アルムナイ制度とは?メリット・デメリットや導入企業の事例を解説!

最終更新日時:2023/09/22

ダイバーシティ

アルムナイ制度とは

近年導入企業が増加している「アルムナイ制度」。欧米発祥の取り組みで激しい経営環境の変化に対応するため日本でも普及が進んでいます。、アルムナイ制度とはどのような制度なのでしょうか。本記事では、アルムナイ制度の概要、メリット・デメリット、導入事例などを解説します。

アルムナイ制度とは?

アルムナイ制度とは、採用活動における、退職した元社員を対象とした復職(再雇用)制度を意味します。

「卒業生」や「同窓生」という意味をもつ英語の「alumni」を語源とするアルムナイは、大学などの教育機関の卒業生を示す言葉で、イベントへの参加や寄付金などを通じて、卒業後も母校とのつながりを継続する状態を表していました。

この関係づくりが欧米を中心に企業でも取り入れられるようになったのが、人事領域でのアルムナイ制度のはじまりといわれています。

また、退職した社員と継続的に接点をもち、情報交換や現役社員との交流などをおこなうためのコミュニティをアルムナイネットワークと呼びます。

アルムナイネットワークは企業が公式に運営するものから、退職者が自主的に運営するものなど、運営形態はさまざまです。企業公式のアルムナイネットワークと、自主組織のアルムナイネットワークの両方が存在する企業もあります。

アルムナイ制度が注目される背景とは

欧米企業から広がったアルムナイ制度ですが、日本でも注目されるようになったことには理由があります。

なかでも代表的なものとして挙げられるのが、「人材の流動化」と「少子高齢化に伴う労働人口の減少」の2点です。

この2つの理由について、詳しく解説します。

人材の流動化

日本では高度経済成長期以降、メンバーシップ型雇用と呼ばれる独自の雇用制度を採用してきました。年功序列と終身雇用をキーワードに、1社に長く勤めることを重視した制度です。

しかし、働き方の多様化によって人材の流動化が進んだことで、昨今では転職や独立などを選ぶ方も増えています。一方で、企業にとっては転職や独立などをきっかけに、優秀な人材との接点を完全に失ってしまうことは好ましくありません。

そこで、自社にマッチする人材をさまざまなコストを抑えつつ獲得できる手段の一つとして、アルムナイ制度が活用されているのです。

少子高齢化に伴う労働人口の減少

日本は先進諸国と比較して少子高齢化が深刻化しており、労働人口が減少傾向にあります。これにより、有効求人倍率(求職者1人あたりに対する求人数の割合)が上昇している状況です。

今後も労働人口の減少が推測される日本において、人材採用の難易度が上がり続けるなか、アルムナイ制度を活用し、優秀な人材を確保したいと考える企業が増えているのです。

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休職制度・ジョブリターン制度との違い

アルムナイ制度と似た言葉に、休職制度やジョブリターン制度がありますが、アルムナイ制度とは似て非なるものです。

ここではそれぞれの制度とアルムナイ制度の違いを解説します。

休職制度

休職制度とは、従業員の自己都合で就業が難しい場合に、雇用関係を継続しながら一定期間の労働義務を免除する制度です。休職制度は、大別して以下の6種類に分類されます。

  • 私傷病休職(業務外での傷病を理由とする場合)
  • 事故欠勤休職(傷病以外の私的な事故を理由とする場合)
  • 出向休職(グループ企業や関連会社に出向する場合)
  • 組合専従休職(労働組合の専従者になる場合)
  • 起訴休職(刑事事件等で起訴された場合)
  • 公職就任休職(議員・知事などの公職に就く場合)

休職制度の特徴は、あくまで復帰を前提として休職期間を設けることです。対してアルムナイ制度は、職場への復帰を前提にしていません。この点が大きな違いといえます。

ジョブリターン制度

ジョブリターン制度とは、育児・介護、配偶者の転勤など、生活事情の変化によってやむを得ず退職した元社員を再雇用する制度です。アルムナイ制度とは、再雇用の対象が異なります。

アルムナイ制度は、主にキャリア形成の手段として他社への転職や独立などを選び、自発的に退職した元社員を対象とする制度です。

また、アルムナイ制度の場合は、退職者同士が交流するコミュニティが構築され、離職した企業との接点が継続される特徴があります。

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アルムナイ制度導入のメリット

人材の流動化が進み、労働人口が減少する日本において、企業のアルムナイ制度導入には大きなメリットがあります。

ここでは主なメリットとなる3つのポイントを解説します。

即戦力人材のタレントプールとなる

人材採用において重要なのは、スキルマッチとカルチャーマッチの2軸です。しかし、採用市場でスキルマッチとカルチャーマッチの両方を満たす人材と出会うことは、決して簡単ではありません。

一方で、自社に一度でも勤めた経験のある元社員は、自社が求めるスキルやカルチャーとのマッチング率が高い傾向にあります。加えて元社員のパフォーマンスや成果も把握できているため、再雇用した場合は即戦力としての活躍が期待できるでしょう。

転職後の企業や独立での経験を経て、元社員の知識・スキルが拡張されている可能性もあります。

したがって、アルムナイ制度の活用は、即戦力人材を確保できる可能性が高まるうえ、元社員が手に入れた新たなノウハウを吸収する有効な手段といえるのです。

人材の採用・育成にかかる費用を削減できる

新入社員を採用した場合、ビジネスモデルの仕組みや社員が体現すべきコアバリューなど、業務遂行に欠かせない企業理解が求められます。そのため、採用コストと育成コストがセットで発生するのが一般的です。

この際、自社にマッチすると見込んで採用していても、育成期間中にミスマッチが発覚し、社員が退職してしまうケースもあるでしょう。

しかし、アルムナイ制度で元社員を再雇用した場合、初めて入社する社員と比較して企業理解が進んでいます。だからこそ、入社後のミスマッチを予防しつつ、採用コストと育成コストの両方を抑えることができるのです。

社員のエンゲージメント向上が期待できる

アルムナイ制度によって元社員との良好な関係を築けると、元社員は自社で働いた経験をプラスに考え、積極的な広報活動をおこなってくれる場合があります。商材や職場の話によってブランディングが向上し、新たな求職者や消費者の獲得につながることもあるでしょう。

元社員から発せられる好意的な経験談は、現社員にもプラスの影響を与えます。元社員は内情を理解しつつ、第三者の目線で企業を評価するため、元社員の語る内容がプラスの情報であるほど、現社員は自社の良さや働きがいを感じやすくなるのです。

また、アルムナイ制度によって元社員の復職実績が増えると、やむを得ず退職する必要がある社員にとっても、安心材料のひとつとして機能するでしょう。

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アルムナイ制度導入のデメリット

優秀な人材を素早く確保しつつ、コストの削減やエンゲージメントの向上など、さまざまなメリットがあるアルムナイ制度ですが、デメリットは少なからず存在します。

アルムナイ制度のデメリットを軽視すると、導入によって期待した効果が得られない可能性もあるため、注意が必要です。

ここではアルムナイ制度の導入における主なデメリットを3つご紹介します。

既存社員との良好な関係の構築が困難な可能性がある

アルムナイ制度を導入すると、元社員との関係性を維持できる反面、既存社員との良好な関係構築が難しくなる可能性があります。

これはアルムナイ制度の性質上、社員にとって「再雇用してもらえる」というイメージが先行してしまい、退職のハードルが下がってしまうからです。

また、アルムナイ人材は即戦力として迎え入れられるため、既存社員には昇給・昇進の機会を奪う存在として見られる可能性もあります。

このようなリスクを回避するためには、アルムナイ制度の目的やメリットを伝え、アルムナイ制度の理解を深めていくことが重要です。

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人事制度の見直しが必要になる

アルムナイ人材が優秀な人材であるほど、既存社員との処遇に差が出てしまい、既存社員の不満を買ってしまう可能性もあります。特に年功序列での給与体系を採用している企業は、この状況に陥りやすいといえるでしょう。

そのため、アルムナイ制度で元社員を再雇用する場合は、採用ポジションや給与体系の見直しが必要です。既存社員との格差をなくしつつ、アルムナイ人材にも納得してもらうための人事制度を整えていきましょう。

情報漏洩につながる可能性がある

​​アルムナイ人材との関係性を維持するためには、定期的な情報共有が欠かせません。一方で、アルムナイ人材は外部の人間であるため、元社員で内情に詳しいという理由で機密情報を口にしてしまうと、情報漏洩などのトラブルにつながるリスクもあります。

特にアルムナイ人材が元上司や元同期など、身近な存在であった場合、コンプライアンス意識が低下し、機密情報を漏らしてしまう可能性は大いにあり得るでしょう。

アルムナイ人材と接する際は、情報開示レベルを設定するだけでなく、常日頃から社員の意識づけをおこなうことが重要です。

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アルムナイ制度を運用するためのポイント

アルムナイ制度のメリット・デメリットを踏まえ、効果的に運用していくためには、どのようなポイントを押さえればいいのでしょうか。

アルムナイ制度で期待した成果を得るためには、主に4つのポイントがあります。

  • アルムナイ制度を社内に周知する
  • 復職条件を明確に定めておく
  • 受け入れ体制を整えておく
  • アルムナイとの関係性を構築する

これらのポイントについて、それぞれ解説します。

アルムナイ制度を社内に周知する

アルムナイ制度は欧米発祥ということもあり、制度の存在を知らない社員も多いでしょう。そのため、社内報や社内ポータルでの周知をおこなうことが重要です。

また、社内理解を得られない場合には、アルムナイ制度の重要性や活用目的をマニュアルに落とし込んだり、研修やeラーニングで理解を深めたりなど、必要に応じてプログラムを用意しましょう。

加えて、アルムナイ制度を活用して再入社した社員にインタビューをおこない、体験談を社内報として発信することも効果的です。

復職条件を明確に定めておく

退職のハードルを下げないためにも、復職の条件を明確に定義することを忘れてはいけません。

再雇用の条件となる、在籍年数、経験・スキルを明確化することで、「いつでも復職できる」という安易なイメージを払拭できるでしょう。また、復職後の活躍イメージなどを加えることで、退職前との違いもわかりやすくなります。

受け入れ体制を整えておく

復職希望の元社員と既存社員の間に軋轢を生まないためには、社内の受け入れ体制を整えておくことが重要です。

具体的にはアルムナイ人材が配属される部署や業務範囲を決めるだけでなく、採用前に既存社員と交流する機会を設け、相互理解を深めていきましょう。

アルムナイとの関係性を構築する

退職した人材をアルムナイとして再雇用するためには、定期的なコミュニケーションが不可欠です。コミュニケーションの場としては、以下のようなものが挙げられます。

  • アルムナイ人材と交流できるプラットフォームを開設する
  • SNSのグループ機能や会員制コミュニティを活用する
  • アルムナイ人材の交流イベントを開催する
  • アルムナイ人材向けの採用イベントを開催する

コミュニケーションの場を用意するだけでなく、気軽に交流できるようにルールを整備し、話題を提供していくことが重要です。

特にアルムナイ人材は外部の人間であるため、定期的に自社の存在を思い出してもらうためには、企業側が積極的にアクションを起こしていく必要があります。

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アルムナイ制度を導入している企業事例

アルムナイ制度の運用ポイントは理解できたものの、まだ具体的な導入イメージがわかない方も多いのではないでしょうか。

ここでは実際にアルムナイ制度を導入している企業事例を3つご紹介します。他社の事例を参考に、ぜひ活用イメージを膨らませてください。

トヨタ自動車株式会社

自動車メーカーとして業界をリードするトヨタ自動車株式会社は、事務職やソフトウエア開発などの非生産現場で従事していた「事技専門職」以上の社員(入社後3年経過かつ専門職経験1年以上)を対象に、プロキャリア・カムバック制度を導入しています。

プロキャリア・カムバック制度は、配偶者の転勤や介護などを退職理由とする社員が、再びトヨタで働くための制度です。制度に登録した対象社員であれば、退職期間の制限なく、原則として退職前の部署に復帰できます。

この制度を活用することで、安定した働き方を整備しつつ、社員が具体的かつ能動的なキャリア形成をおこなうことが期待されています。

コクヨ株式会社

総合文具メーカーのコクヨ株式会社は、多様な働き方を実現する制度として、正社員を対象に自己都合退職者再雇用制度を導入しています。これは以下の自己都合で退職した正社員を再雇用する制度です。

  • 結婚
  • 出産・育児
  • 介護
  • 配偶者の転勤
  • 留学
  • ボランティア
  • 転職
  • その他、会社が認めた自由

退職後にコクヨグループ外で培われたノウハウをグループ内に持ち帰ることで、ダイバーシティのさらなる推進が期待されています。

アクセンチュア株式会社

総合コンサルティング会社のアクセンチュア株式会社は、アクセンチュア卒業生をつなぐ「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」というポータルを運営しています。

これは卒業生に復職の機会を提供するだけでなく、既存社員やアルムナイ同士のコラボレーションを通じて知識や革新的なアイデアを共有し、多様なキャリアを拓くことを目的としています。

2023年7月時点で、アクセンチュア・アルムナイ・ネットワークに登録しているアルムナイ人材は30万人を超えており、78カ国でアルムナイの活動プログラムが実施されるなど、巨大なネットワークに成長しています。

サイボウズ株式会社

ソフトウェア会社のサイボウズ株式会社は、エンジニア・デザイナー向けのイベント「Cybozu Inside Out」を運営しており、このなかでアルムナイ人材向けの交流イベントを開催しました。

本イベントでは元サイボウズのエンジニアを集め、サイボウズの良いところ・悪いところをパネルディスカッション形式で赤裸々に語ってもらうプログラムを採用。社内の実情を知り、卒業生として外部の視点をもつエンジニアに自社の特徴を語ってもらうことで、透明性のある自社情報を提供し、多くの求職者の注目を集めた事例です。

アルムナイ制度を導入し社員が活躍できる環境を整えよう

会社を退職した元社員に再雇用を促すアルムナイ制度は、人材不足が加速する日本にとって、有効な人材採用の手段になり得ます。

アルムナイ制度を効果的に運用できれば、採用・育成コストの削減や即戦力の確保など、さまざまなメリットが生まれるでしょう。一方で、既存社員との関係構築や情報漏洩のリスクを考慮しなければ、アルムナイ制度の運用がマイナスに働く可能性もあります。

本記事を参考に、アルムナイ制度の運用に必要な準備を整え、優秀な社員を招き入れていきましょう。

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ビズクロ編集部
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