ユニコーン企業の定義とは?世界・日本の企業数や日本に少ない理由について
日本経済の発展に大きな影響を与える「ユニコーン企業」。かつてのユニコーン企業が上場を果たし、日本や世界を支える存在となっている例も多くあります。本記事では、ユニコーン企業の定義とは何か、世界・日本の企業数や日本に少ない理由を詳しく解説します。
・ユニコーン企業とは、創業10年目以内で10億ドル以上の評価額がついている非上場の企業のこと
・日本は海外と比べてユニコーン企業が少ない傾向
・J-Startupやスタートアップ躍進ビジョンなど、ユニコーン企業を増やすための取り組みが実施されている
目次
ユニコーン企業の定義とは?
ユニコーン企業とは、以下4つの条件をすべて満たした企業の俗称です。
- 設立から10年以内であること
- 企業評価額が10億ドル以上であること
- 非上場企業であること
- テクノロジー企業であること
ユニコーン企業の定義は諸説あり、「テクノロジー企業であること」を絶対条件としない場合もあります。
すべての条件を満たすのは非常に難しく、その希少性の高さから伝説上の生物「ユニコーン」に例えられたのが由来です。実際に「ユニコーン企業」という言葉が使われ始めた2013年時点では、該当企業は世界的に見てもわずか39社しかなかったといわれています。
ユニコーン企業が増加している理由
近年、世界的にユニコーン企業が増加している2つの理由を解説します。主に、起業をとりまく事情の変化が密接に関わっていました。
資金調達がしやすいため
一昔前はIPO(新規株式公開)による資金調達が主流だったため、多くの企業が上場を目指すのが一般的でした。しかし近年では、ベンチャーキャピタル(VC)を中心に上場以外の資金調達方法が確立されています。
事業に将来性があると見込まれれば、創業間もない企業でも多くの出資が受けられ、IPOに比べて早く資金を調達できるようになったのです。このため、事業成長が高速化し、規模も大きくなっていったと考えられます。
起業のハードルが低くなっているため
時代を追うごとに起業のハードルが低くなっていることも、ユニコーン企業が増加している理由の1つです。
クラウドサービスなどIT技術の進歩により、比較的少ない資金で起業できるようになりました。また、インターネットの高速化や安定化に伴い、世界規模の大きなビジネスも展開しやすくなっています。
このため、IT業界・テクノロジー分野において、創業間もない企業が大きな利益を上げて急成長を遂げるケースが増加したと考えられます。
ユニコーン企業と類似した意味を持つ言葉
ユニコーン企業と類似した意味を持つ「デカコーン企業」「ヘクトコーン企業」「ゼブラ企業」について、違いや特徴を解説します。
デカコーン企業
デカコーン企業とは、10倍を意味する「deca」とユニコーンを組み合わせた言葉です。ユニコーン企業の10倍に相当する100億ドル以上の企業評価額を得た企業が該当します。そのほかの条件は、ユニコーン企業と共通です。
ユニコーン企業との違いは、企業評価額における条件の厳しさにあります。その多大な評価額の差から、ユニコーン企業よりもさらに希少な存在といえます。
ヘクトコーン企業
1,000億ドル以上という圧倒的な企業評価額がつく場合、ヘクトコーン企業と呼ばれます。10年以内に設立した非上場企業である条件はユニコーン企業と同じですが、評価額において100倍もの差をつけなくてはなりません。ヘクトとは、100倍を意味する「hecto」からきています。
代表的なヘクトコーン企業として、TikTokを運営するByteDance、イーロン・マスク氏が手掛けるSpaceXなどが挙げられます。
ゼブラ企業
ゼブラ企業とは、自社の利益と社会貢献の両立を目指す企業の俗称です。設立年数や企業評価額といった、明確な条件定義はありません。
「自社の利益」と「社会貢献」は相反する概念のため、白黒模様のシマウマ(Zebra)に例えられてその名が付けられたといわれています。
他社との競争で急成長を遂げるユニコーン企業に対して、ゼブラ企業は競合他社との協力を前提に発展を目指すのが、両者の違いです。競争と対極ともいえるこのような価値観は、SDGsの考え方に通じるものがあるとして、近年関心を得ています。
世界・日本のユニコーン企業の数
世界・日本それぞれにおけるユニコーン企業の数と、企業評価額上位の企業を紹介します。
世界のユニコーン企業数
2023年10月時点で世界のユニコーン企業は約1,200社といわれています。以下は同時期のTOP10をまとめたものです。
企業名 | 国 | 業種 | 評価額(10億ドル) |
ByteDance | 中国 | メディア・エンターテイメント | 225 |
SpaceX | アメリカ | 宇宙産業 | 150 |
SHEIN | シンガポール | 小売業(アパレル) | 66 |
Stripe | アメリカ | 金融 | 50 |
Databricks | アメリカ | エンタープライズテクノロジー | 43 |
Revolut | イギリス | 金融 | 33 |
Epic Games | アメリカ | メディア・エンターテイメント | 31.5 |
Fanatics | アメリカ | 小売業 | 31 |
OpenAI | アメリカ | エンタープライズテクノロジー | 29 |
CanvaOpenAI | オーストラリア | エンタープライズテクノロジー | 25.4 |
[引用:CB Information Services, Inc.「The Complete List Of Unicorn Companies」より]
日本のユニコーン企業数
2023年1月時点の企業評価額では、日本のユニコーン企業は7社が該当しました。以下に同時期のユニコーン企業TOP7をまとめています。
企業名 | 業種 | 評価額(億円) |
Preferred Network | 機械学習・深層学習などの実用化 | 3,539 |
ADVASA | 福利厚生ペイメントサービス | 2,301 |
GVE | CBDCプラットフォームの開発 | 2,245 |
スマートニュース | ニュースアプリの提供 | 2,004 |
SmartHR | クラウド人事労務ソフトなどの提供 | 1,732 |
TRIPLE-1 | 半導体システムの開発 | 1,650 |
スリーダムアライアンス | 次世代電池の開発 | 1,527 |
[引用:フォースタートアップス株式会社「国内スタートアップ評価額ランキング【2023年1月版】」より]
日本のユニコーン企業が少ない理由
世界のユニコーン企業が増加傾向であるのに対して、日本のユニコーン企業が少ない3つの理由を解説します。
起業しやすい環境が整っていない
日本のユニコーン企業が少ない理由の1つに、起業しやすい環境が整っていないことが挙げられます。
代表的な資金調達方法にベンチャーキャピタルがありますが、日本は諸外国に比べて投資額の規模が小さい傾向にあります。また、法的にも未上場株式に対する規制が厳しく、上場以外でまとまった資金調達をするのは難しいといわざるを得ません。
海外と比較し、起業に必要な資金調達に課題が多く、ユニコーン企業増加の足かせとなっている可能性があります。
起業を志す人が少ない
起業のしにくさもさることながら、そもそも起業を志す人が少ないことも日本のユニコーン企業が少ない理由として考えられます。
みずほ情報総研株式会社が2020年に行った調査では、企業活動の活発さをあらわす指標「TEA」の水準において、日本は44か国中37番目という低水準でした。これは、起業する際の手続きの煩雑さや、失敗した場合の再就職の難しさなどが影響していると考えられます。
さらに日本特有の事情としては、新卒で入社し長く勤める方が有利な労働環境であること、労働人口の急速な減少で優れた人材が少ないことなども、起業を鈍化させている要因です。さまざまな背景が重なり、ユニコーン企業が生まれにくい状態になっています。
[出典:みずほ情報総研株式会社「令和2年度グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業」]
上場を目指す企業が多い
日本は比較的上場しやすい環境であり、それにともない上場を目指す企業が多いこともユニコーン企業の少なさに影響しています。
上場すること自体を目標にしている企業も多く、ユニコーン企業の条件を満たす前に実施するケースも少なくありません。
日本企業には上場を目指す風潮が根強く残っていることから、ユニコーン企業に値する価値があっても、自ずと条件から外れてしまうのです。これは、ユニコーン企業が増えにくい一因だと考えられます。
ユニコーン企業を増やすための日本の取り組み
日本のユニコーン企業が少ない現状を踏まえ、政府はグローバルで活躍できる企業を多く輩出していきたいと考えています。ここでは、日本で行われている具体的な取り組みを2つ紹介します。
J-Startup
J-Startupとは、日本国内のスタートアップ企業に対し、グローバルに活躍できるようさまざまな支援を行う制度です。具体的な目標として、2025年までにユニコーン企業または上場ベンチャー企業を50社創出することを目指しています。
実績あるベンチャーキャピタリストや大手企業の新事業担当者などの推薦にもとづき、潜在力のある企業を選定して支援を行う仕組みです。プロジェクトを運営するのは経済産業省のほか、複数の民間企業がサポーターとして参加しています。
選定企業への具体的な施策は、政府によるビジネスマッチングや海外のイベント・ミッションへの参加等に対する支援、民間企業からは検証データやノウハウの共有といったサポートの提供です。2018年6月に行われた第1次では92社、2019年6月に行われた第2次では49社、2021年10月に行われた第3次では50社が選定され、さまざまな支援が続けられています。
参考元:経済産業省「J-Startup」
スタートアップ躍進ビジョン
スタートアップ躍進ビジョンとは、経団連(一般社団法人 日本経済団体連合会)の主導で行われている取り組みで、2027年を目途に以下のような具体的な数字目標を掲げているのが特徴です。
- 起業の数を10倍(約10万社)にする
- スタートアップへの年間投資額を10倍(約10兆円)にする
- ユニコーン企業数を10倍(約100社)にする
- デカコーン企業数を2社以上にする
これらの目標を達成するために7つのビジョンを描き、ビジョンに対する具体策も考案されています。海外からの投資を受け入れるハードルを下げたり、法人設立手続きを簡素化したりするなど、起業の障壁を除去する取り組みの提言が例です。スタートアップに関する多くの手続きや制度の改善も挙げられるなど、起業環境の改善に向けた発案がなされています。
あらゆる角度からさまざまな施策が盛り込まれており、今後の動向が注目されている取り組みの1つです。
参考元:一般社団法人 日本経済団体連合会「スタートアップ躍進ビジョン」
日本経済の発展にはユニコーン企業の創出が必要
革新的な事業で社会に影響を与えるユニコーン企業ですが、日本においてはまだ少ない事例です。一方で、スタートアップを支援する策も増加しており、国をあげてユニコーン企業の増加に取り組んでいます。
成功しているスタートアップを数多く輩出している国が、世界経済を牽引しているといっても過言ではありません。日本経済の発展においても、グローバルで活躍できる有望なユニコーン企業の創出が必要不可欠であり、急務といえるでしょう。
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