楽しさと成果を両立させる営業体制の仕組みと工夫 営業力を底上げする、情報共有とコミュニケーション

取材日:2023/04/05

クラウド営業支援ツールを提供している、株式会社マツリカ。オンライン・オフラインの営業手段が混在する中、効率的に業務をすすめる工夫や、コミュニケーションを活性化し、働くことをポジティブに楽しむ取り組みなどについてお話を伺いました。※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 山本剛義さん

    山本剛義さん

    株式会社マツリカ

    CRO

  • 高橋宏明さん

    高橋宏明さん

    株式会社マツリカ

    Small Field Sales Division/Division Manager

この事例のポイント

  1. ツール活用で属人化しがちな営業ノウハウを共有、チーム力を底上げ
  2. 部活動による縦・横・ナナメの関係構築が事業推進にも貢献

オンラインと対面、それぞれの特徴を把握し商談でも工夫

御社の働き方として、いつ頃からテレワークを導入しているのでしょうか?

山本:当社は、出社に関して特に細かいルールは決まっておらず、創業時からそれぞれの裁量に任せた働き方になっていますし、テレワークも当時より必要に応じて実施していました。

そのため、テレワークを「導入した」という感じではなく、それまでも実施していたテレワークをコロナ禍もあって運用を見直し、一時的にフルリモート体制をしいたという形です。

現在は、コロナが5類感染症移行となったこともあり、基本的にオフィス勤務を適宜交えた働き方に変わってきています。

例えば、週2日出社する部署もあれば週5日全て出社と決めている部署もあるなど、バラバラですね。部署によって、業務内容に合わせて、出社頻度を決めています。

商談自体は全てオンラインで実施しているのでしょうか。

高橋:案件によって変わりますね。訪問しての対面営業とオンライン、それぞれ必要に応じて使い分けています。

ご経験から、オンラインでの商談とオフラインでの商談、それぞれのコツや進め方の違いなどはあるでしょうか。

山本:私が感じているのは、オンラインの場合は、オフラインのとき以上に、より細かく確認を入れる必要があるということです。

実際にお客様にお会いする場合は、表情やその場の空気感で、相手に伝わっているか、理解してもらえたかどうかを感覚的につかめるのですが、画面越しだと、そういうものを感じづらいなと思っています。相手に伝わっていると思い込んで進めてしまわないように、例えば資料でご説明する際でも、「ここまで大丈夫ですか?質問はありませんか?」という確認を、対面では5ページに1回、オンラインだと2ページに1回にするなど、具体的に細かい確認を入れるよう意識しています。

高橋:私の場合、なるべくキーパーソンとなる方の表情や参加いただいた方の関係性・役割などをしっかり観察するようにしています。

しかし、オンラインで相手方が一つのカメラで全員を映す設定だと、映っていない方がいたり、誰が話しているのかがわからない時があります。そういった場合は、丁寧な観察が難しいので、次回の商談や打ち合わせを直接訪問の営業に切り替えるなど、柔軟に対応するようにしています。

ツールを活用し業務効率化、情報共有でチーム力の底上げも

オンライン・オフラインが混在する中で、営業業務の効率化や生産性アップのために工夫している点はなにかありますか?

山本:まず、当社が提供している営業支援ツールである「Senses(センシーズ)」を、自分たちも使い倒すようにしています。このツールは、営業の案件・顧客管理や、組織のナレッジ活用ができる営業支援ツールで、上司と顔を突き合わせて案件の進捗確認をしなくても、どの案件に今注力すべきなのか、優先順位を明確にすることができます。

優先順位をつけて今やるべきことが明確になるということは、同時に今やらなくていいことも明確になるため、無駄を省くことにつながります。各メンバーが使うことで、全社的な生産性を向上させることに直結していると感じています。

高橋:私にとってもSensesは欠かせないツールになっています。人間ですから整理しておく仕組みがなければ、忘れてしまうこともあります。自分の場合は特に、案件数が増えてくると頭の中で整理するだけでは、余計な確認作業が増えてしまい、生産性も下がってしまいます。そういう時もツールを使えば、整理して全体を把握できるので、Sensesが今では仕事の相棒のような存在ですね。

他にも、商談を録画するツールなどを導入して、自分の商談の振り返りや他のメンバーの商談を確認できるようにするなど、スキルアップやナレッジ共有、フィードバックなどに役立てています。メンバーの商談を見てアドバイスすることもありますし、この人のこの資料を使ったトークがすごくいいから見てごらん、とチームで共有することもありますね。

僕は立場上、メンバーの商談に同席することも多いのですが、人によってはそうした機会が少ないメンバーもいます。他の人の商談を映像で見ることで、大きなインプットの機会にもなっているようです。

なるほど。そういったノウハウなどを、営業チームの皆さんで共有する仕組みなどはあるのでしょうか。

高橋:週次でセールス部署の定例があるので、そこを共有の場にしています。それから、チームとしても週に一回、必ずみんなで話をする時間を30分は設けるようにしています。特にテーマは決めず、めっちゃこのトーク刺さったぞとか、最近こんな情報仕入れたぞといった情報共有から、こういう案件のときにどうしますか?、みたいな質問など、何でもよいので現場ならではの情報共有や疑問解決の場にしています。

先ほどの商談録画の共有もそうですが、それぞれの経験や情報を密に連携することで、組織としての営業力の底上げができていると思います。

部署により出社日が異なるということでしたが、全社的なコミュニケーションの促進のために、なにか行っている取り組みはあるでしょうか?

山本:特にコロナの間は、なかなか直接会うことができなかったこともあり、毎週金曜日の17時〜18時に全社員が集まるオンライン会議を行っていました。ここでは会社のミッションや理念、実現したいことをテーマにしたワークショップを開いたり、経営層や部門長、メンバーからの発信をもとにディスカッションしたりしています。

コロナ禍を経て、この会議体自体もオフラインに変わってきているというのが最近の嬉しいニュースの一つですね。

それから、コロナ禍に入社したメンバーの中には、他部署だけではなく自分の部署のメンバーとも直接顔を合わせたことがないという人もいます。親睦を深める意味で、部署同士が月1回交流する制度を設けています。飲み会だったり、ランチだったりと方法は様々ですが、それぞれ交流を深めるための工夫をしていますね。

垣根を超えた部活動が組織内の相互理解を促進

社員同士の親睦を深めるという点でいうと、ほかにも部活動があると伺いました。こちらはどのような内容なのでしょうか?

山本:仕事とは直接関係のない趣味の分野で、アウトドアからインドアまで、いろいろな種類の部活動のようなコミュニティを社員同士がつくっています。それぞれ部ごとに会話をするチャット部屋があって、情報交換をしたり、時にはオフラインで集まったり、それぞれで自由に活動している感じですね。

社員のみなさんで、そうした部に参加している方は多いのでしょうか。

山本:強制ではないのですが、ほとんどの社員が何らかの部に入っています。ちなみに、私はサウナ部、ゴルフ部、格闘技関連の部、それから美容部に入っています(笑)。

美容部では、お肌のケアや、コンディションを整えるための情報交換が盛んです。ちなみに、美容意識が高い人が興味を持つ分野なのか、美容部とサウナ部を掛け持ちしているメンバーは結構多いですね。

高橋:私は、園芸部に入っています(笑)。特に園芸に興味があったわけではないのですが、3歳になる息子がイチゴが大好きなので、育てて一緒に食べたいなと思って入りました。今こんなものを育てていますとか、お花が咲きましたとか、和むような会話がグループチャットで頻繁にやり取りされています。

出社するのが楽しくなりそうですね。

山本:私は今大阪にいて、月に数日東京のオフィスへ行くのですが、業務上だけではないつながりができることは、コミュニケーションの円滑化に役立っていると実感しています。もちろん仕事で行くので、業務が第一なのですが、それ以外でも部活のメンバーに会って趣味の話で盛り上がるのがとても楽しいです。会社に行くと誰かがいるというワクワク感があります。

そうした普段仕事を一緒にしないメンバーとのコミュニケーションを活性化することで、業務にプラスになっていると感じる点はありますか?

山本:たくさんありますね。例えばHRとプロダクト開発は、通常の業務ではなかなかコミュニケーションが発生しづらい部署になるんですが、部活動などを通じて仲良くなることで、自然とお互いの部署の仕事に対する理解が深まっています。他部署が普段どんな仕事をしているか知ることで、人事としてこういう支援が必要なんだなとか、こんな視点でのプロダクト開発が求められてるんだといった気づきが生まれたり、業務に対して普段と異なる視点からのフィードバックが得られる場にもなっているんです。

実際に自分が出社した際にも、自部署のメンバーだけではなく、他部署のメンバーと和気あいあいとコミュニケーションをとっている姿をあちこちで見かけます。交流会や部活動など、部署を超えたコミュニケーションを活性化させる制度が、組織にもプラスに作用しているなと感じていますね。

成果の達成と自由な働き方、両立に必要なものとは

オンライン、オフラインを併用する中で、社員の働き方に関して今後注力していきたい点、取り組んでみたい施策などはあるでしょうか?

山本:社内には、海外に住んで仕事をしているメンバーも何人かいます。彼らがその土地でしか得られない情報を製品に還元したり、時差をいかしたお客様対応だったり、営業の支援をしたりしていて、海外にいることを生かした働き方をしているんです。今後も、住んでいる場所に関わらず、その人それぞれの能力が発揮できるような業務の割り振りや、体制づくりというのを意識しながら進めていきたいなと考えています。

海外にいらっしゃる方の勤怠管理はどうしているのでしょうか。

山本:他の社員と同じように、打刻をしています。うちはフルフレックスなので、それぞれどこで働くにしても、決められた勤務時間を満たしていれば問題ないという考え方です。現在はドイツ、アメリカ、オランダに社員がいて、元々海外に住んでいて採用になった人もいますし、入社後に海外にいった人もいます。

高橋:働き方に関して私が今後やりたいことは、個人的なミッションになるのですが、ワークライフインテグレーションを会社で一番体現している社員になるということです。ワークライフインテグレーションとは、仕事もプライベートも人生の一部であると定義し、両輪を回すことで人生が豊かになるという考え方です。

私は3年前に入社したのですが、この会社に入る直前に息子が生まれました。当社はその当時からワークライフインテグレーションを発信していて、その考え方に惹かれたというのも入社を決めた理由の一つなんです。なので、子育てにしっかり関われるライフスタイルを実践できたことが、仕事や会社に対するエンゲージメントを高める要素になったことは確かです。これからも自分が率先してワークライフインテグレーションを実践することで、イキイキと仕事ができるメンバーを増やしていきたいですね。

ワークライフインテグレーションを実現するために、何か具体的な制度はあるのでしょうか?

高橋:当社の代表は、ルールによるマイクロマネジメントを好まないということもあり、「制度」としてはないですね。もちろん部署やチームでの一定の統制やコミュニケーションは重要ですが、細かい制度やルールで管理するよりも、セルフマネジメントによって事業成長に向けた目標達成とプライベートの充実を図るのが、理想の状態なのではないでしょうか。

それぞれの人生観にあった働き方を提供する場合、一方で働き方の多様性を履き違えてしまうようなケースが出てくる懸念はないでしょうか。大きく逸脱するリスクをなくすために、多様性を考える上での基準みたいなものを設けるなど、何か取り組んでいることはありますか。

山本:特に、基準を設けるようなことはしていません。先ほどもお伝えしたように、あまりルール化したくないという代表の意向もあり、できるだけ個の意思を尊重したいと思っているんです。

ただ、部署と個人の目標設定は明確にしています。その上で、目標達成までの方法はできる限り自主性に任せる、という考え方です。ゴールがはっきりと言語化されていれば、進む方向のブレはなくなりますし、組織の一体感を失うといったリスクを排除しつつ、働き方の自由度を上げることは可能だと考えています。

当社は、創業時からずっと「お互いを認め合う文化」を大切にしているので、働き方の多様性の高さは、“マツリカらしさ”でもあります。仕事は1人でできるものではありません。情報を共有して、コミュニケーションを取って、仲間と働くことが楽しいと思える会社にしていきたいですね。

次に読みたいおすすめ事例

ビズクロ編集部
「ビズクロ」は、経営改善を実現する総合支援メディアです。ユーザーの皆さまにとって有意義なビジネスの情報やコンテンツの発信を継続的におこなっていきます。