次世代EDIとは?EDIの課題や違い、注目されているWeb-EDIについて
従来のEDIに代わって普及が進む「次世代EDI」。時代の変化に対応するためにも、早急な移行が求められています。本記事では、次世代EDIとは何か、従来のEDIからどのように進化したのかについて、注目される理由と併せて詳しく解説します。
目次
次世代EDIとは?従来EDIとの違い
次世代EDIとは、従来のEDIが抱える問題点を解決し、アップグレードされたEDIです。
従来のEDIは電話回線を利用しているうえ、日本独自のプロトコルで動作することから、国際的な取引においては使い勝手が悪いという課題がありました。それに対し、次世代EDIはインターネット回線を使用することで、より速く柔軟なデータ交換を可能にしています。
また、次世代EDIのほとんどはクラウド型サービスです。初期導入コストや運用負担が少ないため、中小企業の新規導入やシステムの乗り換えも容易になっています。特に「Web-EDI」は、次世代EDIの代表例として広く知られ、多くの企業に採用されています。
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従来のEDIの課題
従来のEDIにはいくつかの課題が存在していました。以下に、その課題を解説していきます。
電話回線を利用しているため通信速度が遅い
従来のEDIシステムは、電話回線(ISDN)を利用しているために、昨今の水準と比べて通信速度が遅いという大きな課題があります。
1988年にリリースされたISDNの通信速度は、最大64kbpsです。一方、現代のインターネット回線は数十Mbps〜数十Gbpsと、比較にならないほどの性能を持っています。この圧倒的な速度差は、電子商取引の取引量が増加する現代社会において、従来のEDIの決定的な弱みとなっています。
通信速度の遅さは業務効率に直結するため、この問題を解決するために、より高速な通信手段への移行が求められていました。
取引先ごとにデータ仕様の変更が必要
従来のEDIシステムは、取引先ごとに独自のデータ仕様を定めなければなりませんでした。しかし、市場のニーズが多様化する中、要求に個別対応するために労力を使うのは非効率であるため、できるだけ統一化されたシステムの必要性が高まっていました。
次世代EDIの一つであるWebEDIは、データ仕様の統一こそされていないものの、多くのプロトコルに対応することで、実質的にデータ仕様の統一に迫る互換性を確保しつつあるシステムです。
JCA手順が国際標準ではない
従来のEDIシステムで用いられてきた「JCA手順」というプロトコルは、日本独自の規格のため国際的な取引には調整が必要です。
JCA手順は、流通業界向けの受発注データを円滑にするために生み出された、日本チェーンストア協会(JCA)が1980年に制定したプロトコルです。長年にわたり国内の流通業界を支えてきましたが、国際標準に準じたデータ交換が求められる現代においては、その限界が指摘されています。次世代EDIへの更新は、このような国際的な要求に対応するためにも重要なステップとなるでしょう。
2024年問題によって利用できなくなる
従来のEDIシステムは、2024年問題によって利用が困難になります。2024年問題とは、NTT東西がISDN回線サービスを廃止することで、固定電話網を利用したEDIシステムが利用できなくなる問題です。2024年1月から順次、固定電話網のIP網移行が開始され、2025年1月には移行が完了します。
ISDN回線のサービスが全面終了する2025年1月以降にも、当面の間はメタルIP回線と呼ばれる代替回線で通信を行うことは可能です。しかし、通信品質の低いメタルIP回線は、あくまでも次のシステムへ移行するまでの代替措置に過ぎません。遅かれ早かれ次世代EDIへ完全移行する必要に迫られます。
[出典:東日本電信電話株式会社・西日本電信電話株式会社「固定電話のIP網への移行後のサービス及び移行スケジュールについて」]
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次世代EDIとして注目される「Web-EDI」とは?
次世代EDIの一つであるWeb-EDIとは、従来のEDIが使用していた専用回線や電話回線に代わって、インターネット回線を活用してデータを交換するシステムです。Web-EDIは、インターネットの普及とともに急速に普及が進んでいます。
Web-EDIの利点は手軽さとコストの低さにあります。特別な設備を必要とせず、既存のインターネット環境を使用してすぐにEDIシステムを稼働させられるため、中小企業でも導入しやすいでしょう。通信速度の向上によりリアルタイムでのデータ処理が可能となった点も大きな魅力です。
次世代EDI「Web-EDI」の導入メリットとは?
次世代EDIである「Web-EDI」について、導入メリットを詳しく解説していきます。
システムの導入・運用の手間・費用を抑えられる
Web-EDIの最大の魅力は、導入と運用におけるコストを大幅に削減できる点です。
多くのWeb-EDIがクラウドベースで提供されているため、企業は高価な専用システムを導入する必要が一切ありません。また、インターネット回線を使用するため、通信速度も速く、データのやり取りがスムーズに行えます。従来のEDIはシステムの導入コストが高額だったため、中小企業から敬遠される側面がありましたが、次世代EDIはその課題がほぼ解消されています。
送受信するデータの制限がない
次世代EDIでは、従来のEDIにあった送受信できるデータの制限(漢字や特殊文字の使用制限など)が克服されています。
次世代EDIでは、漢字を含むテキストデータだけでなく、画像やその他の複雑なファイルフォーマットの送受信も可能に進化しています。この機能拡張により、異なるデータ仕様を持つ企業間のコミュニケーションがより柔軟に行えるようになりました。また、多くのプロトコルにも対応しているため、データ形式の互換性を理由に取引が制限されるケースはごくわずかでしょう。
インターネット回線を利用するため場所を選ばず利用できる
Web-EDIは、インターネット回線を利用するため、いつでもどこでも利用することができます。
従来のEDIは専用回線に依存していたため、企業内の特定端末からしかアクセスできないことが一般的でした。しかし、Web-EDIではオフィスだけでなく、出張中や自宅からでもスマートフォンやタブレットなどのデバイスを通じてデータの送受信が可能です。この柔軟性は業務の効率化を促進し、時間や場所に制約されることのない企業活動を実現してくれるでしょう。
次世代EDI「Web-EDI」の課題
Web-EDIは多くのメリットがあるものの、一方で解決すべき課題も存在します。
以下に解説していきます。
標準化がされていない
Web-EDIは多くのプロトコルに対応していますが、規格が標準化されているわけではありません。つまり、状況次第では通信が成立しないケースがあります。
Web-EDIを採用している企業間でも、使用するプロトコルが異なる場合には、取引先と相談のうえプロトコルを統一しなければなりません。新たな取引先とビジネスを開始する際には、追加の調整作業や合意形成を必要とするため、業務の効率を低下させる可能性があります。そのため、Web-EDIを導入する際には、複数のプロトコルをサポートするシステムを選定することが重要です。
既存システムと連携できない場合がある
Web-EDIを導入する際、既存の基幹システムとうまく連携できないケースがあります。
基幹システムにWeb-EDIのデータを取り込めるとよいのですが、古い基幹システムでは適切に対応できないこともあるでしょう。その場合、手動でデータを再入力する必要性が生じるなど、かえって手間がかかる可能性もあります。
このような問題を回避するためには、導入前の無料体験期間を利用してシステムの互換性をチェックし、可能な限り互換性の高いシステムを採用することが望ましいです。
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次世代EDI「Web-EDI」の導入事例
以下に、Web-EDIの導入事例を紹介していきます。
株式会社ヤスサキ
株式会社ヤスサキは、北陸地方を商圏に食品スーパー11店舗、衣料品店舗10店舗、ホームセンター5店舗などを運営する量販事業者です。
同社では、長らく独自のフォーマットによるインターネットを使ったEDIシステムを利用してきましたが、自社だけでなく取引先の受注システムも老朽化が進んでいました。また、2019年には消費税軽減税率へ対応する必要性があったため、2016年にEDIシステム刷新の検討を始めました。その際に重視したのは、取引先の負担をできるだけ抑えつつ、受注システムの切り替えをスムーズに行うことです。主なプロトコルは、流通業界標準の流通BMSを採用しました。
消費税軽減税率対応に向け、受発注システムの改修費用に政府が補助金を用意していたこともあり、同社は迅速な移行を成功させました。結果として、取引情報のリアルタイムな共有が可能となり、紙ベースの処理が大幅に削減されコストが激減しました。加えて、海外の拠点ともスムーズに情報を交換できるようになり、大きな業務効率の向上を果たしています。
アズビル株式会社
アズビル株式会社は、オートメーション技術に特化した企業です。建築物や工場の自動制御システムをグローバルに提供しており、年間の発注ボリュームは約50万件に達しています。
以前から稼働していたVAN経由のEDIは、コストや利便性の問題からサプライヤーに浸透せず、購買部門の業務負荷増加が課題となっていました。 そこで、同社は2015年に新Web-EDIシステムの導入を決断し、発注件数の90%を占める220社のサプライヤーから合意を得たうえで2016年に運用を開始しました。
その結果、受発注データの煩雑な管理が解消され、バイヤー業務が大きく簡素化されました。現在は対象サプライヤーの拡大、システム改善に努めており、グループ全体のWeb-EDIシステム基盤を構築することも検討しています。
次世代EDIを導入し時代の変化に柔軟に対応しよう
次世代EDI、特にWeb-EDIの導入は、絶えず変化するビジネス環境に対応するために有効な手段です。
次世代EDIにより通信速度の向上、取引のグローバル化対応、運用コストの削減などが果たされれば、企業の業務効率は大幅に改善されるでしょう。次世代EDIのデメリットや導入時の注意点をよく理解したうえで、競争力を高めるための適切なシステム移行を目指してください。
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