従業員リソースグループ(ERG)とは?組織内の多様性向上の効果や活用法

最終更新日時:2022/08/02

ダイバーシティ

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近年多くの企業が注目している従業員リソースグループ。多様性のある環境作りに最も効果的とされていますが、果たして従業員リソースグループとはどのような取り組みなのでしょうか。本記事では、そんな従業員リソースグループについて解説していきます。

従業員リソースグループ(ERG)とは?

従業員リソースグループ(employee resource group: ERG)とは、共通点を持つ従業員同士によって構成されるグループのことです。共通点の一例としては、人種、宗教、世代、ジェンダーといったものが挙げられます。

従業員リソースグループを企業に導入する目的は、社内コミュニケーションの活性化や、多様性あふれる職場づくりにあります。ダイバーシティの推進が活発となっている昨今において、注目を集めている取り組みのひとつです。

従業員リソースグループ(ERG)が注目されている背景

従業員リソースマネジメントに注目する企業が増えているのは、人材の多様化が関係しています。

最近では個人の考えや価値観の多様化が進んでいるため、会社内で働く人材もさまざまです。外国人労働者、シニア社員、育児・介護中の従業員といった多様な人材が同じ職場で働く場合、意見の食い違いや対立が生じることも少なくありません。

そこで必要になってきたのが、共通の考えや個性を持つ従業員同士のコミュニティです。コミュニティでメンバー同士が悩みや課題を相談し合ったり、お互いをサポートしていくことで、自分らしさを保ちながら働けるようになります。

このように、人材の多様化によって変化した社内環境に対応する手段として、従業員リソースグループが注目されています。

従業員リソースグループ(ERG)で多様性向上に取り組むメリット

多様性の向上が期待できる従業員リソースグループでは、導入によって得られるメリットが数多くあります。ここからは、主なメリットを3つ確認していきましょう。

離職率の低下

従業員リソースグループが社内にあることで、従業員は自分の居場所が確保できます。例えば、性的マイノリティの立場にある人材が、同じような悩みを抱えた従業員と定期的に集まり、コミュニケーションを交わすことができれば、安心して働けるようになります。

また、グループが感じている労働環境への課題や問題点を意見として整理し、改善策を経営陣へ提案することで、よりより職場環境づくりが図れるでしょう。

このように、従業員リソースグループの存在によって社員は心の平穏が得られるようになり、同時に理想の職場環境づくりへ向けたアクションがとれるようになります。

結果として会社に対する愛着や帰属意識が向上し、「長くこの会社で働きたい」と考える社員が増えていくのです。

従業員のモチベーションアップ

従業員リソースグループは、多様性を奨励し、従業員の個人的な目標やキャリア目標をサポートするのに役立ちます。グループでの取り組みに決まりはなく、それぞれのグループが自主的にビジネスを企画したり、地域活動に従事したりするのです。

従業員リソースグループがあることで、仕事の励みや刺激を受けられるようになるため、高いモチベーションを持って業務に取り組む従業員が増えていきます。

従業員同士の信頼関係の構築

信頼関係の構築には、お互いが相手の考えや価値観を受け入れる姿勢が大切です。

従業員リソースグループでは、グループ内の活動を社内へ情報発信していきます。育児中の人材で構成されたグループの活動内容を知ることで、「育児しながら働くのは、大変なことなんだな」と理解を示す社員も出てくるでしょう。

つまり、従業員リソースグループが機能していくと、自然と社内のダイバーシティ教育が促進され、多様性をよしとする社員が増えていくのです。

こうして社内に多様性を尊重する企業風土が形成されていけば、社員同士がお互いの価値観や考え方を受け入れ、協調しながら働く職場環境へと発展していきます。

従業員リソースグループ(ERG)の活用方法

従業員リソースグループの導入は、企業にとってメリットの多いものです。具体的な活用方法を知ることで、導入効果をより実感できることでしょう。

ここからは、従業員リソースグループの活用方法を詳しく解説します。

企業活動の形成

従業員リソースグループの導入を推進していくことは、企業活動の活性化や形成に役立ちます。

最近では、日本でも多様性を受け入れるダイバーシティの考えが浸透してきました。ダイバーシティの推進には、従業員の自主的なアクションや取り組みが重要とされており、ボトムアップ型の体制が社内文化の改革に有効と考えられています。

従業員リソースグループの導入は、まさにボトムアップ型のアプローチです。従業員が生き生きと働けるように、共通の価値観を持ったグループがより良い職場環境づくりに向けてアクションを起こしていきます。

このように従業員リソースグループは、従業員主導の社内改革への活用が可能です。

変化の数値化

従業員リソースグループによる活動は、活動成果を具体的に数値化することで、より影響力を持った活動になります。

例えば、LGBTQ+に関連する募金活動を従業員リソースグループが実施するケースを考えてみましょう。募金活動の実施自体に重きを置いてしまうと、活動のインパクトを周囲が理解するのは困難です。

そこで目標募金額を設定し、数値として成果を報告できるようになると、グループがどの程度の影響を社会へもたらしているのかが、社内外へ伝わります。このようにグループの成果を数値化してアピールできる点が、従業員リソースグループの特徴です。

人事制度への提案

従業員リソースグループによる活動は、従業員による自主的な活動であり、ボトムアップ型の取り組みと位置づけられます。グループ内で最適な労働環境に関する議論を交わし、会社側へ提案することも活動の一部です。

より良い人事制度づくりに対しても、従業員リソースグループの意見が役立ちます。従業員にとって働きやすい労働環境が整備されているか、育児や介護などを抱えている人材が問題なく働けているかなど、それぞれの社内グループから意見をヒアリングすることで、会社は現状を把握し、どのような制度が必要なのか認識できるでしょう。

このようにして、会社の各種制度に従業員の考えや意見を反映させていくことも、従業員リソースグループの重要な役割です。

従業員リソースグループ(ERG)に取り組む際のポイント

ここでは、実際に従業員リソースグループづくりを図る際に押さえておきたい3つのポイントを確認していきます。

目標を明確にする

従業員リソースグループ内のメンバーが同じ方向を向いて活動するためには、共通の目標が必要です。グループを作る際には、活動を通じて達成したいことを明確にしましょう。

重要なのは、従業員リソースグループと会社の目標を一致させることです。グループでの活動は、あくまで会社活動の一部として実施します。そのため、最終的にグループがどのような形で会社へ貢献していくのかをイメージしたうえで、目標設定をおこないましょう。

小さな規模から始める

初めて自社に従業員リソースグループを導入する際は、グループ運営の体制や進め方など、わからないことも多いでしょう。

いきなり大人数のコミュニティを立ち上げたり、大規模な活動を実施しようと試みたりすると、うまくグループが機能しない恐れがあります。

最初は少人数でスタートし、徐々に規模を拡大していくのがスムーズな進め方です。小規模な活動であれば軌道修正しやすく、経験の積み重ねも容易であることから、無理なくグループ運営がおこなえます。

社内への情報共有をしっかり行う

従業員グループリソースがうまく機能するかは、社内への情報発信が鍵を握ります。大きな会社であるほど、社内にどのようなコミュニティが存在し、活動しているのか把握するのは困難です。

情報発信が不十分な場合、外国人労働者によって構成されたグループがあることを知らずに、一人で悩みを抱える外国人スタッフが発生するケースも起こりえます。

社内イントラネットや社報、社内SNSなどを活用すれば、従業員リソースグループの情報発信が可能です。新入社員に対しては、新人研修のタイミングで社内グループの存在を知らせてみてもよいでしょう。

従業員リソースグループ(ERG)に取り組む企業事例

従業員リソースグループの推進に取り組む企業は、日本でも数多く存在します。一例が、武田薬品工業株式会社です。グローバル企業である武田薬品工業は、世界各国で働く従業員の一体感に課題を感じていました。

そこで、従業員自らが仲間の声を集め、会社に提案する従業員主導型のネットワーク「Takeda Resource Groups (TRG)」を結成します。80の国と地域にある従業員ネットワークと連携することで、国をまたいだ交流の場を設けることに成功しました。

結果として、以下のように武田薬品工業には多くの従業員リソースグループが誕生しています。

  • はなみずき/Hanamizuki:女性活躍推進をテーマに据えたグループ
  • Leveraging Diverse Talents for a Better Workplace:異文化コミュニケーションの促進や多様な従業員をサポートするグループ
  • TAKE PRIDE Japan:LGBTQ+を理解し、支援するグループ
  • 子育て世代の輪:子育て世代の労働環境づくりに取り組むグループ
  • Career Link:キャリア形成支援グループ

こうしたダイバーシティ推進に繋がる社内活動を展開することで、従業員の個性や価値観を尊重した企業文化を醸成しているのです。

従業員リソースグループ(ERG)で組織を強くする戦略を

従業員リソースグループとは、共通の属性や考え方を持った人たちで構成されたグループを意味します。従業員リソースグループを推進することで、社員は自分の居場所を確保できるようになり、安心して働けるようになります。

また、グループ活動を通じて社員間のコミュニケーションも活性化していくため、良好な人間関係づくりにも繋がるでしょう。自社の組織強化の一環として、従業員リソースグループの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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