基本給とは?給与や手取りとの違いは?低い場合のデメリットも解説
給料計算における基本給について解説します。固定給や月給、俸給、手取り給与といった基本給とは違う言葉も耳にすることがあるでしょう。こうした給与計算においてよく聞くいくつかの給与の違い、さらに給与計算における基準内賃金や基準外賃金、さらに基本給決定の仕組みなども紹介しています。給与計算の基本給について知っておくべきことを詳しく解説しているので理解を深めていただけたら幸いです。
目次
給与計算における基本給とは
給与明細を見ると「基本給」という項目があります。基本給をどう決めるかは企業によってさまざまです。年齢や勤続年数によって決める企業もあれば、年度ごとの評価で決定する企業もあるでしょう。
いずれにしても、給与はこの基本給に資格手当や住宅手当などの各種手当をプラスし、社会保険や所得税、市県民税などを控除した金額で支給します。
基本給が高いからといって支給額も高いということはなく、基本給が低いから支給額が低いということもありません。給与計算では、基本給は給料のベースとなる金額と考えるのが一般的です。
基本給と給与計算でよく聞く4つの給与との違い
基本給のほか、給与計算でよく聞く4つの給与があります。固定給・月給・俸給・手取り給与です。これら4つの給与はどういうものなのか、違いは何かをここで解説します。
固定給との違い
固定給は時間・日数・月といった単位ごとに毎月決められた金額を支給する制度です。通勤手当や住宅手当といった毎月変動がない手当も含んだ給与となります。
固定給には残業手当など「毎月変動する」手当は含まれません。基本給も毎月決まった金額となりますが、基本給には諸手当が含まれていないため、基本給と固定給を比較すると固定給の方が高くなることが多いでしょう。
月給との違い
月給(額面給与とも呼ばれます)は基本給に各種手当をプラスしたいわゆる「総支給額」です。残業代や休日出勤には割増賃金が支給され、毎月変動があります。
通勤手当などは毎月変動のない手当ですが、こうした手当を全て含んだものが月給です。就職・転職サイトに掲載されている給与の場合「月給」であることが多く、実際に支給される「手取り」金額とは違うため注意しましょう。
俸給との違い
俸給というのは「国家公務員」に支給される給与です。国家公務員の給与については職務、等級で給与金額が定められています。民間企業の給与の中でいえば、俸給は「基本給」と同等の意味です。
手取り給与との違い
毎月支給される給与は、基本給に各種手当をプラスし、そこから社会保険・税金などを控除した金額です。実際に手にする金額を「手取り給与」といいます。
手取り給与は一般的に月給の7割、8割くらいです。就職・転職求人サイトなどに掲載されている給与は「月給」であることが多いため、実際には低くなることを考慮して見なければなりません。
基本給に住宅手当や通勤費、残業代や休日出勤手当といった手当を加え、健康保険料や厚生年金といった保険料、所得税、市県民税などの税金が控除された金額となるため毎月変動します。
給与計算における基本給は基準内賃金
給与は基本給が軸となり、そこに各種手当や控除があり決定するのが手取り給与です。基本給のほか手当は、残業や休日出勤といった毎月金額が変動する手当と、毎月変動しない手当で構成されています。
就業規則では毎月金額が変動する手当を「基準外賃金」と呼び、毎月変動しない手当を「基準内賃金」としていることもあるため、これについても理解を深めましょう。
基準内賃金
基準内賃金は手当の中で就業内容によって変動しない手当をさします。例えば従業員の能力、スキルによって決まる職能給や役職手当といった変動のない金額が基準内賃金です。企業によっては基本給を基準内賃金としているところもあります。
基準外賃金
「基準外賃金」は就業内容によって「毎月変動する手当」です。月によっては残業することや、休日出勤することもあるでしょう。
このような月によって変動する手当を「基準外賃金」といいます。このほか、住宅手当や家族手当も労働者それぞれの条件で支給されるため基準外賃金です。
就業規則で休日出勤・深夜残業といった割増賃金の算出基準額で「基準内賃金」を定めていれば、就業規則に書かれた基準内賃金以外は全て基準外賃金です。
給与計算における基本給が決まる仕組み
企業が決めた規則の中で一定期間働くことで、必ず支給となるのが「基本給」です。基本給は従業員それぞれで違いがあり、定め方も企業によって異なります。
給与計算の基本給をどのように決定しているのか、代表的なものを見てみましょう。
属人給
年齢や勤続年数、学歴などを元に基本給を決定するのが属人給です。日本ではこうした体制で基本給を決める会社が多かったのですが、最近は総合給・仕事給に変更する企業も多くなっています。
こうした年功序列・横並び型と呼ばれるシステムは、業務内容を重視するよりも安定したライフスタイルを送りたい方に向いているといえるでしょう。
高い業務成績であっても基本給で評価してくれる可能性が薄いため、給与に頑張りを評価してほしい人には不向きです。
仕事給
仕事の内容、役割が高く、業務の成果などによって基本給を決定するのが仕事給です。年功序列型の属人給とは違い、業務実績、成果が基本給に反映されるので、頑張った分だけ給与が高くなります。
欧米ではこうしたスタイルを取り入れているところが多く、現代の日本の企業も仕事給の考え方をもつ企業が増えつつあるようです。
総合給
総合給は仕事給と属人給を合わせた給与スタイルです。年功序列に加え、仕事への成果、会社への貢献度を評価に取り入れています。
古くから年功序列・横並び型が多かった中で、現在基本給の定め方として最も受け入れられている方法です。
給与計算で基本給に付与される手当
給与の中で基本給は従業員に支払う基本的な給与です。このほかに、従業員それぞれに各種手当がプラスされ、控除など行って支給額が決定します。
基本給に付与される手当とは何かしっかり理解しましょう。
時間外手当
日々の仕事の中で労働時間内に終了しない業務について、法定労働時間を超えて働く場合に支払われる手当を「時間外手当」といいます。
1日8時間、1週40時間の法定労働時間が時間外手当の対象です。法定労働時間を超えて支払われる時間外手当は、基本給を時給換算し、それに25%をかけて算出します。
休日出勤手当
日曜日など企業が法定休日としている日に出勤し業務を行った場合、休日出勤手当を支給する義務が発生します。
休日出勤手当は法律によって支払義務とされ、基本給を時給換算し、それに35%をかけて算出するものです。
深夜労働手当
業務を行っている中で納期などにどうしても間に合わず、時間外労働の中でも深夜まで働くこともあります。深夜労働に対しては、通常の時間外手当に加え、深夜労働手当の加算が必要です。
通常の賃金、時間外手当、休日出勤手当に対し、基本給を時給換算した25%をかけて算出します。深夜労働手当の対象となる時間帯は、午後10時から翌朝午前5時です。
例えば平日に深夜残業となった場合、時間外労働で25%割増賃金、さらに深夜労働で25%割増賃金となるので、基本給を時給換算したものに50%をかけて算出します。
仕事給的手当
仕事給手当には、以下の4つがあります。
- 役職・営業などの職務に関する手当
- 資格や技能など能力に関する手当
- 歩合・達成・無事故など成果に関する手当
- 皆勤・精勤など勤怠に関する手当
このように業務を軸にして算出される手当が仕事給的手当です。
生活給的手当
生活給的手当は生活を軸に支払われる手当です。従業員の生活を保障するといった意味で支給されるもので、以下2つに分類できます。
- 家族・住宅など私生活に関する手当
- 地域・単身赴任など転勤等に関する手当
このうち、家族手当や住宅手当など私生活に関する手当は、廃止する企業も出てきています。成果などを給与の軸としているところも多くなっている中、扶養家族と仕事に対する成果に関連性がないため、こうした手当は必要ないであろうという考え方から廃止の動きがあるようです。家族手当は支給しない、住宅手当は一律で支払うといったところも増えています。
転勤に関するものは私生活に関する手当とは違い、社員側の都合ではなく、会社都合によって生じることに対し支払われる手当です。単身赴任となると家族がある人なら二重生活になることもあります。
海外勤務であれば治安が悪いところや生活環境が整っていない地域もあるでしょう。こうしたハードシップも手当対象としている企業もあります。
基本給を含めた毎月の給与計算の内訳
基本給を含め毎月支給される総支給額にはさまざまなものが含まれています。具体的にどのような費用が含まれているのか、基本給を含む給与の内訳について解説します。
各種手当
役職・資格・家族手当、残業した際の時間外手当など、特定の条件にあてはまる従業員に対し支給される手当が各種手当です。基本給が低くても各種手当が多く、手取りが多くなることもあります。
健康保険料
病気やケガなどで病院を受診することや通院が必要なこともあります。場合によっては入院加療が必要なこともありますが、そういった医療費負担を軽減するために支払うのが健康保険料です。給与から控除という形で差し引かれます。
厚生年金保険料
会社員として働く人たちは加入が必須となる制度です。年齢が65歳に達した際に年金として支払われますが、年齢が65歳に達しなくても、例えばケガや病気で障害を負ってしまった際にも支給されます。
介護保険料
高齢化社会となり、介護保険を利用する高齢者も多くなっています。介護保険料は介護が必要となったときに保険料が支給されるよう、40歳以上の国民の義務となっている保険料です。
所得税
所得金額は人それぞれ違いがあります。所得金額に応じて支払う義務のある税金が所得税です。
住民税
住民税は都道府県民税と市町村民税を合算した税金で、こちらも所得金額に応じて支払う金額が変化します。住民税も支払義務のある税金です。
社宅費
社宅のある企業で、その社宅を利用している従業員は給与から住居に対して社宅費を支払うことになります。一般的に社宅は近隣の賃貸物件よりも家賃が安いところが多く、生活も楽になるでしょう。
各種積立金
各種積立金は企業によって行っているところと行っていないところがあります。社員が任意で行う社内親睦会や社員旅行に利用する積立金です。
欠勤控除
欠勤控除はノーワーク・ノーペイの原則(労働基準法24条 労務者が労務を提供していない場合、働いていない場合は使用者がその部分について賃金の支払い義務がないとする給与計算の基本原則)で、企業によって違いがありますが、欠勤・早退分の給与を天引きすることを欠勤控除といいます。
給与計算における基本給が高いことへのメリット
基本給が低くても手当によって、基本給が高い人よりも手取り金額が高くなることもあります。基本給は高い方がいいと考える人も多いのですが、基本給が高いことによって社員側にメリットとなることもあれば、デメリットとなることもあります。
給与計算において基本給が高いことへのメリットについて解説します。
給料が安定する
基本給は従業員が必ずもらえる給与です。手当については支給要件があるため要件から外れた時点で支給はなくなります。しかし基本給を下げることはよほどのことがない限りありません。
手当については時間外をなるべくしないようにと指導があれば、時間外業務が少なくなり時間外手当が少なくなります。賃貸が条件の住宅手当であれば、持ち家を購入することで受け取れなくなるなどもあるでしょう。
こうしたことを考えると、基本給が高いということは給料が安定するというメリットがあります。
賞与(ボーナス)の額が上がる
賞与(ボーナス)は必ずしも支給しなければならないことはありません。しかしボーナスが出る場合、各種手当を除いた基本給の2か月分や3か月分など、基本給が基礎となっています。
ボーナスについては給料の2か月分などと表記されることも多いため、総支給額の2か月分などと考えている方も多いでしょう。
ボーナスはあくまでも基本給ベースで計算され、基本給が高いと賞与も高くなるので、基本給が高いことのメリットといえます。
給与計算における基本給が低いことへのデメリット
基本給が低くても手当がいくつもあり、結果的に手取りが多くなるから問題ないと考えている人もいるでしょう。しかし基本給が低いことでいくつかのデメリットも生じます。
給与額が保証されない
基本給が低くても手当が多ければ手取り金額が多くなりますが、諸手当というのは条件に当てはまらなくなれば支給されません。
条件にあてはまる手当が少ないとき、頼りになるのは基本給です。基本給が低いということは、給与額が保証されないというデメリットがあります。
賞与(ボーナス)の額が下がる
賞与は基本給がベースになっているため、基本給が低いとボーナスの額も低くなります。各種手当がついて通常の給料が高くても、ボーナスは基本給がベースなので思ったよりももらえないと感じることもあるでしょう。
残業代が少なくなる
時間外労働とは法定労働時間である1日8時間、週40時間以内をさします。この法定労働時間を超えて働くことは残業や時間外労働といわれますが、この基礎も基本給です。
法定労働時間外に働く場合、通常の賃金に時間外労働の割増率をかけて求められます。「通常の賃金」は基本給を時給換算したもののため、基本給が低くなれば残業代も低くなるのです。ここに時間外労働の割増率をまとめておきます。
- 時間外労働の割増率
- 法定内残業 1日8時間 週40時間を超えた時間外労働=25%以上
- 法定外残業 1ヵ月に60時間を超える時間外労働=25%以上(大企業は50%以上)
- 法定休日労働 35%以上
- 深夜労働 午後10時~翌朝午前5時 25%以上
- 時間外労働+深夜労働 50%以上
- 休日労働+深夜労働 60%以上
まとめ
給与計算の中で基本給は、主軸となるものです。従業員にとっても基本給は給料の軸となるものであり、生活を支える基本的なものとなります。
基本給と手当は給料計算において基本的な違いがあること、基本給は給与計算の中で非常に重要なものであることをしっかり理解しておきましょう。
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