ベンチャー企業における資金調達方法!選択肢や注意点・事例を解説
新たな市場を開拓し、社会への新しい価値の提供を目指す「ベンチャー企業」。次世代経済の活性化を担う存在として、事業の拡大や発展が期待されています。本記事では、ベンチャー企業における資金調達方法について、資金調達の選択肢や注意点、資金調達に成功した事例を詳しく解説します。
目次
ベンチャー企業における資金調達の重要性
ベンチャー企業における資金調達の重要性について考えるためには、まずベンチャー企業特有の状況を理解することが不可欠です。
多くのベンチャー企業は規模が小さく、経営基盤がまだしっかりと確立されていないため、自己資金のみで運営されることが一般的です。しかし、事業を拡大し、更なる発展を遂げるためには自己資金だけでは不十分なため、外部からの資金調達が必要なタイミングが訪れます。得られた資金で財務状況を改善することで、新たな商品開発や市場拡大、技術革新に向けた投資が可能となり、ベンチャー企業の成長が促進されるのです。
日本ベンチャーキャピタル協会が公表した「2022年度国内スタートアップによる資金調達年間推移」によると、2022年度には合計8774億円の資金が調達され、この金額は年々増加しています。この増加傾向は、ベンチャー企業に潜在的な成長可能性が秘められており、投資家たちがそれに期待を寄せていることを示しているでしょう。
[出典:一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会「ベンチャーキャピタル最新動向レポート(2022年度)」]
ベンチャー企業における資金調達の方法
ベンチャー企業にとって、多様な資金調達の選択肢を知ることは、自社の成長戦略を練るうえで非常に重要です。資金は新しい事業機会を逃さず、イノベーションを推進するために欠かせません。ここでは、ベンチャー企業が利用可能な資金調達方法を見ていきましょう。
出資を受ける
出資とは、企業が新しく株式を発行し、その株式を購入してもらうことで資金を調達する方法です。出資を募る方法には主に以下のようなものがあります。
VC・CVCからの出資
一つ目は、ベンチャー企業への投資を専門に行うベンチャーキャピタル(VC)や、投資を本業としない企業であるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)から出資を受けて資金を調達する方法です。事業成長の可能性を評価され、VCやCVCから出資を受けることができれば、経営のノウハウやネットワークなどの提供も受けられる可能性があります。
これらの投資機関・部門は、ベンチャー企業の事業の早期段階で出資を行うため高いリスクを背負うことが多い反面、見返りとして出資先ベンチャー企業が成長を遂げた場合に大きな利益を得ることができます。
個人投資家からの出資
個人で資産を持つ「エンジェル投資家」と呼ばれる富裕層から出資を募ることも可能です。事業アイデアが革新的で将来性があれば、個人投資家を引き付けることができます。
個人投資家は通常、事業に個人的な関心を持ち、資金だけでなく、貴重な知識やネットワークを提供してくれることもあります。それぞれの投資家との人間関係を大切にすることも資金調達成功のポイントとなるでしょう。
資本提携による出資
資本提携とは、相手企業に経営権を与えない範囲の株式を譲渡することで、代わりに資本の提供を受ける方法です。
資本提携は単なる業務提携とは異なり、相互の事業を支え合うことを目的としています。資本面でのつながりを持つことで、より強固で戦略的な関係を築くことができるのです。特に、大手企業と提携することができれば、安定的な資金調達が可能になる場合があります。
融資を受ける
融資による資金調達とは、金融機関などからの借り入れを指します。ベンチャー企業は出資だけでなく、融資も活用して事業に必要な資金を確保することが可能です。
融資にはさまざまな形態があり、それぞれが企業の特定のニーズに合わせて設計されています。融資の具体的な選択肢について詳しく見ていきましょう。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、日本政府が100%出資して運営している政府系金融機関です。特に新規事業者や中小企業に対して低金利の融資を提供するなど、有利な条件の融資を取り揃えています。
原則として無担保・無保証でも利用できる点や返済期間が長い点は、創業期のベンチャー企業に有利です。一方で繰り上げ返済ができず、審査期間が長めといった特徴もあるため、よく検討するようにしましょう。
民間の金融機関の融資
多くの民間金融機関も、ベンチャー企業に対する融資サービスを提供しています。金融機関の融資は事業の具体的な需要に応じてさまざまな条件で行われ、運転資金や設備投資など、幅広い用途に使用されます。
金利や審査基準がそれぞれ異なるため、ベンチャー企業の特性を理解している金融機関を選ぶとよいでしょう。
信用保証協会の融資
信用保証協会は、中小企業や小規模事業者への融資に対して信用保証を提供する機関です。信用保証を活用することで、金融機関などからの融資をスムーズに受けられるようになります。
地域によって条件は異なりますが、ベンチャー企業も活用できる制度です。
地方自治体・金融機関・信用保証協会による制度融資
制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会が連携して行うもので、特に中小企業の事業拡大や新規事業の立ち上げに利用されます。3つの機関がそれぞれ役割を担っているため、有利な条件で融資を受けることができるのです。
ビジネスローン
ビジネスローンは、法人経営者や個人事業主のみが申し込める、事業資金専用のローン商品です。手続きが比較的簡単で、迅速な資金調達が可能な点がメリットです。一方で金利は高めなため、返済計画を慎重に検討する必要があります。
ファクタリング
ファクタリングとは、企業の売掛金を現金化する金融サービスのことです。ファクタリング会社に売掛金を売却することで、すぐに現金を受け取ることができます。
ファクタリングによる資金調達の特徴は、売掛金の未回収リスクを抑えられる点にあります。支払期日を待たずに済むため、急な資金需要に対応できる点や資金繰りの改善が見込める点も魅力といえるでしょう。
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補助金・助成金を利用する
補助金や助成金は、国や地方公共団体から事業者への支援として提供されるもので、基本的に返済の必要がありません。ただし、助成金は要件を満たせばほぼ100%支給されるのに対し、補助金の場合は審査があり、必ず支給されるとは限りません。また、多くの場合、補助金・助成金はプロジェクトの完了後に支払われるため、前払いを行えるだけの資金を用意しておく必要があります。
クラウドファンディングを利用する
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人々から資金を集める方法です。この仕組みを利用することで、企業は広範囲にわたる支援者を獲得し、新しいプロジェクトや商品の開発資金を確保することができます。
クラウドファンディングには、リワード型、寄付型、投資型など複数の形式があり、それぞれに異なる特徴と利点があります。
種類 | 特徴 |
リワード型 | 資金提供者に商品やサービスなどのリターンを提供します。 |
寄付型 | 支援者はリターンを求めずに資金を寄付します。公共の利益のためのプロジェクトに多く用いられる形式です。 |
投資型 | 出資者は企業の株式や利益の一部を得ることを目的とします。 |
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)を利用する
RBFは、未来の収益を基にして資金を調達する金融サービスです。「Revenue Based Financing」の頭文字を取ってRBFと略され、この方法では将来発生する売上の一部を前払いで現金化します。RBFは返済が売上に連動しているため、売上が伸び悩んだ場合の負担が少なくなるという点がメリットでしょう。この柔軟性が、特にスタートアップや成長期の企業に適しています。
なかでもおすすめのサービスは、「Flex Capital」です。Flex CapitalによるRBFでは、6か月~12か月分の売上見込みを、無担保・無保証で最大5000万円調達できます。年商約1000万円規模の企業から利用できるため、シード・アーリー期のスタートアップや中小企業も活用しやすいサービスといえるでしょう。
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ベンチャー企業が資金調達する際の注意点
ベンチャー企業の資金調達には多くの選択肢があります。それぞれの方法にはメリットがありますが、同時にさまざまな注意点に気を付ける必要があります。
出資の場合は経営権を握られる可能性がある
出資を受けると、出資者は株主となり、持ち株に応じた経営参加権を持つことになります。場合によっては、自分の投資が無駄にならないよう、投資家が積極的に経営に関与してくることもあるでしょう。
こうした投資家の考えと自社の方針が合わない場合、経営権を握られてしまう可能性があります。このような事態を避けるために、出資を受ける相手は慎重に選び、事前によく調整しておくことが大切です。
融資は審査が厳しい・返済義務がある
融資を受ける場合、金融機関は借り入れ企業の返済能力を厳しく審査します。また、融資額に加えて利息の支払いが必要となるため、返済計画は綿密に立てるようにしましょう。
資金調達に時間がかかる場合がある
融資の場合、申請を行ってから実際に資金が手元に届くまでに時間を要することが一般的です。補助金や助成金も同様で、申請から審査、さらに受給までに多くの時間を要するうえ、多くが事業実施後の後払い制度です。
これらの方法は短期的な資金ニーズには対応しにくいことを理解し、効果的なタイミングで資金を得られるよう、計画的に申請する必要があります。
十分な額の資金を調達できない可能性がある
出資やクラウドファンディングは、投資家や支援者の判断次第で調達額が決まります。事業計画通りの金額を一つの方法では調達できない場合も考慮し、複数の調達方法の併用を検討するなど、万全の備えを行いましょう。
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ベンチャー企業における資金調達の成功事例
資金調達は、ベンチャー企業にとって事業拡大や成長のための大きな鍵を握ります。ここでは、適切な資金調達によって飛躍を遂げた企業の事例をご紹介します。
エリーパワー株式会社
エリーパワー株式会社は、大型リチウムイオン電池を普及させることで環境問題の解決や持続可能な社会の実現に貢献することを目指す専業メーカーです。同社は、2023年に自動車大手のスズキから合わせて250億円を調達することに成功しました。
スズキは2012年にも同社に10億円を出資しており、今回追加出資の100億円によって、同社の筆頭株主となりました。さらに、スズキはエリーパワーの転換社債型新株予約権付社債150億円分も引き受けています。
同社は業務提携契約も締結しており、エリーパワーは調達した資金を設備投資やスズキとの共同開発に充てることにしています。
[出典:エリーパワー株式会社「エリーパワーとスズキ、追加出資・業務提携契約締結のお知らせ」]
株式会社ナレッジワーク
株式会社ナレッジワークは、営業生産性向上を支援するクラウドツールなどを提供している企業です。すでに複数の大手企業の営業部門にツールを導入している同社は、2023年にWorld Innovation Lab、グロービス・キャピタル・パートナーズをリード投資家とする第三者割当増資によって45億円の資金調達を行いました。
調達した資金は、主にプロダクト開発に対して投資され、更なる組織体制強化を目指した人材採用も行っていく方針としています。
[出典:PR TIMES「ナレッジワーク、シリーズBで45億円の資金調達を実施。3年で10個の新プロダクトをリリース予定」]
株式会社LayerX
株式会社LayerXはクラウド型経理DX支援システムなどを運営しているスタートアップ企業です。また、同社はAIやブロックチェーン技術を用いたさまざまなプロジェクトも展開しています。
2023年には、海外機関投資家を引受先とする第三者割当増資を実施し、20億円の資金調達を実行。事業のさらなる拡大を目指して開発が進められています。
[出典:株式会社LayerX「LayerX、シリーズA累計で約102億円を調達完了。海外機関投資家のKeyrock Capital Managementから20億円の資金調達を実施〜バクラクをはじめとしたAI・LLMの事業化をさらに加速〜」]
資金調達を成功させベンチャー企業の事業拡大・成長につなげよう
資金調達はベンチャー企業にとって多くの機会をもたらしますが、なかにはプロセスが複雑でリスクが伴うものもあります。そのため、成功事例を参考にしながら、戦略的に資金調達を進め、持続可能な成長を目指すことが重要です。自社にとって適切な資金調達方法を選択し、事業を拡大させていきましょう。
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