正しく理解するダイバーシティ推進と女性の活躍推進の関係について

最終更新日時:2022/12/09

ダイバーシティ

多くの企業が目指すダイバーシティ推進。「多様性」「女性の活躍」などダイバーシティを意味する言葉はたくさんありますが、そもそもダイバーシティは、どのような意味を持つのでしょうか。女性の活躍推進との関係性なども含め、詳しく解説します。

ダイバーシティ推進の正しい意味は?

近年、見聞きすることの多くなった「ダイバーシティ」の言葉ですが、その意味については、女性の活躍を推進すること、あるいは、働き方改革の取り組みのこと、といった誤解が多いのが事実です。

そこでここでは、ダイバーシティ推進の正しい意味について、改めてご説明します。

ダイバーシティの推進=女性の活躍ではない

ダイバーシティの意味における、最も多い誤解とも言えるのが、「ダイバーシティ=女性の活躍」といった認識です。

しかし、本来のダイバーシティは女性の活躍推進だけを指すものではありません。

そもそもダイバーシティとは、日本語では「多様性」と訳される言葉です。もともとはアメリカで女性やマイノリティに対して差別をすることなく、公正な処遇を受けることを目指した取り組みが進められたことを端緒としています。

一般社団法人 日本経済団体連合会が、2017年に公表した「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」によると、女性や若者、高齢者、LGBQ、外国人、障がい者などあらゆる人材が組織で活躍できる場を創出することをダイバーシティと表現しています。

また、経済産業省では「ダイバーシティ経営」と「多様な人材」について、それぞれ以下のように定義しています。

「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」

「多様な人材」とは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性も含みます。

[引用:経済産業省「ダイバーシティ経営の推進」]

ダイバーシティ推進においては、性別や年齢、障がい、国籍などさまざまな属性が意識されてきたなかで、その属性にとらわれることなく、「その人」自身が持つ個性を受け入れ尊重することが重要なのです。

そのため、ダイバーシティの推進とは、「女性」「若年者」「高齢者」「障がい者」「外国人」といった属性を過度に意識することなく、誰一人取り残さないための取り組みであり、ダイバーシティ経営においては、誰もが個性を尊重されつつ活躍できる環境が整えられていることを示していると考えることができます。

[出典:一般社団法人 日本経済団体連合会「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」]

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ダイバーシティと女性の活躍推進の関係は?

前述のとおり、女性の活躍推進は、ダイバーシティそのものを意味するものではなく、あくまでダイバーシティの取り組みの一部という関係性にあります。

ここでは、ダイバーシティの推進というと女性の活躍推進がイメージされることが多くなってしまった背景についてポイントをいくつか解説します。

女性の活躍は身近で取り組みやすい課題

まず、出産や育児といったライフステージの変化に伴う、女性社員の離職は、以前より対策や改善の必要性を感じていた企業が多く、身近な課題とされていました。

そのため、企業がダイバーシティ経営を推進するにあたって、いわゆるワークライフバランス、つまり仕事と私生活のバランスが選択できる環境の構築など、これらの課題から着手する企業が非常に多かったという点が考えられるでしょう。

賃金や雇用機会の男女格差の課題

また、日本においては、社会において合理的な理由なく男性が優遇されるといった風習が、いまだ根強く残っている点も関係していると考えられています。

実際に、世界経済フォーラムが公表した、世界各国の男女格差を数値化した「ジェンダー・ギャップ指数2022」によると、日本の順位は146か国中116位でした。これは日本が男女格差が大きい国であることを表しており、韓国や中国、ASEAN諸国よりも低い結果となっています。

特に管理職者や国会議員、閣僚の男女比は諸外国と比べて性別の偏りが顕著となっているなど、日本は世界的に見てジェンダー平等に課題を抱えていることは事実です。

日本においてダイバーシティの推進=女性の活躍推進のイメージが生じてしまった背景には、女性の能力が軽視されがちな風習に対する改革の必要性をはじめ、女性の長期的なキャリア形成を実現する体制づくりが急務であったと考えることができるでしょう。

[出典:World Economic Forum「Global Gender Gap Report 2022」]

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女性活躍が必要な理由

では、女性活躍が必要な理由、つまり、性別にかかわらず誰もが活躍できる機会を構築すべき理由についても確認していきましょう。

深刻化する人手不足の解消

日本の生産年齢人口(15~64歳)は、2001年の約8,614万人から、2021年には約7,450万人にまで減少しています。

このような少子高齢化による深刻な人手不足は、女性の社会での活躍が急がれる代表的な理由の一つに挙げられるでしょう。

今後も生産年齢人口の減少が見込まれており、従来、就労意欲があるにもかかわらず機会が失われがちであった女性や高齢者、障がい者など多様な人材の活躍が急務となっているのです。

[出典:総務省統計局「平成13年10月1日現在推計人口」]

[出典:総務省統計局「人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐」]

物事をとらえる視点の多様性

多角的な視点の必要性も、女性に限らず、多様な人材の受け入れが必要とされる理由です。視点の多様性は、新商品やサービス開発において、従来にはなかったイノベーションが創出される機会ともなります。

ダイバーシティ経営は、多様化した顧客ニーズを的確に捉え、新しい価値を生み出す上でも、必要不可欠な要素となっているのです。

【解説】女性管理職比率の現状と向上で得られる6つのメリット

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女性の活躍推進の現状

次に、日本における女性の活躍推進の現状をみていきましょう。

女性活躍推進の現状を把握するための要素はさまざまですが、定量的な指標としては、女性管理職の割合のほか、ワークライフバランスが維持しやすい環境かどうかを図る、労働時間、有給休暇取得率などの指標が用いられています。

政策においても、第5次男女共同参画基本計画をはじめ、2025年を年限とする以下の「成果目標」が挙げられているところです。「男女共同参画白書 令和4年版」より、数値目標と実績の一部をまとめました。

これらは女性の活躍推進を目指す、あらゆる目標のごく一部ではあるものの、女性役職者の割合など、2025年までの達成は、困難であると推測される項目もあります。

また、年次有給休暇取得率についても、義務化などの法整備が進んだことも影響し、令和2年には56.6%と過去最高となりましたが、70%の目標達成には届いていないのが現状です。

項目成果目標(2025年)実績
民間企業の雇用者の各役職段階に占める女性の割合係長相当職:30%課長相当職:18%部長相当職:12%係長相当職:20.7%課長相当職:12.4%部長相当職:7.7%※令和3年度(2021年度)
週労働時間60時間以上の雇用者の割合5.0%男性:7.7%女性:1.8%男女計:5.0%※令和2年度(2020年度)
年次有給休暇取得率70%男性:55.0%女性:60.1%男女計:56.6%※令和2年度(2020年度)
男性の育児休業取得率(民間企業)30%12.65%

※令和2年度(2020年度)

なぜ女性管理職は少ないのか?増えない理由と企業が取り組むべき課題

[出典:男女共同参画局「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~2-1. 成果目標一覧」]

[出典:男女共同参画局「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~あらゆる分野における女性の参画拡大 第1分野政策・方針決定過程への女性の参画拡大」]

女性管理職の重要性

女性管理職の割合については、政府も「2020年 30%」という数値目標を、2003年から掲げています。

女性活躍推進において、女性管理職の比率が重要とされる背景には、1990年に国連で採択された「ナイロビ将来戦略勧告」において、1995年までに指導的地位に就く女性の割合を30%にするという数値目標が示された国際的な経緯が少なからず影響しています。

また、女性管理職が増えることによって企業としても多様な意見を得られる点や、女性管理職による視点やマネジメントは、女性がより安心して働ける職場づくりに大きく貢献するといった側面も重要性を高める要因となっていると考えられるでしょう。

[出典:男女共同参画局「第5次男女共同参画基本計画 第1部基本的な方針」]

[出典:男女共同参画局「男女共同参画社会基本法制定のあゆみ 第3章平成元年から2000年プランの策定(平成8年)まで」]

女性活躍推進への課題

女性活躍推進は、ダイバーシティ推進において欠かせない取り組みの一つとなっていますが、現実的には、その推進を阻むことにもなりかねない、次のような課題を抱えています。

経営層による組織・業務・意識の改革

組織における産休・育休の環境整備や、男性の育児休業取得の推進、年次有給休暇の取得率アップといった、働き方における改革などは、経営層のコミットメントが欠かせません。

特に、休暇が取得しにくい社風が根付いてしまっている企業においては、まず意識改革と休暇を取ることができる、組織・業務の改革が伴います。

経営者が率先して、そのような改革をリードし、社員の理解を得る必要があるでしょう。

女性管理職に対する全社員の意識改革

日本においては、残念ながら、社会や組織において男性が優遇される風土が根強く残ってしまっています。

そのため、女性管理職に対し、合理的な理由なくネガティブな印象を持つ社員もいるかもしれません。このような「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」もまた、女性の活躍を阻む要因となってしまいます。

キャリア形成の後押し

女性管理職に対しては、働き方への不安から、女性自身が管理職への登用を望まないといった課題もあります。

独立行政法人 国立女性教育会館が実施した新卒者726人を対象に行った5年間の追跡調査によれば、女性の管理職志向は男性より顕著に低いことがわかっています。

その理由は、「残業が増える」、「仕事と家庭の両立が困難になる」といった管理職の働き方に対する不安が大半を占めるとされており、女性が長期的なキャリア形成を望める働き方改革が求められると言えるでしょう。

[出典:独立行政法人 国立女性教育会館「令和元年度男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査(第五回調査)報告書」]

ロールモデルを見つける

女性社員が「自分も管理職を目指してみたい」と思える模範となる人物、いわばロールモデルの存在も重要な要素の一つです。

ロールモデル存在は、実際の働き方がイメージしやすくなることから、キャリアプランの目標となるだけでなく、女性におけるキャリア観の改革も期待できます。

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成功経験・チャレンジの機会提供

よりキャリア形成に前向きになれるよう、チャレンジ機会の創出や成功体験の積み重ねなどの取り組みを増やすのも大切です。

性別に関係なく、意欲や能力による業務やプロジェクトへの抜擢などはもちろん、チャレンジしやすい柔軟な労働環境を整えることも求められます。

ダイバーシティ推進はなぜ失敗するのか?企業が抱える課題と進まない理由

ダイバーシティが逆差別や不公平さを生むこともある?

ダイバーシティの一環として、女性の活躍を支援する制度が構築されることに対して、「逆差別」や「特別扱い」であると不公平さを感じる人もいます。

ただし、そもそも男女平等は、男性と女性が全く同じ扱いを受けることを目指すものではありません。合理性なく性別を理由に機会が奪われること、あるいは、不当な扱いを受けることなどの是正を目的としたものです。

男性と女性は、人生や社会、組織などにおいてそれぞれに異なる課題を抱えています。さらには、性別に関係なく個人においても直面する課題や価値観は異なるでしょう。

組織におけるダイバーシティーとは、このような固有の問題やニーズを吸い上げて、誰もが平等に機会を得ることができるよう、解決策や対策を講じるための取り組みです。

しかしながら、男女平等を目指すための変化や取り組みに「不公平さ」を感じてしまう人がいることも事実です。

そのような意見を真っ向から否定するのではなく、背景に価値観の違い、日本の昔ながらの慣習や意識があることも理解し、経営層やマネジメント層が旗振り役となって、意識改革や適切なダイバーシティへの理解促進を進めることが必要です。

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ダイバーシティを正しく理解してより良い社会を目指す

ダイバーシティとは、多様性を意味する言葉です。企業経営におけるダイバーシティは、男性や女性といった性別のほか年齢や障がいの有無などの属性にかかわらず、個性を尊重し受け入れることによって企業の競争力を強化する考え方です。

女性活躍推進は、男女格差が諸外国と比べて大きい日本において、特にダイバーシティの実現のために欠かせない取り組みです。

ぜひ本記事をダイバーシティについて理解するためのきっかけとし、より良い社会の実現を目指してみてはいかがでしょうか。

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