ノーマライゼーションとは?正しい意味や理念・日本の課題や事例を解説

2022/8/31 2022/08/31

ダイバーシティ

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多様化やグローバル化の影響からノーマライゼーションという言葉に注目が集まっています。ノーマライゼーションは、会社を働きやすい環境に整えるため重要な要素です。本記事では、ノーマライゼーションとはどのような意味か、日本の課題や事例と合わせて解説します。

ノーマライゼーションの意味とは?

ノーマライゼーション(normalization)は、単語として「正常化」という意味を持ちます。福祉用語として使われることが多く、障がい者や高齢者のような社会的マイノリティの人たちを特別視せず、一般の人と同じように捉えるという考え方です。

障がいや年齢に関係なく、生活しやすい社会環境を整えることを目指しています。

ノーマライゼーションの歴史

ノーマライゼーションは、デンマークのニルス・エリク・バンク=ミケルセンによって提唱されました。

デンマークの知的障がい者施設にて、障がい者が非人道的な扱いを受けていたことを問題視し、障がいを持っていようと、一般市民と同じ生活・権利が保障されるべきだと主張したことがきっかけです。

この主張が社会運動を起こすきっかけとなり、知的障害者福祉法としてノーマライゼーションの理念が初めて法制化されました。その後、スウェーデンのベンクト・ニィリエにより、アメリカをはじめ、国際的にノーマライゼーションの理念が広がりました。

ノーマライゼーションの理念

厚生労働省では、ノーマライゼーションの理念を

障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指す

としています。

[引用:厚生労働省「障害者の自立と社会参加を目指して」より]

そして、ノーマライゼーションは以下8つの原理が定義づけられています。

  1. 1日のノーマルなリズム
  2. 1週間のノーマルなリズム
  3. 1年のノーマルなリズム
  4. ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験
  5. ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
  6. その文化におけるノーマルな両性の形態すなわちセクシャリティと結婚の保障
  7. その社会におけるノーマルな経済的水準とそれを得る権利
  8. その地城におけるノーマルな環境水準のことを指す

[引用:厚生労働省「総論」より]

ノーマライゼーションの類義語との違い

ノーマライゼーションと似た意味を持つ言葉がいくつか存在し、混同されることも少なくありません。そこで、ノーマライゼーションと類似する言葉との違いを、それぞれ解説します。

バリアフリー|障壁を取り除く

バリアフリーは、障がい者や高齢者だけでなく小さい子どもも含む、社会的弱者の障壁となっているものを取り除くことです。段差をスロープにしたり、音声案内を導入したりすることなどが挙げられます。

福祉用語としては、ノーマライゼーションより広く知れ渡っている言葉といえます。そして、バリアフリーはノーマライゼーションを実現する手段のひとつとして捉えるとよいでしょう。

ユニバーサルデザイン|多くの人が利用できる

ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、国籍・言語などに関わらず、誰もが利用しやすいデザインのことです。バリアフリーは既にある障壁を取り除くのに対し、ユニバーサルデザインは最初から多くの人が利用できる障壁のない設計・プロセスを指します。

ユニバーサルデザインは施設や製品など、幅広い場面での活用が期待されています。ユニバーサルデザインもバリアフリーと同様、ノーマライゼーションを実現させる手段のひとつです。

インクルージョン|個性を認め合うこと

ノーマライゼーションの主な対象が障がい者であるのに対し、インクルージョンは社会的に排除されたすべての人々を対象とします。ノーマライゼーションでは、障がい者と一般市民との差異をなくすことを目標としていますが、インクルージョンは人々の差異ごと認め合い一体感を持つという考え方です。

このように、インクルージョンではお互いに個性を認め合える、多様性のある社会を目指しています。

日本におけるノーマライゼーションの現状

日本におけるノーマライゼーションを法律の面からみていきましょう。障害者雇用促進法では、障害者が雇用されやすくするための職業リハビリテーションを行うように定めています。

ただし、障害者雇用について雇用者数は増えているものの、実雇用率は法定雇用率を下回っているのが現状です。

実雇用率:実際に企業が雇っている障がい者の割合
法定雇用率:企業が雇うように義務付けられている障がい者の割合

このように、ノーマライゼーションの実現に向けた取り組みが行われているものの、達成までには様々な課題が残っています。

ノーマライゼーションが抱えている課題

では、ノーマライゼーションにおける課題とはどういったものがあるのでしょうか。

離職リスクが高い

障がい者の適性に沿った業務でない場合、長く続きにくい傾向があります。

また、障がい者本人でなければ症状を深く理解できないことから、企業が十分にサポートしきれず離職してしまうケースも考えられます。企業側が知らない間に、辛い思いをしたり、負担が大きくなっていることもあり得るのです。

さらに、障がい者本人も、実際に業務を始めてからしか分からない部分もあるでしょう。このように、障がい者と業務の適性をあらかじめ把握しにくいことも、離職率を高める原因となっています。

理解されないことが多い

ノーマライゼーションの理念は、世間に浸透しきっているわけではありません。そのため、企業に障がい者を受け入れるための体制が整っていないのが現状です。そして、障がい者への理解度が低ければ、障がい者をサポートしない社員もいる場合も想定できます。

つまり、企業が障がい者を受け入れ最大限活用するためには、社内でノーマライゼーションの理念を定着させることが必要です。

ノウハウが不足している

障がい者の生活や権利を保障する法律や制度が整いつつあるものの、企業側にノウハウがなければ、就職後のサポートが十分にできない可能性があります。人には向き不向きがあるのと同様に、障がいの症状によっても向いている業務は異なるでしょう。

そのため、企業側が障がい者に適した業務内容を把握することが大切です。ノウハウが不足していると、障がい者が十分なサポートを受けられず、離職につながりかねません。このような障がい者が活躍できない職場環境を、企業は改善していく必要があります。

ノーマライゼーションを実現させる際の注意点

ノーマライゼーションは、障がい者を特別扱いする取り組みではありません。そのため、障がいと関係なく、一般の人と平等に扱うことを意識することが重要です。

障がい者を雇用する際、状況によっては助成金の支給を受けられることもあります。助成金を活用しながらノーマライゼーションを推進させるとともに、新たな雇用創出を目指しましょう。

ノーマライゼーションの具体的な事例

ノーマライゼーションを推進している企業事例を4つ紹介します。

東京ダウンセンター|企業の取り組み

ダウン症患者において乳幼児期の治療は注目されやすい反面、生涯を継続的に管理・支援する仕組みはありませんでした。そこで、東京ダウンセンターではダウン症患者が年齢に関わらず、健康相談を受けられるような社会システムを整備しました。

また、同社ではダウン症患者でも教育を受けたり就労する機会を得られるよう、学校や就職などの節目における相談も受けています。

[出典:東京逓信病院「東京ダウンセンターのご案内」]

社会福祉法人ノーマライゼーション協会|民間の取り組み

社会福祉法人ノーマライゼーション協会では以下のように、様々な取り組みを行っています。

  • 障がい者支援施設の運営
  • 障がい児向けのアート活動
  • 高齢者向けのホームヘルパー事業
  • ケアハウスの運営

障がい者や高齢者が孤立せず、すべての人が共に生きるために、社会福祉のネットワークを広げるための活動を続けています。

[出典:社会福祉法人ノーマライゼーション協会「法人概要」]

障害者雇用促進法|日本の取り組み

日本では、障害者雇用促進法によって障がい者の方に就労機会を与え、職業の安定を目指すための法律が整備されています。

障害者雇用促進法では、採用活動において障がいの有無による差別や不当な賃金での雇用を禁止しています。障がいの有無に関わらず、本人の意思と能力のもとで労働できることを保障しているのです。そして、障がいがあっても一個人として尊重されることを定めています。

インクルーシブ教育|教育の取り組み

インクルーシブ教育は、障がいのある子どもも健常者も同じ場所で教育を受けることを指します。以前までは障がいのある子どもと健常者とで分けて教育を受けていました。しかし、インクルーシブ教育によって、障がいのある子どもが、精神的かつ身体的に最大限成長できるようになることを目指しています。

そして、インクルーシブ教育を浸透させるためには、障がいの有無に関わらず個々に合った教育を提供し、すべての子どもが取り残されないための仕組み作りが大切です。

ノーマライゼーションとは誰もが働きやすい社会を作り上げる考え方

ノーマライゼーションとは、障がい者や高齢者が一般市民と同じような生活・権利を得るための考え方です。ノーマライゼーションが推進されれば、企業は新たな雇用を創出できるだけでなく、社内の多様化も進むことが予想できます。

ノーマライゼーションを理解し、すべての人が働きやすい社会環境を作りあげていきましょう。

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