中途採用者の給与計算はどうすればいい?その方法と注意すること
月の途中で入社してきた月給制の社員に対しては、日割り計算による給与計算を実施します。この給与計算には3種類があり、事業所の裁量でどの方法を選んでも問題ありません。本記事では、中途途中採用者の具体的な給与計算や注意点について解説しますのでぜひ参考にしてください。
目次
中途社員の給与計算は日割りが基本
月給制の社員を雇用した場合、給与計算時には注意が必要です。もしその社員が月の途中で入社した場合、初月の給与は日割り計算するのが一般的です。
日割り計算に関しての明確な法律はないため、事業所があらかじめ決めた方法で計算しなければなりません。
日割り計算は事業所ごとの基準や方法がありますが、就業規則によって規制しているのが一般的です。そのため中途入社した月給制の社員がいる場合、まずは就業規則をチェックすることになります。
万が一就業規則で計算方法が決まっていない場合、上長と相談して「どのように日割り計算をするのか」しっかり決めておく必要があるでしょう。
規約がないと、社員が月の途中で入社するたびに混乱することになりかねません。給与計算担当者や上長が変わるたびにコロコロと計算方法が変わるようでは、会社の信頼に関わってきます。
給与計算の日割りとは
月の途中で入社した社員に対しては、一般的に給与の日割り計算をおこなって支給します。
この日割り計算は、欠勤や遅刻などが多かった社員に対する給与の計算ととてもよく似ており、実際に計算方法も似通っています。
ただ月の途中で入社した社員に対する日割り計算は「ゼロベースから出勤した分の給与や手当を加算して給与額を決める」プラスの発想であり、欠勤や遅刻の多い社員は「満額の月給から欠勤や遅刻分の給与や手当を差し引いて給与額を決める」マイナスの発想となり、両者の間には大きな違いがあります。
前者の中途採用者の給与計算はなにもないところから、勤務分の給与や手当を加算するプラスの発想になる点をしっかりおさえておきましょう。
労働基準法との関係
給与の日割り計算に対して明確な法律はないのですが、給与に関係する法律は労働基準法です。
労働基準法では「月の途中で入社した社員に給与を支給する場合、日割り計算はこうしなさい」という厳密な決まりはないため、事業所がそれぞれの判断で計算方法を決めることができます。
給与のなかには通勤手当などの手当も含まれます。この手当をどう日割りするのかも就業規則で決めておくのが理想です。
もちろん日割りせずに「月の途中で入社しても各種手当は一か月分を全額支給する」と決めても問題ありません。
むしろ通勤手当や扶養手当、住宅手当などの各種手当は福利厚生のためのものなので、日割りしないで満額支給する方が良心的です。
手当の日割り計算は、たとえば通勤手当の場合は下記いずれでも支障はありません。
- 一か月分の通勤手当÷当該月の暦日×出勤日
- 一か月分の通勤手当÷当該月の所定労働日数×出勤日
- 一か月分の通勤手当÷月平均の所定労働日数(年間所定労働日数を12か月で割ったもの)×出勤日
ほかにも一日の通勤手当額に出勤日数をかける方法もあります。
給与や各種手当の日割り計算に関して労働基準法の規定はありませんが「就業規則で給与の日割り計算方法を事前に決めておく」ことがとても重要です。
▷給与計算で間違いが発生した場合の対処法は?防止策についても解説
中途採用者の給与計算の日割り方法
では中途採用者の給与計算にはどのような方法があるのかを、具体的にチェックしていきましょう。給与計算には以下の3つの方法があります。
- 暦日による計算方法
- 当該月の所定労働日による計算方法
- 月平均の所定労働日による計算方法
日割り計算については労働基準法で規定されていないため、3種類の計算方法のうちどれを選ぶかは、事業所の裁量になります。
就業規則をチェックすれば、上記のどれかの方法に該当するでしょう。
もし就業規則で決まっていない場合、上記のうちのどれかに決めることになります。
暦日基準
この方法は社員が入社した月の暦日をベースにして、日割り計算をする方法になります。
1月に入社すればベースは31日ですし、4月なら30日です。2月はうるう年の場合があるので注意してください。暦日基準で計算する場合の計算式は下記のようになります。
日割給与支給額=基本給÷当該月の暦日×出勤日数
1月に途中入社した社員で10日間出勤した場合、基本給が20万円のケースでは…
200,000(基本給)÷31日(1月の暦日)×10日(出勤日)=64,516円となります。
暦日を使う場合、1月や3月は31日になりますが、2月は28日や29日になり支給額が入社した月によって上下することになり、公平性を欠いてしまいます。
ただ暦日基準の場合は計算が簡単で、間違いが少ない点が大きなメリットです。
所定労働日基準
日割り計算に、当該社員が入社した月の所定労働日数を使用することもできます。この場合使用する計算式は以下のとおりです。
日割り給与支給額=基本給÷当該月の所定労働日数×出勤日数
もし入社した月の所定労働日数が21日で基本給が20万円、出勤日数が10日の場合は
200,000(基本給)÷21日(当該月の所定労働日数)×10日=95,238円となります。
暦日での計算では休日分も含めて基本給を割ってしまうため、こちらの計算方法の方が給与額が高くなるのが特徴です。
所定労働日数は月ごとに変化するため、入社した月によって給与額が多少上下し、この方法も公平性に欠ける点は否めません。
月平均の所定労働日基準
この方法では社員が入社した月に関係なく、月平均の所定労働日を使って日割り計算をおこなう方法です。まずは月平均の所定労働日から計算してみましょう。計算式は以下のようになります。
月平均の所定労働日=年間所定労働日数÷12か月
もし年間労働日数が280日の場合、12か月で割ると月平均の所定労働日は23.3日になります。具体的な日割り計算の式は以下をチェックしてください。
日割り給与支給額=基本給÷月平均の所定労働日数×出勤日数
もし基本給が20万円で月平均の所定労働日数が23.3日、一か月の出勤日数が10日であった場合、200,000円÷23.3日×10日=85,860円となります。
この方法であれば月ごとのバラツキがなくなるので、途中入社の社員に対して公平な計算ができます。給与計算担当者以外はそのプロセスを知らないとは言いつつ、やはり入社してきた社員にはできるだけフェアな対応をしたいものです。そのため平等な給与計算を実施したいなら、月平均の所定労働日数を基準にすると良いでしょう。
ただしこの月平均の所定労働日数での計算方法を採用すると、計算方法がややこしくなりミスをする可能性が高くなります。
労働基準法では日割り計算の厳密な基準はないので「どの月から途中入社したとしても、弊社では日割り計算は毎月30日で計算する」や「24日にする」など、事業所独自の計算方法を決めるとシンプルで間違いにくくなります。
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給与計算の日割りをする際の注意点
給与の日割り計算は、月の途中で入社する社員のほかにも、月の途中で退職する社員、産休や育休、介護休暇を取得する社員、前述したように欠勤や遅刻、早退が多い社員にも適用できます。
そのため、日割り計算に対する明確なルールを社内で作成しなければならず、このルールを決めたものが就業規則です。
就業規則は社員が閲覧することができるので、給与の日割り計算に関する取り決めがないと「この会社は日割り計算をどのような基準でおこなっているのだろう?」と疑問を持たれてしまいます。
雇用側と従業員との間には信頼関係が不可なので、給与計算についての明確なルールがないと、社員から不信感をもたれるリスクがあります。
給与の日割り計算は、傷病手当や労災の休業補償給付などの給付金申請時にも重要になります。基本給に加算される各種手当まで日割り計算するのか、それとも満額支給するのかも明記しておきましょう。
手当を満額支給していると、傷病手当金等の申請時に一部の給与が支給されたとみなされ支給額が調整されることがあります。
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残業代単価の取り扱いについて
給与の日割り計算では、残業代単価の取り扱いについても注意しなければなりません。残業代の日割り計算をおこなうときは、基礎賃金に以下のような手当を加えてはいけません。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- その他臨時に支払われた賃金
これ以外の手当は基礎賃金に加算して日割り計算をおこないます。たとえば基本給が20万円、資格手当が月額5万円であれば25万円が基礎賃金となり、以下のような計算方法で時間給を計算することができます。
残業代時間単価=1か月の基礎賃金÷1か月平均所定労働時間
25万円の基礎賃金に対し1か月平均所定労働時間が172時間であれば、残業代の時間単価は約1,453円となります。
この時重要なのが、自社の1か月平均所定労働時間をきちんと計算することです。古い資料を使っていると現状に対応した時間給を計算することができません。
もし年間休日が増えている場合、それを無視すると正確な1か月平均所定労働時間を計算できないため、最新の資料を参照しながら作業しましょう。
事業所には正社員以外にも、契約社員が在籍していることも少なくありません。契約社員の場合にも、給与の日割り計算についてあらかじめ就業規則で決めておくことが必要です。
正社員であれ契約社員であれ、就業規則で公平に扱うことが最優先です。
▷給与計算とは?業務内容や計算方法・注意点をわかりやすく解説
規則を設けて中途採用者の支給給料のミスをなくそう
給与の日割り計算については、労働基準法で明確なルールが決められていません。
そのため各事業所の判断で、日割り計算のルールを就業規則に明記する必要があります。この基準がないと、途中入社や退職、育休や産休を取得する社員に対する給与を、公平に計算することができません。
社員との信頼関係を構築するためにも、日割り計算に関するルールを就業規則に明記しましょう。
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