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カルチャーを浸透させてチームワークを発揮 「浸透」のキーを握った独自の“シナプス組織論”

取材日:2023/03/17

「労働力不足を解決し 人と企業を豊かに」をビジョンに掲げ、幅広くSaaS事業を展開する株式会社うるる。カルチャーを浸透させる仕組みづくりや、チームワークを発揮するための組織体制についてお話を伺いました※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 小林伸輔さん

    小林伸輔さん

    株式会社うるる

    取締役/Chief Culture Officer

  • 秋元優喜さん

    秋元優喜さん

    株式会社うるる

    執行役員CHRO兼人事部長

  • 野里彩さん

    野里彩さん

    株式会社うるる

    人事部労務管理課

この事例のポイント

  1. カルチャーと戦略の純度を保つ独自の「シナプス組織論」

「シナプス組織」でカルチャーを浸透させる

御社は、企業理念をどのように育んでいらっしゃいますか?

秋元:企業理念やビジョンを実現するために「うるるスピリット」を掲げていて、「会社はホーム、社員はファミリー」などの価値観があります。ただ会社の規模が大きくなるにつれて創業時の想いやカルチャーが薄まってしまうのではないかと、代表の星(知也氏)が危機感をもつようになりました。

カルチャーが薄れる危機感とは、例えば、どのようなことでしょうか?

秋元:具体的には、自分が所属する組織を良く思えなくなったり、仕事にやりがいを感じなくなったり、あるいは、組織内の出来事に無関心になってしまうということだと思います。

そこで生まれたのが、独自の「シナプス組織論」でしょうか。

小林:そうですね。100人、200人という組織へと成長するうえでは、代表が社員一人ひとりの顔を見てコミュニケーションを取ることが難しくなる状況は避けられません。

では、その中でスピリットやカルチャーの浸透スピード、そして純度を保ちつつ「理想の組織」を実現するには、どうしたらいいのか、を考えた時に生まれたのが「シナプス組織論」です。

カルチャーや戦略が“高純度”かつ“スピーディ”に浸透する仕組み「シナプス組織論」。※画像はシナプスブック(P15〜16)より引用

具体的には、どのような仕組みなのでしょうか?

小林:シナプスは、体の中で神経細胞間の情報伝達をする構造を指す言葉ですが、「シナプス組織論」は、カルチャーと戦略の両方を高純度、かつ、スピーディーに組織へと浸透、伝達させるための仕組みです。

具体的には、社長から役員、役員からマネージャー、マネージャーからメンバーというように伝達されていく仕組みをイメージしてもらうと良いかと思います。

うるるで働く意義や、そもそもなんのために働いているのか、うるるの社員としてどうありたいかといったカルチャーのほか、目標を達成するために取るべき行動などが高純度で伝達されていき組織全体へと広がっていきます。また伝達の方向性は、マネジメント層からメンバーだけでなく、メンバーからマネージャー、マネージャーから経営層へカルチャーがフィードバックされることも含んでいます。

この「双方向の関係性」は、細胞が中心にあって、脳から指示を出して手足が動いたりする一方で、熱いものにさわれば脳より先に体が反応するという関係をイメージしてもらうといいかなと思います。

「シナプス組織論」の中には、「コア」「コアラ―」という表現が登場しますが、どのような意味でしょうか?

小林:シナプスから連想して神経の中心である「コア」をマネージャー、「コアラ―」を社員と設定しています。ちなみに、「コアラ―」とは、安室奈美恵さんのファン名称を指す「アムラー」にかけた造語です(笑)。

社内ハンドブック(シナプスブック)を拝見すると「コア」や「コアラ―」の役割などがイラスト付きで解説されていて、とても分かりやすかったです。

小林:そうした社内ツールや入社時に行うカルチャー講習会により、カルチャーを効率的に伝達できるようになりました。また、普段から積極的に社内の取り組みをブログで発信しているおかげで、カルチャーに共鳴して頂いた方々が当社へ応募してくれるなど、採用前に当社のカルチャーへの解像度を上げる意味でも役立っており、採用選考がスムーズに進むといったメリットも感じています。

カルチャーを「机上の空論」にはしない

カルチャーを浸透させるために最も重要なことは何でしょうか?

秋元:トップのコミットメントが一番大事だと思います。理念やカルチャーを浸透させるための取り組みは、業績に直結する取り組みではないこともあり、発案者が誰であっても、経営層が重要性を理解し、同じ方向を向いていなければ二の次になってしまいがちです。

また施策は継続することが最も重要です。当社では働く環境の改善を目的とした従業員満足度調査の「ロケットアンケート」を2011年から7年間、そして外部の専門サービスに切り替えて「エンゲージメントサーベイ」を2018年から現在まで継続しています。組織を改善するための見える化として、「エンゲージメントサーベイ」の結果は全社員に開示しています。

エンゲージメントサーベイは、会社にとってどのようなメリットがありますか?

秋元:エンゲージメントのスコアが低いこと自体が問題というより、会社としてそのような状態にあることを知っておくことに意味があります。組織をよくするために「エンゲージメントサーベイ」で従業員の状態を数値化し、そのスコアを形成している社員自ら「エンゲージメント向上委員会」で改善のアイデアや対策を考えてもらっています。

より強固な「シナプス組織」に向けて

「シナプス組織」の実現に向けた、そのほかの取り組みなどはありますか?

小林:「シナプスサーベイ」と呼んでいる社内調査を定期的に行い、当社が大切にしている価値観の達成度合いを数値化しています。

ここでは、数値的な結果のモニタリングも大事ですが、特に社員とマネージャーの回答にギャップがある項目を重要視していますね。

例えば「信頼関係が構築できていますか?」という質問に対し、マネージャーはできていると思っているけど、社員はできていないと思っているようなケースがあります。そのようなギャップを中心に、「シナプスサーベイ」の結果を社員とマネージャーで振り返り、ギャップを埋めるための対策を話し合います。さらに、そこで話し合った内容を元に今度はマネージャー同士で対話会をし、課題やナレッジの共有会を行います。そして、年間で最も優れた行動・振舞いを行ったマネージャーを表彰する「シナプスアワード」を設け、賞賛し評価する仕組みも取り入れています。

社員とマネージャー間のギャップは、例えばどのようなものでしたか?

小林:やはりコミュニケーションに関する問題が一番多いですね。十分なコミュニケーションが取れているのかという認識にギャップがあり、社員としては、マネージャーが忙しすぎて1対1で相談する機会が少ないという声がありました。

「シナプス組織論」を運用することでマネージャーなどのリーダーにも変化はありましたか?

小林:意識の変化が大きかったです。ビジョンやカルチャーの伝達を経営層任せにするのではなく、責任をもって社員に伝えていくようになったと思いますね。

会社としても年間4回の全社イベントを行い、カルチャーの浸透に努めています。例えば1月に開催される「アドベンチャーカップ」では挑戦することをテーマに掲げ、その年に挑戦したことを全社員の前でプレゼンする機会を設けています。また4月の「うるフェス」では「会社はホーム、社員はファミリー」というカルチャーを様々な企画を通じて社員に体感してもらいます。すべてのイベントで社長によるスピーチをおこない、なぜ「うるるスピリット」を掲げているのか、目的達成のためにどのような戦略をとるかということを繰り返し伝えています。

会社はホーム、社員はファミリー

社内コミュニケーションの活性化として、取り組まれていることはありますか?

秋元:2018年に入社した新入社員の提案により、所属部署の枠を越えて交流する「うる部」という、いわゆる部活動のような制度を設けました。

うるるスピリットの1つに、「会社はホーム、社員はファミリー」というものがあるのですが、近年、対面のコミュニケーションをとる機会が少なくなりがちな中でも、部署の壁を越えた活動により、文字通りファミリーのような一体感のある組織になれていると思います。

「うる部」ではどのような活動がありますか?

秋元:野球部やフットサル部などのスポーツ系から歴史部やキャンプ部にいたるまで、様々な部活動があります。「うる部」がなければ飲み会以外で社員が集まる機会も少ないですし、ビジネス上の付き合いだけでは分からない人となりを知ることができます。

事業内容にも通じるのですが、「機会を提供する」ことを大切に考えているからこそ生まれた施策だと思います。

チームとして生産性を高める働き方

働きやすい環境づくりについては、どのように取り組まれていますか?

野里:働き方の面では、始業・終業時間を調整できる時差勤務制度があります。この時差勤務制度は短時間勤務制度を組み合わせることもできるので、育児と仕事の両立がしやすい環境づくりにつながっていると思います。働く時間の選択肢を増やすことで、様々なご家庭の事情に対応できます。

フレックスタイム制度ではなく時差勤務制度を選んだのはなぜですか?

秋元:当社はチームで働く場面が多いので、フレックスタイム制度で各自の働く時間がばらばらだと生産性が落ちてしまうという懸念がありました。

ただ、臨時的に勤務時間をずらせる「時差勤務スポット」というフレックスタイムに近しい制度も用意しています。

働き方に関する社員の声や要望はあったのでしょうか?

秋元:「働き方の自由度を高めたい」という声が多く、コロナ禍以前の2018年からテレワークのトライアルを始めました。

ただ、本格的に在宅ワークが進むにつれ、特に新入社員がマネージャーに質問しにくかったり、孤独を感じたりするような問題が発生したのも事実です。対策として、新入社員が配属された部署は育成担当の社員や上長にも出勤してもらうようにするなどの工夫をしました。また在宅勤務でも生産性を確保できるように、外部サービスを活用してデスクや通信機器などの作業環境を雇用形態に関わらず提供しています。

カルチャーを実践して社員と共に成長する組織へ

企業理念を組織の成長に結びつけるために実践させていることはありますか?

秋元:人事評価制度のベースを弊社のバリューである「うるるスピリット」にすることで、仕事のパフォーマンスに結びつけています。

例えば「会社はホーム、社員はファミリー」という価値観は、業務でのコンピテンシー(能力要素)としては、「チームワーク」と「コミュニケーション」として評価項目を設定したり、「当事者意識をもって納得して働く」という価値観は、PDCAのような課題解決力として評価項目設定するなどですね。さらに、それらの能力要素を実現するための発揮行動の具体的な内容も言語化していますので、どのような行動をとれば「うるるスピリット」を実践しながら業績を上げられるのか分かる状態にしています。

能力や行動に対する定性評価と、売上目標などの定量評価はそれぞれどのように位置づけていますか?

秋元:定性評価は給与、定量評価は賞与に反映しています。人事評価の真の狙いは、社員を査定することではなく、社員の成長を促すことですので、単純に売上目標を達成すればいいということではありません。

「うるるスピリット」に沿って成果を出すための行動をとれているかを最も重視しています。「うるフェス」など全社的なイベントでカルチャーを継続的に浸透させることも大切ですが、日々の業務の中でカルチャーを体現できるようにするには、人事評価制度などによる定期的な振り返りが重要です。幸いなことに年々組織が拡大していますが、どれだけ会社の規模が大きくなっても、当社のカルチャー浸透における純度は守り抜いていきたいですね。

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