VPNとは?必要性や仕組み、利用するメリット・デメリットをわかりやすく解説
データ通信のセキュリティを高める、「VPN」。インターネットの普及や働き方の多様化が進む現代、ネットを利用したデータ通信を安全にするためにはVPNが役立ちます。本記事では、VPNとは何か、必要性や仕組み、利用するメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
目次
VPNとは
VPNは「Virtual Private Network」の略称で、直訳すると「仮想プライベートネットワーク」を意味します。
この技術は、インターネットなどの公共のネットワークを使用しながら、まるでプライベートなネットワークのように安全にデータを送受信できる仕組みです。具体的には、2拠点間で仮想的な「トンネル」を形成し、このトンネルを通じてデータをやり取りします。
VPNの必要性
インターネットの普及が進む中、セキュリティリスクに関する問題が増加しています。多くの情報がオンラインでやり取りされるようになった昨今、それらを保護するための対策は欠かせません。
VPNは、この問題に対する有効な解決策の一つです。VPNを使用することで通信データの盗聴や改ざんを防ぎ、個人や企業の大切な情報を守ることができます。
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VPNと専用線の違いとは?
専用線は、特定の顧客専用に提供される通信事業者の回線です。一つの拠点に一本の回線を専用で使用し、主に警察、消防、鉄道、電力保安通信、放送業界などで利用されています。
一方、VPNはインターネット上に仮想的なプライベートネットワークを構築する技術で、専用線のように物理的な回線は必要ありません。このため、コストを抑えつつ、遠隔地からも安全にデータ通信を行うことが可能です。
VPN | 専用線 | |
安全性 | 使用するVPNによる | 極めて高い |
通信品質 | 混雑時は低下する場合もある | 極めて高い |
コスト | 安価〜やや高額 | 高額 |
複数拠点間接続 | 可能 | 不可 |
維持管理 | 通信事業者に委託できる | 構築保守に手間がかかる |
VPNの仕組み
VPNには、データをやり取りする通路を開く「トンネリング」、データ自体を保護する「カプセル化」、回線利用者を制限する「認証」、データ漏洩を防ぐ「暗号化」といった仕組みがあります。
ここではVPNの仕組みを、それぞれ詳しく紹介していきます。
ネットワーク上に仮想回線をつくる「トンネリング」
トンネリングとは、インターネット上でデータのやり取りを行うために、仮想的な通信経路を構築することをいいます。情報を遮断するトンネルを作り、その中でやり取りをするイメージです。
トンネリングにより、異なる場所にいるユーザー同士が、まるで同じローカルネットワーク内にいるかのように安全に通信することが可能になります。
データを第三者から守る「カプセル化」
カプセル化は、VPNで用いられる重要なセキュリティ機能の一つです。ハッカーなどの第三者からデータを守るために、データ形式を変換します。
具体的には、データを特定のフォーマットにパッケージ化し、外部からは内容が解読できないようにします。zipファイルや、封筒に入った手紙を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。このプロセスにより、情報が外部に漏れるリスクを大幅に低減し、通信の安全性を高めています。
仮想回線の利用者がアクセス権限を持っているか確認する「認証」
VPNの安全な使用には「認証」が不可欠です。これは、トンネリングされた通信経路にアクセスしようとする利用者が、正当な権限を持っているかどうかを確認するプロセスです。
認証によって、不正アクセスやデータの漏洩を防ぎ、企業のネットワークが安全に保たれます。ワンタイムパスワードやIDの入力、または他の認証手段を用いた身元の証明が主流です。
データのセキュリティを強化する「暗号化」
VPNにおける「暗号化」は、トンネリングされた通信経路を通じてやり取りされるデータを、第三者が解読できないように変換する重要なプロセスです。「カプセル化」ではデータを外から保護しますが、ここではデータそのものを暗号に変換して読み取りづらくします。
暗号化されたデータは、特定の鍵を持つ受信者のみが解読できるため、万が一データがインターセプトされたとしても、内容が漏れることはありません。上記の「認証」によって解読できる相手を制限し、情報が二重に保護されることになります。
VPNの種類は主に4つ・それぞれの特徴
VPNにはいくつかの種類があり、それぞれに違った特徴があります。ここでは、4つのVPNのタイプと、それぞれの利用シーンに適した特徴を詳しく説明します。
インターネットVPN
インターネットVPNは、通常のインターネット回線を利用して仮想的な専用網を構築する方法です。公共のインターネットを通じて、プライベートネットワークのような安全な環境を作り出すことができます。
またインターネットVPNは、構築コストを抑えることができるのも特徴です。ただし一般の回線を使用するため、使用状況による通信速度の低下や、不正アクセスに注意しましょう。
エントリーVPN
エントリーVPNは、通信事業者が提供する光ブロードバンド回線などを利用して、閉域網に接続する方法です。比較的安価かつ安全なVPNサービスで、特に中小企業やスタートアップに適しています。
インターネット回線と異なり、周囲に開かれていないブロードバンド回線のため、より安全性が高まります。ただし帯域保証がない点や、使用環境によって品質が変化する可能性に留意が必要です。
IP-VPN
IP-VPNは、通信事業者が提供する閉域IP網(レイヤー3)を使用して、エントリーVPNとは異なる通信網を構築する方法です。
IP-VPNはギャランティ型で運用されるため、通信の速度や品質の保証があります。また、インターネット回線を使用せずに複数拠点を繋げる点も見逃せません。
比較的コストはかかりますが、より高度なセキュリティでやり取りしたい際におすすめです。
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広域イーサネット
広域イーサネットは、離れた複数の拠点にあるローカルエリアネットワーク(LAN)を、イーサネット技術を用いて相互接続した広域ネットワークです。
専用線やイーサネット回線を使用することで、より安全に安定した通信を実現できます。また広域イーサネットではさまざまな通信プロトコル(通信のルールや形式)に対応しているため、通信相手やデータ形式によらず使用できるのもポイントです。
回線構築や保守管理にはかなりコストがかかりますが、金融機関やメディア事業者などにおすすめです。
VPNのおすすめの利用シーン
ここではVPNの利用におすすめのシーンを紹介していきます。
自社の拠点間でネットワークを構築する時
自社の複数拠点間でデータを安全にやり取りするためには、VPNが非常に有効です。VPNを使用することで、異なる地理的位置にあるオフィス間でプライベートかつ保護されたネットワーク接続を確立できます。
ファイルの共有、データベースへのアクセス、ビジネスアプリケーションの利用などの安全性を高めることは、企業にとって大変重要です。特に、テレワークやリモートワークを導入する際、VPNは有効な手段です。自宅やサテライトオフィスからでも会社のリソースに安全にアクセスできるようサポートし、業務の効率を大幅に向上させます。
無料Wi-Fiを使う時
公共の場所で提供される無料Wi-Fiは便利ですが、セキュリティリスクに留意が必要です。そこでVPNを利用することで、不特定多数の人がアクセスするネットワーク上でのデータのやり取りを安全に実行できます。
VPNは公共回線を使う場合でも、データを暗号化し、インターネット上の他者が読み取ることを防ぎます。このため、カフェや空港、ホテルなどで公開Wi-Fiを使用する際にも、個人情報の漏洩やデータの傍受を効果的に防ぐことが可能です。
クラウド環境へ接続する時
クラウドサービスはビジネスの効率化に不可欠ですが、外部からのセキュリティ侵害のリスクも伴います。そのなかでVPNは、クラウド環境への接続を安全に行うための強力なツールとなります。
特に不特定多数の利用者がアクセス可能なクラウドプラットフォームを使用する際には、VPNを活用して通信を暗号化し、データの保護を図ることが推奨されます。これにより、重要なビジネスデータの漏洩や不正アクセスを防ぎながら、安心してクラウドリソースを利用することが可能となるでしょう。
VPNを利用するメリット
ここではVPNを利用するメリットを紹介していきます。
費用を抑えてセキュリティを高められる
VPNは物理的な専用線を設置するよりもコストを大幅に削減でき、同時にセキュリティの向上が期待できる有効な手段です。専用線の設置には高額な初期投資と維持費が必要ですが、既存のインターネット接続を活用することで安全なネットワーク環境を構築することが可能です。
これにより、中小企業やスタートアップ企業でも大企業並みのデータ保護を実現できます。
複数拠点間で利用できる
VPNは複数の拠点間での接続を容易にします。特に地理的に離れたオフィスやリモートで働く従業員が多い企業にとって、VPNはコミュニケーションとデータ共有を安全に行うための効果的なツールです。
VPNを利用することで、異なる場所にいるチームメンバーが一つのネットワークにアクセスし、リソースを共有することができます。これにより、業務の効率化を図ると同時に、ITインフラの運用コストの削減も可能です。
外出先でも安全にデータをやり取りできる
VPNは外出先からでも安全にデータのやり取りを可能にします。
モバイル端末を使用してWi-Fiに接続する際、公共のネットワークや不安定なインターネット接続がセキュリティリスクを高めることがあります。VPNを利用することで、これらのリスクからデータを守り、どこからでも安全にデータの送受信が可能です。
特に出張の多い業種では、ぜひ取り入れたいセキュリティ対策といえるでしょう。
導入・運用の手間を省ける
VPNの導入は、契約締結とVPNルーターの準備のみで完了するため、専用線を設置するよりも手間とコストを大幅に削減できます。この簡便さは特に、リソースが限られている中小企業やスタートアップにとって大きな利点でしょう。
VPNの設定や管理は比較的シンプルで、専門的な技術知識がないスタッフでも行えることが多いです。また、VPNサービスの多くは、管理用のユーザーフレンドリーなインターフェースを提供しています。これを適切に利用することで、運用の際の追加的な手間やコストを抑えつつ、日々の管理を効率的に行うことが可能です。
VPNを利用するデメリット
さまざまなメリットがある一方で、VPNにはデメリットがあります。
セキュリティリスクがゼロになるわけではない
VPNは安全性を大幅に高める技術ですが、公衆回線を利用するため、セキュリティリスクが完全になくなるわけではありません。データは暗号化されていますが、VPN自体が攻撃の対象になることもあります。
特に、設定ミスやソフトウェアの脆弱性がある場合、悪意のある第三者による侵入のリスクが高まる点に注意が必要です。また、VPNプロバイダーが十分なセキュリティ対策を講じていない場合、その影響を受けることも考えられます。
▷VPNのセキュリティは安全?理解しておきたい仕組みやセキュリティリスク・被害事例について
通信速度が低下する可能性がある
VPNを利用する際、通信速度が低下する可能性があります。これは、インターネットVPNやエントリーVPNが公衆回線を使用するため、多くの利用者が同時に接続する時間帯に回線が混雑することが原因です。
さらに、VPNはデータを暗号化するための追加処理を必要とします。この暗号化処理が通信速度に影響を与え、特にデータ量が多い場合やリソースを多く要するアプリケーションを使用している時には注意が必要です。
▷VPNは本当に必要?個人・企業別に必要なシーン・活用事例を紹介
VPN利用しセキュアな通信環境を構築しよう
VPNは、遠隔地からのセキュアな通信、企業の複数拠点間での安全なデータのやり取り、外出先での情報漏洩リスクの低減など、多くのメリットがあります。コスト効率も良く、セキュリティを確保しながら柔軟に運用できるため、さまざまなビジネスシーンで活用できるでしょう。
一方で、通信速度の低下やセキュリティリスクが完全になくなるわけではないため、適切なVPNサービスの選択と設定が重要です。
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