企業が陥りやすい経営課題|課題の見つけ方や解決に向けた具体例を解説

2023/12/20 2023/12/20

経営

経営課題

ビジネスで企業が置かれる状況は目まぐるしく変わり、さまざまな経営課題が新たに生まれます。効率良く対応するには、問題が発生する原因や対策方法の把握が必要です。当記事では、企業が陥りやすい経営課題について、課題の見つけ方や解決例を解説します。

この記事の要約

・経営課題を抱える背景としては、不確実性の強いVUCAの時代に突入している点や働き方改革、価値観やニーズの多様化があげられる
・新たな経営計画の立案やフレームワークを活用することで経営課題の解決につながる

企業が経営課題を抱えてしまう背景・原因

企業が経営課題を抱えてしまう背景や原因は、主に3つ挙げられます。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

不確実性が強く予想が困難

近年は不確実性の強い時代「VUCA(ブーカ)」に突入したと言われています。VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字から成る言葉です。VUCAの時代は、不確実性が強く予測が困難であるという特徴があります。

たとえば、昨今では新型コロナウイルスの流行により、企業は急遽、働き方や事業形態の見直しが必要となりました。そのほか、AIの進化やグローバル化の拡大、市場ニーズの複雑化、災害の発生など、先の読めない状況が続いています。社会が急速に変化するのにともない、企業も柔軟に対応していかなければなりません。

働き方改革による環境の変化

2018年に働き方改革関連法が成立したことを機に、労働環境は大きく変化しました。代表的な変化として、長時間労働の是正や副業・兼業の推進、リモートワークの普及などが挙げられます。さらに人手不足解消や多様な人材の活用に向け、女性や高齢者、外国人人材の雇用も推進されており、企業は従来の体制を見直す必要が出てきているのです。

さらに、近年は転職者数が増加傾向にあり、優秀な人材を確保することが困難になっています。人材の確保・定着のためには、労働者が働きやすく、また、やりがいをもって働ける職場にしなければなりません。

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価値観やニーズの多様化

消費者の価値観やニーズにも、大きな変化が生じています。

これまでは、価格や品質、企業のブランドなどを基準に商品やサービスが購入されていました。しかし最近では、消費者一人ひとりの価値観やライフスタイルに合った商品が選ばれる傾向にあります。また、サステナビリティの考えが普及したことで、環境に配慮した商品を選ぶ消費者も増えているようです。

今後も消費者のニーズは多様化することが予測されます。ネームバリューや価格だけでは選ばれなくなった今、企業が存続するためには、消費者のニーズを敏感にキャッチし、柔軟に対応することが求められるのです。

企業が陥りやすい経営課題

次に、企業が陥りやすい6つの経営課題についても、詳しく解説します。

人材に関する課題

人材確保や人材育成など、人材に関する課題は企業が抱える経営課題の一つです。特に日本企業では、少子高齢化による人手不足が深刻です。人手不足による倒産も発生するなど、企業の存続に関わる問題となっています。課題解決のためには、シニア世代や外国人人材のほか、副業人材の活用など、多様な人材の活用が不可欠であり、多くの企業において体制の構築が急がれています。

また終身雇用が崩壊し、人材の流動性が高まったことで、企業は優秀な人材を長期的に確保することが難しくなりました。社員のエンゲージメントを高めることができなければ、離職を招く可能性が高まるのです。働き方の見直しのほか、キャリアアップ支援ややりがいの創出など、これまで以上に人材課題に対する対策が必要となっています。

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業務内容に関する課題

業務内容に関して、社内の生産性や技術力の向上も、多くの企業で課題とされています。生産性や技術力は企業の利益に直結する要素です。しかしながら、日本は、世界のなかでも労働生産性が低いと言われています。その理由には、業務効率化が進まないことや長時間労働が横行していることなどが挙げられるでしょう。また社内での教育制度が構築されていないことで、社員がスキルアップできずに技術力が不足している場合もあります。

生産性や技術力の向上に向けた手段の一つとしては、IT技術の活用が挙げられます。IT技術を活用することで業務の効率化が進み、人手不足の解消も期待できるでしょう。

また、働き方の改善やスキルアップ支援といった制度の充実も大切です。技術力が向上するだけでなく、社員のエンゲージメントを高めることで日々のパフォーマンスが高まり、生産性アップにもつながります。

顧客満足度やブランド力の向上

顧客満足度とは、顧客がサービスや製品に対してどれほど満足しているかを示す指標です。またブランド力とは、商品やサービスが持つ価値や認知度を表す言葉です。

どんなに高性能な製品を作ったとしても、顧客のニーズを満たしていなければ購入してもらえませんし、ブランド力がなければ認知されません。顧客満足度やブランド力を高めることで、知名度向上やリピーターの確保などが期待できます。

しかしながら、顧客満足度やブランド力は、短期間で簡単に高められるものではありません。長期的な視野を持って顧客や社会のニーズを分析し、顧客に求められるサービスの構築やPRを行う必要があります。

コストに関する課題

企業が活動するためには、さまざまな経営コストが発生します。商品の製造に関わる費用のほか、家賃や水道光熱費などの固定費、給与や賞与手当などの人件費、そのほか備品購入費や採用コストなどがかかります。いくら売上があっても、経営コストが高ければ利益になりません。利益を高めるためには、余分なコストの削減が必要です。

しかし、強引にコスト削減を進めると、従業員に不満が募る可能性があります。コスト削減には社員の協力が不可欠です。社員の理解を得たうえで進めなければなりません。

たとえば、人件費削減のためにリストラを行うよりも、長時間労働の是正を行うことで、残業代の削減に加えて生産性向上が期待できる場合があります。企業の現状を洗い出し、よく分析をしたうえでコストの削減施策を行いましょう。

技術力・開発力の強化

市場競争が激化するなか、他社と差別化して優位に立つためには、技術力や開発力の強化も不可欠でしょう。技術力・開発力を伸ばすためには、スキルアップを従業員個人に委ねるのではなく、会社側からの支援が求められています。社員のスキルアップを支援することで、会社に技術力が還元されることに加え、社員のエンゲージメントが高まり、定着率アップも期待できます。また、副業人材やフリーランスも増加しているため、社内に足りないリソースを外部人材で補うことも有効でしょう。

近年はIT業界に限らず、あらゆる業界においてAI化やデジタル化が進んでいます。今後もIT技術のさらなる発展が予想されているため、エンジニア以外の従業員もITスキルを高めることで、自社サービスの発展につなげられるでしょう。

営業力や販売力の強化

製品やサービスを売るためには、営業力や販売力も高めなければなりません。営業や販売に必要な能力としては、傾聴力や提案力、交渉力などさまざまあるものの、営業力は属人化してしまうケースが珍しくありません。個人の能力に委ねるのではなく、企業全体としての営業力・販売力を伸ばす施策が必要です。

営業力・販売力向上に向けた施策として、社内でのナレッジ共有や教育・研修制度の確立を進めましょう。目標やビジョンも共有しながら、組織で一体となって営業力を伸ばすことが大切です。

企業が陥りやすい経営課題の見つけ方

自社の経営課題はどのようにしたら見つけ出せるのでしょうか。ここからは、3つの経営課題の見つけ方を説明します。

経営資金や組織状況の可視化

経営課題を見つけるために、まずは経営資金や組織状況を正確に把握しましょう。

売上やコストを数値やグラフで可視化し、自社の資金状況が明確になれば、コストや利益率など、自社の課題の所在が見えてくるはずです。

また人員配置や社内体制に関しても、定期的に整理することが大切です。各部署の人数は適正か、社員の能力を活かせる配置ができているかなどを確認し、最適化を目指します。組織状況を分析する際は、社員に対してアンケート調査やヒアリングを行うことで、現場の現状をより詳細に把握できるでしょう。

業務フローや評価制度の確認

業務フローや評価制度も一度見直しましょう。

属人化している業務があれば、改善することで業務効率を高めることができます。また単純作業をデジタル化することで、余分な人員や作業時間を削減できるはずです。業務の棚卸をしたうえで、フローの最適化を目指しましょう。

さらに、評価制度が適切でなければ、社員のエンゲージメントが低下してしまいます。社員の成果や行動を公平に評価する評価制度の構築に努めましょう。

適したフレームワークの活用

経営課題を見つけるためには、フレームワークの活用も有効です。

経営課題を見つけるフレームワークとしては、後に詳しく説明するSWOT分析やロジックツリー、MECEなどがあります。フレームワークを活用するメリットは、経営課題を客観的に分析できることです。また、課題の抜け漏れを防ぐこともできます。

フレームワークを用いると課題が整理しやすくなるため、的確かつスピーディーに課題解決を行うことができるでしょう。

経営課題の解決策

続いて、経営課題の解決策とそのポイントを解説します。

新たな経営計画を立てる

経営計画とは、企業のビジョンや目標を設定し、具体的な戦略を取りまとめた計画書です。経営課題解決に向けて、現状の課題を分析し、新たな経営計画を立てましょう。

経営計画には、経営理念や中長期的な事業戦略、キャッシュフロー計画などが詳細に明記されます。経営戦略を立てることで、組織が目指すべき方向性が定まるため、組織の求心力を高められるでしょう。また、経営戦略を開示することで、企業の将来性を社内外に示すことができます。従業員だけでなく、社外のステークホルダーからの信頼獲得の効果も見込めるでしょう。

経営戦略とは?定義や種類・事例、フレームワークを解説

社内の環境を見直す

経営課題の解決のためには、評価制度や労働環境など、社内環境の見直しも重要です。

評価制度は従業員のモチベーションやエンゲージメントを左右する要素です。もし成果に対して適正な評価がされなければ、従業員のやる気が低下し、生産性の低下や離職を引き起こす可能性が生じます。評価基準を明確に設定したうえで、公平な評価制度を整えましょう。

また、長時間労働の是正や育休制度の整備、リモートワ―クの導入など、社員が働きやすい労働環境に整えることも大切です。制度面に加えて、インフラ設備に不備がないかも確認し、労働環境を改善しましょう。

社員の増員や教育を行う

市場におけるシェア拡大が課題の場合、社員の増員や社員教育が効果的です。

たとえば新たに新規出店やエリア拡大をしたい場合、必然的に人員が必要です。増員を行って事業を拡大することで、知名度向上にもつながるでしょう。また、サービスの質を高めたい場合には、社内でのナレッジ共有や外部研修などで、社員教育でスキルを高めることが有効です。一人ひとりのスキルを伸ばすことで、高いパフォーマンスを発揮できるようになり、サービス向上につながるでしょう。

そのほか、1on1や社内研修などによるサポート体制を充実させることは、スキルアップだけでなく、従業員の悩みを早期に解決できるため、離職を防げるメリットもあります。

優先順位を明確にする

経営課題の解決を成功させるためには、優先順位を明確にすることが大切です。企業の経営課題が複数個ある場合、手当たり次第に取り組んでも、中途半端に終わってしまったり、目標達成まで時間がかかってしまう可能性があります。優先順位を付け、一つ一つ着実に課題を解決しましょう。

優先順位を付ける際は、緊急性が高いか、重要度が高いかで判断します。以下の順番で取り組むとよいでしょう。

  1. 緊急性も重要度も高い課題
  2. 重要度は低いが緊急性が高い課題
  3. 緊急性が低いが重要度が高い課題
  4. 緊急性も重要度も低い課題

緊急性が高く、かつ重要度が高い課題から順番に解決していきましょう。

経営課題の把握や解決に役立つフレームワーク

ここでは経営課題の把握や解決に役立つフレームワークを5つ紹介します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ロジックツリー

ロジックツリーとは、課題を細分化して、原因や解決を探すフレームワークです。樹木が枝分かれする様子に見立てて名付けられた思考法です。課題に対する要素を細かく掘り下げられることに加え、課題の全体像を客観的に把握できるため、論理的に解決方法を見つけられるでしょう。

ロジックツリーは、目的に応じて以下の種類に分けられます。

  • Whatツリー(要素分解ツリー)
  • Whyツリー(原因追及ツリー)
  • Howツリー(問題解決ツリー)
  • KPIツリー

ロジックツリーの効果を最大化するためには、目的を明確にすることが大切です。また、次に紹介する「MECE」を意識し、漏れなく要素を分解しましょう。

ロジックツリーとは?種類別の作り方や具体例・活用するメリットを解説

MECE

MECEとは、課題分析や要素整理の際に漏れや重複なく考える思考法です。MECEは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、直訳すると「互いに重複せず、全体で漏れがない」という意味になります。

MECEは、アメリカの大手コンサルティング会社・マッキンゼー・アンド・カンパニーにおいて使用されていた概念です。ロジカルシンキングの基本であり、経営課題解決に限らず、ビジネスシーンにおいて活用されています。

経営課題解決において、MECEを意識して課題の要素を分析することで、より的確な解決策を考案できます。

MECE(ミーシー)とは?論理的思考法のフレームワークを具体例をわかりやすく解説

プロセスマップ

プロセスマップとは、シンボルや記号を用いながら業務のプロセスを視覚化するフレームワークです。プロセスマップを作成することで、業務フローの全体像が把握できます。また、無駄なプロセスが生じていないかを見つけやすく、業務の効率化に役立つ手法です。

プロセスマップを作成する際は、視覚化したい業務を特定したうえで、フローを書き出します。この際、業務に関係するメンバーとブレインストーミングを行いながら確認することで、漏れなく正確なマップを作成できます。マップが完成したら課題を分析し、改善を図りましょう。

プロセスマップは手書きでも、ExcelやPowerpointなどで作成しても構いません。Web上には、目的に応じたプロセスマップのテンプレートも公開されているので、参考にするとよいでしょう。

SWOT分析

SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境を洗い出し、分析するフレームワークです。SWOTとは、以下の頭文字から名付けられています。

  • Strength(強み):自社の強み
  • Weakness(弱み):自社の弱み
  • Opportunity(機会):自社にプラスとなる外的要素
  • Threat(脅威):自社にマイナスとなる外的要素

内部環境は社内について、外部環境は社会情勢や競合他社の動向などについてを指します。内部環境と外部環境の強みと弱みを洗い出すことで、現状を正確に把握できるでしょう。

各要素を洗い出した後は、要素を掛け合わせて解決策を見つける「クロスSWOT分析」により戦略を考えます。

SWOT分析とは?目的ややり方・具体例からわかるメリットを解説

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、事業の工程を可視化し、各工程にどのような価値があるかを分析するフレームワークです。事業は大きく、主要活動と支援活動の2つに分類されます。主要活動とは、原材料の仕入れから販売・アフターサービスまでの直接的な事業活動、支援活動は、人事や技術管理などの間接的な事業活動を指します。そして、主要活動と支援活動をさらに細かく分類していき、各工程を分析します。

バリューチェーン分析は、以下のステップで行います。

  • 事業の工程を洗い出す
  • 各工程のコストを整理する
  • 強み・弱みを分析する
  • VRIO分析を行う

VRIO分析とは、自社の経営資源の優位性を分析する手法です。以下の4つの観点から評価・分析を行います。

  • Value(経済的価値)
  • Rarity(希少性)
  • Imitability(模倣可能性)
  • Organization(組織)

バリューチェーン分析を行うことで、各工程の課題解決や、強みの確認を行うことができます。利益を最大化を図るうえでも効果的なフレームワークです。

経営課題について理解を深めて変化する環境に対応しよう

経営課題の要因や解決に役立つフレームワークなどを紹介しました。不確実性が高い現代において、企業は柔軟に課題解決に取り組む必要があります。今後も長く企業を存続させるため、経営課題についてよく理解し、変化する環境に対応していきましょう。

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ビズクロ編集部
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