同調圧力とは?日本人の同調圧力が強い原因や屈しない人の心理的な特徴

最終更新日時:2023/01/11

ダイバーシティ

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職場や会議でプレッシャーを感じて、自分の意見を変えてしまうという話は少なくありません。本記事では、「同調圧力」とはどのような意味か解説します。日本人の同調圧力が強いといわれている原因や、屈しない人の心理的な特徴も紹介しているので、対処する際の参考にしてください。

同調圧力とはどのような意味?

同調圧力とは集団における意見や行動において、多数派に合わせるように仕向けるための無言の圧力を指します。

同調圧力が問題視される理由は、意見・行動の正否にかかわらず、多数派が場をコントロールする点です。

これは多数決と前提条件が異なり、場の空気感などによる強制力が影響している関係で、心理的に同調せざるを得ない環境が形成されています。

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海外と比べて日本の同調圧力は強い?

日本は和を重んじることから、海外と比べて同調圧力の強い国だと定説化していますが、根拠となるデータはありません。

爵位制度やカースト制度など、世界各国に類似のヒエラルキーがあるように、海外にも似たような同調圧力は存在しています。

同調圧力の発生条件に国柄が関係しないことは、心理学の実験結果でも証明されています。特に有名なのは、心理学者のソロモン・アッシュ氏が発表した「アッシュの同調実験」です。

この実験は、選択制の問題に対して、明らかに不正解である選択肢が多数派の場合、参加者はどの答えを選ぶのかというものです。実験はアメリカで実施され、後に日本でも同様の実験が行われています。

結果として、両国ともに約7割の参加者が間違った回答を選んだのです。その他にもアッシュ型の実験は時期や場所を変えて何度も行われていますが、結果に大きな差異はありません。

そのため、海外と比べて日本の同調圧力が強いとは言い切れないでしょう。

日本の同調圧力が強いと感じる原因とは?

日本は海外と比較しても同調圧力が強いわけではありません。

では、日本の同調圧力が強いと感じる原因はどこにあるのでしょうか。ここでは主な原因といわれる3つのポイントを解説します。

文化による圧力

日本は島国である関係で、村社会の文化が重視されてきた歴史があります。当時は村のルールを破った者に村八分という制裁行為を課し、地域住民が団結して共同絶交を行うことが一般的でした。

この動きが様相を変え、現代にも根強く残っているのがいじめやハラスメント問題です。

いじめやハラスメントなどの排斥行為を恐れて、世間体や人目を気にする文化が定着したことで、結果的に同調圧力が強まったといわれています。

心を通わせるコミュニケーション

「阿吽(あうん)の呼吸」や「つうと言えばかあ」という言葉にも表れているように、日本では心を通わせるコミュニケーションを美徳とする傾向にあります。

これを実現するために重視されるのが、「配慮」や「忖度」などの推察力です。しかし、推察の意識が強すぎると、コミュニケーションが希薄になるというデメリットがあります。

とはいえ、「言わなくても察してほしい」という要求は、コミュニケーションの中で少なからず発生するでしょう。

この要求を満たせない場合、関係性に亀裂が生じることもあるため、リスクを恐れて同調圧力に応じてしまうケースも多いようです。

空気を読むという暗黙のルール

日本では新語・流行語大賞において、暗黙のルールを感じさせる単語がいくつもノミネートされています。代表的な例は、2007年の「KY(空気が読めない)」と2020年の「自粛警察」です。

これらの言葉はいずれも空気を読むという曖昧な協調性を重視しており、輪を乱す者を排除する傾向にあります。

このことからも分かるように、日本では「集団から外れた言動を取る者は悪である」と捉えることに、一定のバイアスがかかっているのです。

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同調圧力をかける人の特徴

ここでは同調圧力をかける人の特徴として、8つのポイントをご紹介します。

仲間外れを嫌う人

1つ目は、仲間外れを嫌う人です。この心理は、「黒い羊効果」に対する恐怖心で成り立っています。

黒い羊効果とは、集団の中で特定の人間を評価する基準が生まれ、そこから外れた人間の評価を下げることを表した心理学用語です。

黒い羊効果は集団凝集性が高く、依存心が強い状態の組織に発生しやすいといわれています。

この効果が発生していると、集団に属する人間は多数派である白い羊としての振る舞いを重視します。逆に異質な振る舞いをする黒い羊がいた場合は、攻撃行動を取ることで、自分自身を守ろうとするのです。

仲間外れを嫌うという心理は、学生のグループや会社・団体のチーム内など、集団行動を重んじるシチュエーションで発生しやすいといわれています。

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抜け駆けされたくない人

2つ目は、抜け駆けされたくない人です。この心理は、先を越されることに対する嫌悪感で成り立っています。

コロナ禍では一部の要人に対してワクチンを優先投与するという判断に、世界各国の国民から非難の声が上がりました。

この事象は全員が我慢している状況下で、特定の人物が先んじて接種を受けるということに対して、抜け駆けされたくない心理が発生したのです。

抜け駆けされたくない心理は、国民・同期・チームなど、一括りで表現できる集団内で発生しやすいといわれています。

特に成果に対して、将来的に自分自身も同じ成果を得られる可能性を認識できていると、この心理は強まるようです。

他人の自由を許したくない人

3つ目は、他人の自由を許したくない人です。この心理は、マイナスを共有すべきという義務感で成り立っています。

他人の自由を許さない心理は、自分自身が負担や苦労を味わっているのに、それを上手く避けている相手を見つけたときに発生しやすいです。

例として、職場での定時退勤や有休取得者に対する心理的プレッシャーが該当します。周りが頑張っているのに、独りだけ楽をすることは許せないという気持ちが、同調圧力の源になっています。

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自分で責任を負いたくない人

4つ目は、自分で責任を負いたくない人です。この心理は、他人の言動に巻き込まれたくないという忌避感で成り立っています。

目立った言動を取る人物が管理下にいた場合、その責任は自分自身にも降りかかるのが一般的です。この際、責任を回避する方法として、同調圧力が用いられます。

具体的には、主語を世間や会社という大きな存在に置き換えて自分自身の発言を正当化し、責任を回避するという手法です。

この手法は「太宰メソッド」というネットスラングとしても呼ばれています。

自分で責任を負いたくない心理は、中間管理職や現場責任者など、部下と上級ポジションの間に位置する人に発生しやすいといわれています。

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自分が正しいと思い込みたい人

5つ目は、自分が正しいと思い込みたい人です。この心理は、信じたものを貫こうとする正義感で成り立っています。

前提として、自分自身が間違っていると思いたい人は多くありません。一方で、人には異なる価値観があり、別々の人生を歩んでいるため、意見が食い違うことも珍しくないでしょう。

もし意見の食い違いがあった場合、互いに自分が正しいと思い込んでいると、最終的には無理やりにでも相手を同意させることになります。このときに使われるのが同調圧力です。

自分が正しいと思い込みたい心理は、成功体験を積み重ねた数が多い人ほど発生しやすいといわれています。

固定観念に縛られている人

6つ目は、固定観念に縛られている人です。この心理は、既存カテゴリに対する信頼感で成り立っています。

  • 子育ては女性の仕事
  • A型はまじめで神経質
  • 理系は論理思考が得意
  • 営業職は飲み会が多い

他にも、世の中には数多くの固定観念が存在していますが、これらの内容に実証的な根拠はありません。しかし、古くから言われているものほど、妄信してしまう人も少なくないでしょう。

そして、この固定観念から外れた言動を取る者が現れると、「本当はこうしなければいけない」という心理が働き、同調圧力が起こるのです。

固定観念に縛られる心理は、平均思考の強い人や信念が類型化した集団で発生しやすいといわれています。

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正義感が他より強い人

7つ目は、正義感が他よりも強い人です。この心理は、善悪二元論に対する責任感で成り立っています。

代表的な例が、コロナ禍で起きた自粛警察です。感染対策として政府がマスク着用や外出自粛を呼びかけたことで、それらのルールを守らない人は悪であると認識したことで発生しました。

具体的にはマスクを着用していない人をSNS上に晒す、他県ナンバーの自動車を傷つけるなどの攻撃的な行動が該当します。

特に日本ではロックダウンが法律上できないため、あくまで推奨や要請というかたちでしか伝えられませんでした。この曖昧な表現が、正義感による同調圧力を強めたともいわれています。

正義感の強い人は、「頼まれると断れない」「困っている人を放っておけない」などの利他的な思考と、自分自身の意志を貫こうとする利己的な思考が共存するケースも多いようです。

実際に行動へ移せない人

8つ目は、実際に行動へ移せない人です。この心理は、自分自身に対する劣等感で成り立っています。

行動に移せない人は自分自身の判断に自信がなく、多数派の意見・行動を後押しすることで、劣等感を薄めようとします。

これが結果的に暗黙の了解として同調圧力を生み出してしまうのです。行動に移せない心理は、動機付けや結果の想像などに苦手意識を持つ場合に発生しやすいようです。

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同調圧力に屈しない人の特徴

同調圧力をかける人がいる一方で同調圧力に屈しない人もいます。その特徴を5つご紹介します。

  • 自分の理解者がいる
  • 自分の意見を持っている
  • 自分に自信がある
  • 集団に振り回されない
  • SNSを上手に活用している

自分の理解者がいる

集団に対して異を唱えるのが自分1人の場合、心細いと感じる人は多いでしょう。しかし、自分の理解者となる味方が1人でもいれば状況は一変します。

そのため、同調圧力に屈しない人には、身近に理解者がいるケースが多いです。特に思考パターンや行動原理が近しい人は、自分の主張を理解してくれる可能性が高いでしょう。

自分の意見を持っている

同調圧力に屈しない人は、自分の意見を持っている場合が多いです。

どのようなシチュエーションでも、集団の思考に流されるのではなく、自分でしっかり考えて行動する傾向にあります。

一方で、集団に対して自分の意見を伝えることは、最初はハードルが高いかもしれません。

そのような場合は、アサーショントレーニング(自他を尊重した上で自己主張を行うための訓練)などを通じて、お互いの意見を尊重するコミュニケーション方法を身に付けると良いでしょう。

自分に自信がある

自分の判断に自信がある場合、同調圧力に屈することはほとんどないでしょう。このパターンに当てはまる人は同調圧力に対して違和感を覚えた際、その感覚を正しいと認識できる傾向にあります。

特に感覚を裏付ける客観的な根拠がある場合は、同調圧力を恐れずに意見を発信できるでしょう。

アサーティブ・コミュニケーションとは?実践ポイントや活用事例を解説

集団に振り回されない

集団に振り回されない人は反対意見によって同調圧力をかけられたとしても、集団を抜けるという選択肢を取れる傾向にあります。

自分の人生は、他の誰でもない自分自身のものです。

集団に属することが心身にダメージを与えるのであれば、自分の幸せを追い求めて集団から離れるのも1つの選択でしょう。

SNSを上手に活用している

同調圧力に流される原因の1つに、特定の集団にしか所属していないという場合があります。

そのため、同調圧力に屈しない人は、SNSを有効活用して複数のコミュニティから情報を収集する傾向にあります。

このパターンに当てはまる人は、SNSを概念実証の場として活用します。具体的には自分の意見に賛同が得られるかをSNS上で確認してから、行動に移すというものです。事前にSNSでの賛同を多く得られていれば、同調圧力を恐れず、自分の意見を伝えることができるでしょう。

同調圧力はいじめやハラスメントの原因となる

本記事では、同調圧力の意味や原因をはじめ、同調圧力をかける人・同調圧力に屈しない人の特徴について解説しました。

同調圧力はチームワークの向上が期待できる反面、過度な圧力が起こるとストレスの増加や自己主張の抑制などのデメリットも発生します。

ストレスの増加は生産性を下げ、自己主張の抑制は多様性を損ねるなど、チームワークの向上という長所を相殺しかねません。

また、同調圧力はいじめやハラスメントの原因となるケースも多いため、相互監視や相互配慮など、同調圧力の持つ要素をプラスに働かせることが重要です。

集団で大きな成果を得るためにも、同調圧力のメリット・デメリットを考慮しながら、上手に付き合っていく方法を模索していきましょう。

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