年末調整は自分でできる?確定申告との違いややり方・準備すべき書類
年末調整は企業が主体となって行う手続きですが、個人で行うことはできるのでしょうか。本記事では、年末調整は自分でできるのか、年末調整と確定申告の違いや、確定申告に該当するケース、確定申告のやり方などを詳しく解説します。
目次
年末調整は自分でできるのか?
結論からいうと、年末調整は会社が従業員に代わって行う手続きであり、個人が行うものではありません。
年末調整とは、毎月の給与や賞与から源泉徴収として暫定的に差し引かれる所得税額と、実際の収入から計算される正確な税額との差を調整する手続きです。
年末調整は、給与所得者の税負担を簡略化しつつ、正確かつ安定的な納税を実現するための制度であるため、会社が責任を持って行うものとされています。なお、個人が行う手続きとしては、確定申告が挙げられます。
▷年末調整とは?やり方や対象者・必要書類、確定申告との違いをわかりやすく解説
年末調整と確定申告の違い
年末調整と確定申告はいずれも所得税に関する手続きですが、役割・対象者・実施者が明確に異なります。
年末調整は主に会社員が対象で、年末に会社が正確な税額を計算するため、個人が直接手続きを行う必要はありません。
一方、確定申告は個人で行う手続きです。主に自営業者や副収入が一定額以上ある人、年末調整では対応できない特別な控除(医療費控除など)を申請したい人などが自己申告するための制度です。
このように、年末調整と確定申告はどちらも所得税に関する手続きではあるものの、さまざまな点が異なります。
▷年末調整と確定申告の違いとは?関係性や控除の種類・両方必要となるケース
年末調整はいつまでに実施する?
一般的に年末調整の手続きは、年末が近づく11月から12月にかけて行われます。年末調整の具体的な流れは、概ね以下の通りです。
- 11月初旬:従業員が会社に必要書類を提出する
- 11月下旬〜12月中旬:会社が提出された書類を基に税額の計算を行う
- 12月末日:完了した計算結果に基づいて、必要に応じて差額の清算を行う
- 翌年1月:会社が源泉徴収票を従業員に交付する
会社によって若干スケジュールが異なりますが、年内に調整が終わるよう手続きを進めていきます。期間が限られているため、従業員は遅延なく必要書類を提出することが大切です。
年末調整で準備すべき書類
年末調整で控除を受けるためには、以下の書類を準備する必要があります。
- 扶養控除等申告書:扶養家族がいる場合、扶養控除を申請するために必要
- 保険料控除申告書:生命保険や地震保険などの控除を受けるための証明書
- 住宅ローン控除証明書:住宅ローンを利用している場合に控除を受けるための書類
なお、必要書類はその人の状況や申請したい内容によって異なります。一部の書類は10〜11月頃に自宅に郵送されるため、会社から提出を求められるまで自身で大切に保管しておく必要があります。
自分で行うのは確定申告 やり方や注意点を紹介
副業で一定以上の収入を得ている会社員などは、翌年に自分で確定申告を行う必要があります。ここでは、確定申告の大まかな流れを説明します。
源泉徴収票を受け取る
源泉徴収とは、事業者が給与から所得税などを差し引き、雇用者の代わりに所得税を国に納付することです。
源泉徴収票には、その年の1月1日〜12月31日の間に、事業者が雇用者に支払った給与額・源泉徴収した税額・控除額などが記載されており、多くの場合、年末調整後の12月後半から1月末までの間に発行されます。
確定申告では、この源泉徴収票に記載の情報を申告書に転記して提出します。受け取ったら、失くさないよう大切に保管しておきましょう。
必要書類を用意する
確定申告に必要な書類は、所得や控除によって異なりますが、共通書類は以下の通りです。
- 確定申告書:年間所得額や控除の種類、それらを基に算出した所得税を記載した書類
- 本人確認書類:マイナンバーカードや運転免許証、健康保険証、住民票の写し など
- 所得金額に関する添付書類:収支内訳書、年間取引計算書、青白申告決算書 など
- 各種控除証明書:控除を証明する書類
なお、確定申告で利用できる控除は以下の通りです。
- 雑損控除:災害や盗難で損害を受けたときに適用される
- 医療費控除:一定額以上の医療費を支払った場合に適用される
- 社会保険料控除:社会保険を支払った場合に適用される
- 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済の掛金を支払った場合に適用される
- 生命保険料控除:生命保険や介護医療保険、個人年金保険を支払った場合に適用される
- 地震保険料控除:地震保険を支払った場合に適用される
- 寄附金控除:ふるさと納税や認定NPO法人などへの寄附に適用される
- 障害者控除:納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用される
- 寡婦控除:その年の12月31日時点でひとり親に該当しない寡婦に適用される
- ひとり親控除:納税者がひとり親である場合に適用される
- 勤労学生控除:学校に行きながら働いている場合に適用される
- 配偶者控除:配偶者の合計所得金額が48万円以下(ただし給与のみの場合は103万円以下)の場合に適用される
- 配偶者特別控除:納税者の合計所得金額が1000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円以上133万円以下である場合に適用される
- 扶養控除:16歳以上の子や両親などを扶養している場合に適用される
- 基礎控除:全ての人に適用される(最大48万円)。
控除証明書の入手方法は、控除の種類によって異なります。詳しくは、国税庁のホームページをご参考ください。具体的な控除額なども記載されています。
[出典:国税庁「所得控除のあらまし」]
確定申告書を提出する
確定申告書の様式にしたがって必要な情報を記入したら、居住地域の税務署に提出して完了です。なお、提出方法は以下の3つがあります。
- 税務署の窓口に直接持参して提出する
- 税務署に郵送する
- e-Taxを利用して提出する
申告期間は毎年2月16日から3月15日の1か月間です。この期間内に漏れなく提出しましょう。期間内に提出しなければ、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される恐れがあります。早めの準備を心がけ、余裕を持って記入・提出することが大切です。
自分で確定申告を行うケース
会社員でも、自分で確定申告を行わなければならないケースがあります。最後に、確定申告を要するケースについて詳しく解説します。
年収が2000万円を超える
会社員で賞与を含んだ給与が2000万円を超える場合は年末調整を受けられず、確定申告が必要です。配偶者控除や社会保険料控除などの所得控除が差し引かれず、年末調整で所得税が精算されないからです。
また、年末調整で控除できる配偶者控除や扶養控除、小規模企業共済等掛金控除も確定申告で控除する必要があります。
複数の収入源がある
副業やアルバイトなどで複数の収入を得ていて、本業以外の合計所得が20万円以上ある場合は確定申告が必要です。
年末調整は、「主たる給与」を得ている会社で行います。そのため、複数の会社から収入を得ている場合は、「主たる給与」か「従たる給与」か、どちらに該当するか定める必要があります。この「従たる給与」が20万円以上になる場合は、会社で年末調整を受けられず、自分で確定申告を行わなければなりません。
転職・退職をして年末調整ができなかった
年の途中で転職・退職をして年末調整ができなかった場合、確定申告を行う義務はありませんが、確定申告を行うことで還付金を受け取れる場合があります。前の会社の源泉徴収で、所得税を納めすぎている可能性があるからです。
確定申告を行うことで、前職で払い過ぎた所得税の還付を受けられるため、退職時に受け取った源泉徴収票は捨てずにとっておきましょう。
年末調整でできない控除を申告したい
以下の3つは年末調整で控除ができず、確定申告で控除する必要があります。
- 医療費控除
- 寄附金控除
- 雑損控除
これらの控除は、集計する時間的余裕がないことや、見込みで計算できないことから年末調整では控除ができません。上記に該当する場合は、早めに控除証明書を取得し確定申告に備えましょう。
ふるさと納税のワンストップ特例制度が使えない
ワンストップ特例とは、ふるさと納税での寄付が住民税から控除される制度で、年末調整で寄付金控除が受けられる仕組みです。しかし、以下の場合は確定申告で控除する必要があります。
- 一年間に6つ以上の自治体に寄付した
- ワンストップ特例申請書の提出が寄附した翌年の1月10日よりも遅れた
ふるさと納税を行っている人は、寄付先の数や申請書の期限に注意しましょう。
▷ふるさと納税は年末調整で控除できる?手続きや必要な書類・期限について
年末調整の書類に不備があった
年末調整の書類に不備があり、年末調整の締め切りに間に合わなかった場合も確定申告が必要です。不備の例には、以下があります。
- 計算ミス
- 控除の申請忘れ
- 添付書類の提出忘れ
不備を防ぐためにも、記入後は数字に誤りがないか見直したり、必要書類をリスト化して一つひとつチェックしたりし、不備を防ぎましょう。
▷年末調整をしないとどうなる?デメリットや対処法・簡単に済ませる方法を解説
年末調整は自分ではできないことを理解しよう
年末調整は、給与所得者が納める正確な所得税額を確定させるための手続きです。会社が従業員に代わって実施するものであり、個人ではできないことを理解しておきましょう。
一方で、控除を申請するためには従業員自身が必要書類を準備する必要があり、期限を遵守しないと正しく控除を受けられず、税負担が増加する可能性があるため注意が必要です。
年末調整ソフトの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら