年末調整を忘れたらどうなる?リスクや対処法・確定申告のやり方について
毎年12月に行われる年末調整は、ビジネスパーソンの納税に重要な手続きです。しかし、転職を経た年度や複数の収入源がある場合には、年末調整の処理を忘れてしまうケースも少なくありません。当記事では、年末調整を忘れた場合の悪影響やリスク、その対処法について解説します。
目次
年末調整を忘れたらどんなリスクがある?
もし年末調整を忘れると、さまざまなリスクが発生する恐れがあります。どのようなリスクがあるのか、具体的に説明します。
還付金が受け取れない
年末調整を忘れると、本来受け取れるはずの還付金を受け取れません。
源泉所得税額が実際の所得税より高い場合、還付金が発生します。しかしながら、年末調整を行わなければ、税務署はその実態を把握できず、還付金を受け取ることができません。
税金の過払いにならないためにも、年末調整は忘れずに行う必要があります。
各種控除が受けられない
年末調整を忘れると、生命保険料控除や扶養控除などの各種控除も受けられなくなります。
これらの控除は、税金を軽減する大切な仕組みですが、年末調整の際に必要な書類を提出しなければ適用されません。配偶者や扶養家族がいる人、各種保険に加入している人は、必ず申請しましょう。
納税額が高くなる
年末調整を忘れると、所得控除が適用されないため、住民税の納税額が高くなる可能性があります。なぜなら、住民税は、所得控除を済ませたあとの収入額に対して計算されるためです。
年末調整を行わなければ、納税額の増加にもつながってしまうので、注意しましょう。
確定申告が必要になる
会社での年末調整を忘れると、個人で確定申告を行う必要が出てきます。
確定申告は、収入や控除の内容を自分で整理して税務署に申告する作業であり、手間と時間がかかるだけでなく、書類不備があれば手続きがさらに遅れる可能性もあります。
忙しいビジネスパーソンにとって、この追加作業は大きな負担です。年末調整を忘れずに済ませるに越したことはありません。
▷年末調整と確定申告の違いとは?関係性や控除の種類・両方必要となるケース
年末調整が必要な人とは
年末調整は、全ての働く人に必要な手続きではありません。対象となる人の条件について、詳しく説明します。
年末調整の対象となる従業員の条件
年収2000万円以下の給与所得者は、原則として年末調整の対象です。
また、その年の途中で就職し年末まで同じ職場で働いている人や、パート・アルバイトでも一定の収入を超える場合には年末調整を行う必要があるでしょう。
一方で、給与の支払いが2か所以上からあり、別の勤務先で年末調整を済ませた場合や、災害等により納税猶予や還付を受けている方は、その対象外となります。
条件次第ではパート・アルバイトも年末調整が必要
収入源がパートやアルバイトのみの方でも、以下3つの条件全てに該当すれば年末調整をする必要があります。
- 勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している
- その年の12月の時点でアルバイトをしている
- アルバイト先が1か所のみである
どんな働き方であれ、年末調整を怠ることは基本的に損にしかなりません。条件に当てはまる方はよく注意しましょう。
年末調整の手続き期限や必要書類は?
年末調整を正しく行うには、必要書類の提出時期をきちんと把握することが重要です。必要となる書類とその納期について、以下に解説します。
税務署への提出期限は1月31日
年末調整に関する書類の税務署への提出期限は翌年の1月31日ですが、実際の処理は企業が行うため、社内での提出期限は12月初旬~中旬が目安となります。
もし、この期間を逃すと会社での年末調整が間に合わず、翌年に確定申告を自分で行う必要が出てくることもあります。忙しい年末においても、必要書類を早めに用意しておくことが肝心です。
年末調整に必要な書類リスト
年末調整を行うには、いくつか書類が必要となります。
- 扶養控除等(異動)申告書
- 保険料控除申告書と控除証明書
- 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書と残高証明書(※住宅ローン2年目以降の場合)
- 源泉徴収票(※年の途中で入社して、その年中に他で給与収入があった場合)
これらの書類が揃っていなければ手続きが進まないため、早めに入手しておくことが大切です。
▷【初心者必見】年末調整の書き方|提出すべき書類・記入例をわかりやすく解説
年末調整を忘れた場合の対処法
もし年末調整を忘れてしまっても、適切な対処を行えば問題なく還付金を受け取れます。具体的な対処法を、以下に説明します。
社内の担当者へ再計算を依頼する
もし年末調整の社内期限を逃してしまっても、企業から税務署への提出がまだ済んでいなければ、担当者に再計算を依頼できる可能性があります。
ただし、締切が過ぎている場合には担当者の作業負担が大きいため、無理な対応を依頼しなくとも済むように早めの提出を心がけましょう。なお、年末調整の処理を忘れた場合でも、個人で確定申告を済ませれば納税面での問題は特にありません。次の項目で解説します。
個人で確定申告を行う
会社で年末調整を行う時期を逃した場合には、個人で確定申告を行いましょう。
確定申告とは、税務署に必要書類を提出することで、払いすぎた税金を取り戻す手続きであり、過去5年間の払い過ぎた税金は、還付申告制度を利用して還付金を受け取れる可能性があります。
また、有価証券などで一定額以上の利益を上げた場合にも、個人での確定申告が必ず求められます。
確定申告の基本的なやり方は?
確定申告は税金を正しく申告するための大切な手続きです。基本的な流れを理解して、手続きをスムーズに進めましょう。
「確定申告書作成コーナー」を利用する
確定申告を簡単に行う方法として、国税庁のWebサイトにある「確定申告書等作成コーナー」の利用がおすすめです。
このサービスを使えば、システムが提示する必要事項を入力するだけで自動的に確定申告書が作成できます。作成した書類はそのままオンラインでの提出や、印刷して郵送することが可能です。
誰でも無理なく確定申告ができる環境を整えるために開発されたシステムとして、従来の紙ベースによる処理よりも圧倒的にスムーズですので、ぜひ活用してみましょう。
[参考 : 国税庁「確定申告書等作成コーナー」]
手書きで申告書を作成し、確定申告する
昔ながらの方式として、手書きの申請用紙で確定申告を行うことも可能です。
この場合では、必要な用紙を税務署まで取りに行く、あるいは取り寄せるなどしたうえで、例年2/16~3/15までの申告時期に管轄の税務署まで提出してください。税務署に直接出向いても郵送で済ませても問題ありません。
ただし、税金の計算方法は初心者には複雑ですので、もし自信がなければ税務署でサポートを受けながら作成するとよいでしょう。
専用ソフトで申告書を作成し、確定申告する
専用ソフトで確定申告の申告書を作成する手段もあります。収入や控除の項目を入力するだけで計算を自動で行い、正確な申告書を作成してくれます。
会計ソフトの有料オプションなどで機能を追加できるため、ソフトの扱いに慣れている方には良い選択肢となるでしょう。
確定申告を外部に委託する
確定申告を税理士に委託することは、最も正確で安心な選択肢の一つです。
一定の費用こそかかりますが、税理士は専門知識を活用してミスのない申告書を作成してくれます。そのため、忙しい方や控除や収入源が複雑な方にとっては、特におすすめの方法です。
年末調整を忘れたら、迅速で的確な対処が必要
勤め先での年末調整を忘れても、個人で適切な確定申告を行えば納税上の問題は特にありません。
しかし、確定申告は労力を要する作業であるため、なるべく勤め先の年末調整を活用することをおすすめします。ただし、不動産や有価証券による収入がある方は、原則として必ず確定申告が必要となります。自身の収入内容や納税ルールをよく理解して、スムーズに税務処理を進めましょう。
年末調整ソフトの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら