VPNのセキュリティは安全?理解しておきたい仕組みやセキュリティリスク・被害事例について
インターネット通信の安全性を高める技術「VPN」。インターネットの普及により需要が高まっていますが、VPNは本当に安全なのでしょうか。本記事では、VPNのセキュリティは安全なのか、理解しておきたいVPNの仕組みやセキュリティリスクについて被害事例と併せて詳しく解説します。
目次
VPNとは?
VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上で特定の2拠点間に仮想的なトンネルを作成し、通信データを安全にやり取りするための技術です。この仮想トンネルを通じて、データは「カプセル化」という処理を経て暗号化され、外部からのアクセスや傍受を防ぎます。
例えば、遠隔地にいる社員が自社のネットワークにアクセスする際にVPNを利用することで、公共のネットワークを使用しながらも、まるで社内にいるかのように安全にデータをやり取りすることが可能です。この技術は、ビジネスパーソンにとって非常に便利な仕組みと言えるでしょう。
VPNのセキュリティの仕組み
VPNが提供するセキュリティは、主に以下の4つの技術によって支えられています。
トンネリング | インターネット上で第三者が侵入できない仮想的なトンネルを形成し、データを安全に転送する。 |
カプセル化 | 送信するデータを「カプセル」のような保護層で囲み、データの中身を外部から見えにくくする。 |
認証 | IDやパスワードの活用により、接続しているユーザーやデバイスが本当に信頼できるものであるかを確認し、不正アクセスを防ぐ。 |
暗号化 | トンネルを通過するデータを暗号化し、情報漏洩や改ざんを防ぐ。 |
これらの仕組みにより、VPNは日々の業務において企業のデータを守る重要な役割を果たしています。
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VPNのセキュリティリスク
VPNは多くのセキュリティ機能を提供しますが、完全無欠ではありません。次のセクションでは、VPNの技術が直面する主なセキュリティリスクと、それにどのように対処するかについて詳しく説明します。
VPNゲートウェイの脆弱性を狙ったサイバー攻撃のリスク
VPNの安全な環境を構築するために欠かせないVPNゲートウェイは、脆弱性がサイバー攻撃者のターゲットになることもあります。特に、ソフトウェアの更新が遅れている場合や設定ミスがある場合、攻撃者による侵入のリスクが高まるでしょう。
サイバー攻撃によって、機密情報が漏洩する危険性があるため、VPNゲートウェイのセキュリティ対策としては、定期的なソフトウェアの更新やセキュリティパッチの適用、正確な設定が必要です。
こうした対策や管理を徹底することで、VPN環境を安全に維持し、ビジネスでの利用において信頼性を高められます。
無料VPNや無料Wi-Fiの利用による情報漏洩のリスク
無料のVPNサービスや公衆Wi-Fiネットワークを利用することは、便利な反面、大きなリスクも伴います。特にセキュリティ対策が不十分な無料VPNは、ユーザーのデータ保護を十分に行っていないことがあるため、情報漏洩の危険性が高いと言えるでしょう。
また、無料Wi-Fiの場合、多くの人々がアクセスする公衆のネットワークはセキュリティが脆弱であるため、サイバー攻撃者にとっては攻撃の目標となりやすく危険です。例えば、中間者攻撃(MITM)がユーザーとサービス提供者の間に入り、通信を傍受する形で情報が盗まれることがあります。
このようなリスクを避けるために、信頼できるVPNサービスの利用や、セキュリティ対策が施されたネットワークへの接続を心掛けましょう。個人情報の安全を確保するためにも、無料サービスの利用は慎重に行うべきです。
ウイルス感染した端末から感染拡大のリスク
ウイルスに感染した端末がVPNを通じて社内ネットワークに接続された場合、そのウイルスがネットワーク全体に広がるリスクがあります。
VPNは外部からのセキュリティを強化しますが、内部からの脅威に対しては無力です。そのため、感染した端末が社内システムにアクセスすると、ウイルスは他の端末にも簡単に拡散する可能性があります。
感染拡大を防ぐためには、定期的なウイルススキャンの実施、最新のセキュリティパッチの適用、不審な活動のモニタリングを行い、端末のセキュリティを常に最新の状態に保つことが必要です。また、VPN接続前に端末のセキュリティ状態を確認する手順も効果的です。
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VPNのセキュリティ被害事例
VPN関連のセキュリティインシデントからは、多くの教訓を得られます。ここではいくつかの事例を通じて、どのようなセキュリティ被害による問題が発生し、それがどのように解決されたのかを見ていきましょう。これらの事例は、今後の対策を考えるうえで非常に貴重な情報となるはずです。
約49万人の個人情報を含むデータが暗号化
2022年10月、あるインシデントでは、VPN経由でランサムウェアに感染した結果、サーバー11台に保存されていた約49万人分の個人情報を含むほとんどのデータが暗号化されました。この攻撃により、重要な業務データがアクセス不能になり、大きな混乱を引き起こしましたが、バックアップを取っていたデータベースは感染を逃れ復元できたということです。
ランサムウェアは悪意のあるソフトウェアで、感染したデータをロックし、解除のための身代金を要求するものです。この事例から、VPN接続のセキュリティ対策の強化がいかに重要かが浮き彫りになります。データのバックアップやセキュリティプログラムの更新など、基本的な対策を怠らないことが不可欠です。
電子カルテ等病院内データが暗号化
2021年10月末、ある病院がVPNの脆弱性を悪用したランサムウェアの攻撃を受けました。この攻撃により、病院内の重要なデータ、特に電子カルテを含む多くの情報が暗号化され、救急をはじめとする医療機能全般が停止を余儀なくされるという重大な障害が発生しました。
この事例から、医療機関のセキュリティ対策がいかに重要かが分かります。病院は患者情報の安全を保ちながら、日々の業務を継続するために、適切なセキュリティ更新と徹底した教育が必要不可欠です。
VPNの安全性は接続回線の種類で変わる
VPNの安全性は使用する接続回線の種類によって異なります。主に「インターネットVPN」と「クローズドVPN」の二つのタイプがあります。ここでは、これらの違いとそれが安全性にどのように影響するかについて詳しく解説します。
インターネットVPN
インターネットVPNは、公衆インターネット回線を使用してプライベートな通信網を形成する方法です。このタイプのVPNは、設置が容易でコストが低いため、多くの企業や個人に広く利用されています。
しかし、公衆回線を通じてデータを送受信するため、セキュリティリスクが高まる可能性があり注意が必要です。特に、データが暗号化されていない場合や、セキュリティ設定が不十分な場合には、情報漏洩のリスクが生じることがあります。このため、インターネットVPNを使用する際には、強力な暗号化や、セキュリティ対策の徹底が重要です。
クローズドVPN
クローズドVPNは、通信事業者が提供する専用の閉鎖的なネットワークを利用して、拠点間を安全につなぐシステムです。公開されているインターネットを介さずに直接的に通信が行われるため、セキュリティの面で非常に強いというメリットがあります。
インターネットVPNと比較して、外部からのアクセスや攻撃に対する脆弱性が大幅に低減されるため、特に機密性が求められる業務データのやり取りに適しているでしょう。
VPNを安全に利用するためのセキュリティ対策
VPNを安全に利用するためには、適切なセキュリティ対策が必要です。次のセクションでは、VPN利用時における重要なセキュリティ対策について詳しく解説します。
二段階認証の導入・パスワードの強化をする
VPNを利用する際のセキュリティを強化するためには、認証方法を複雑にすることが有効です。
特に二段階認証の導入は不正アクセスを防ぐのに効果的で、パスワードだけでなく、スマホに送られる一時的なコードなど、二つの認証要素を使用するためより厳重になります。
また、パスワードの強化も重要です。パスワードは長く複雑で、予測しにくいものを設定し、定期的に更新することが推奨されます。さらに、セキュリティソフトのインストールも、潜在的な脅威からシステムを保護するために重要です。これらの対策により、VPN経由でのデータの安全性を向上させられます。
VPN利用に関するルールを明確にする
VPNを安全に利用するためには、使用に関するルールを明確にすることが不可欠です。
社内ネットワークへの接続時には特定のプロトコルを守ることを徹底し、すべての関連ソフトウェアは定期的なアップデートやパッチの適用を行い常に最新の状態に保つことが重要です。継続的にメンテナンスを行うことで、セキュリティを強化し、潜在的な脅威から守ることができます。
また、組織の端末を使用しての公共Wi-Fiの利用は禁止するといった規則を設けることも重要です。公共Wi-Fiはセキュリティが不十分な場合が多く、不正アクセスのリスクを高めるため、避けたほうがよいでしょう。
明確なガイドラインの設定とその厳格な実施により、VPNを介したデータの安全を保ち、全体的なセキュリティを強化できます。
従業員のセキュリティ意識を高める
VPN利用時のセキュリティは、単に技術的な対策だけでなく、従業員の意識も大きく関わります。そのため、企業はVPN利用に伴うリスクを理解し、これを防ぐ方法を社内教育や研修を通じて徹底的に周知することが重要です。
研修や教育プログラムでは、安全なパスワードの作成方法、認証プロセスの重要性、公共のWi-Fiネットワークの使用時の注意点など、基本的なセキュリティ知識を盛り込む必要があります。
このような取り組みにより、組織全体のセキュリティレベルを向上させられるでしょう。結果として、VPNを利用する際のリスクを効果的に低減し、より安全な業務環境の実現に向かいます。
VPNのセキュリティリスクを理解し必要な対策を講じよう
VPNの利用は多くの利点をもたらしますが、それに伴うセキュリティリスクも理解しておく必要があります。
リスクの高さを鑑みて適切なVPNのタイプを選択し、二段階認証の導入やパスワードの強化、利用ルールの明確化、従業員のセキュリティ意識の向上など、具体的なセキュリティ対策を講じることが重要です。これらの対策を通じてVPNを安全に活用し、企業や個人のデータ保護を図りましょう。
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