【担当者向け】BCP策定の具体的な手順と策定例をわかりやすく徹底解説

記事更新日:2022/11/07

BCP対策

BCPが書かれた積み木と手

有事の際の損害を最小限に食い止めるために行うBCP対策。自社の事業を守るために必要とされているBCPですが、策定手順に悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、BCP策定について、重要性や具体的な策定手順などを詳しく解説していきます。

BCPとは?

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、ひと言でいえば「緊急事態への備え」のことです。具体的には、自然災害などの緊急事態が発生したときに事業縮小や廃業に陥らないように、事業の早期復旧や継続をするための準備のことを指します。

BCPの策定と運用は、顧客からの信用や従業員の雇用、地域経済の活力を守ることにつながります。

BCP策定・運用(中小企業庁より引用)

[出典:中小企業庁「2.1 BCP基本方針の立案」]

内閣府防災情報のページにおける、BCPの説明は次のとおりです。

災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。バックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などの対策を実施する(Business Continuity Plan: BCP)。

[引用:内閣府「知る・計画する : 防災情報のページ – 内閣府」より]

なお、BCPで想定される緊急事態には次のようなものがあります。

  • 大地震
  • 集中豪雨
  • 洪水
  • 新型インフルエンザ
  • テロ
  • サプライチェーンの途絶
  • サイバー攻撃

続いて、日本企業におけるBCPの策定状況やBCM・防災との違いも確認し、BCPへの理解を深めていきましょう。

BCPの策定状況

内閣府防災担当が2022年1月7日から2月14日にわたり実施し、1,839社から有効回答を受けた調査の結果(令和3年度調査)によると、大企業の70.8%がBCPを策定済みであり、策定中の14.3%を含めると85.1%という策定状況でした。

中堅企業では40.2%が策定済みであり、策定中の11.7%を含めると51.9%という水準です。

表:BCP策定状況の推移(策定済みまたは策定中と回答した企業の割合)

調査年度 中堅企業 大企業
平成19年度 15.8% 35.3%
平成21年度 27.2% 58.4%
平成23年度 35.7% 72.3%
平成25年度 37.3% 73.5%
平成27年度 42.0% 75.4%
平成29年度 46.5% 81.4%
令和元年度 52.9% 83.4%
令和3年度 51.9% 85.1%

[出典:内閣府「令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」]

中堅企業も半数超えの企業がBCP策定済みまたは策定中ではあるものの、さらなる推進が必要といえるでしょう。

BCPとBCMの違い

BCPは緊急自体が発生しても事業を継続するための方針や体制、手順などを示した計画のことで、BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)はBCPの策定を含む、事業継続のための平常時からのマネジメント活動のことです。

そのため、BCMというマネジメント活動の一部にBCPの策定が含まれていると捉えておくと良いでしょう。

経営層は、BCPの策定だけを進めるのではなく、より広い概念であるBCMを推進する意識が求められます。内閣府の『事業継続ガイドライン』では、BCMについて次のように説明されています。

BCP策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、対策の実施、取組を浸透させるための教育・訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動のこと。経営レベルの戦略的活動として位置付けられる。

[引用:内閣府「事業継続ガイドライン(令和3年4月)」より]

BCPと防災の違い

BCPは、緊急事態としておもに自然災害が想定されることが多いことから、同じく自然災害を対象とする「防災」と同義のものと認識している人も少なくないようです。

たしかにBCPと防災は共通する部分も多いですが、BCPが事業の「継続」を目的とする一方、防災は災害時における「人命の安全確保」などをおもな目的としている点などに違いがあります。

BCPと防災の違いについて、概要を以下の表にまとめました。

表:BCPと防災の違い

BCP 防災
おもな目的
  • 身体と生命の安全確保
  • 重要業務の継続または早期復旧
  • 身体と生命の安全確保
  • 物的被害の軽減
考慮事象
  • 災害に限らず事業中断の原因となる事象(インシデント)
  • 災害

BCPの策定が必要とされている理由

BCPの策定が必要とされている理由にはさまざまなものがあります。主な理由は次のとおりです。

  • 事業継続できずに失った顧客は取り戻すことが難しいため
  • サプライチェーンを止めないため(供給責任を果たすため)
  • 取引先からの信用・評価を得て新規顧客獲得につなげるため
  • 投資家からの信用・評価を得て円滑な資金調達を図るため
  • 災害時においても残る株主総会の開催や税務申告、仕入先や従業員への支払などの義務を履行するため
  • 従業員の雇用を守るため
  • 地域経済の活力を守るため
  • 廃業に至ることを防ぐため

まとめると、事業自体はもちろん取引先や従業員、投資家、地域などステークホルダーとの関係を守るためにBCPの策定が必要といえます。より積極的には、ステークホルダーからの信頼・評価を得て競争力を高めるためにBCPの策定が必要という捉え方も可能です。

BCPを策定するための具体的な手順

BCPを策定するための具体的な手順を紹介していきます。先に大まかな手順をまとめると次のとおりです。

  1. 基本方針の策定
  2. 対象となる事業の選定
  3. 重要な業務の特定
  4. 事業継続に必要な代替策の検討
  5. BCPの策定

基本方針の策定

BCP策定にあたっては、経営者が自社事業を取り巻く環境を再認識し、その中で自社が果たすべき責任や重要事項を明確にすることが求められます。

そのため、自社の経営方針や事業戦略と、ステークホルダーからのニーズを照らし合わせて整理することから始めると良いでしょう。整理が終わったら、それを踏まえて事業継続に対する基本的な考え方を示す基本方針を策定します。基本方針の具体例は次のとおりです。

  • 人命を最優先とする
  • 顧客に対する供給責任を果たす
  • 社会的責任を必ず果たす

対象となる事業の選定

自然災害などが発生しても、すべての事業が平常時と同様に継続できることが理想です。しかし実際には、ヒトやモノ、カネなど活用可能な経営資源は平常時と比べて限定されることが想定されます。

そこでBCP策定においては、継続または早期復旧すべき事業の優先順位を付けて対応する必要があります。優先順位を付ける際は、影響度評価を行いましょう。

影響度評価は、各事業が停止した場合の影響を次のような観点で、可能な限り定量的に評価します。

  • 利益や売上、マーケットシェアへの影響
  • 資金繰りへの影響
  • 顧客の事業継続可否など顧客への影響
  • 顧客との取引維持可能性への影響
  • 従業員の雇用や福祉への影響
  • 法令や契約、SLA(Service Level Agreement)等に違反した場合の影響
  • 自社の社会的信用への影響
  • 会的・地域的な影響

重要な業務の特定

優先的に継続・復旧すべき重要事業を絞り込んだら、その事業に必要な業務について、目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)と目標復旧レベル(RLO:Recovery Level Objective)を決定します。

そして、事業の優先順位付けと同様に業務についても優先順位付けを実施しましょう。そのうえで、重要業務の実施に必要な経営資源を把握し、ボトルネックも特定します。

内閣府の『事業継続ガイドライン』ではボトルネックについて、次のように説明しています。

必要とされている量の確保が可能となるまでの時間をより早めない限り、当該重要業務の復旧をさらに早めたり、復旧レベルを上げたりすることができないものを「ボトルネック」として把握する。

[引用:内閣府「事業継続ガイドライン(令和3年4月)」より]

事業継続に必要な代替策の検討

続いて、事業継続に必要な代替策の検討を進めていきます。どのような経営資源について代替策を検討すべきかの例は次のとおりです。

  • 情報連絡の拠点場所
  • 被災した重要施設・設備
  • 臨時従業員
  • 資金
  • 通信手段と電力、ガス、水道などのインフラ
  • 情報類

BCPの策定

これまで検討してきた内容を踏まえながら、いよいよBCPの策定を行います。BCPには、緊急時の体制や対応手順を含めましょう。

なお具体的なBCP(事業継続計画)の様式については、中小企業庁が公表している様式を参考にしてみてください。

BCP策定で気を付けるべきポイント

BCP策定で気を付けるべきポイントを紹介しますので、策定前にチェックしておきましょう。

  • 明確な発動基準を設定する
  • BCPに必要な組織体制を構築する
  • 情報を整理してマニュアル化する
  • 公開されているチェックリストを活用する

明確な発動基準を設定する

どのような状況となった場合にBCPが発動されるのか、事前に基準を明確にしておきましょう。BCPを発動するかどうかは、実際に自然災害などのインシデントが発生してから判断することになります。

BCPは緊急時の備えであるため、いざ実際に発動要否を判断するときになって基準もなく判断するより、事前に発動基準を定めたうえで判断することが望まれるでしょう。

実際、『事業継続ガイドライン』では、BCP発動について「あらかじめ定められた基準に基づき」と記載されています。

初動が落ち着いた後、然るべき権限者は、あらかじめ定められた基準に基づき、事業継続 計画(BCP)発動の要否を判断し、発動となった場合、事業継続体制へ移行

[引用:内閣府「事業継続ガイドライン(令和3年4月)」より]

BCPに必要な組織体制を構築する

BCP発動時に必要な組織体制を構築しておくことも重要です。緊急事態が発生した場合は、経営者がトップダウンの形で従業員を先導することが求められます。

経営者が先導することはもちろん、次のような機能を持つ組織体制の構築を検討しましょう。

  • 復旧対応機能:施設や設備の復旧など
  • 外部対応機能:取引先や協力会社、組合、商工会との各種連絡と調整
  • 財務管理機能:事業復旧のための資金調達や各種決済
  • 後方支援機能:従業員の参集管理や食料手配、負傷従業員の対応など

情報を整理してマニュアル化する

BCPにかかる情報を整理し、マニュアル化しておくことがおすすめです。具体的には、BCP発動フローを整理し、さらにその手順ごとに必要情報を整理しておきます。

なお、BCPに関する様式類については中小企業庁のページにてまとめられているため、あわせて参考にしてみると良いでしょう。

公開されているチェックリストを活用する

初めてBCPを策定しようとしても、本当にこれで良いのかと不安に思いながら作業を進めることもあるでしょう。

そのようなときに便利なのが、中小企業庁が公表しているチェックリストです。事業継続ガイドラインのチェックリストなどもあるため、必要に応じて活用しましょう。

BCPの策定例

ここでは、BCP策定のイメージをつかむために、物流業と病院におけるBCP策定例のポイントを簡単に紹介します。

物流業の策定例

物流業においてBCPを策定するときは、次のようなポイントに留意して策定しましょう。

表:物流業におけるBCP策定のポイント

項目 内容
ハザードマップ
  • 事業所が災害に遭遇する危険度について、ハザードマップで情報収集をしておく
防災対策
  • 重要な設備を地下や1階に置かない
  • 土のうなどを準備しておく
  • 可能な限りトラックを避難させる
整理・整頓
  • 被害軽減のために整理・整頓をしておく
消火器等の準備
  • 被害や二次災害を抑えるために、消火器や救急用品、避難・救難機材の準備をしておく
備蓄の実施
  • 最低3日分の飲食料の備蓄が望まれる
  • 飲食料の備蓄は定期的に賞味期限切れをチェックする

病院の策定例

病院においてBCPを策定するときは、次のようなポイントに留意して策定しましょう。

表:病院におけるBCP策定のポイント

項目 内容
ハザードマップ
  • 事業所が災害に遭遇する危険度について、ハザードマップで情報収集をしておく
優先して継続する診療・治療
  • バイタルサインの安定化を行う
搬送
  • 対応が困難な場合は他の医療機関への搬送も考慮する
  • 搬送時は搬送ルールなどを定めておく
医薬品やライフラインの確保
  • 医薬品やライフラインの供給停止への対処も想定しておく
停電対策
  • 異なるエネルギーを使用する自家発電機を複数台組み合わせることも検討する
医療・検査機器等の転倒防止
  • 重要設備はアンカーボルトで床に固定しておく
  • 固定ベルトを使用して機器を固定しておく

BCP策定の手順やポイントを押さえておこう

BCP策定は、基本方針の策定から始まり対象事業や業務の選定、事業継続に必要な代替策の検討などを経て行います。BCP策定の具体的なガイドラインについては、内閣府や中小企業庁が公表しているほか、業界団体や都道府県、市区町村が取りまとめていることもあります。

ぜひ本記事を参考にBCP策定の大まかな流れを把握し、経営戦略の1つとしてBCPの策定を実践してみてはいかがでしょうか。

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