ダイバーシティ推進はなぜ失敗するのか?企業が抱える課題と進まない理由

記事更新日:2022/07/29

ダイバーシティ

ダイバーシティの文字と多様性のイメージ

近年注目が集まるダイバーシティ推進。取り組んでいる企業も増加していますが、なかなか成果が出せていないのが現状です。そこで本記事では、ダイバーシティ推進が失敗する原因について、企業の課題や進まない理由など詳しく解説していきます。

ダイバーシティとは?

ダイバーシティとは、多様性を意味する言葉です。ビジネスにおいては、年齢や性別、国籍や宗教といった違いにとらわれず、多様な人材を採用していく経営スタンスを指します。

経済産業省では、このような経営方法を「ダイバーシティ経営」と称して以下のように定義しています。

多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営

[引用:経済産業省「ダイバーシティ経営の推進」より]

日本におけるダイバーシティ推進の現状

ダイバーシティ発祥の国と呼ばれているアメリカでは、人種差別や性差別による採用是正を図る意味合いでダイバーシティが推進されてきました。

一方、日本では外国人労働者や障がい者雇用といったように、採用市場を活性化する目的で使われることの多い言葉です。政府では、ダイバーシティ推進の取り組みとして、2020年までに女性の管理職の割合を30%にする目標を掲げています。

しかし、内閣府が発表した2021年の男女共同参画白書によると、管理職に就いている女性の割合は、2020年の時点で係長クラスが21.3%、課長クラスが11.5%、部長クラスが8.5%という結果でした。

このように、日本でも徐々に浸透してきているダイバーシティではありますが、実際の推進状況はまだまだこれからだといえます。

[参考:男女共同参画局「平成23年版男女共同参画白書 特集編 ポジティブ・アクションの推進-「2020年30%」に向けて-」]

ダイバーシティ推進の重要性

ダイバーシティの重要性が高まっている背景としては、主に「労働人口の減少」や「ビジネスのグローバル化」が挙げられます。

少子高齢化が進む日本では、今後ますます人材不足が深刻化していきます。こうした状況のなかで、企業は人材確保のために多様な人材を受け入れる必要があるのです。

また、インターネットの普及などにより、最近では海外市場に進出する日本企業も珍しくありません。ビジネスのグローバル化にともない、企業は多様なニーズや価値観を持った消費者と向き合う必要が生じています。

こうした背景もあり、多様な人材や働き方を受け入れ、グローバル化したビジネスに適応しようと考える企業が増えているのです。

ダイバーシティ推進はなぜ失敗するのか?日本で進まない理由

ダイバーシティ経営の注目度は日本でも高まりつつありますが、ダイバーシティに対する日本の動きは、世界と比べて遅れているとの指摘もしばしば見受けられます。

人財サービス会社のアデコ株式会社が2017年に実施したアンケートによると、「勤務先がダイバーシティを推進している」と回答したのは、全体の35%という結果でした。

日本のダイバーシティ推進が遅れている理由は、主に3つあります。それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。

[出典:アデコ株式会社「働く人のダイバーシティに関する意識調査」]

根強い無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)

無意識の偏見のことを「アンコンシャス・バイアス」と呼びます。無意識に決めつけてしまう一種のすり込みのようなものです。

とくに日本では、男性優位のアンコンシャス・バイアスが根強いため、重要なポジションに男性が就くことが多く、女性が企業の経営陣に入るのは容易ではありません。

このように昔から日本に蔓延してきた偏見が、女性の社会進出や男女の雇用機会均等の妨げとなっています。日本のダイバーシティの遅れを語るうえで、男性優位というアンコンシャス・バイアスは看過できない問題のひとつです。

重要性を理解できていない・意識改革ができない

ダイバーシティ自体の認知度は高いものの、多様な人材を活用することの重要性や効果が正しく理解されていないことから、企業の取り組みに積極性が欠けるケースも見受けられます。

前述のアデコ株式会社のアンケート調査によると、「ダイバーシティを推進するうえで、最も重要なもの」として回答の多かったのが、管理職層の意識改革(25.9%)や経営層レベルでのコミットメント(18.4%)でした。

アンケート結果からもわかるように、ダイバーシティの推進には、企業を牽引する立場にある経営陣の意識改革やコミットメントが求められます。

「やることが山積みで、ダイバーシティに手が回らない」「女性の管理職比率だけ意識しておけば、企業責任は果たせるだろう」といったように、経営陣の意識が低い状態のままだと、ダイバーシティの推進は難しいでしょう。

[出典:アデコ株式会社「働く人のダイバーシティに関する意識調査」]

不平等な評価や均質化した組織に応じた制度

不平等な評価制度では、ダイバシティ推進の取り組みとして多様な人材を受け入れても、失敗する確率が高くなります。

ダイバーシティ推進には、人材の受け入れだけではなく、雇用形態ごとに業務内容を明らかにし、個人の成果に対して公平に評価する制度の導入が重要です。

ダイバーシティ推進により企業が抱える課題

ダイバーシティ推進に意欲的な企業も増えていますが、活動を展開するなかで課題に直面する企業も少なくありません。ここでは、ダイバーシティ推進の際に注意すべきポイントを3つ紹介します。

コミュニケーションエラーの発生

同じ価値観や考え方を持っている社員同士で作業する場合は、最低限のコミュニケーションでも問題なく業務に取り組めます。しかし、多様な人材が集まる企業では、密なコミュニケーションなくして意思疎通は図れません。

また、社員の大多数が男性優位のアンコンシャス・バイアスを持っている企業だと、人材の多様化を進める過程においてトラブルが生じやすく、場合によっては社員間の分断を生んでしまう可能性があります。

コミュニケーションエラーの発生を防ぐためには、ビジネスチャットツールの活用や1on1ミーティングの定期的な開催などを通じて、意識的に社内のコミュニケーション量を増やすことが重要です。

パフォーマンスの低下

ダイバーシティ推進の取り組みとして多様な人材や雇用形態を取り入れた結果、短期的に社内の労働パフォーマンスが低下する可能性があります。

属性を問わない人材の受け入れは、新しい考えや働き方を社内に取り入れられる一方で、社員間の意見の食い違いが発生しがちです。そのため、マネジメント側の人間が、適切に意見の集約や議論のファシリテーションをしなければ、社員それぞれの足並みがバラバラになってしまいます。

評価の複雑化

人事評価が複雑になる点は、ダイバーシティを推進する企業に共通する課題といえるでしょう。人材や雇用形態が多様化していくと、一律的な評価方法だと社員の不満を招く可能性があります。

例えば、フルタイムで在宅勤務している社員と、常に会社のオフィスで業務する社員のケースを考えてみましょう。成果をチェックする仕組みが不十分であると、在宅勤務者の仕事ぶりが他の社員に伝わらず、「重要な仕事を彼/彼女に頼むのはやめておこう」といったような雰囲気が醸成されかねません。

ダイバーシティを推進する際は、それに合わせた新たな評価制度をセットで考える必要があります。できるだけ公平感のある評価方法を導入し、社員のモチベーション低下を防いでいきましょう。

ダイバーシティ推進を成功させるために必要な対策

ここでは、ダイバーシティ推進を成功に導くコツを紹介します。

経営陣・管理職の意識改革

経営陣や管理職のダイバーシティに対する理解がない状況下では、たとえ意識的に多様な人材を採用していっても、ダイバーシティ経営による効果は期待できません。ダイバーシティの推進は企業全体で取り組む必要があるため、経営陣や管理職のダイバーシティへの深い理解が欠かせません。

自社のダイバーシティを推進する場合には、経営陣を対象とした事前研修や、ダイバーシティに関する定期的な勉強会の実施などを検討してみましょう。

コミュニケーションの活性化

ダイバーシティの推進には、コミュニケーションの活性化が求められます。多様な人材が集まる空間で生じやすい意見の食い違いなどは、コミュニケーション量の確保により、ある程度抑止可能です。

ミーティングテーブルの設置やランチミーティングを導入すれば、社内コミュニケーションの場が増加します。また、テレワークなどで対面での協働が難しいケースでは、ビデオ会議ツールやチャットツールの活用もおすすめです。

柔軟な働き方の実現

ダイバーシティの推進に欠かせないポイントが、働き方の多様化です。フレックスタイム制や在宅勤務といった働き方の選択肢を提供し、柔軟な働き方を実現することが人材の多様化に繋がります。

働き方の幅を広げることは、育児や介護を理由に退職する可能性のあった優秀な人材を繋ぎ止める効果もあり、離職率の低下にも有効です。

ダイバーシティ推進の成功で得られるメリット

ダイバーシティの推進によるメリットは数多くありますが、ここでは、そのなかでも代表的なものを3つ紹介します。

ビジネスチャンスの拡大

多様な人材の受け入れによって価値観の異なる人材が集まれば、新しいアイディアが生まれやすくなります。今まで検討してこなかったマーケティング施策や営業アプローチを実践した結果、ビジネスチャンスの拡大に繋がることもあるでしょう。

また、異なる得意分野を持つ人が集まり、積極的に情報交換することで、社員同士のスキルアップも期待できます。自分と異なる能力やスキルを持った人が周囲にいれば、存在が刺激となり、モチベーションを高めることも可能です。

多様な人材の確保

性別や年齢といった属性を問わないダイバーシティの推進は、多様な人材確保に最適な取り組みといえるでしょう。柔軟な働き方ができる環境を社員に提供することで、多様な人材の受け入れが可能です。

また、ダイバーシティの推進に精力的な企業は、出産や介護といった理由により退職せざるを得なかった人材も受け入れられます。他企業で活躍していた人材の流入が期待できることに加え、自社の社員の離職防止も図れるでしょう。

企業イメージの向上

ダイバーシティを自社で推進していった結果、社外から会社の姿勢を評価されるようになり、企業イメージが向上するケースも珍しくありません。

近年では、ライフワークバランスの実現が重要視されています。仕事中心の働き方ではなく、仕事とプライベートの両立を追求することが、最終的に個人や企業に高いメリットをもたらすという考え方です。

ライフワークバランスの実現が期待できるダイバーシティ推進企業は、採用市場においても魅力的な企業として存在感を示せるでしょう。

ダイバーシティ推進が失敗する原因や課題を正しく理解

ダイバーシティの推進は、社会・企業・労働者すべてにメリットがあり、政府も力を入れている取り組みです。日本では、男性優位とする無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の解消や、経営陣の意識改革などがダイバーシティ推進の鍵を握っていると考えられています。

多様な人材の確保、ビジネスチャンスの拡大、企業イメージの向上といったダイバーシティ推進のメリットを得るためにも、推進の際に直面する課題や必要な対策をあらかじめ把握しておくことが大切です。

ダイバーシティ推進に対する理解を深め、自社の組織づくりに活かしていきましょう。

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