年末調整におけるひとり親控除について|寡婦控除との違いや適用できる条件・書き方を解説
令和2年から適用された新しい所得控除制度「ひとり親控除」。社会問題にもなっているひとり親世帯の生活難を支援するために創設された制度です。本記事では、年末調整において受けられるひとり親控除について、寡婦控除との違いや適用できる条件、申請書の書き方などを詳しく解説します。
目次
年末調整におけるひとり親控除とは?
年末調整におけるひとり親控除とは、扶養している子どもがいる納税者がひとり親である場合に、一定の要件に当てはまれば所得控除を受けられる制度のことです。
ひとり親控除はひとり親世帯の生活難を支援するために、令和2年から適用されました。すべてのひとり親家庭に公平な税制を実現することを目的としており、条件を満たせば子どもの年齢に関係なくひとり親控除を受けられます。
[参照:国税庁「No.1171 ひとり親控除」]
年末調整におけるひとり親控除の控除金額
年末調整におけるひとり親控除を受けられる場合、所得税・住民税それぞれの控除金額は以下のとおりです。
- 所得税:一律35万円
- 住民税:一律30万円
ひとり親控除の条件
ひとり親控除を受けるにはどのような条件を満たせばよいのでしょうか。ここでは、ひとり親控除の3つの条件についてそれぞれ解説します。
その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
婚姻届を提出していなくても、同居して生計を共にしているなど夫婦同様の意思を持って共同生活を行っている場合は事実婚の扱いとなり、ひとり親控除の対象外とされます。
事実婚と認められるのは、住民票の続柄に未届の夫・未届の妻とあるなど、事実上婚姻関係と同様の事情にあることが記載されている場合です。
生計を一にする子がいること
「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とはしていません。勤務・修学・療養などで別居していても、余暇に起居を共にすることを常例としている場合や生活費・学資金・療養費などを送金している場合は条件に当てはまります。
また、ここでの「子」はその年分の総所得金額などが48万円以下で、かつ他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない場合に限り対象です。条件に当てはまれば、子どもの年齢に関係なく認められます。
合計所得金額が500万円以下であること
事業所得・不動産所得・給与所得・雑所得などを合計した所得金額が500万円以下であることも控除を受ける対象となる条件の1つです。ただし、遺族年金や疾病手当金などの非課税所得は合計所得金額に含まれません。
本制度は低所得で生活に困窮しているひとり親家庭を支援するために施行されている制度です。したがって、合計所得金額が500万円を超えている場合は生活に困っているとは見なされず、ひとり親控除の対象外となります。
寡婦控除とは
ひとり親控除と混同されやすい所得控除として「寡婦控除」があります。寡婦控除は女性のみが受けられ、ひとり親に該当する人を除いた寡婦で条件に該当する人が対象です。対象者は下記の条件のいずれかを満たす場合に認められます。
- 夫と離婚したあとに結婚しておらず、扶養家族がいて合計所得金額が500万円以下の場合
- 夫と死別あるいは夫の生死が不明で、そのあとに結婚しておらず、合計所得金額が500万円以下の場合
以前はこの寡婦控除に対し、男性のひとり親には寡夫控除と呼ばれる所得控除がありました。しかし、性別による税制上の不公平な扱いをなくすために寡夫控除がひとり親控除に変わったという経緯があります。
[参照:国税庁「令和6年度版 暮らしの税情報」]
ひとり親控除と寡婦控除の要件の違い
ひとり親控除と寡婦控除の要件の違いは以下の表のとおりです。
ひとり親控除 | 寡婦控除 | |
婚姻歴 |
|
|
扶養家族 |
|
|
対象者の性別 | 制限なし | 女性のみ |
控除額 | 所得税:35万円 住民税:30万円 | 所得税:27万円 住民税:26万円 |
合計所得金額 | 500万円以下 | 500万円以下 |
寡婦控除は結婚歴があることが適用要件ですが、ひとり親控除は未婚のひとり親でも適用されるのが大きな違いです。加えて、ひとり親控除と寡婦控除で異なる点は、扶養家族や対象者の性別、控除額にもあります。
また、ひとり親控除と寡婦控除を併用することはできません。両方の条件に当てはまる場合に優先されるのは、より控除額が大きいひとり親控除の方です。
[参照:国税庁「令和6年度版 暮らしの税情報」]
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ひとり親控除を受けるための申告書の書き方
年末調整でひとり親控除の申告を行う場合、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書でひとり親であることを申告する必要があります。「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄にある3つの項目の中から「ひとり親」にチェックを入れましょう。
ただし、申告書の形式は年度によって変化する場合があるので、その都度確認してから申告することが大切です。
ひとり親控除における注意が必要な例
ひとり親控除を申告するにあたって、注意が必要となるのはどのような場合でしょうか。最後に、ひとり親控除における注意が必要な例について解説します。
1年の途中で結婚・離婚した場合
ひとり親控除の対象となる基本条件として「その年の12月31日時点で」と明記されています。したがって、結婚・離婚したのが1年の途中かどうかが影響し、12月31日時点でひとり親ではない状況にあればひとり親控除は受けられません。
反対に、1年の途中で離婚し、12月31日時点でひとり親である場合はひとり親控除を受けられます。もし、年末調整を行ったあとから12月31日までの間にひとり親となった場合は、後日、確定申告であらためて申告をすればひとり親控除が適用可能です。
ひとり親だが養育費を受け取っている場合
ひとり親であっても離婚後に元配偶者から養育費の支払いを受けている場合は、ひとり親控除の対象とならない可能性があるので注意が必要です。
この場合、子どもは養育費の支払いをしている元配偶者の扶養親族と見なされるので、養育費を受け取っている側の「生計を一にする子」の対象外となる場合があります。これは、同じ子どもを対象として、片方が扶養控除、もう一方がひとり親控除を受けるということができないためです。
もし、養育費を受け取っていて、ひとり親控除の対象となるのかどうかを知りたい場合は、税理士や税務署の相談窓口に相談してみましょう。
ひとり親控除の対象者は忘れずに申告をしよう
ひとり親控除は生活に困窮するひとり親世帯を支援するための制度であり、所得控除を受けるためには申告が必要となります。条件に当てはまれば所得控除を受けられるので、対象者は忘れずに申告しましょう。
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