インクルージョンとは?ダイバーシティとの違いや関係・課題・事例について

2022/6/16 2022/06/16

ダイバーシティ

インクルージョン

近年注目が集まっているインクルージョンという考え方。ダイバーシティとセットで使われることが多いインクルージョンですが、果たしてどのようなメリットがあるのでしょうか。本記事では、そんなインクルージョンについて、ダイバーシティとの関係など詳しく解説していきます。

インクルージョンとは?

「インクルージョン(inclusion)」は、直訳すると「包括・含有・一体性」といった意味になりますが、ビジネスシーンにおいてはどのような意味合いを持つのでしょうか。

まずは、インクルージョンの意味とダイバーシティとの違いや関係から理解を進めていきましょう。

インクルージョンの意味

ビジネスシーンにおいて「インクルージョン」とは、企業内の多様な人材一人ひとりが仕事に参画する機会を持ち、個々の経験や能力などの特性を十分に活かした上で企業活動が行われている状態のことをいいます。

ここで言う「多様な人材」とは、性別や国籍、障害の有無だけでなく、キャリアや働き方などの多様性も含まれており、幅広い人材のことを指します。

インクルージョンの語源は、フランスにおける社会的経済格差を「ソーシャル・エクスクルージョン(社会的排除)」と呼ばれていたことに対する対義語から由来しており、元々は教育学上で用いられていた概念でしたが、近年では、それだけに留まらず、社会的問題からビジネスの世界でも使用される言葉となってきました。

ダイバーシティとの違いや関係について

インクルージョンに対して、ビジネスシーンにおける「ダイバーシティ」とは、多様な人材を活かすことをいいます。

さらに「ダイバーシティ経営」とは、多様な人材を活かし、一人ひとりの能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し価値創造につなげていく経営という意味合いを持ちます。

「ダイバーシティ経営」の実現には、個人の力を最大限に生かす「インクルージョン」の実現の鍵となるため、この点からダイバーシティとインクルージョンは、非常に深い関係性を持つことが窺えます。

ダイバーシティとインクルージョンの両方が必要な理由

企業のダイバーシティ経営には、ダイバーシティとインクルージョンの両方が必要です。

近年、日本では「ダイバーシティ経営」の推進により、女性の管理職登用や障がい者雇用を促進する企業が増加しましたが、実際のところは自社の課題解決に至っていない「形だけのダイバーシティ」となっていることが問題視されています

ダイバーシティにおける本来の目的は、性別や国籍の違いなどをはじめとした多様な人材の採用だけではありません。これに加え、ダイバーシティ経営には、個人の能力を最大限に活かすための取り組みが必要不可欠となります。

これらのことから、企業におけるダイバーシティ経営の推進には、ダイバーシティとインクルージョンの両輪をまわすことが必要とされています。

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むメリット

ダイバーシティやインクルージョンに取り組むと、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、企業がダイバーシティやインクルージョンに取り組むメリットについて解説します。

新しい価値の創出

ダイバーシティやインクルージョンによって、多様な思考を持つ人材が増えることにより、企業は新しい価値の創出が可能になります。

たとえば、高齢者ならではの経験に基づく知見や、外国人による視点などが加わることで、今までになかったイノベーションが生まれ、新規事業や新規サービスの誕生などが期待されます。

多様な人材の確保

ダイバーシティにより、性別や国籍などにとらわれずに幅広く有能な人材を雇用することは、企業における多様な人材の確保につながります。

企業は、単に多様な人材を雇用するだけではなく、企業内における教育体制の整備や、能力を存分に発揮できる環境作りなど、並行してインクルージョンにも積極的に取り組む必要があります。

社員のモチベーションアップ

ダイバーシティやインクルージョンは、既に長く働いている社員のモチベーションアップにもつながります。

ダイバーシティやインクルージョンを通じて、多様な人材の雇用だけでなく教育制度や職場環境が整備されることによって、多くの社員が働きやすくなったり、仕事に対する意気込みが変化したりするなど、モチベーションの向上が期待されます。

離職率の低下

前述の社員におけるモチベーションアップは、社員の離職率低下も牽引します。社員一人ひとりが自分に合った業務を遂行し、個々の活躍を実感することで、職場でのキャリアアップを目指すようになるだけでなく、会社に対する貢献度の向上も期待できます。

ダイバーシティやインクルージョンにより、このような社員の会社に対する気持ちの変化が生じるため、社員の離職率低下につながります。

ダイバーシティ&インクルージョンの具体的な事例

ここでは、ダイバーシティ&インクルージョンの具体的な事例を6つ紹介します。

シニア層の活躍

シニア層の活躍については、以下のような事例が挙げられます。

  • 定年後の再雇用制度を整備し、65歳を定年とする
  • 再雇用を見据えた研修の実施や、長期勤務可能な部署への異動制度の策定

今後も、シニア層が活躍できる場のさらなる多様化が期待されています。

女性の活躍推進

女性の活躍推進については、以下のような事例が挙げられます。

  • 女性社員に向けた研修の開催
  • 活躍する女性社員におけるロールモデルの提示
  • 女性管理職増加を目的とした女性リーダー育成制度の整備
  • 休暇や時短、在宅勤務制度の整備

企業は、女性社員の家庭と仕事の両立を実現させるとともに、キャリアアップを目指せる職場環境の整備が必要になります。

多国籍人材の活用

多国籍人材の活用については、以下のような事例が挙げられます。

  • 海外の就活イベントに参加し、優秀な人材を雇用
  • 外国人社員を受け入れやすい職場環境の整備
  • コミュニケーション向上のため、日本語の話せる外国人の管理職登用
  • 外国語の話せるメンターや相談役の設置

外国人に対する寛容な受け入れ態勢や、社員同士が円滑なコミュニケーションを図るための施策が重要です。

障害者の雇用促進

障がい者の雇用促進については、以下のような事例が挙げられます。

  • 自社における障がい者雇用率の公表
  • 障がい者が活躍できる職場環境の整備
  • 障がい者社員に向けたスキルアップ研修の開催
  • 資格取得の促進
  • 就労支援機器の提供

企業は、細かい部分も含めて個々の社員が働きやすい職場環境や支援を実施することが必要です。

LGBTへの正しい理解

LGBTの正しい理解については、以下のような事例が挙げられます。

  • LGBTイベント参加による支援の表明
  • LGBTに対する差別禁止など社内規定の整備
  • 相談窓口の設置
  • 社内トイレのジェンダーフリー化
  • 同性パートナーにおける福利厚生や待遇の整備

このように性的マイノリティであるLGBTについても、企業のダイバーシティ&インクルージョンの取り組みは進んでいます。

多様な働き方の実現

多様な働き方の実現については、以下のような事例が挙げられます。

  • 正社員でも時短勤務可能な制度の整備
  • テレワークや在宅勤務の導入
  • 妊娠・出産・子育て期間における休暇取得の促進
  • 両親の介護目的などによる休暇取得の促進

従来のフルタイムや通勤型といった勤務形態の見直しや、社員一人ひとりに寄り添ったさまざまな働き方の実現が、多様な人材が企業で能力を発揮することにつながります。

ダイバーシティ&インクルージョンの課題

企業におけるダイバーシティ&インクルージョンでは、これらの推進を妨げる要因が存在します。ここでは、ダイバーシティ&インクルージョンの課題について解説します。

多様化に向けた意識改革

ダイバーシティ&インクルージョンの課題として、多様化に向けた企業の意識改革が挙げられます。従来、日本企業における労働力の核となるのは正規雇用社員であり、社会的にも女性は男性と分業するのが当たり前とされてきました。

そのため、ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が広く認知された現在においても、基盤作りに苦戦する企業があとを絶ちません。

企業のダイバーシティ&インクルージョン推進には、このような社会風潮からの脱却とともに、多様化に向けた意識改革が必要です。

無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)

ダイバーシティ&インクルージョンにおけるもう一つの課題として挙げられるのが、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)の影響です。

アンコンシャスバイアスとは、無自覚に先入観や固定観念が入り込んでしまっている状態のことを指し、「無意識の偏見」と訳されます。アンコンシャスバイアスは、過去の経験や情報から形成され、本人の意識を超えて奥深くに潜んだ物事に対する見方とされています。

アンコンシャスバイアスの例として、以下の「無意識な思い込み」が挙げられます。

  • 女性は管理職に向かない
  • シニア層は柔軟性がない
  • 短時間勤務者は家庭を優先している

このようなアンコンシャスバイアスは誰もが持っているもののため、これらが社内で悪い方向に作用することも十分に考えられます。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進には、個々の持つアンコンシャスバイアスの影響を周知させるとともに、改善に向けて行動することが重要です。

ダイバーシティ&インクルージョンの進め方

ダイバーシティ&インクルージョンの推進において重要なことは、ダイバーシティ&インクルージョンをする上で、明確な目的とビジョンを持つことです。また、長期的に継続可能な仕組みと運用方法の構築も欠かせません。

ここでは、ダイバーシティ&インクルージョンの進め方について解説します。

1.行動計画の策定

行動計画の策定には、以下の2点が必要です。

  • 経営理念と行動指針における関係性の明確化
  • ダイバーシティ&インクルージョンにおけるゴールの設定

現状の企業にどのような組織が必要か、また組織を作るにあたって必要な要素は何か、といった「具体的な計画」を掲げることから始めましょう。

2.制度や仕組みの整備

ダイバーシティ&インクルージョン推進の鍵となるのが人事制度です。多様な人材が活躍できる人事制度の整備には、以下の3点に留意しましょう。

  • 職務の明確化
  • 公正な評価制度の構築
  • 多様性を活かせる部署への異動

また、人事制度の整備に加えて、勤務形態や職場環境といった仕組みの整備も重要です。

フレックスタイムや在宅勤務など、社員が時間や場所に縛られない工夫や、外国人社員が円滑なコミュニケーションを取れるように、外国語の話せる相談役やメンターの設置も進めましょう。

3.従業員の意識改革

ダイバーシティ&インクルージョンによる個々の多様性を受け入れ、一体感のある組織を構築するには、社員の意識改革が欠かせません。

例えば、女性管理職のポジションを設け、遺憾なく能力を発揮できるようにフォローアップするなどが挙げられます。経営陣やマネジメント層の意識改革には、特に力を注ぎましょう。

4.従業員のスキルアップ

ダイバーシティ&インクルージョンでは、社員のスキルアップも重要なポイントです。

社員のスキルアップは、社員同士が個々の多様性を認め、互いに尊重し合うことにつながるため、結果的に個々の能力を最大限発揮できます。ワークショップやeラーニングなどを活用し、社員のスキルアップを後押ししましょう。

5.推進体制の整備

ダイバーシティ&インクルージョンの推進にあたっては、リーダーを誰にするのかといった推進体制の整備が必要です。ダイバーシティ&インクルージョンの推進体制には、以下のような4つの種類があります。

  • 経営者率先型
  • 総務人事主導型
  • プロジェクトチーム型
  • 専門組織設置型

推進体制の整備にかかる予算や、期待されるパフォーマンスなどを踏まえて、推進体制を選択しましょう。

6.課題共有

推進体制の整備が完了したら、自社における以下の課題を全社員と共有します。

  • ダイバーシティ&インクルージョン導入の目的・目標
  • ダイバーシティ&インクルージョンに向けた行動計画

なお、全社員に向けた発信は〈経営トップから直々のメッセージ〉など多くの方法がありますが、いずれもダイバーシティ&インクルージョンに取り組む意義や、組織の真剣度合いをどの程度社員に伝えられるかがポイントになります。

7.施策の実践・効果測定

最後に、これまでの過程で作成した行動計画に沿って、施策の実践や効果測定を実施します。

また、施策の実践にあたっては、ダイバーシティ&インクルージョンの目標を個々のプロジェクトや個人評価に盛り込むことで、活動の停滞を予防できます。

現場と継続的にコミュニケーションを取り、実践の成果や成功事例を会社全体だけでなくホームページを利用して社外にも発信すれば、社員のモチベーション上昇にもつながります。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進ポイント

ダイバーシティ&インクルージョンの推進には、以下3つがポイントになります。

  • 個々の意見に多様性があることを受け入れる
  • 互いに相手を受容し尊重する
  • 推進チームを筆頭に、ダイバーシティ&インクルージョンの進捗をチェックする

ダイバーシティ&インクルージョンの推進には、個々だけでなくチーム全体についても客観的かつ細かいチェックが必要不可欠になります。

ダイバーシティ&インクルージョンで新しい価値の創造へ

今回は、インクルージョンの定義をはじめ、ダイバーシティとの違いや関係、課題などについて解説しました。

ビジネスシーンにおけるインクルージョンとは、企業内の多様な人材一人ひとりが仕事に参画する機会を持ち、個々の経験や能力などの特性を十分に活かした上で企業活動が行われている状態のことです。

企業におけるダイバーシティ経営の推進には、ダイバーシティとインクルージョンの両方が必要となり、推進の過程ではアンコンシャスバイアスなどの課題にも目を向けましょう。

企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」に取り組むメリットは多い反面、推進を急ぐのは得策とは言えないため、本記事で解説した具体的な事例や進め方を参考に一歩一歩前進していきましょう。

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