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同調圧力の意味とは?日本だけ?種類や具体例、メリット・デメリットを解説

2022/08/18 2024/03/27

ダイバーシティ

同調圧力とは

職場や会議で同調圧力を感じて、自分の意見を変えてしまうという話は少なくありません。本記事では、同調圧力の意味や類似した用語との違いを詳しく解説します。国内外での同調圧力の具体例や企業へのメリット・デメリット、同調圧力への対策も紹介するので、対処する際の参考にしてみてください。

この記事の要約

・同調圧力とは、集団の意見や行動において多数派に合わせる様に仕向ける無言の圧力のこと
・海外でも同調圧力はあるものの、日本では特に同調圧力の傾向が強い
・古くから日本では同調圧力の文化があり、新型コロナウイルスの流行でさらに強まった

同調圧力の意味とは?

同調圧力とは、集団における意見や行動において、多数派に合わせるように仕向けるための無言の圧力のことです。英語では、仲間からの圧力という意味で「ピアプレッシャー」と表します。

同調圧力には、以下のような性質があります。

  • 目に見えない暗黙の影響力が働く
  • 大多数の意見に同調させる
  • 少数派の意見・状態が尊重されない

同調圧力が問題視される理由は、意見・行動の正否にかかわらず、多数派が場をコントロールする点です。

同調圧力を感じる場では、多数派が少数派に無言の圧力をかけて心理的に同調せざるを得ない環境が形成されています。そのため、たとえ客観的には正しくない意見・行動であっても、少数派が強制的に同調させられる可能性がある点は大きな問題であるといえるでしょう。

同調圧力と類似した用語に「同調行動」「同調効果」「協調・協調性」があります。ここからは、それぞれの用語と同調圧力の違いを解説します。

同調行動との違い

同調行動とは、同調圧力を受けて無意識・意識的に自分の行動を周りに合わせてしまうことです。

例えば、流行に合った服を購入したり飲食店で友達と同じメニューを注文したりするのが同調行動です。このように、同調圧力は原因であり、同調行動は結果である点が大きな違いといえます。

同調効果との違い

同調効果とは、無意識に自分の言動や考えを周囲に合わせてしまうことを指します。同調効果が働くと、無意識のうちに自分の言動や考えを大多数に合わせようとしてしまいます。

たとえ周りが間違っているとわかっていても、無意識に周りに合わせてしまうことがある点が特徴です。同調行動と同じく、同調効果は同調圧力による結果であるといえます。

協調・協調性との違い

協調・協調性とは、自分と異なる環境や立場、意見の人とも協力し合い行動する能力のことです。同調圧力と異なる部分は、言動や考えを合わせて同調するのではなく、それぞれ自らの意見を持ちながら行動する点です。

例えば協調性がある人は、問題が生じた際に相手の意見や価値観が合わないと感じた場合でも、コミュニケーションを図りながらお互いの意見を尊重し合い、改善へと導けます。

このように、協調・協調性はお互いの関係性を保ちながら双方の意見を尊重できますが、同調圧力は同調せざるを得ない雰囲気が形成されてしまう点が違いといえます。

日本だけ?同調圧力が強いと言われている背景

日本は、海外と比較しても同調圧力が強いわけではありません。爵位制度やカースト制度など、世界各国に類似のヒエラルキーがあるように、海外にも似たような同調圧力は存在しています。

では、日本の同調圧力が強いと感じる原因はどこにあるのでしょうか。ここでは主な原因といわれる3つのポイントを解説します。

空気を読むという暗黙のルールため

日本では、「周りの空気を読む」という暗黙のルールがあります。新語・流行語大賞においても、暗黙のルールを感じさせる単語がいくつもノミネートされています。代表的な例は、2007年の「KY(空気が読めない)」と2020年の「自粛警察」です。

これらの言葉はいずれも「空気を読む」という曖昧な協調性を重視しており、和を乱す者を排除する傾向にあります。

このことからもわかるように、日本では「集団から外れた言動を取る者は悪である」と捉えることに、一定のバイアスがかかっているのです。

和の文化を大切にする傾向があるため

和の文化とは、集団の和を乱さないよう周囲と同じ言動をすることです。日本では和の文化を大切にする傾向があり、家族や友人関係、職場などでの絆が大切にされているため、周囲と協調する能力が高いといえるでしょう。

しかし、集団の和を乱すような言動をする人に対しては批判的になる傾向もあり、他人との衝突を避けるためにも同調圧力が生まれる状況になりやすいといえます。

村社会の名残があるため

日本は島国である関係で、村社会の文化が重視されてきた歴史があります。村社会とは、集落に基づいて形成された地域社会のことです。

当時は、村のルールを破った者に村八分という制裁行為を課し、地域住民が団結して共同絶交を行うことが一般的でした。

この動きが様相を変え、現代にも根強く残っているのが「いじめ」や「ハラスメント問題」です。いじめやハラスメントなどの排斥行為を恐れて、世間体や人目を気にする文化が定着したことで、結果的に同調圧力が強まったといわれています。

同調圧力の具体例

同調圧力は組織や集団内で発生するため、ビジネスシーンや学校で起こりやすいといえます。ここからは、ビジネスや学校における同調圧力の具体例を紹介します。

<ビジネスにおける同調圧力>

  • 自分の仕事は終えているのに周囲が残業していて帰りづらい
  • 会議で自分の意見が言い出せず多数派に流される
  • 飲み会に行きたくないのに周囲が参加するから断れない

<学校における同調圧力>

  • クラスのリーダー的存在に周囲の言動が左右される
  • クラス内の流行に合わせて服装や髪型、持ち物を変える
  • 休み時間に一人で過ごしてることを悪く言われる

どちらの場合も、現在の環境から浮き立ってしまわないように周りに合わせてしまうことが多いでしょう。特に学校では、周囲と異なる言動はいじめにつながりやすく、意識的に周りに合わせる場面も多いと考えられます。

新型コロナウイルスで強まった同調圧力

2020年の新型コロナウイルスの流行以降、日本での同調圧力がさらに強まったと考えられています。

例えば、コロナ禍では「マスクの着用」や「自粛」が要請されていました。日本では強制ではないため選択の自由はありましたが、ほとんどの国民が要請に従い、外出時は必ずマスクをしたり外出は控えて家で過ごしたりしていました。

しかし、マスクを着用しない人や外出を自粛しない人に対して、過度に取り締まりや攻撃をする「マスク警察」「自粛警察」と呼ばれる人々が現れたのです。

このように、コロナ禍ではより一層「周囲と同じ言動をとらなければならない」という同調圧力が生まれ、息苦しさを感じた人も多いと考えられます。

海外の同調圧力について

日本だけではなく、海外にも同調圧力は存在します。ここからは、世界各国における同調圧力の例を紹介します。

アメリカの同調圧力の例

アメリカでは、個人の自由や意見を尊重する個人主義が根付いており、同調圧力はないと考える方も多いでしょう。

しかし、ビジネスシーンや政治の場では、統率をとるために各企業で同調圧力が存在します。実際に、日本とアメリカで集団に対する同調の割合を調査したところ、どちらの場合も割合は変わらなかったという結果も出ているようです。

[出典:東京大学「『ウチ』への同調 日本人もアメリカ人と変わらず」]

中国の同調圧力の例

中国は、民族や家族などの集団意識が強く、集団の調和や伝統を守ることが求められる傾向にあります。そのため、個人主義で勝手な行動をしたり集団の調和を乱したりすると、非難の対象になることがあるのです。

また、社会信用システムの導入によって個人の評価を下げない行動が必要になることから、同調圧力が生まれるケースも考えられます。

ヨーロッパにおける同調圧力

ヨーロッパでは、ビジネスシーンや政治の場で同調圧力が見られます。例えば、第二次世界大戦においてドイツに併合されたオーストリアは、同調圧力でヒトラーへの忠誠の誓いが強制されていました。

また、日本の「郷に入れば郷に従え」と同様の「When in Rome, do as the Romans do.(ローマでは、ローマ人のようにしなさい)」という言葉もあり、周囲との調和が求められる場面で同調圧力が生まれることもあります。

同調圧力をかける人の特徴

ここでは同調圧力をかける人の特徴として、8つのポイントをご紹介します。

仲間外れを嫌う人

1つ目は、仲間外れを嫌う人です。この心理は、「黒い羊効果」に対する恐怖心で成り立っています。

黒い羊効果とは、集団の中で特定の人間を評価する基準が生まれ、そこから外れた人間の評価を下げることを表した心理学用語です。集団凝集性が高く、依存心が強い状態の組織に発生しやすいといわれています。

この効果が発生していると、集団に属する人間は多数派である白い羊としての振る舞いを重視します。逆に異質な振る舞いをする黒い羊がいた場合は、攻撃行動を取ることで、自らも黒い羊にならないように自分自身を守ろうとするのです。

仲間外れを嫌うという心理は、学生のグループや会社・団体のチーム内など、集団行動を重んじるシチュエーションで発生しやすいといわれています。

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抜け駆けされたくない人

2つ目は、抜け駆けされたくない人です。この心理は、先を越されることに対する嫌悪感で成り立っています。コロナ禍では一部の要人に対してワクチンを優先投与するという判断に、世界各国の国民から非難の声が上がりました。

この事象は全員が我慢している状況下で、特定の人物が先んじて接種を受けるということに対して、抜け駆けされたくない心理が発生したのです。

抜け駆けされたくない心理は、国民・同期・チームなど、一括りで表現できる集団内で発生しやすいといわれています。特に成果に対して、将来的に自分自身も同じ成果を得られる可能性を認識できていると、この心理は強まるようです。

他人の自由を許したくない人

3つ目は、他人の自由を許したくない人です。この心理は、マイナスを共有すべきという義務感で成り立っています。

他人の自由を許さない心理は、自分自身が負担や苦労を味わっているのに、それを上手く避けている相手を見つけたときに発生しやすいです。

例として、職場での定時退勤や有休取得者に対する心理的プレッシャーが該当します。周りが頑張っているのに、一人だけ楽をすることは許せないという気持ちが、同調圧力の源になっています。

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自分で責任を負いたくない人

4つ目は、自分で責任を負いたくない人です。この心理は、他人の言動に巻き込まれたくないという忌避感で成り立っています。

目立った言動を取る人物が管理下にいた場合、その責任は自分自身にも降りかかるのが一般的です。この際、責任を回避する方法として、同調圧力が用いられます。

具体的には、主語を世間や会社という大きな存在に置き換えて自分自身の発言を正当化し、責任を回避するという手法です。この手法は「太宰メソッド」というネットスラングとしても呼ばれています。

自分で責任を負いたくない心理は、中間管理職や現場責任者など、部下と上級ポジションの間に位置する人に発生しやすいといわれています。

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自分が正しいと思い込みたい人

5つ目は、自分が正しいと思い込みたい人です。この心理は、信じたものを貫こうとする正義感で成り立っています。

もし意見の食い違いがあった場合、互いに自分が正しいと思い込んでいると、最終的には無理やりにでも相手を同意させることになります。このときに同調圧力が発生するのです。

自分が正しいと思い込みたい心理は、成功体験を積み重ねた数が多い人ほど発生しやすいといわれています。

固定観念に縛られている人

6つ目は、固定観念に縛られている人です。この心理は、既存カテゴリに対する信頼感で成り立っています。

  • 子育ては女性の仕事
  • 力仕事や危険な仕事は男性の仕事
  • 理系は論理思考が得意
  • 営業職は飲み会が多い

他にも、世の中には数多くの固定観念が存在していますが、これらの内容に実証的な根拠はありません。しかし、古くから言われているものほど、妄信してしまう人も少なくないでしょう。

そして、この固定観念から外れた言動を取る者が現れると、「本当はこうしなければいけない」という心理が働き、同調圧力が起こるのです。固定観念に縛られる心理は、平均思考の強い人や信念が類型化した集団で発生しやすいといわれています。

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正義感が他より強い人

7つ目は、正義感が他よりも強い人です。この心理は、善悪二元論に対する責任感で成り立っています。

代表的な例が、コロナ禍で起きた自粛警察です。感染対策として政府がマスク着用や外出自粛を呼びかけた際に、それらのルールを守らない人は悪であると認識したことで同調圧力が発生しました。

具体的には、マスクを着用していない人をSNS上に晒す、他県ナンバーの自動車を傷つけるなどの攻撃的な行動が該当します。

特に日本ではロックダウンが法律上できないため、あくまで推奨や要請というかたちでしか伝えられませんでした。この曖昧な表現が、正義感による同調圧力を強めたともいわれています。

正義感の強い人は、「頼まれると断れない」「困っている人を放っておけない」などの利他的な思考と、自分自身の意志を貫こうとする利己的な思考が共存するケースも多いようです。

実際に行動へ移せない人

8つ目は、実際に行動へ移せない人です。この心理は、自分自身に対する劣等感で成り立っています。行動に移せない人は自分自身の判断に自信がなく、多数派の意見・行動を後押しすることで、劣等感を薄めようとします。

これが結果的に暗黙の了解として同調圧力を生み出してしまうのです。行動に移せない心理は、動機付けや結果の想像などに苦手意識を持つ場合に発生しやすいようです。

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同調圧力があることによる企業へのメリット

同調圧力が働くことで、企業にもたらされるメリットもいくつかあります。ここからは、同調圧力があることによる企業へのメリットを2つ紹介します。

不正を防げる

同調圧力によって、組織の調和を乱すことや周囲と異なる言動をとることが難しくなるため、不正の防止につながります。

不正を行えばメンバーに迷惑がかかり、組織から疎外される恐れもあります。結果的に同調圧力が不正の抑止力として働き、不正のない環境を生み出せるのです。

チームワークの向上が見込める

適度な同調圧力があると、社員同士の意見が食い違うことも減り、協力しやすい環境が生まれます。これにより円滑なコミュニケーションが生まれ、チームワークの向上が見込めるのです。

例えば、ミスや問題が生じた場合でも、お互いに補い合って解決に導くことができるでしょう。調和を保つ意識が生まれやすくなり、組織全体の生産性向上も期待できます。

同調圧力があることによる企業へのデメリット

同調圧力によるメリットがある一方で、デメリットも存在します。

ここからは、同調圧力があることによる企業へのデメリットを3つ紹介します。

従業員の主体性がなくなる

同調圧力が強い環境では、自ら進んで物事を行うのではなく周囲に合わせる意識が強くなるため、従業員の主体性がなくなる恐れがあります。

主体性がなくなると新たな挑戦やイノベーションが起こりづらくなり、企業の成長が停滞します。また、少数派の意見が抑圧される影響で、従業員の創造性も失われる可能性もあるでしょう。

余計な残業が増加する

過度な同調圧力により、余計な残業が増加する可能性も考えられます。

例えば、自身の仕事は終わっているのに周囲が残業をしていると、「退社しづらい」と感じる方も多いでしょう。このような状況を解決できずにいると、負のスパイラルで余計な残業をする従業員が増加する恐れがあります。

余計な残業はストレスになり、業務効率や生産性の低下につながると考えられます。

ハラスメントの原因になる

同調圧力が強まると、多数派の意見や言動が正しいかを深く考えず、流されて同調してしまう場合があります。

「仲間外れにされたくない」「和を乱したくない」という思いが、さらに同調圧力を強めてしまうのです。このような状況はハラスメントやいじめなどにつながりやすいため、注意しなければなりません。

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同調圧力に対処するための企業の対策

同調圧力は、企業による対策で対処できる場合があります。ここからは、同調圧力に対処するために企業ができる対策を2つ紹介します。

コミュニケーションを活発化させる

同調圧力は、大多数の意見が判断基準になることで生まれるため、コミュニケーションを活性化させて個人の意見を積極的に交換できる環境づくりを意識しましょう。

個人の意見をお互いに交換することで、「みんながこの意見だから」といって流されるのではなく、それぞれの意見を尊重できるようになります。

コミュニケーションが活性化されれば互いに目を向けやすくなり、フォローし合いながら成長できる環境が構築できるでしょう。

アサーティブ・コミュニケーションとは?実践ポイントや活用事例を解説

従業員の意思表示や発言の場を作る

普段から従業員の意思表示や発言の場を作ることで、個人の価値観や意見を明確にする文化が生まれ、それぞれの考えを尊重できるようになります。

従業員同士の交流の場を作ったり、上司と部下の間で1on1ミーティングなどの機会を設けたりして、積極的に互いの考えを伝え合いましょう。

コミュニケーションを重ねることで信頼関係を構築でき、同調圧力の影響を受けないチームワークの向上にも寄与します。

過度な同調圧力を防いで快適な社内環境を構築しよう

同調圧力はチームワークの向上が期待できる反面、過度な圧力が起こるとストレスの増加や自己主張の抑制などのデメリットも生じます。ストレスの増加は生産性を下げ、自己主張の抑制は多様性を損ねるなど、チームワークの向上という長所を相殺しかねません。

集団で大きな成果を得るためにも、同調圧力のメリット・デメリットを考慮しながら、上手に付き合っていく方法を模索していきましょう。

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