クオータ制とは?メリット・デメリットや導入国の成功事例を解説

2022/9/16 2022/09/16

ダイバーシティ

ジェンダー平等・クオータ制のイメージ

女性の社会進出や男女共に働きやすい社会の実現のために必要とされているクオータ制。政治分野や企業活動など、さまざまな場面で重要とされていますが、クオータ制とは一体どのような制度なのでしょう。本記事では、クオータ制について、日本の現状や導入メリット・デメリットなどを詳しく解説していきます。また、企業が活用できる助成金についても紹介します。

クオータ制とは?

クオータ制とは、組織・団体における構造的な差別を抑制し、特定の属性を持つ方に機会を割り当てるためのポジティブ・アクションです。

もともとクオータ制は政治領域で採用され、議員や閣僚のポストが対象となっていました。しかし、近年では女性の社会進出やコーポレートガバナンス・コードの改訂などの影響を受け、企業でも取締役や管理職に対して、クオータ制を採り入れるようになっています。

この動きから、現在におけるクオータ制は、組織・団体の重要なポストにおいて、女性の割合を一定数まで増やすことを指す言葉として認知されるようになりました。

クオータ制の導入状況

ここではクオータ制について、日本と海外の導入状況をそれぞれ解説します。

日本の現状

現在、日本ではクオータ制が法制化されていません。2018年に候補者男女均等法が公布されたものの、まだ日本は海外と比べて女性活躍の進行度に課題を抱えています。

OECDの調査結果をもとに内閣府が発表した「共同参画」2022年6月号において、日本の企業役員が占める女性比率は、2021年時点で12.6%でした。これはクオータ制を積極採用する諸外国(フランス45.3%、ノルウェー41.5%、アメリカ29.7%)と比較した際、3倍ほどの開きがあります。

また、2021年に世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数において、日本は世界156か国中120位でした。このことからも分かるように、日本は先進国の中でも男女格差の溝が深い状態となっています。

これは日本の取り組みが努力目標に収まっている関係で、罰則規定などが定められている海外と比較した際、推進スピードに差が生まれていることが原因といわれています。

[出典:内閣府 男女共同参画局「「共同参画」2022年6月号」]
[出典:世界経済フォーラム「The Global Gender Gap Report 2021」]

海外の現状

海外では欧米諸国を中心にクオータ制の導入や宣言が行われており、女性比率が大きく好転しています。

クオータ制の発祥地であるノルウェーでは、2003年にクオータ制の法律を制定し、2007年末までに国営企業における役員の女性比率を40%にすることを定め、以降は40%前後をキープしています。

ノルウェーの動きに続いた欧米諸国も企業の女性比率が伸長しており、2021年時点でフランスは45.3%、イギリスは37.8%、ドイツは36.0%、アメリカは29.7%に達しています。クオータ制に関連する制度整備や宣言を早期的に実施した国のほうが、企業の女性比率が高い傾向にあるようです。

[出典:内閣府 男女共同参画局「「共同参画」2022年6月号」]

クオータ制を導入するメリットとは?

クオータ制を導入するメリットは、組織の多様化です。クオータ制を通じて女性登用が積極的に行われるようになると、男女平等の意識が高まります。

これにより多様な価値観を受け入れる風土が少しずつ醸成されていき、幅広い人材を受け入れるための基盤が整っていくといわれているのです。多様な人材が活躍できる環境を整備することは、労働人口が減少している日本にとって、大きなプラスになります。

特に企業の重要ポストに女性を登用することで期待されているのが、ライフイベントに紐づく問題の解消です。これまでは出産・育児によって女性のキャリアが制限されたり、男性が育児に積極的な態度を取りにくかったりするなど、性別による不平等感がありました。

この部分を改善し、人材の流出を防ぐための取り組みに推進力を与える意味でも、クオータ制による女性登用は効果的であるといわれています。

クオータ制を導入するデメリットとは?

クオータ制には多様性を受け入れる風土が醸成される反面、デメリットもあります。

1つ目は運用面での課題です。クオータ制で重要ポストの女性比率を増やした結果、産前・産後休暇や育児休暇を取得する際、代わりとなる人材の確保が必要になります。しかし、重要ポストは替えが効きにくいため、どうしても人材選出の難航が避けられません。

また、休暇明けで復帰した場合であっても、ブランクなどが原因でキャリアダウンにつながってしまう可能性もあり、長期的な安定運用を実現するための対策が求められるでしょう。

2つ目は逆差別の発生です。クオータ制は女性の社会進出を後押しする反面、男女比率の一定化を優先すると、性別以外の選出ポイントが軽視される可能性もあります。

この場合、「女性である」という理由が昇進の決め手になったような印象が付くと、逆差別にあたるのではないかという意見も出てくるでしょう。そのため、目標達成に固執しすぎず、人事評価の公平性を担保することが重要です。

クオータ制の反対派だったドイツから日本が学べること

欧米諸国と比べ、ジェンダー平等の取り組みに停滞感のある日本ですが、かつて同じような悩みを抱えていた国がありました。それがクオータ制の導入に反対的だったドイツです。

クオータ制導入の反対派だったドイツ

欧州連合(EU)の中で、クオータ制が着実に広まっていく中、ドイツは反対派として立ち振る舞ってきました。それはドイツが日本と同様に、性別役割分担意識の強い国だったからです。

男性は仕事、女性は育児という認識の強さは、制度や環境の面にも表れています。当時のドイツでは、夫婦共働きの税負担の多さや、保育施設の不十分さなどが問題となっていました。

そのような状況下では、クオータ制の導入に対して慎重にならざるを得ませんでした。経済界の反発もあり、ドイツはクオータ制に対して反対派としてのスタンスを維持していました。

ドイツのクオータ制導入から学べること

ドイツが反対派から一転して、クオータ制を導入したのは2015年のことです。この年にドイツは女性クオータ法を制定し、導入に踏み切ります。この背景にあったのが、2001年から推進してきた指導的立場の女性比率改善の低迷です。

ドイツは当時より、政府と経済団体が協定を結び、企業の自主的な取り組みを促してきました。企業が重要ポストの女性比率を引き上げることで、男女の機会均等化やワークライフバランスの支援を期待したのです。

しかし、期待とは裏腹に、重要ポストの女性比率は10年以上の期間を経ても、大きな変化がありませんでした。この結果を受けて、企業の自主性に任せるだけでは解決が難しいと判断し、ドイツはクオータ制の法制化を決意したのです。

女性クオータ法では、大手企業などの108社に対して、監査役会の女性比率を30%以上にすることを法定義務として定めました。30%を満たせない場合は、空席を維持しなければならなくなっています。

ドイツが監査役に焦点を当てたのは、ドイツの監査役会が取締役の選解任における決定権を持っていることが挙げられます。監査役の女性比率を引き上げることで、取締役・管理職の女性比率の向上を狙ったのです。

ドイツは以降も積極的に法制化に取り組み、2021年のジェンダー・ギャップ指数では世界156か国中11位を記録するまでに至りました。ドイツの事例から日本が学べることは、任意での取り組みには限界があるという点です。

ジェンダー平等において後れを取っている日本が、グローバル・スタンダードの男女均等を実現するには、変化を加速させる必要があります。その点において、ドイツのように法制化に踏み切ることは、ジェンダー平等の推進力を高めるうえで有効ではないかといわれています。

[出典:世界経済フォーラム「The Global Gender Gap Report 2021」]

クオータ制を推進する企業が活用できる両立支援等助成金とは?

両立支援等助成金とは、仕事と家庭の両立を目的に、企業の職場環境づくりを支援するための制度です。クオータ制を推進する際、両立支援等助成金を活用することで、企業はより柔軟な職場改革ができます。

両立支援等助成金には注力領域などに応じて、次の5つの種類が存在します。

  • 出生時両立支援コース
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 再雇用者評価処遇コース
  • 事業所内保育施設コース

これらのコースについて、1つずつ解説していきます。

出生時両立支援コース

出生時両立支援コースとは、男性労働者の育児休業取得を促進するための制度です。別名「子育てパパ支援助成金」とも呼ばれています。助成金を活用することで、企業にワークライフバランスの実現を促し、雇用の安定化につなげることが制度の目的です。

この制度では、次のいずれかの条件に合致した際、助成金が支給されます。

  • 企業が育児休業を取得しやすい雇用環境・職場環境の整備を実施し、男性労働者が実際に育児休業した場合
  • 男性労働者の育児休業期間中において、代替要員を新たに雇用した場合
  • 育児休業を取得した男性労働者が2名以上おり(第1種申請時の取得者を除く)、かつ男性の育児休業取得率が過去3年以内に30%以上アップした場合

支給額は、第1種(男性労働者の出生時育児休業取得)が20万円、第2種が20万円〜60万円(男性労働者の育児休業取得率上昇)です。

[出典:厚生労働省「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」]

介護離職防止支援コース

介護離職防止支援コースとは、介護休業取得と職場復帰の円滑化を支援するための制度です。助成金を活用することで、企業に介護支援プランの作成や措置の実施を促し、仕事と介護の両立を実現することが制度の目的になっています。

この制度では、次のいずれかの条件に合致した際、助成金が支給されます。

  • 介護支援プランに基づき、介護休業の取得あるいは職場復帰を実現した場合
  • 介護支援プランに基づき、仕事と介護の両立支援制度を利用した場合
  • 新型コロナウイルス感染症への対処として、家族の介護を目的に有給休暇を取得した場合

支給額は、介護休業取得時と職場復帰時がそれぞれ28.5万円、介護両立支援制度の整備や利用時が28.5万円です。また、新型コロナウイルス感染症対応特例として、介護のために有給休暇を取得した場合に、5日以上10日未満が20万円、10日以上が35万円支給されます。

[出典:厚生労働省「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」]

育児休業等支援コース

育児休業等支援コースとは、働きながら育児に取り組む労働者を支援するための制度です。助成金を活用することで、企業に休暇制度や両立支援制度の見直しを促し、労働者の負担軽減によって雇用の安定化を図ることが制度の目的になっています。

この制度では、次のいずれかの条件に合致した際、助成金が支給されます。

  • 育休復帰支援プランに基づき、労働者が育児休業を取得した場合
  • 育休復帰支援プランに基づき、労働者が育児休業から復帰した場合
  • 育児休業を取得した労働者の業務を、他の労働者が代替した場合
  • 育児休業から復帰した労働者に対して、支援施策を実施した場合
  • 新型コロナウイルスの影響で子育ての負担が増加した労働者に対して、有給休暇制度・両立支援制度を整備し、有休取得者が出た場合

支給額は、休業取得時と職場復帰時にそれぞれ28.5万円です。業務代替支援としての支給額は、新規雇用が47.5万円、手当支給等が10万円となっています。さらに、職場復帰後支援の支給額は、制度導入時が28.5万円で、制度利用時にも子どもの看護休暇制度や保育サービス利用時に助成金が支給されます。

[出典:厚生労働省「両立支援等助成金(育児休業等支援コース)」]

再雇用者評価処遇コース

再雇用者評価処遇コースとは、出産・育児といったライフイベントなどで発生した退職に対して、再雇用を促進するための制度です。助成金を活用することで、再雇用制度に必要な評価・配置・処遇の適正化を図り、企業の生産性向上を実現することが目的になっています。

この制度では、次の全ての条件に合致した際、助成金が支給されます。

  • 再雇用制度について明文化・周知が実施されている場合
  • 対象となる労働者を実際に採用し、6か月以上の雇用が継続している場合
  • 時短勤務、育児・介護休業を、労働協約あるいは就業規則に規定している場合

支給額は、1人目が継続雇用6か月で14.25万円(中小企業は19万円)、再雇用2〜5人目が継続雇用6か月で9.5万円(中小企業は14.25万円)となっています。また、継続雇用1年となった場合には、2回目の支給額がもらえます。金額は1回目と同額です。

[出典:厚生労働省「両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)」]

事業所内保育施設コース

事業所内保育施設コースとは、子を持つ労働者が安心して働ける職場環境を整備するための制度です。助成金を活用することで、企業に事業所内保育施設の設置・運営を促し、労働者の子育て支援や雇用の安定化を目的にしています。

この制度では、支給を受けようとする費目単位で条件が設定されています。具体的な費目は次の3つです。

  • 設置費
  • 運営費
  • 増築費

それぞれの支給には、管轄労働局長の認定、設置・運営計画の作成などが必要となります。

支給額の上限額は、設置費が1,500万円(中小企業は2,300万円)、運営費(1年間)は1,360万円(中小企業は1,800万円)、増築費は増築の場合が750万円(中小企業は1,150万円)、建て替えの場合が1,500万円(中小企業は2,300万円)となっています。

[出典:厚生労働省「両立支援等助成金(事業所内保育施設コース)」]

クオータ制を推進して男女共に活躍できる社会を実現しよう

本記事ではクオータ制の意味をはじめ、国内外の導入状況や導入メリット、企業が活用できる両立支援等助成金について解説しました。

世界規模でジェンダー平等の必要性が叫ばれる現代において、クオータ制を通じて男女の機会均等に取り組むことは、ジェンダー・ギャップ指数で後れを取る日本にとっても重要であるといえます。

特に近年はグローバル化の影響で人材の多様化が進み、多角的な視点でイノベーションを創出することで、企業価値の向上速度を加速させる取り組みが一般的になっています。

そのため、クオータ制の導入は、企業にとっても検討の余地があるでしょう。男女ともに働きやすい社会の実現を目指すためにも、この機会にクオータ制への理解を深めていきましょう。

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