年末調整と住民税の関係性|住民税の申告が必要な人や納付方法
年末調整と住民税は、給与所得者や自営業者など、多くの労働者にとって非常に重要です。年末調整では控除の調整を行って税金の適正な納付を行い、住民税は市町村ごとの手続きを通して納付します。年末調整と住民税の基本的な手続きやポイントを押さえておきましょう。
目次
年末調整と住民税の関係性とは?
年末調整と住民税には密接な関係があるものの、計算方法や適用される税目が異なります。まずは年末調整と住民税の仕組みを簡単に解説します。
年末調整の仕組み
年末調整とは、会社が源泉徴収を行い、従業員に代わって納付した所得税について、年末に正確な税額を算出して過不足を調整する手続きです。
毎月の給与や賞与からは所得税が源泉徴収されていますが、この金額はあくまで概算であるため、本来納める税額とは若干異なるのが一般的です。そのため、1年間の給与や賞与などの金額が確定する年末に、年間の総所得額や控除額を再計算して税額を調整する必要があります。
前もって納付した税金が多い場合は還付金を受け取れる一方、納付した税金が不足していた場合は追加納税が行われます。
▷年末調整とは?やり方や対象者・必要書類、確定申告との違いをわかりやすく解説
住民税の仕組み
住民税とは、居住している地域の自治体に支払う地方税です。
住民税は、各地域で提供されている教育・福祉・ごみ処理などの行政サービスの運営や維持に必要な財源を、そこに住む住民たちで分担してまかなうことを目的とした税金です。自治体の範囲に応じて「市町村民税」と「道府県民税」の2つから構成されており、納税者によって「個人住民税」と「法人住民税」の2つに細分化されます。
このように、住民税はその地域に住所や拠点を置いている個人・法人が、それぞれの規定に沿って自治体に納税する仕組みです。
住民税は年末調整で還付されない
所得税とは異なり、住民税は原則的として年末調整で還付を受けることができません。そもそも年末調整は所得税の過不足を調整する制度であり、住民税は対象外となっているためです。
一方で、住民税の還付金を受け取れる例外もあります。例えば、株式の譲渡所得や配当所得などを確定申告する場合や、確定申告を1年以内に修正・提出した場合などです。
年末調整では住民税の還付は受けられないものの、申告内容や収入状況に応じて別の手続きを行うことで還付を受けられる可能性があることを覚えておきましょう。
▷年末調整の還付金とは?支払日はいつ?受け取り方法や平均額・対象者について
年末調整と住民税を算出する方法
ここからは、年末調整と住民税それぞれの算出方法を解説します。
年末調整の計算方法
年末調整では、源泉徴収によって前もって支払った社会保険料や所得税額と、各種控除などを適用して算出する実際に支払うべき金額の差額を計算します。具体的な手順は以下のとおりです。
- その年の給与総額から給与所得控除を差し引き、給与所得額を算出する
- 給与所得額から所得控除額を差し引き、課税所得額を算出する
- 「課税所得額×所得税率−控除額」で、算出所得税額を算出する
- 算出所得税額から住宅ローン控除額を差し引き、年調所得税額を算出する
- 年調所得税額の定額減税を計算し、年調減税を適用する
- 復興特別所得税を加えて年調年税額を算出する
- 源泉徴収税額と年調年税額の差額を精算する
この一連の計算によって最終的な所得税額が確定し、源泉徴収された金額が実際の所得税額を上回っている場合は還付が行われ、不足している場合は追徴課税が行われます。
住民税の計算方法
住民税には「所得割」と「均等割」の2つの方法があり、それぞれを算出して合算することで最終的な住民税が確定します。具体的な計算手順は以下のとおりです。
- その年の収入総額から経費や法的控除額などを差し引き、所得金額を算出する
- 所得金額から該当する所得控除額を差し引き、課税所得金額を算出する
- 「課税所得金額×税率10%−税額控除」で、所得割額を算出する
- 所得割額に均等割の5,000円を加えることで住民税額が確定する
年末調整と住民税で受けられる控除
年末調整と住民税には、それぞれさまざまな控除が用意されています。年末調整では所得税に対する控除、住民税では地方税に対する控除と、それぞれ控除の対象が異なる点が特徴です。
年末調整に適用される控除
年末調整では、所得税に対するさまざまな控除の適用を受けられます。具体的な控除の種類は以下のとおりです。
- 基礎控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 社会保険料控除
- 障害者控除
- ひとり親控除、寡婦控除
- 勤労学生控除
この内、基礎控除は原則的として全員が受けられる控除で、それ以外はそれぞれに設定されている条件を満たしている場合のみ受けられる控除です。そのため、人によって受けられる控除の種類や控除額が異なります。
なお、医療費控除やふるさと納税などの寄付控除は年末調整では受けられないため、確定申告で申請する必要があります。また、住宅ローン控除も、初年度は納税者本人が確定申告する必要があり、2年目以降に年末調整時に併せて申告できるようになるため注意が必要です。
▷年末調整の配偶者控除とは?必要書類や申告書の書き方・注意点を解説
▷年末調整の扶養控除とは?扶養親族の条件や控除額について簡単に解説
住民税に適用される控除
住民税には所得控除と税額控除が設けられており、具体的には以下の控除が挙げられます。
- 配当控除
- 外国税額控除
- 寄附金税額控除
- 調整控除
このうち、調整控除は納税額が確定する際に調整されるため、自身で申告する必要はありません。
年末調整とは別に住民税の申告は必要?
年末調整とは別に住民税の申告が必要かどうかは、ケースによって異なります。
申告が必要なケース
住民税の申告が必要となるケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。
- 所得税の確定申告が不要な場合
- 会社を退職しており、年末調整・確定申告をしていない場合
- 確定申告をせず、医療費・社会保険料・生命保険料などの控除の申告をする場合
- 確定申告をせず、生活保護や災害などで減免制度を利用する場合
- 営業・農業などの事業所得や不動産所得がある
- 給与以外の雑所得がある
ただし、自治体によって申告要件が異なるため、事前に居住地の役所で確認することをおすすめします。
申告が不要なケース
住民税の申告が不要なケースには、以下のようなケースが挙げられます。
- 所得税の確定申告をした場合
- 会社で年末調整をした場合
- 公的年金以外の所得がなく、住民税の特別控除を利用しない場合
申告が必要なケースと同様に、自治体によって申告要件が異なるため、事前に居住地の役所で確認しましょう。
住民税の納付方法は2通り
住民税の納付方法には、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。
事業主が代わりに納付する「特別徴収」
1つ目の納付方法は、給与所得者の代わりに事業主(会社)が納付する「特別徴収」です。
特別徴収は源泉徴収と同じような方式で、事業主が従業員の給与から住民税を天引きして各自治体に直接納付します。住民税の金額は前年の所得に基づいて計算され、その年の6月から翌年5月までの1年間、毎月給与から天引きされることになるのです。
自分で納付する「普通徴収」
2つ目の納付方法は、自営業者やフリーランスなど給与所得以外の収入を得ている人が自分で納付する「普通徴収」です。
普通徴収の場合は、市区町村から毎年6月に納税通知書が届くため、記載されている納付期限までに指定の税額を直接支払います。
支払回数は、一括または年4回(6月、8月、10月、翌年1月)の分割です。銀行や郵便窓口・指定口座からの自動引き落とし・コンビニ支払い・オンライン決済など、さまざまな納付方法が用意されています。
年末調整と住民税の関係について正しく理解しておこう
年末調整は、源泉徴収した所得税の過不足を調整する手続きで、年末に正確に算出した結果を受けて還付か追税課税の処理を行います。一方、住民税は前年の所得に基づき自治体が計算する地方税で、納付方法は給与から天引きする特別徴収と、個人で支払う普通徴収があります。それぞれの違いや関係性を正しく理解し、期日を守って正確に納税することが大切です。
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