アルバイトの給与計算方法|ルールや手順・注意すべき割増賃金について解説

2022/05/12 2024/07/24

給与計算システム

アルバイトの給与計算

基本的に、アルバイトや派遣社員、契約社員などは時給で給与を支払われています。本記事では、月給制とは違う時給制での給与計算はどのような方法なのかを解説します。時給の給与計算で押さえておくべき基礎知識について把握しておきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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時給とは

時給は時間給とも呼ばれ、1時間単位で給料が支給される方法です。会社の保険に加入している場合は、支払われた給料の中から保険料といった控除が差し引かれます。

基本的に、アルバイトや派遣社員、契約社員で雇われている方は時給制となることが多いです。1時間で1,000円の時給だとすると、一日に8時間の労働で8,000円の給料が支払われます。1ヶ月の出勤日数が20日とした場合、月に16万円の給料が支払われる計算です。

時給での給与計算のルール

時給で給与計算を行う際は、「1分単位で計算をする」「原則として労働時間の切り捨てはNG」など、さまざまなルールがあります。ここからは、時給での給与計算のルールを4つ解説します。

1分単位で計算をする

時給で給与計算を行う際は、1分単位で計算しなければなりません。

実際に、労働基準法第24条には「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と記載されており、「その全額を支払わなければならない」という部分が1分単位で計算することに該当します。

1分単位で計算しなければ労働基準法に違反すると判断される可能性があるため、注意しなければなりません。

[出典:e-Gov法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」]

原則として労働時間の切り捨てはNG

会社によっては、15分に満たない労働時間については切り捨てていることがあります。切り捨てにすると、その労働時間分の賃金は支払われません。

しかし、労働基準法では、規定された労働時間を延長した場合や、休日に労働させた時には、その時間分の割増賃金を支払うことが定められています。

そのため、15分に満たないからといって労働時間を切り捨てることは、労働基準法第24条や第37条の違法行為に該当する場合があります。労働者が規定された時間を超えて1分でも残業をした場合には、会社がその分の賃金を割増で支払わなければなりません。

違法行為に該当すると判断された場合、以下のような罰則が課せられます。

  • 労働基準法第24条:30万円以下の罰金
  • 労働基準法第37条:6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

しかし、場合によっては労働時間の切り上げが認められるケースもあります。

【重要】勤怠管理で知っておくべき労働基準法の基本ポイントを解説

労働者に有利になる場合は労働時間を切り上げてもよい

原則として労働時間の切り捨てはNGとされていますが、労働者に有利になる場合は切り上げが認められるケースがあります。労働者に有利になる場合とは、以下のようなケースです。

  • 17時終業の従業員が16時45分に早退したが、終業時間を17時に切り上げて給与計算する場合
  • 1時間45分の深夜労働をした際に、労働時間を切り上げて2時間で給与計算をする場合 など

上記のような場合は、労働者が有利になる給与計算として違反になることはありません。

休憩時間は時給の対象外

基本的に、時給制の場合は休憩時間の賃金は発生しません。時給制は、あくまでも「労働した時間」がそのまま支給される金額に反映されるため、休憩中は賃金が発生しないことを前提にしておく必要があります。

例えば、1時間のお昼休憩を含めた9時間勤務の場合、お昼休憩の時間が差し引かれた8時間分の労働時間に対して給与が支払われます。労働基準法によって、6時間以上の労働には45分以上、8時間以上の労働には60分以上の休憩時間を設ける義務が課せられています。

また、月給制の仕事とは異なり、時給制は休日や長期休暇を取得した際に賃金は発生しない点に注意が必要です。なお、アルバイトやパートも有給休暇は取得でき、有給休暇を使用した際は賃金が減額されることはありません。

アルバイトの給与計算に必要なものとは

時給での給与計算は、働いた時間に応じた給与がそのまま支給されるため、給与の内訳が分かりやすくなっています。しかし、確認事項もあるため、計算に間違いのないよう気をつけながら計算しなければなりません。

ここからは、アルバイトの給与計算に必要なものを4つ紹介します。

タイムカード

まずは、労働者の勤務時間が確認できるタイムカードが必要です。タイムカードがない場合は、勤務実績表やシフト表など、労働者の出勤日や勤務時間を記している書類が計算に用いられます。

これらの情報によって勤怠管理が行われ、労働者が一月の間にどれだけ働いたのかが確認できます。労働時間についての確認は、書類だけでなくパソコンに保存された記録も必要になるため、データを無くさないようにきちんと管理しておきましょう。

給与計算におけるタイムカードの集計方法とは?注意点も徹底解説

従業員情報

このほかにも、源泉所得税を徴収するために家族状況を把握しておく必要もあるため、扶養家族について記載のある書類も確認してください。

扶養家族の人数に応じて控除額などが発生する場合があります。しかし、労働者に扶養家族がいない場合は、労働時間のみを活用して給与計算を行うようにします。

給与規定

ほとんどの会社では、就業規則本体と切り離された給与規定を定めています。

給与規定には給料計算の基準や方法、割増賃金について、差し引かれる控除などの金額が記されており、賃金についての詳細を記載した説明書となるため、しっかりと把握して保管しておくようにしましょう。

時給制の従業員に対しても、給与計算の際にはこの給与規程について確認しながら給与計算を行っていきます。

就業規則

就業規則とは、労働する人が十人を超える会社で作成されている労働基準監督署に届ける書類のことです。

就業規則には始業と終業の時刻、休憩時間や休日など、労働に関する一定の事項や、労働者の健康に関する事項が記載されています。

近年では働き方改革によって法改正も行われ、就業規則の内容が変更される場合もあるため、変更点の確認をしないまま放置するのは避けましょう。

賃金についての内容が変更する可能性もあるので、就業規則は時折でも見直すようにしてください。特に時給の給与計算をする際に注目しておくべき就業規則の内容は、以下の3つです。

  • 労働時間や休日の取り扱いなど、働き方について定められた規程
  • 賃金の取り扱い方についての規程
  • 減給する際や賞罰についての規程

この3つに関して押さえておくことで、給与計算をスムーズに行えます。

アルバイトの給与計算で注意すべき割増賃金

時間外労働や休日労働、深夜労働などを行った際は、時給制のアルバイトにも割増賃金を支払う必要があります。割増賃金はそれぞれ計算方法が異なるため、事前に確認が必要です。

ここからは、割増賃金の計算方法や注意点などについて解説します。

時間外労働

1日8時間、1週間40時間を超えた分の労働時間に対しては、時間外労働として割増賃金を支払う必要があります。時間外労働の割増賃金は、「通常の賃金×1.25」で計算します。

ただし、法定労働時間を超える残業が1ヶ月に60時間を超える場合は、割増率50%以上で計算しなければなりません。

また、1日8時間、1週間40時間を超えた分に対して支払うため、例えば1日7時間労働で1時間の残業した場合、割増賃金は発生しません。

休日労働

休日労働とは名前の通りで、本来は休日である日に勤務することを指します。

労働基準法では、使用者は労働者に対して1週間に1日以上、4週間に4日以上の休日を与える必要があると定められています。そのため、休日に出勤した場合は給与を支払わなければなりません。休日労働に対する割増賃金は、「通常の賃金×1.35」で計算します。

休日出勤とは?給与計算方法・手当が発生するケースを解説

深夜労働

深夜労働の対象となる時間帯は、22時~5時までを指し、この間に労働していると深夜の割増賃金が発生します。

深夜労働に対する割増賃金は、「通常の賃金×1.25」で計算が可能です。例えば、時給1,000円に対しての割増は25%分の250円となります。

夜勤手当の給与計算方法とは?時間帯の定義や割増賃金との違いについて

アルバイトの給与計算の手順

アルバイトの給与計算は、以下の手順で行います。

  1. 勤務時間を集計する
  2. 支給額を計算する
  3. 控除額を計算する

ここからは、それぞれの流れを詳しく解説します。

勤務時間を集計する

まずは、勤務時間の集計を行います。以下4つのすべてを集計しましょう。

  • 通常労働時間
  • 時間外労働時間
  • 休日労働時間
  • 深夜労働時間

集計した勤務時間をもとに、給与計算を行います。

支給額を計算する

次に、「時給×勤務時間」で支給額を計算します。

通常労働時間以外に時間外労働や休日労働などがあった場合は、割増賃金の計算も必要になるため間違えないように注意しましょう。例えば、時給1,200円で勤務する場合のそれぞれの計算例は以下のとおりです。

【通常労働時間(60時間)のみの場合】
1,200(円)×60(時間)=72,000円

【通常労働時間(60時間)+時間外労働(10時間)があった場合】
1,200(円)×60(時間)=72,000円
1,200(円)×1.25×10(時間)=15,000円
72,000(通常労働の支給額)+15,000(時間外労働の支給額)=87,000円

【通常労働時間(60時間)+休日労働(10時間)があった場合】
1,200(円)×60(時間)=72,000円
1,200(円)×1.35×10(時間)=16,200円
72,000(通常労働の支給額)+16,200(休日労働の支給額)=88,200円

【深夜労働(20時間)があった場合】
1,200(円)×1.25×20(時間)=30,000円

計算ミスなどがないように、計算後も入念にチェックしましょう。

控除額を計算する

次に、控除額の計算を行います。アルバイトで社会保険や雇用保険に加入する場合は、以下のような控除が必要です。

控除項目内容控除金額
健康保険料社会保険にかかる保険料標準報酬月額×保険料率×1/2
雇用保険料労働者の生活や雇用の安定などを目的とする雇用保険の保険料一般事業は賃金×0.6%
農林水産・清酒製造および建設業は賃金×0.7%<
厚生年金保険料会社員や公務員など、70歳未満の人が原則として加入する公的年金にかかる保険料標準報酬月額×保険料率×1/2
介護保険料介護保険制度にかかる保険料標準報酬月額×保険料率×1/2
(40歳以上65歳未満の方飲み負担)
源泉所得税給与所得から天引きする所得税源泉所得税額表に記載されている金額
住民税給与所得から天引きする住民税住民税の納付書に記載されている金額

[出典:厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率」]

アルバイトの給与計算を正しく行う方法

給与計算は、ミスが許されない業務です。いくら入念にチェックしても、すべて人の手で作業をしていると計算ミスをしてしまう恐れがあります。

そこで、Excelや給与計算システムなどの活用がおすすめです。ここからは、それぞれの特徴やメリットなどを紹介します。

エクセルで計算する

エクセルの関数や数式を用いれば、計算ミスなく給与計算が正しく行えます。

最近では、インターネット上でさまざまな給与計算用のテンプレートが配布されているため、活用すれば手間なくエクセルで給与計算が可能です。

また、エクセルは多くの企業で導入されており、無料で始められる点もメリットです。給与計算用のテンプレートも無料のものを活用すれば、余計なコストはかかりません。

給与計算をExcel(エクセル)で行う方法とは?メリットやテンプレートも紹介

給与計算システムを活用する

給与計算システムとは、従業員の勤怠情報や雇用情報などをもとに、給与計算を自動で行うシステムのことです。税金や各種控除、年末調整などにも柔軟に対応可能で、エクセルよりも手間がかからずミスなく給与を計算できます。

また、ワークフロー機能や対象者をピックアップする機能なども備わっており、給与計算業務を大幅に効率化できる点が魅力です。

【2024年最新版】給与計算ソフトおすすめ11選!タイプ・規模別に徹底比較

アルバイトの給与計算は規定を守り正しく行いましょう

アルバイトの時給の給与計算を行う際には、会社によって決められた就業規則や給与規定について把握したうえで計算を行うようにしましょう。

労働時間と時給が分かっていれば計算ができる場合もありますが、時間外労働などの割増賃金が発生している場合や、控除によって差し引かれる金額があると給与計算もややこしくなります。エクセルや給与計算ソフトを活用して、計算ミスを防ぎましょう。

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