ガラスの天井とは?意味や事例・日本の男女格差の現状や問題点を解説

記事更新日:2022/08/05

ダイバーシティ

ガラスの天井

性別や人種による格差から生じる障害を表す言葉としてガラスの天井があります。SDGs推進や女性の社会進出により使用される機会が増えました。本記事では、ガラスの天井とはどのような意味なのか、事例や男女格差の現状と共に解説します。

ガラスの天井とはどのような意味?

ガラスの天井とは、優秀なスキルを持つ女性やマイノリティが、性別・人種・国籍など、能力や実績以外の理由で昇進を妨げられる見えない障壁を指します。

ガラスの天井は女性の社会進出が本格化した1980年代後半に使われ始め、1991年にはアメリカの連邦政府労働省が、ガラスの天井を公的な表現として認めました。

一方、日本では1999年の男女雇用機会均等法の改正によって、新規採用・人材配置・教育など、ビジネスの場で性別を理由に差別を設けることは、禁止されています。

2007年には間接差別禁止の規定が盛り込まれ、合意的な理由がないにもかかわらず、昇進に転勤や人事異動の要件を設けるなど、表面上は無関係に見えても結果的に差別につながる処遇も禁止となりました。

法律での規制によって、ガラスの天井は日本で存在しないように見えますが、世界各国と比べて女性管理職比率は低く、ジェンダーギャップ指数も大きいため、男女格差が小さくなっているとは言い難い状況です。下記で詳しくみていきましょう。

ガラスの天井という言葉の由来

1978年にアメリカで企業コンサルタントを勤めていたマリリン・ローデンが、「女性のキャリアパスを阻む見えざる障害を意味する用語」として、ガラスの天井を使ったのが、言葉の由来とされています。

1986年にはウォールストリート・ジャーナル紙で、組織内での昇進や女性のキャリアアップがいかに困難な挑戦か」といった視点で特集記事が組まれました。記事の中にガラスの天井が使用されたことにより、世界中の読者にガラスの天井が認知されました。

また、2016年にはアメリカ初の女性大統領就任に向け、立候補していたヒラリー・クリントンが、敗退のスピーチでガラスの天井を使用したことで、再び注目が集まっています。

日本の男女格差の現状について

様々なデータを見ていくと、日本の男女格差が是正されていない現状を把握できます。まず、2021年にスイス非営利財団世界経済フォーラム(WEF)が行った調査で、日本のジェンダーギャップ指数は、156カ国中120位でした。

長年低評価が続いている経済と政治のスコアは改善傾向にあるものの、先進国としては最低レベルに留まっています。また、アメリカやヨーロッパ諸国と比較すると、女性管理職や女性衆議院議員の比率が相当低く、女性の声が反映しづらい組織や社会体制の構築を招く要因になっています。

日本のジェンダーギャップ指数による順位

ジェンダーギャップ指数は、政治・経済・健康・教育の4分野における世界各国の男女格差をデータ化したものです。世界経済フォーラムが男女格差解消を目的に、2006年から毎年調査を実施しています。

2021年の調査によると、日本のジェンダー・ギャップ指数は156カ国中120位でした。改善傾向にあるものの、先進国の中では最低レベルで、ASEANやアフリカ諸国よりも低い数値に留まっています。

特に経済と政治分野での評価が低く、経済では女性管理職比率の低さが順位が伸びていない大きな要因です。一方、政治では国会議員の女性比率の低さに加え、過去50年にわたって女性首相が生まれていない点も問題視されています。

表:2021年の世界経済フォーラムにおける日本のスコア

分野 スコア 順位
経済 0.604 117
政治 0.061 147
教育 0.983 92
健康 0.973 65

アメリカとの比較

2021年の世界経済フォーラムの調査で、アメリカは156カ国中30位でした。日本よりも遥かに、ジェンダーギャップは小さくなっています。日本で評価が伸び悩んでいる経済と政治を比べると、経済では女性管理職比率に大きな差が生じています。

2020年にILO(国際労働機関)が実施した調査によると、アメリカの女性管理職比率は40.7%でした。対照的に日本は14.8%に留まっています。

ヨーロッパ諸国をみてみると、スウェーデンは40.2%、イギリスは36.8%、フランスは34.8%を記録しており、日本の女性管理職比率の低さが際立っています。日本政府は2020代の早い段階で女性管理職比率30%達成を目標に掲げていますが、達成は厳しい状況です。

一方、政治では、衆議院の女性議員比率に注目してみましょう。2020年10月時点でアメリカの女性議員比率は23.4%だったのに対し、日本はわずか9.9%でした。

アメリカの数値は、イギリス・フランス・ドイツよりも下回っていますが、同年にカラス・ハリス氏を初めて女性副大統領に据えるなど、ジェンダーギャップ是正を進めています。対して日本は、議員活動と家庭の両立が困難な点や各種ハラスメントによって、女性議員の比率が伸びていません。

女性有権者が52%と有権者の過半数以上を占めているにもかかわらず、女性議員が少ないため、政治決定に女性の声が反映されづらい体制が構築されています。

表:2021年の世界経済フォーラムにおける主な国との順位比較

順位 国名 数値
1位 アイスランド 0.892
2位 フィンランド 0.861
3位 ノルウェー 0.849
11位 ドイツ 0.796
24位 カナダ 0.772
30位 アメリカ 0.763
63位 イタリア 0.721
102位 韓国 0.687
107位 中国 0.682
120位 日本 0.656

男女格差が抱える問題点

男女格差の生じる原因として、以下4点が挙げられます。

  • 国に根付いた文化や風習
  • 宗教による影響
  • 生物学的な影響
  • 女性の仕事への意識

一つひとつ内容をみていきましょう。

国に根付いた文化や風習

古くから国に根付いたステレオタイプ的な文化や風習は、ガラスの天井が発生する要因の一つです。生活レベルに根付いていると意識を変えるのが難しく、意識改善には時間が掛かります。例えば、日本では家父長制と呼ばれる文化の影響が今でも色濃く残っています。

「男性は外で仕事、女性は家事」のイメージを持っている日本人は、少なくないでしょう。例えば、仕事による転勤で単身赴任が発生した場合も、女性ではなく男性が遠方へ行くと想像する方が、多いのではないでしょうか。

上記のイメージが変わらない限り、女性に掛かる育児や家事への負担の大きさは変わらず、仕事との両立が難しいため、キャリア志向の強い女性は出産や育児を諦めざるを得ません。

また、アフリカ諸国では女性に教育の機会が十分に与えられておらず、女性の社会進出阻害や賃金格差が生まれる要因となっています。

宗教による影響

ヒンドゥー教やイスラム教の影響によって、女性が不当な扱いを受けている国々もあります。インドではヒンドゥー教の教義であるダウリーの影響で、花嫁側の実家が家財道具や持参金など、莫大な金額を用意しなくてはなりません。

ダウリーが少ない女性は結婚できず、仮に用意できたとしても金額が少ない場合、結婚後に暴力や虐待を受けるケースも珍しくありません。現在、インド国内でダウリーは法律上禁止されていますが、依然としてダウリーの影響が残っている地域もあり、女児の大量中絶を招いています。

一方、イスラム教では男尊女卑の考えが色濃く、男性と比べて十分な教育機会や職業訓練の機会を得られません。一人で生きていくためのスキルを身に付けられず、女性の経済的自立や社会進出を阻む要因となっています。

生物学的な影響

男性は子どもを産むことができない半面、腕力や体力に優れています。労働者を雇う会社側からすると、出産や育児に伴う長期離脱の心配をしなくて済む男性の方が、長期的に労働を見込めます。

一方、女性は運動能力で男性に劣りますが、女性にしか子どもは産めません。子どもを異変から守るための危機察知能力も備えています。ただし、育児に必要な能力を持っているが故に、育児を任されるケースが多く、結果的に女性への大きな負担へつながっています。

女性の仕事への意識

女性側が管理職への就任やキャリアアップへの意識が低い場合、優れた制度を用意しても思うような結果は得られません。例えば、日本では管理職へ抱くイメージとして、「仕事量や残業が多く、責任も増える」など、ネガティブなイメージを持っている方も、多いのではないでしょうか。

さらに、企業内で管理職として活躍している女性も日本では依然として少なく、ロールモデルを見出すのが困難な状況です。キャリアアップへの興味があったとしても、育児との両立や出産後のキャリアプランを見出せない場合、退職を選ぶ女性も少なくありません。

また、近年は友人と過ごす時間や趣味に没頭する時間の確保など、ワークライフバランスを重視する方が増えています。組織内での評価が高まると昇給・昇進が望める一方、任される仕事量も多くなり、プライベートな時間が以前のように確保できる保証はありません。

ライフスタイルの維持が人生にとって重要な位置を占めている場合、会社から高く評価されていても、管理職へのステップアップは望みません。残業時間を減らすため、任された仕事を無難にこなす働き方を選択する形になります。

男女格差が起こした問題の事例

男女格差が原因によって起きる事例は、以下の5つです。

  • 人身売買の被害
  • 強制婚の被害
  • 暴力の被害
  • 教育不等の被害
  • 男性との賃金差

いずれの問題も早急に解決しなければならない事例です。ですが、男女格差だけが原因ではなく、宗教・文化的慣習・紛争など、複数の要因が絡み合って発生している問題も多く、解決には時間を要します。

人身売買の被害

性的搾取・強制労働・臓器売買などを目的に、女性の人身売買が世界各地で行われています。ユニセフの調査では2014年時点で世界85カ国で人身売買が行われており、1万7,752人の被害者のうち、およそ71%が女性でした。

抵抗力に乏しい子どもをターゲットにした事例も多く、2012〜2014年の間に発生した人身売買の被害者のうち、子どもは30%前後を占めていました。また、紛争が起きると武装グループが暴力・脅迫・詐欺など、様々な方法を駆使して子どもを囲い、兵士として徴用します。

強制婚の被害

強制婚を目的とした人身売買も世界各地で行われています。特に金品の交換に伴う生活費の獲得を目的に、18歳未満の女の子を望まない相手と強制的に結婚させる児童婚が問題となっています。

強制婚によって見知らぬ相手と結婚した女の子は、家族に裏切られたショックや相手からの暴力によって心身が疲弊し、人生に価値を見出せません。

さらに、結婚を機に学校を強制退学させられるケースも多く、教育の価値や自立の方法を十分に理解できていない状態で、教育を受ける機会を奪われます。仮に子どもが生まれても、人生の選択肢を提示できず、貧困の連鎖を断ち切れません。

児童婚が多発する要因は、複数考えられています。まず考えられる理由は、腐敗した政治や紛争の勃発によって行政機能が機能不全に陥っていることです。国内経済が潤っていないと、雇用機会を十分に創出できません。

貧困に苦しむ家庭の多くが生活費を稼ぐ手段として、女の子を望まない相手と結婚させます。また、水道・電気・ガスなど、社会インフラが十分整備されていない点も問題です。

水汲みや家事に多くの時間を割かないといけず、女の子が満足に十分な教育機会を得ることができません。教育を受けられなかった子どもは仕事に就けず、自立することができません。

暴力の被害

恋人や夫から暴力を振るわれるDVも男女格差によって生じる被害事例の一つです。殴る・蹴るといったケースだけでなく、言葉による支配や人前で馬鹿にするケースもDVに該当します。

DVが起きる要因としては、男性優位の社会構造が長く続いた影響が、依然として色濃く残っていることが考えられます。日本でDVが発生した場合は罪として罰せられますが、世界には不当な暴力が横行している地域も多く、多くの女性が被害に遭っています。

教育不等の被害

宗教上の理由・文化的背景・法の未整備などを理由に、満足な教育機会を十分得られない女の子が世界には数多く存在します。文字の読み書きや簡単な計算ができないなど、基礎的な学力を身に付けられない場合、仕事にも就けず貧困を断ち切れません。

また、女性教員の不在や男女別のトイレの未整備など、学校環境が整っていないため、教育を受けられない子どももいます。悪しき慣習の廃止や学校インフラの整備が進まない限り、十分な教育機会の確保や貧困解決は難しいでしょう。

男性との賃金差

男女の賃金格差は是正されておらず、特に日本は世界各国と比べても賃金格差が大きい国です。OECDが2020年に実施した調査では、男性が得られる賃金の中央値を100とした場合、女性は77.5でした。

同じ年に調査をしたイギリス・カナダ・アメリカは、女性賃金の中央値が80を超えており、日本の賃金格差の大きさが際立っています。日本で賃金格差が是正されない理由としては、非正規で働く女性が多い点が挙げられます。

2020年時点で非正規で働く男性は22%だったのに対し、女性は54%に上りました。育児と両立するためにはフルタイム勤務は難しく、短時間勤務に切り替えた女性も少なくないでしょう。

また、女性管理職として活躍している方も少なく、キャリアアップへの魅力やメリットを見出せない原因も考えられます。企業としても女性社員は結婚や出産で退職するとの懸念が大きく、ライフイベントで退職する確率が低い男性に、賃金を高めに設定している側面もあります。

男女格差を減らすための対策

男女格差を減らすためには、以下3点の対策が重要になります。

  • 現状把握
  • 意識改善
  • 環境改善

対策内容を一つひとつ確認していきましょう。

現状把握

まずは、男女格差が発生している原因を知ることが重要です。原因を特定できていない状態で改善を図ろうとしても、的外れな対策につながり、思うような効果は得られません。

なぜ非正規で働く女性が多いのか、管理職比率が伸びない原因は何かなど、現状を正しく把握し、改善策を立てることが重要です。

意識改善

ガラスの天井は、かつての古い慣習や文化に起因しています。例えば、「男性は外で仕事を頑張り、女性は家で家事に努める」といった旧来的な性役割へのイメージは、家不父制の影響に伴う無意識バイアスです。

現状を打破するためには、思考や意識を変えることが重要です。例えば、優秀な人材を確保するといった目的を掲げている場合、男性だけにこだわる必要はありません。

女性は出産や育児で退職する可能性がありますが、キャリア志向の強い女性もいます。全員が同じ価値観を持っているわけではありません。さらに、育児と仕事を両立できる環境を整備できれば、離職を防げます。

また、管理職や経営層を男性だけで固めた場合、グループシンクに陥る可能性があります。グループシンクは集団で合意結成をする際、合意を最優先にするあまり、多様な意見やリスク評価が抜け落ちる状態のことです。

間違った判断を下さないためにも、女性管理職の比率向上によって、幅広い視点から意見を得ることが重要です。さらに、女性はコミュニケーション能力・協調性・観察力に優れており、スムーズな社内調整や社員のメンタルケアも期待できます。

環境改善

仕事と育児を両立できる環境を整備できれば、離職率低下や管理職比率向上が望めます。フレックスタイム制の導入・短時間勤務の期間延長・管理職向けプログラムの拡充など、女性がキャリアアップを望める環境を整備することが重要です。

女性の多くが、キャリアアップや管理職に興味を持っていないわけではありません。ロールモデルの不在や制度の未整備によって、仕事を続けるには不安が大きく、結果的に退職に至っているケースもあります。

育児と仕事の両立は負担が大きく、企業からのサポートが欠かせません。また、働きやすい職場環境の整備は、社員のモチベーションアップや企業のイメージアップなど、企業側にも多くのメリットをもたらします。

ガラスの天井とは男女格差を表す言葉

今回の記事では以下の5点について解説してきました。

  • ガラスの天井の概要
  • 日本の男女格差の現状
  • 男女格差が抱える課題
  • 男女格差が原因で起きた事例
  • 男女格差を是正する対策

日本は管理職比率の低さや賃金格差の大きさなど、世界各国と比べ男女格差是正への対応が遅れています。男女格差が発生する原因としては、古くからの文化・生物学的な影響・女性の仕事へのモチベーションなど、様々な理由が挙げられます。

男女格差が無くならない場合、貧困や暴力の被害は減らないでしょう。また、世界では人身売買や強制婚など、より深刻な事例が発生しています。男女格差を是正するためには、地域によって異なる原因の把握と環境整備が重要です。

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