システム開発の上流工程とは?業務内容や下流工程との違い・必要なスキルを紹介
システム開発において重要な役割を持つ「上流工程」。プロジェクトの成否を左右する重要なフェーズであるため、担当者には十分な技量が求められます。本記事では、システム開発の上流工程の概要をはじめ、業務内容や下流工程との違いや必要なスキルについて詳しく紹介します。
目次
システム開発の上流工程とは?
システム開発の上流工程は、プロジェクトの初期段階で行われる「要件定義」、「機能定義」、「構成管理」などの工程を指します。
上流工程では、システムがどのような機能を持つべきか、どのように構築されるべきかを明確にし、計画を立てることが重要です。上流工程はプロジェクトの成功に直結するため、しっかりとした準備と計画が求められます。
システム開発の上流工程と下流工程の違い
システム開発における上流工程・下流工程という名前は、水が上流から下流に流れるように開発が一直線に進む「ウォーターフォールモデル」という手法が由来です。下流工程では、上流工程で定められた仕様や機能に基づいて、実際の開発やテストを行います。
大規模なプロジェクトでは、上流工程は主に大企業が担当し、下流工程はその関連企業が手掛けることが一般的です。このような分担形式をとることで、各タスクで専門性が発揮されやすくなるため、プロジェクト全体の品質を向上させる効果が見込めます。
システム開発における上流工程の重要性
上流工程での計画や仕様に不備があると、下流工程を大きく混乱させることがあります。上流工程のクオリティは、システム開発の品質を左右するほど重要であるのです。
上流工程での要件定義がしっかりしているほど、下流工程での作業がスムーズに進み、煩雑な訂正や作業漏れが発生しにくくなるでしょう。
上流工程での課題
システム開発の上流工程における不備は、下流工程に大きな影響を与えます。スムーズな開発を行うために知っておくべき、上流工程での課題について詳しく解説します。
不具合の早期発見
上流工程で不具合が発生すると、下流工程での遅れやリリース後のトラブルにつながる恐れがあります。
もし上流工程で遅れが生じた場合、下流工程にかけられる時間が短くなり、品質が低下するリスクが高まります。また、上流工程での不具合に気が付かないまま開発を進めてしまった場合、大規模な修正が発生する可能性があります。
そのため、上流工程での不具合を早期に発見できるかが大きな課題です。上流工程での品質管理は、プロジェクト全体の成功に大きく関わるのです。
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的確な見積もり
上流工程において、費用や仕様、工数、リソースの見積もりが不適切だと、後に追加費用が発生するリスクが高まります。そのため、上流工程での的確な見積もりができるかが課題となります。
初期段階で正確な見積もりを行うことで、予期せぬコストの増大を防ぎ、プロジェクト全体の予算管理を円滑に進めることができるでしょう。
認識のズレをなくす
上流工程において、顧客との認識のズレが発生すると、顧客の要望と開発されたシステムが一致しない、顧客の業務フローに最適化されないなどのトラブルが発生する場合があります。その結果、プロジェクト全体の評価が下がる可能性があるため、注意が必要です。
このような事態を防ぐためには、上流工程で顧客と綿密なコミュニケーションを取って認識のズレをなくし、明確な要件定義をすることが重要です。
上流工程の業務内容
上流工程の具体的な業務内容について、以下に詳しく解説します。
システム企画
上流工程の最初にシステム企画というフェーズがあり、クライアントのIT戦略に基づいたシステムの開発計画を立案されます。
この段階は「超上流工程」とも呼ばれ、大まかなシステムの目的や方向性を打ち出して、具体的な開発計画を策定するためのブレない軸を定める工程です。なお、システム企画がしっかり行われているプロジェクトほど、後続の工程がスムーズに進む傾向があります。
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要件定義
要件定義では、クライアントがどのような機能をシステムに求めているのか、どのような性能が必要かを整理します。
この段階で、クライアントの要望を明確にし、システムの仕様を定義することが重要です。要件定義の進め方としては、クライアントとの密なコミュニケーションを通じて、ニーズを詳細にヒアリングし、文書化することが求められます。このプロセスが成功すると、後続の開発段階での混乱を防ぐことができます。
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基本設計
基本設計では、クライアントの要望や業務フローを基にシステムに必要な機能や基本的な仕様をまとめます。この段階でシステムの全体像を描き、各機能がどのように連携するかを設計します。
基本設計の進め方としては、要件定義で整理した情報をもとに、システムの構造やデータフローを明確にし、設計書にまとめることが重要です。これにより、後の詳細設計や開発段階での混乱を防ぎます。
詳細設計
詳細設計は、基本設計を基に、プログラム単位で詳細な設計書を作成する工程です。この段階では、各機能がどのように実装されるかを具体的に決め、プログラムの構造やデータベースの設計を行います。
例えば、ユーザー認証機能の設計では、入力されたデータの処理方法やエラーメッセージの表示内容などを細かく記載します。詳細設計が正確であれば、プログラム開発がスムーズに進み、品質の高いシステムが完成します。
見積もり作成
見積もり作成は、システムの規模や仕様、要件、開発工程などを基に、正確な費用を算出する工程です。
この作業は、上流工程において非常に重要です。正確な見積もりを行うことで、プロジェクトの予算を適切に管理し、後の工程での追加費用の発生を防ぐことができます。例えば、必要な人員数や開発期間を具体的に見積もることで、計画通りにプロジェクトを進行させることが可能になります。
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上流工程に必要なスキル
上流工程の担当者に求められるスキルについて、以下に詳しく解説します。
ヒアリング・コミュニケーションスキル
上流工程では、クライアントの要望を正確に引き出すことが重要です。そのためには、優れたヒアリング・コミュニケーションスキルが必要です。
クライアントが何を求めているかを理解するためには、的確な質問をし、要望を深く掘り下げる能力が求められます。また、クライアント企業にITの専門部署があるとは限らないため、専門用語を使わずにわかりやすく説明することも大切です。これらのスキルがあれば、クライアントの期待に応えるシステムを設計する基盤を築くことができます。
システムの設計に関するスキル
ヒアリングした内容を要件定義書や基本設計書に落とし込むためには、プログラミング言語やデータベースの知識など、不備なくシステム設計を行うスキルを有していることが重要です。加えてシステムの全体像を理解し、各要素がどのように連携するかを把握する論理的思考力が求められるでしょう。
これらのスキルが十分に備わっていれば、クライアントの要件を満たしつつ、効率的で信頼性の高いシステムを設計することができるはずです。
プレゼンテーションスキル
上流工程には、システムの要件や設計を関係者に伝えるためのプレゼンテーションスキルが求められます。
また、プレゼンテーションスキル以外にも、ドキュメントの作成スキルや、複雑な技術的内容をかみ砕いて説明する能力も必要でしょう。これらのスキルはクライアントやチームメンバーの認識を一致させ、プロジェクトを円滑に進めることにも役立ちます。
マネジメントスキル
プロジェクトをスムーズに進めるためには、メンバーの能力を最大限に引き出すマネジメントスキルも重要です。
例えば、メンバーの役割分担やスケジュール管理、リソースの最適な配分、メンバー間のコミュニケーションの仲介など、プロジェクトに必要なマネジメントスキルは多岐にわたります。適切な経験やスキルをもった担当者が舵を取れば、プロジェクトの成功率は大きく高まるでしょう。
見積もり作成スキル
システム開発では、プロジェクトに必要な予算や工数を正確に算出する見積もり作成スキルが不可欠です。
適切な見積もりを行うことで、過剰なコストや遅延を防ぎ、プロジェクトを計画通りに進めることができます。要件定義などを基に作業量や人員などを的確に判断し、見積もりを作成しましょう。的確な見積もり作成スキルは、プロジェクトの成功を支える基盤となります。
上流工程を適切に実施し質の高いシステムを開発しよう
上流工程は、システム開発の基盤を築くために重要なプロセスです。上流工程を適切に実施できれば、後の工程がスムーズに進むうえ、質の高いシステムを妥当なコストで作成できるようになるでしょう。必要な要件やスキル、注意点などをよく理解して、次なるプロジェクトの成功に役立ててください。
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