コンティンジェンシープランとは?策定方法やBCPとの違いについて解説

記事更新日:2022/10/16

BCP対策

Contingency Plan・コンティンジェンシープラン

企業経営に欠かせないものの1つに、コンティンジェンシープランがあります。自然災害が多い近年になって注目を集めていますが、そもそもコンティンジェンシープランとは何を意味しているのでしょうか。本記事では、コンティンジェンシープランの策定方法やBCPとの違いを解説します。

コンティンジェンシープランとは?

コンティンジェンシープラン(Contingency Plan)とは、「Contingency=不測(不慮)の事態」に備えた対応マニュアルを意味し、日本語では「緊急時対応計画」と呼ばれています。

自然災害はもちろん、事故やテロ、サイバー攻撃など、様々なリスクが企業を取り巻く昨今においては、備えがない状態で不測の事態が発生すれば、企業は多大な損害を受けることになるでしょう。

コンティンジェンシープランを策定しておくことで、予期せぬ非常事態に遭遇した際も、迅速かつ的確に被害の最小化と早期復旧を図ることが可能です。

コンティンジェンシープラン策定の目的

非常事態が発生した際、なぜコンティンジェンシープランを通じて被害を最小化し、事業の早期復旧を図る必要があるのでしょうか。

そこには、大きく3つの目的が考えられます。

1.企業資産の保護

企業は自らの活動において、自社で抱えている従業員や様々な資産を守る義務があります。不測の事態により従業員や資産にまで被害が拡大すると、企業の存続そのものを脅かす事態に発展しかねません。

2.社会的責任の完遂

企業はその軽重にかかわらず、事業活動を通じて社会に貢献する責任を負っています。そして同時に、企業はその活動が社会に与える影響に対して責任を持たなければなりません。

金融機関や行政機関などの重要な社会インフラであればなおさら、社内で発生した事態による影響が外部に波及し損害を与えないよう、最善の策を講じる必要があります。

3.被害の連鎖防止

企業活動には多くのステークホルダーが関わっています。そのため、企業は連鎖的に被害が拡大することを防ぐために、非常時における自社の対応をあらかじめ検討しておく必要があります。

BCP(事業継続計画)との違いは?

災害などの非常事態が発生した場合の対応をまとめたコンティンジェンシープランは、BCP(事業継続計画)と混同されやすい言葉です。両者には「想定し得るリスクに対する行動計画」という共通点があるものの、それぞれの内容や目的には明確な違いがあります。

両者の違いは、時間軸です。被害の最小化と早期復旧を主目的とするコンティンジェンシープランは、事態の発生直後から数時間、長くて数日後までを対象期間とするのが一般的です。

対してBCPでは、事業や業務の継続が主目的とされるため、中長期的な時間軸で検討していくものです。

コンティンジェンシープランとBCPの違いは無くなりつつある

短期計画のコンティンジェンシープランと中長期計画のBCPですが、最近では境界線があいまいになっています。その傾向を顕著に表す事柄として「策定方法の変化」が挙げられます。

かつては、BIA(ビジネスインパクト分析)を用いてリスク評価するのは、BCP策定時に限られていました。コンティンジェンシープラン策定時ではBIAを用いずに、非常時の優先業務を決定していたのです。

しかし、近年ではBIAを用いたリスク評価を実施することで、より精度の高いコンティンジェンシープランの策定を目指す企業が増えています。そのため、両者の間にあった境界線は、次第にあいまいとなっているのです。

コンティンジェンシープランが重要視される理由

コンティンジェンシープランの重要性が高まっている原因として、自然災害や感染症による経営リスクが顕在化したことに加え、想定されるリスクの多様化が進んでいることが挙げられます。

企業は様々な観点からあらゆるリスクを想定し、非常時に直面した場合においても迅速に事態を収拾し、事業の復旧を図らなくてはなりません。

このような、いつ・どのようなリスクに見舞われても不思議ではない状況下では、短期集中型で被害の最小化と事業の復旧を目指すコンティンジェンシープランが有効です。

コンティンジェンシープランの策定方法

ここからは、実際にどのようにコンティンジェンシープランを策定していくのかを、プロセスごとに解説していきます。

1.策定の目的・基本方針の設定

最初にコンティンジェンシープランの策定目的を明確にしておくことで、プラン全体の方向性を定め、一貫性のある内容を策定できます。

たとえば、基幹システムに対するサイバー攻撃対策や、通信障害による機能停止への対策など、対象となる部署や組織それぞれに応じた目的設定が必要です。

設定した目的は、基本方針へと落とし込みます。目的と基本方針の間に一貫性があるかどうかを確認しながら、丁寧に目的設定を進めていきましょう。

2.企業リスクの分析・特定

このプロセスでは、自社を取り巻く様々なリスクをできる限り洗い出していきます。関連部署から複数の担当者を選任し、意見交換しながら分析と特定を進めていきましょう。

1人の担当者が実施すると、リスクの洗い出しから分析・特定までの間に偏りが生じてしまいます。複数で担当することで、想定リスクの抜け漏れを防げます。

また、必要に応じて「リスクマトリクス」を作成するのも効果的です。リスクマトリクスとは、リスクの発生頻度と損害の大きさを軸に、想定されるリスクの全体像を把握する目的で使用されます。

3.業務・資源の整理

平時の通常業務を列挙し、それぞれの遂行に必要な資源(ヒト・モノ・金・情報など)を紐づけていきます。ここでは、BIA(ビジネスインパクト分析)を用いて、各業務におけるリスクをさらに細分化し、詳細に分析していきましょう。

このプロセスのポイントは、非常時に必要な業務とリソースを明確にすることと、早期復旧のために取り組むべき業務の優先順位をつけることです。BIAの精度を高めるためにも、ポイントを押さえた情報整理を心がけましょう。

4.リスク発生時の被害予測

このプロセスでは、非常事態が発生した際、当初想定したリスクがどの程度まで損害を及ぼす可能性があるかを予測していきます。ここでのポイントは、被害の範囲を1次的なものだけでなく、そこから波及した2次・3次災害を含めて予測することです。

たとえば、地震発生による社屋の損壊で業務が停止すると、業績が悪化し、場合によっては事業縮小や倒産・廃業する可能性がある、というところまで突き詰めて想定しましょう。

どの程度まで被害範囲が及び、どのぐらいの損害を受ける可能性があるのか細かく予測しておくことが、具体的な対応策の策定に繋がります。

5.リスク発生時の対応検討

このプロセスでは、非常事態のシナリオを組み立て、対応を時系列にまとめていきます。ここでのポイントは、「誰が」「いつ」「何を」「どこで」「どのように」実施しなければならないかを具体的に決めておくことです。

加えて、初動のタイミング、実行後の報告先、責任の所在、実行者や意思決定者が不在の場合の代理といった細部も行動計画に盛り込んでいきます。

また、非常時における連絡体制についても、事前に決めておきましょう。一刻を争う事態においては、連絡や確認作業に工数を割くことは避けたいものです。非常時の連絡・安否確認作業には専用ツールを導入し、省力化・効率化を図ることをおすすめします。

6.従業員への啓蒙・研修

事態発生後の迅速な行動がカギを握るコンティンジェンシープランでは、担当者だけでなく、全従業員が一丸となって取り組む必要があります。

リスクに備えた体制構築は一朝一夕で実現できるものではないため、想定されるリスクの種類や波及範囲、その時々において実行すべきことを繰り返し社内に周知していきましょう。

コンティンジェンシープランの策定が完了したら、説明会や研修を重ね、すべての従業員が非常事態に的確な対応ができるよう、啓蒙と教育を継続することが重要です。

動画によるeラーニングや、社内イントラ内でのコンティンジェンシープランの共有は、従業員がいつでも学習・確認ができるため、社内意識の向上にも有効な手段となるでしょう。

7.定期的なプランの見直し・訓練

企業や事業を取り巻く環境が変化すれば、想定されるリスクも自ずと変化します。そのため、コンティンジェンシープランは定期的に見直し、陳腐化を防止することが大切です。

定期的な訓練の実施は、従業員教育とプランのブラッシュアップを兼ねた機会となります。最初に策定したコンティンジェンシープランは、様々な項目や要素が想定上のものであるため、運用してみると不備や不具合が見つかることも珍しくありません。

プランに準じた訓練を通じて、想定と現実の間にあるズレや新たなリスクを発見し、改善と検証を繰り返しましょう。それが、プランの精度向上に繋がります。

訓練の実施の際は、単なる動作や手順を確認するのではなく、実際に集団で行動してみるのが大切です。訓練後に従業員同士で意見交換することで、担当者以外の従業員の意識も向上し、全員が一丸となって取り組める風土が醸成されていくでしょう。

コンティンジェンシープラン策定時の注意

コンティンジェンシープランは、時として導入や運用がスムーズに進まないことがあります。そのような事態を避けるためにも、策定時に注意しておきたいポイントを理解しておきましょう。

1.策定完了が目標ではない

コンティンジェンシープランの策定時に見受けられる傾向として、慎重に進めすぎるがゆえに、多大な時間と労力を費やしてしまうことがあります。策定作業によって本来の業務に支障が生じたり、時間がかかりすぎて非常時に間に合わなかったりするのは、本末転倒です。

コンティンジェンシープランの最終的な目的は策定ではなく、非常事態に直面した際に、被害の最小化と事業の早期復旧を図ることにあります。

そのためにも、まずは60%程度の仕上がりでも試験的に運用を開始し、訓練や社内の意見を通じて得た改善案を反映させながら、ブラッシュアップしていく意識が大切です。

2.賛同されない可能性も

コンティンジェンシープランは、緊急事態に備えるための計画です。策定に多大な時間と労力が必要とされる一方で、活用時期は誰にも予測できません。そのため、策定作業そのものに対する理解を得られないケースもあるでしょう。

非常事態では、損害の最小化や早期復旧に向け、全社一丸となってアクションを起こす必要があります。社内の理解が得られない状態では、いくらプランを練り上げても実行するのは困難です。

まずは、コンティンジェンシープランの必要性を従業員に認識してもらい、協力体制を整備したうえで策定作業を進めていきましょう。

3.従業員への教育が定期的に必要

非常事態は予期せぬ場所やタイミング、状況で突然発生するため、必ずしも意思決定者からの指示が的確とは限りません。時には、現場の判断で対応する必要もあるでしょう。そのため、すべての従業員が自ら判断し、行動できる体制を整えておくことが大切です。

具体的には、普段からコンティンジェンシープラン運用に関するナレッジやマニュアルを全社共有し、定期的に従業員教育を実施することが挙げられます。非常時を想定したシミュレーション訓練であれば、座学より集中力を維持しやすく、当事者意識を高めながら取り組めるでしょう。

企業に適したコンティンジェンシープランを策定しよう

企業の経営リスクの複雑化・多様化が進む昨今において、企業は常に非常事態と隣り合わせの状態にあるといえます。

そのような状況下において、リスクの芽は早急に摘み取る意識が大切です。コンティンジェンシープランを策定しておけば、非常時でも動じることなくアクションを起こせるようになるでしょう。

今回解説した方法や策定ポイントを参考に、自社に適したコンティンジェンシープランの策定・運用を進め、経営レジリエンスの向上に取り組んでいきましょう。

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