ダイバーシティ推進によるメリット・デメリット|注意点も徹底解説

最終更新日時:2023/07/05

ダイバーシティ

ダイバーシティのメリット・デメリット

近年注目される言葉として多様性を意味するダイバーシティですが、ビジネスの分野ではどのような意味を持つのでしょうか。本記事では、企業におけるダイバーシティの推進によるメリットやデメリットのほか、推進する際の注意点などを解説します。

ダイバーシティとは?

一般的に、ダイバーシティには「多様性」「相違点」「多種多様性」という意味があります。

そして、ビジネスにおけるダイバーシティは「個人や集団の間に存在しているさまざまな違い」を踏まえた上で、価値観や意見の違いを尊重し、多様なアイデアへと反映しようとする考え方として捉えられています。

企業に所属している人には「年齢」「性別」「国籍」「学歴」などのさまざまな違いがありますが、その違いを認めつつ積極的に多様な人材を採用し、企業の戦力として活用する動きがビジネスにおけるダイバーシティです。

ダイバーシティはもともと、米国企業が採用活動をする際に、性別や国籍、人種、障がい、LGBT、学歴、価値観や宗教などの属性に左右されることなく、公正な処遇を実現するために広がった取り組みです。

このアメリカで行われていた多様性を認め尊重する「ダイバーシティ運動」が徐々に世界へと広がり、そして近年、日本社会でも公平な社会の実現はもとより、ビジネスの創造性や多様性を高めるための取り組みとしても注目されるようになったのです。

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ダイバーシティの種類

ダイバーシティには「表層的ダイバーシティ」「深層的ダイバーシティ」の2種類があります。それぞれの大きな違いには「外見で識別できるかどうか」というところにあります。

ここでは、2つのダイバーシティについて詳しく解説します。

表層的ダイバーシティ

表層的ダイバーシティとは、外見からある程度判断することが可能で、「生まれつき持っているもの」、「自分の意志では変えられないもの」のことを指します。

表層的ダイバーシティには以下のようなものが含まれます。

  • 年齢
  • 性別
  • 人種
  • 国籍
  • 民族
  • 身体的な障がい

上記は自分の意志で変えたくても変えられるものではありません。また多くの場合、見た目からその違いを判断することが可能です。このように、外見から判断でき、自分の意志では変えられないものが表層的ダイバーシティです。

深層的ダイバーシティ

深層的ダイバーシティとは、外見からは違いを正確に判断することが難しいものを意味しています。

深層的ダイバーシティには以下が含まれています。

  • 価値観
  • 宗教
  • 職務経歴
  • コミュニケーション
  • 性格
  • 考え方
  • 習慣
  • スキル・知識

これらは外見から判断することはほとんどできません。なかには、努力次第で変えられる要素もありますが、容易なことではないといえるでしょう。

ビジネスにおいては、この深層的ダイバーシティをいかに理解し、尊重しあえる環境を醸成できるかどうかが、ダイバーシティ推進における鍵となります。

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ダイバーシティを推進するメリット

ビジネスにおけるダイバーシティの概念や、表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティの2種類がある点について解説しました。

では、企業でダイバーシティを推進することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。次にダイバーシティ推進によるメリットを5つご紹介します。

  • 企業のイメージ向上と競争力強化
  • ワークライフバランス・従業員満足度の向上
  • 優秀な人材の確保
  • 創造性・革新性の向上
  • 事業のグローバル化への対応

企業のイメージ向上と競争力強化

ダイバーシティの推進には、個人の多様性を認めたうえで、さまざまな属性のほか、多様な価値観、経験、知識を持った人材の採用が含まれています。多くの人にとって働きやすい環境を整え、従業員が生き生きと働ける企業風土は、企業イメージ向上にもつながるでしょう。

また、多様な背景、経験、価値観を持つ人材が集まることで、多様な意見交換が活発になり、新しいアイデアも生まれやすくなります。このようなイノベーションの創出は、課題の早期解決やビジネスの成長を促進するため、その結果、企業の競争力の向上が期待できるのです。

ワークライフバランス・従業員満足度の向上

ダイバーシティの推進は、従業員のワークライフバランスと従業員満足度の向上への効果も期待できます。

ダイバーシティを実現した組織においては、自分の価値観や考え方のほか、ライフスタイルにおける仕事観の違いも認められるようになります。

近年よく耳にするようになった「ワークライフバランス」という言葉ですが、そもそも、この「仕事」と「プライベート」のバランスに対する考え方にも、さまざまな価値観があるはずです。

プライベートを重視したいと考える人もいれば、もっと仕事を楽しみたいと考える人もいるでしょう。従業員一人ひとりが、自身にとって一番心地のいい「ワークライフバランス」をストレスなく実行し、自身のワークスタイルが尊重されることにより、従業員満足度も次第に向上していくと考えられるのです。

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優秀な人材の確保

ダイバーシティの推進は、優秀な人材の確保へとつながるメリットもあります。

幅広い属性の人材を採用できる環境が整えば、日本国内に留まらない採用活動も可能ですし、柔軟な働き方の導入は、働くうえで十分な能力や意欲がありつつも労働形態などの条件から、働くことを諦めてしまっていた人材の雇用にもつながります。

人材不足の深刻化が進むビジネス環境の中で、このような採用の可能性を広げることができるのは、企業の成長を支える大きなメリットとなるはずです。

創造性・革新性の向上

ダイバーシティ推進によって、異なる背景や経験、価値観、考え方、多様なスキルが組織で尊重され、活用されることにより、これまでになかった斬新なアイデアやイノベーションが創造されやすくなります。

現代のビジネス環境が複雑化し、競争の激化が続く背景には、消費者のライフスタイルや価値観の多様化があります。ある意味で「細分化」されたとも言えるニーズに対応するには、企業においても多様な価値観への理解が求められることになります。

そのため、組織における価値観への理解の幅が広がることは、市場ニーズへの深い理解へとつながり、ニーズにそくした新しいアイデアの創出へと発展するのです。

事業のグローバル化への対応

消費者のニーズは、あらゆる属性による影響を受けるものであり、当然ながら国や地域によってもそのニーズは異なります。

そのため、事業のグローバル化を検討するのであれば、ダイバーシティの推進は必要不可欠な取り組みともいえます。

また、異なる国籍や人種の参画は、その国の一般的な価値観や習慣に配慮したビジネスを構築できるようになるだけでなく、イノベーションの種となる「議論」が活発になるといった効果もあります。

世界各国で適切な事業展開ができるだけでなく、新たなビジネスチャンスの機会も広がっていくのです。

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ダイバーシティ推進による3つのデメリット

ダイバーシティ推進にはメリットがある一方で、デメリットもあります。ダイバーシティ推進によるデメリットを3つ紹介します。

ハラスメントの発生

ダイバーシティ推進は、従業員間でのハラスメントが発生する可能性を高めてしまうことがあります。

ダイバーシティの根幹となるのは、違う価値観や意見を尊重し合うことにあります。しかしながら、「違い」を認め、理解するのは、時として簡単ではないことも多いでしょう。

特にダイバーシティを推進する上では、固定概念や無意識のバイアスによるハラスメントが起きやすくなります。このようなハラスメントを防止するには、まず自分自身が自分の価値観や考え方を認識し、ものの見方に偏りが生じていないか、価値観の押しつけになっていないか「気づく」ことが重要です。

また、組織においても、どのような行為がハラスメントになってしまうのか、研修の機会を設けるなど取り組みを進める必要があるでしょう。

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コミュニケーションの問題

特に、グローバルなダイバーシティを推進する場合、コミュニケーションの問題が生じることもあります。

その要因は、言語の違い、コミュニケーションスタイルの違い、習慣による違いなどが挙げられますが、この場合は、お互いに相手のスタイルを尊重するとともに、お互いがストレスなく仕事ができるよう、歩み寄るなどの努力も必要になるはずです。

ダイバーシティに限らず、同じ組織で働く人間として、「相手を思いやる気持ち」が前提として大切であることを忘れないようにしましょう。

パフォーマンスの低下

ダイバーシティ推進によって発生した、ハラスメントやコミュニケーションの課題が解決されず、長引いてしまうようであれば、従業員は大きなストレスを抱えることになり、その結果、高い生産性やモチベーションの維持が困難となってしまいます。

最悪の場合は、離職という選択をすることになってしまうかもしれません。そのため企業は、ダイバーシティにおける相互理解は、一朝一夕に実現できるものではないことを理解しなければなりません。

そのうえで、人間関係の構築や企業風土の醸成を従業員任せにするのではなく、研修やワークショップの実施など、全社をあげたサポートを行うようにしましょう。

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ダイバーシティと似た意味を持つ言葉

ダイバーシティには、似た意味を持つ言葉がいくつかあります。混同されがちなそれぞれの違いと意味を把握しておきましょう。

ダイバーシティ経営

ダイバーシティと似た意味を持つ言葉に「ダイバーシティ経営」があります。経済産業省はダイバーシティ経営を以下のように定義しています。

「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」

[引用:経済産業省 ダイバーシティ経営の推進]

「多様な人材」にはキャリアや働き方なども含まれているため、さまざまなキャリアを持った従業員の能力を最も活かせる働き方を提供し、自由に発想させることで自社の競争力を高められるような経営を表すものと考えることができるでしょう。

つまり、ダイバーシティ経営は、それぞれの従業員のキャリアや特性に合った人材配置や働き方を提供して、企業価値を高めるということを意味します。

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インクルージョン

ダイバーシティと似た言葉、あるいは、ダイバーシティとセットで使われることも多い、インクルージョンですが、直訳すると「包括・包含」という意味を持っています。

もともとインクルージョンは教育の場面で使われる言葉で、障がい者と健常者の隔てを排除する教育方針として「インクルージブ教育」と呼ばれていました。そこからビジネスでも活用されるようになり、個性を持つ人材が互いに尊重し合い、成長を目指すことを意味します。

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ダイバーシティ&インクルージョン

ダイバーシティとインクルージョンがセットで使われる場合は、「多様性な個性や価値観を受け入れ、そしてそれらを認めたうえで成長を目指す」という概念として捉えると良いでしょう。

ダイバーシティ推進を成功させ、企業の競争力を高めるためにはダイバーシティ&インクルージョンの実現を目指すことが重要です。

ダイバーシティとは多様性を意味する言葉

本記事では、ダイバーシティとは一体どういった概念なのかといった基礎知識から、推進によるメリット・デメリット、ダイバーシティと似た意味を持つ言葉などを解説しました。

ダイバーシティとは、もともと多様性を意味する言葉であり、ビジネスにおいては、多様性だけでなく、それらを認め受け入れる取り組みを表す言葉として使われています。

企業においては、イノベーションの促進、人材不足の解消などの組織における最重要課題を解決へと導く可能性を秘めた取り組みであることを理解し、日本国内においても適切かつ迅速なダイバーシティ組織への移行が企業の競争力へとつながっていることを認識しておく必要があるといえるでしょう。

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