ジョブリターン制度(職場復帰制度)とは?メリット・デメリットや導入企業

最終更新日時:2023/06/23

ダイバーシティ

ジョブリターン制度とは

労働力不足が深刻化する現代社会における有効な解決策として、日本でも注目が集まるジョブリターン制度。本記事では、そんなジョブリターン制度について、制度の概要や活用するメリットなどを詳しく解説していきます。

ジョブリターン(職場復帰)制度とは?

ジョブリターン制度とは、会社を退職した従業員を本人の希望のもとで再雇用する制度のことです。

会社員が退職を選択する理由は様々ですが、転職のほか、介護や育児といった個人の事情や生活環境の変化、傷病によるものなど、やむを得ない理由で退職するケースも少なくありません。特に、そのような事情による退職は、状況によって再び働けるようになる可能性もあるでしょう。

また、転職により退職した従業員が、多様な経験を積んでスキルアップし、再び活躍の場を求めるケースもあります。そのような貴重な人材とのつながりを維持しつつ、受け入れの準備を整えておくのがジョブリターン制度です。

「復職」自体は、目新しいものではありませんが、ジョブリターン制度はそれを制度化することで、再雇用の促進と効率的な人材管理を構築する仕組みと捉えることができます。

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ジョブリターン制度と似たアルムナイ制度について

ジョブリターン制度と似通った言葉として、アルムナイ制度があります。アルムナイは英語で「alumni」と表記され、日本語に略すと「卒業生」「同窓生」などの意味です。

アルムナイ制度は会社の退職者や転職者に対して、いつでも元の企業に戻れるのが特徴であり、ジョブリターン制度とかなり似通った制度と感じるかもしれません。

目的は同じですが、アルムナイ制度の場合には退職者の間でコミュニティが作られ、企業がそのコミュニティに対して不定期にイベントやメールなどで交流を取る点でジョブリターン制度と違いがあります。

ジョブリターン制度が必要とされている背景

「復職を促進する」ジョブリターン制度が必要とされている背景としては、日本国内の慢性的な人材不足が要因として挙げられます。

少子高齢化が進み、それにともない労働力の中核を担う年齢層の人口は年々減少を続けています。このような社会状況においては、人材雇用そのものが困難を極め、職種とマッチ度の高い人材を求めようとすれば、さらにその難易度は上がることになります。そのため、企業は様々な方法で人材を確保しなければならなくなりました。

その方法の1つが、一度退職した従業員の再雇用です。自社での就業経験がある人材は、業務ノウハウに加え、自社の理念や社風、文化をよく理解しています。そのため、ミスマッチがおこりにくく、強力な戦力になってくれる可能性が非常に高いと言えるでしょう。

ジョブリターン制度は、そのような人材を積極的に受け入れ、人材不足を解消するために有効な制度として活用され始めているのです。

ジョブリターン制度を導入するメリット

現代社会において注目を集めるジョブリターン制度ですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的な3つのメリットを3つご紹介します。

採用や教育コストの大幅削減

正社員を一人雇うには、採用費・研修を行う人材育成費・設備準備費など、雇用後に支払う給与の約3倍程度の初期費用がかかると言われています。

とりわけ採用段階にかかる、各種求人媒体への掲載、説明会の実施、面接などにかかわる人件費などは、人材雇用にかかるコストの中でも大きな割合を占めています。

しかし、ジョブリターン制度では、求人媒体への掲載や説明会による求職者へのアピールは不要になるため、新規雇用にかかるコストを大幅に削減することが可能です。

くわえて、研修や教育もブランクを埋めるための最小限のものになります。これは金銭的なコストだけでなく、時間的なコストの削減にもなるでしょう。

このように、ジョブリターン制度は、コスト面で非常に大きなメリットがあります。

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他社で培ったスキルの活用

他社で多様な経験を積み、スキルアップしてきた人材を雇用できるというのも大きなメリットです。他社へ転職した従業員は、新しい環境でさまざまなスキルを学んでいます。自社では習得できる機会のなかった技術・ノウハウを身につけた従業員が戻ってくることは、組織の大きな刺激となるはずです。

たとえば、戻ってきた従業員が大きな成果を上げることは、他の従業員の意識向上につながり、ノウハウを社内で共有することで全体の能力向上も期待できます。

また、社外で身につけてきたスキルを活かすことで、新しい事業への展開も可能になるかもしれません。このように、自社に新しい風を吹き込むことも、ジョブリターン制度の魅力です。

企業のイメージアップ

ジョブリターン制度は、企業のイメージ向上につながります。一度退職した会社に戻ることに、心理的なハードルの高さを感じる人は少なくありません。

しかし、ジョブリターン制度によって、戻りやすい環境や文化が醸成されていれば、出産後のキャリアパスや子育てとの両立に不安を感じている女性にとっての大きな安心材料となるはずです。

また、「戻ってきたいと思える会社」といったイメージを社内外にアピールすることでも企業のイメージアップを図ることができます。

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ジョブリターン制度を導入するデメリット

多くのメリットがあるジョブリターン制度ですが、活用するには、あらかじめ認識しておくべきデメリットもあります。

退職を誘発してしまうリスクがある

ジョブリターン制度は、正当な理由にて退職した従業員を、再度迎え入れることを促進するための制度です。しかし、この仕組みを「辞めた後も、いつでも戻ることができる」制度と勘違いし、退職という選択を軽んじてしまう従業員が出てくるかもしれません。

社内で制度の目的が間違って認識されることのないよう、本来の意味をしっかりと共有しておく必要があります。

待遇に差が出やすくなってしまう

待遇の公平性を保てなくなる可能性があることも、デメリットとして挙げられます。たとえば、復職した社員が役職付きなどの高待遇を受けると、自社で働き続けている従業員から不満の声が上がるかもしれません。

再雇用された従業員をどのような方法で評価するのか、公平性と透明性を確保できる、新たな評価基準とルールづくりが重要になります。

社員同士の関係性が複雑になってしまう

ジョブリターン制度によりキャリアパスが多様化すると、自ずと勤続年数による一律の評価ではなく、より実績やスキルを評価することがより重視されるようになります。その結果、入社年度による先輩後輩の立場が、役職では逆転してしまうこともあるかもしれません。

従業員が多様性を受け入れることができなければ、このような関係性が対立や混乱を招き、人間関係を悪化させてしまうこともあります。

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ジョブリターン制度を導入する際のポイント

次に、ジョブリターン制度を導入する際に押さえておくべきポイントをご紹介します。

制度の利用条件を明確にする

誰でも復職できるようにするのではなく、条件を明確にして受け入れる従業員を限定しましょう。たとえば、退職理由を妊娠、出産、育児のほか、配偶者の転勤によるものといった条件にする、あるいは、勤続年数3年以上の従業員を対象とするなどです。

勤続年数による条件設定は、早期退職の防止につながるだけでなく、再雇用した時の即戦力としての条件としても役立つでしょう。このような利用条件の明確化は、復職の妥当性を担保するためだけでなく、既存の従業員からの不満を抑える効果もあります。

復帰する際の雇用形態は柔軟に対応する

復帰する従業員の雇用形態には、幅を持たせるといいでしょう。出産・育児などを理由に退職していた場合は、復帰後もフルタイムでの就業が困難な場合があります。

そのような従業員のために、さまざまな雇用形態を用意しておき、従業員の都合に合った雇用ができるようにしましょう。ライフスタイルに合った雇用形態が選べることで、従業員が復帰に前向きになれるだけでなく、ブランク期間を短くできるといったメリットもあります。

既存社員との公平性を保つ制度を整備する

ジョブリターン制度の導入によって、再雇用された従業員と既存の従業員の処遇の不公平さは、既存の従業員のモチベーションの低下や離職を招くリスクにもなります。

そのため、ジョブリターン制度を導入する際には、利用条件を明確にすること、また、評価制度とその基準を見直し、公平性が保てる体制を整えてから制度をスタートするようにしましょう。

評価基準に関しても、経験や能力、実績だけでなく、勤続年数が長いからこその円満な人間関係による業務遂行や組織構築への貢献度なども評価の対象になることを明確に示しておくことで、モチベーションの低下を防ぐことができます。

退職者との連絡手段を確保しておく

ジョブリターン制度による雇用は、退職者とのつながりを継続しておく、あるいは、つながることのできる手段があることで生まれる雇用の仕組みです。そのため、ジョブリターン制度の導入にあたっては、退職者に制度について周知すること、また、退職後に制度を活用できる環境を整えておきましょう。

たとえば、退職者の住所・連絡先・在職時の職種などを管理しておくことで、退職者のスキルとマッチ度の高い職種に欠員が出た場合は、いち早く声をかけることができます。

また、自社のWEBサイトでジョブリターン制度のページを設けるなどして、退職者が連絡しやすい状態にすることも効果的です。

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ジョブリターン制度を実践する企業事例

最後にジョブリターン制度を実施している企業の事例をご紹介します。

株式会社ニトリ

家具・インテリア用品を取り扱う株式会社ニトリでは、働きやすい環境づくりのために、ジョブリターン制度を導入しています。対象は結婚・出産・育児・介護、キャリアアップのための転職・留学を理由に退職した従業員です。

くわえて、勤続年数2年以上、退職から15年以内であることを条件にしています。同社は、ジョブリターン制度を導入することで、社外で培った能力を自社で活かすことを目指しています。

大同生命株式会社

大同生命株式会社では、会社を離れることで会社のよさがわかった、やむを得ず退職したが復職したいといった退職者に対して再雇用の門戸を開くため、2011年5月からジョブリターン制度を導入しています。

同社の制度は、退職から3年以内の復職であれば、退職時の資格等級が維持でき、キャリアを継続できる点が特徴です。また、ジョブリターン制度についての情報発信、多様な雇用形態での受け入れなど、ジョブリターン制度を活かせる取り組みを多面的に実施しています。

ジョブリターン制度を導入して労働力不足に対応しよう

ジョブリターン制度は、導入にあたっての注意点である、評価制度の見直しや復職条件などのルール作りをしっかりと行うことで、企業にさまざまなメリットをもたらしてくれる制度です。

制度を導入することで、退職した人材が再度組織の戦力として活躍できるだけでなく、出産育児などのライフイベントが発生してもキャリアを維持しやすい環境づくりが可能となるでしょう。

人材不足の問題を解消したいとお考えの際は、対策の一つとしてジョブリターン制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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