然災害」が主流であった企業の危機管理の対象が、近年急速に複雑化・多様化しています。2022年に実施された企業のBCPに対する意識調査では、これまでの自然災害リスクに加え、「物流の混乱」「戦争・テロ」のリスクが懸念材料として急上昇しています。

これは、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁やサプライチェーンの寸断に加え、ここ数年顕著な問題となっている物資価格の上昇や半導体不足、気候変動が原因と考えられるでしょう。企業活動に関与するステークホルダーやサプライチェーンのグローバル化が進む昨今では、国内のみならず、世界中の様々な要因や事象が経営リスクとなる可能性を秘めています。

そのため、企業規模にかかわらずBCP策定の必要性はますます高まっており、重要な経営戦略の一環としての存在感が増しているのです。

[出典:株式会社帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2022年)」]

BCPで重要な3つのR

BCP策定時には、「3つのR」と呼ばれる指標を用いることが重要です。

「3つのR」とは、RTO(目標復旧時間)、RPO(目標復旧時点)、RLO(目標復旧レベル)の指標の総称です。これらの指標を基準として行動計画や対策を策定することで、BCPの合理性・実効性向上が期待できます。

BCPでは、様々なシチュエーションにおいて、その時々で適した措置をとるために、あらかじめ具体策が明確に記されていなければなりません。例えば、災害などにより基幹システムがダウンしてしまったケースを想定してみましょう。

システムが復旧しない限り、業務を再開することができないため、停止期間中に様々な損害が発生・拡大していきます。業務停止によりビジネスチャンスを逃し、顧客の信頼が失われ、顧客離れが進むことで業績が悪化し、社会的責任を問われる事態にまで発展しかねません。

そのような事態を回避するためには、早急にシステムを復旧する必要がありますが、仮にシステムダウン直前の状態にまで完璧に、かつ最短で復旧しようとすると、莫大なコストが必要となります。

そのため、システム復旧に際しては、様々な要因を総合的に勘案した上で、復旧目標とする「時間」「鮮度」「品質」を明確に定めておくことが大切です。そうすることで、事業継続を脅かすリスクを最小限に抑えながらも、復旧に必要なリソースを最適なボリュームで分配することが可能となるのです。

この「時間」「鮮度」「品質」の3つの目標値を数値化したものが、「3つのR」にあたるRTO・RPO・RLOで、非常時にとるべき対策の具体化に大いに貢献してくれます。

BCPにおける「RTO」とは?

RTO(Recovery Time Objective)は、「目標復旧時間」とも呼ばれ、非常時に「いつまでに復旧させるか」の目標値を表します。

刻一刻と被害が拡大する非常時下においては、被害の最小化と早期復旧は時間との戦いとなります。そのため、復旧までの時間を設定するRTOは、BCP策定において不可欠な指標です。

限られたリソースを最適箇所に最適なボリュームで配分し、迅速に対応を進めていくためには、時間軸を活用した合理的な対策を策定しなければなりません。そのためには、現実性の高い復旧時間を設定することが要となるのです。

RTOの意味

RTOは、災害などが原因で機能停止に陥った業務やシステムを復旧させるまでにかかる「時間」を意味します。

BCP対策では、非常事態の発生により一旦機能が停止した設備や業務が復旧するまでのダウンタイムをいかに短くするかが重要であることから、いかにRTOを短くするかが早期復旧の鍵を握っているのです。

ダウンタイムが長期化すればその分、企業のみならず取引先や顧客などのステークホルダーへの影響が拡大し、事業継続へのダメージも増大します。

そのため、ダウンタイム=ゼロであることが最善策と捉えられる一方で、その値がゼロに近づけば近づくほど、コストは増大していくという事実を考慮しなければなりません。

適切なRTOの設定は、経営ダメージを最小限に抑え、顧客や社会からの信頼獲得に直結するため、コストと影響力の双方のバランスを慎重に測った上で定めることが大切です。

RTOの設定方法

RTOの設定には、日、時間、分、秒の単位を用いて、事業停止がもたらす影響が時間によってどのように変化するかという視点から適正値を検討していくことがポイントです。

例えば、食品や医療物資を製造する企業であれば、製造が停止することで人命に関わる被害をもたらす可能性が高いため、RTOは限りなくゼロに近い値を目指してBCPを策定しなければなりません。

製造工場の被災時に、速やかに代替拠点へと生産ラインを移管して製造を再開するためには、日頃から従業員の訓練や関連設備の整備を実施し、RTOを下げる取り組みが重要となります。

このように事業内容や業務の緊急性を加味し、RTOにより必要リソースがどれくらい変動するかも考慮しながら、設定作業を進めていきましょう。

加えて、事業停止がもたらす影響力を評価する際には、もたらされるダメージを可視化するBIA(ビジネスインパクト分析)を用いるとよいでしょう。事業や業務の再開目標ラインが決まったら、そこから逆算して、細かい対応の実施期日を割り振って設定していきます。

この際、取引先などと交わしている契約内容によっては、賠償金等が発生する期日が設けられていることもあるため、必要に応じてRTOに反映させることを忘れないようにしましょう。

一連の対応に関するRTOはフローチャートなどを用いて図式化し、関連各所と共有することで、非常時においても各々がやるべきことを共通のスケジュール感を持って進めることができます。

BCPにおける「RPO」とは?

RPO(Recovery Point Objective)は、「目標復旧時点」とも呼ばれ、主にデータの復旧作業に際して、「過去のどの時点のデータを復旧させるか」を表します。

RPOは、非常時におけるシステムに特化した復旧対策であるDR(Disaster Recovery)においても、バックアップ管理や作業スケジュールの策定に必要な指標です。

RPOは、中核事業を進める上でのデータ価値の高さにより適正値が異なるため、各企業の事業内容や業務特性によって設定が必要となります。

例えば、取引データのやり取りがコア業務である証券会社や金融機関であれば、システムが停止する直前のデータが必要になるため、RPO=ゼロが好ましい設定であると言えるでしょう。

しかし、RPOがゼロに近ければ近いほど、頻繁にバックアップをとらなければならないため、コストが増大します。そのため、事業の継続やステークホルダーとの関係に支障がでないラインを慎重に見定めてから、RPOを設定することが重要なのです。

RPOが適正でない場合は、誤ったデータで業務を再開したことにより2次・3次災害につながる様々な弊害が発生する可能性が高くなるため、BCP全体の品質を左右する指標とも言えるでしょう。

RPOの意味

RPOは、災害発生などにより停止してしまったシステムに対して復旧作業を行う際に使用するバックアップファイルの「鮮度(古さ)」を意味します。

システムの復旧作業においては、システムが停止した時点からどのくらい遡った時点のファイルまでが有効とされるかにより、復旧にかかるコストや時間が大きく変わってきます。

そのため、RPOは業務や事業継続に支障がでず、ステークホルダーへの影響も最小限に抑えられる復旧ラインを的確に判断し設定することが必要とされるのです。

RPOの設定方法

データ復旧の指標として用いられることの多いRPOですが、その適正値は業種や業務内容によって異なります。先述のような、データ通信頻度が高く、常に新しいデータが必要とされる業種においては、RPOの許容範囲は限りなくゼロに近くなります。

逆にRPOが数時間、数日と長くなればなるほど、システム停止時間からRPOまでの間のデータは失われることとなるため、どの程度のデータ鮮度が必要かの見極めは重要です。

データの更新頻度も少なく、高い完全性を求められない業種や業務の場合であれば、数日前のデータを復旧させても大きな支障は生まれないでしょう。

BCPにおける「RLO」とは?

RLO(Recovery Level Objective)は、「目標復旧レベル」とも呼ばれ、非常時に「どのレベルで事業や業務を再開するか」を表しています。

例えば、システム障害により、ECサイトが機能停止となってしまった場合、サービスの再開には、いつまでにどのレベルまで復旧させる必要があるかを決めなければなりません。

再開時に達しておくべきレベルの指標となるのがRLOであり、RTOとセットで設定されることが一般的です。

RLOに関しても、先述のRTO、RPOと同様に、完璧な復旧を目指すとその分コストが増大するため、事業継続やステークホルダーに及ぶ影響を考慮しながら、適正値を設定しなければなりません。

RLOが誤った値で設定されてしまった場合、本来であればより少ないリソースと時間で再開が可能であったにもかかわらず、ムダにリソースと時間を費やすことになってしまいます。

非常時においては、一刻を争う中で限られたリソースを最大限活用する必要があるため、適切なRLOの設定は、BCPの各対応策にも大きく影響を及ぼします。

RLOの意味

RLOは、非常時において稼働や遂行が中断してしまった設備や業務、またサービスなどに対して復旧作業を施す際に、再開するために満たすべき「品質」を意味します。

前述のRTOやRPOを表す単位が「時間」であったのに対し、RLOは対象となる企業の業種や事業・業務の内容・特性により様々な単位で測られる点が、大きな違いです。

平時の品質を100%とした時、非常時には何%程度の品質に達していれば、支障なく事業や業務が再開できるかを明確に定めておくことで、復旧作業に対して投入するリソースを必要最低限に抑えることができます。多くのケースでRLOの値が低ければ低いほどRTOも短くなり、早期復旧が可能であるということを示しています。

しかしこの場合、早期再開が叶っても平時の品質との落差が激しい状態にあるため、顧客の信頼喪失にもつながる恐れがあることを考えれば、闇雲に早期再開を目指すべきではないと言えるでしょう。

RLOの設定方法

RLOの設定に際しては、まず指標とする単位を決定することから始めます。

「何平米まで生産スペースを確保できた時点で稼働再開」「全メニューのうち80%の品まで提供可能となった時点で開店」など、再開の判断に大きな影響を及ぼす単位を検討し、設定しましょう。単位が決まったら、実際に再開する基準となるRLOの適正値を検討していきます。

簡単な例として、一部区間における信号システムの不具合により東京・大阪間を走る新幹線の運行が停止した場合を想定してみましょう。この場合、対象区間のシステム復旧が完了するまで、全区間運行を停止するのか、問題なく作動している区間から段階的に運行を再開していくかの選択に迫られます。

通常、利用客への対応や補償の範囲等を考えると、全区間の運行停止が長期化することは望ましくないことから、一部区間から順次再開されるケースの方が多くなるでしょう。しかしここに、大雪や台風などの気象条件が加わると、運行再開の判断は変わってくるかもしれません。

前項でも述べた通り、早期復旧を優先するあまり、低水準のRLOで事業や業務、サービスを再開してしまうことが逆効果となってしまう可能性があることを念頭において、適正値の検討を進めることが大切です。

BCPにおけるRTO・RPO・RLOの違い

「3つのR」における共通点は、いずれも目標値であることです。

3つの異なる視点から目標値を定める指標であるRTO、RPO、RLOですが、これまでの解説からもわかるように、その目的や活用方法には異なる点が多々見受けられます。わかりやすい相違点をあげるなら、各値がそれぞれ異なるものを対象としていることでしょう。

同じ復旧に関する目標設定でも、RTOは「いつまでに復旧させるか」、RPOは「どの時点まで復旧させるか」、RLOは「どのレベルまで復旧させるか」と三者三様です。

BCPにおいて重要な3つのRについて理解を深めておこう

「3つのR」は、企業を取り巻く多様な要素を総合的に勘案し、検証を重ねた上で導き出される値であるため、実効性の高いBCPの基盤となる重要な指標です。

事業の継続と早期復旧という目的に対し、限られたリソースで同時に取り組まなければならない非常時においては、合理的で効率的な復旧計画の有無により、その後の被害状況は大きく変化します。特に社会全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されている昨今においては、データ復旧は事業継続に直結する重要な要素です。

今回解説した「3つのR」は、災害時のシステム復旧のための対策であるDRでも活用されているため、事業や業務におけるデータやシステムの重要性が高い企業においてはDRにも取り組むことをおすすめします。

BCPとDR、いずれの対策を策定するにせよ、「3つのR」は単独ではなく、各々の間に相関関係が構築されることが、バランスの良い危機管理対策につながります。

RTO、RPO、RLOの3つの指標の特性をしっかり理解した上で、自社に適したかたちでBCP策定に活用していきましょう。

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ビズクロ編集部
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