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損益分岐点とは?計算式や活用方法・分析のやり方をわかりやすく解説

2024/02/19 2024/02/19

管理会計システム

損益分岐点とは

経営の安全性や目標利益の達成に役立つ「損益分岐点」。固定費・変動費を計算することで算出できますが、具体的な計算式がわからないという人も多いのではないでしょうか。本記事では、損益分岐点の概要や計算式を活用方法などとあわせてわかりやすく解説します。

損益分岐点とは?

損益分岐点とは、事業における売上高と費用が等しくなる時点の金額を指します。言い換えると、利益も損失も生じないときの金額です。損益分岐点がわかると、損益分岐点を上回った場合は黒字、下回った場合は赤字と判断できます。

損益分岐点は、経営状況の現状把握や目標設定に役立ちます。黒字化するために必要な売上高が明確になるため、目標達成状況を可視化でき、企業利益向上に向けた対策も考えやすくなるでしょう。

【図で解説】CVP分析(損益分岐点分析)とは?目的や計算方法・活用法をわかりやすく解説!

損益分岐点を求める際に必要な費用

損益分岐点を求めるためには、製品の製造や会社経営にどれほどの費用を要しているのかを算出しなければなりません。

費用は以下の2つに分けられます。

  • 固定費
  • 変動費

具体的な費用の内訳を見ていきましょう。

固定費

固定費とは、製品・サービスの売上や生産量に関係なく、一定的に発生する費用です。たとえば、以下の費用が当てはまります。

  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 人件費
  • 広告宣伝費
  • 設備のリース料
  • 減価償却費 など

もし当月の売上が0円だったとしても、上記の費用は発生します。会社経営において赤字を発生させないためには、製品・サービスの生産に要した費用に固定費を加えた金額分の売上を、最低限確保する必要があります。

ちなみに、損益分岐点を計算する際、月によって増減する広告宣伝費や水道光熱費は、1年間の年間平均値で計上されます。

変動費

変動費とは、売上や生産量に応じて増減する費用です。たとえば、以下の費用が当てはまります。

  • 原材料費
  • 販売手数料
  • 商品発送費用
  • 外注費用 など

変動費は損益分岐点を計算する際、製品1個あたりの費用で算出します。

一般的な固定費と変動費の内訳を紹介しましたが、会社によって、内訳が異なる場合があります。たとえば、繁忙期に一時的にアルバイトを雇った場合、その分の人件費は変動費と捉えることが可能です。

売上に影響を受ける費用であるかどうかを基準に判断しましょう。

管理会計における変動費・固定費とは?区分する目的や削減方法を紹介

損益分岐点の計算式・分析方法

損益分岐点は、「損益分岐点販売数量」もしくは「損益分岐点売上高」によって測れます。

損益分岐点販売数量とは、「売上=費用」となるために、製品を何個売れば良いかを示す数値を指します。損益分岐点売上高は、「売上=費用」となるために、どれほどの売上が必要かを示す数値です。

それぞれの計算式は以下のとおりです。

  • 損益分岐点販売数量=固定費÷1個あたりの限界利益
  • 損益分岐点売上高=販売価格×損益分岐点販売数量

限界利益とは、商品販売時に直接得られる利益のことで、「売上-変動費」で求められます。

たとえば、商品1個あたりの販売価格700円、変動費100円の場合、1個あたりの限界利益は、700(円)-100(円)=600(円)となります。

上記の限界利益かつ固定費30万円の場合、損益分岐点販売数量は、30万(円)÷600(円)=500(個)。つまり、赤字を回避するためには、商品を500個以上売る必要があります。

また、このときの損益分岐点売上高は、700(円)×500(個)=35万(円)です。

損益分岐点売上高について、損益分岐点販売数量を求めずに算出したい場合は、以下の計算式でも求められます。

損益分岐点売上高=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}

上記計算式の「(変動費÷売上高)」は、売上高のうち変動費が占める割合を示した「変動費率」を表します。また「{1-(変動費÷売上高)}」は、売上高のうち限界利益が占める割合を示した「限界利益率」を表しています。すなわち、「損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率」とも表現可能です。

先ほどと同様、販売価格700円、変動費100円、固定費30万円と仮定し、「損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率」の計算式で算出してみましょう。

まず、限界利益率は、売上高に対する限界利益の割合であるので、600(円)÷700(円)=0.85(85%)です。すなわち、損益分岐点売上高=30万(円)÷85%=約35万(円)と計算できます。

損益分岐点の活用方法とは?

損益分岐点は、以下の経営分析を行う際に活用できます。

  • 損益分岐点比率の算出
  • 安全余裕率の算出
  • 目標利益達成売上高の算出

それぞれの内容と計算方法を解説します。

損益分岐点比率の算出

損益分岐点比率は、実際の売上高に対する損益分岐点売上高の割合であり、事業の収益性を示す指標となります。損益分岐点比率は以下の計算式で求められます。

損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷実際の売上高

損益分岐点比率が100%のときは、損益分岐点売上高と実際の売上高は同じであるため、利益も損失も生じていない状態です。100%を下回るときは、実際の売上高が損益分岐点売上高より高い場合であるため、黒字と判断できます。反対に100%を上回るときは、赤字であると判断できます。

たとえば、損益分岐点売上高が300万円、実際の売上高が500万円だった場合の損益分岐点比率は以下のとおりです。

損益分岐点比率=300万(円)÷500万(円)=0.6(60%)

上記の数値は、今後売上が減少したとしても、現在の売上高の60%までであれば、赤字にならないことを意味します。

損益分岐点比率は、数値が低いほど売上減少に対する耐性が強いとされています。損益分岐点比率を分析して現状を把握し、今後の事業戦略を考えましょう。

安全余裕率の算出

安全余裕率とは、実際の売上高が損益分岐点をどれだけ上回っているかを示し、経営の安全性を測るための指標となります。安全余裕率は以下の計算式で求められます。

安全余裕率=(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高

たとえば、損益分岐点比率の計算例と同様に、損益分岐点売上高が300万円、実際の売上高が500万円で計算した場合の安全余裕率は以下のとおりです。

安全余裕率={500万(円)-300万(円)}÷500万(円)=0.4(40%)

安全余裕率は、売上がどれほどまでなら低下しても問題ないかを表しています。上記の安全余裕率の場合、500万(円)×40%=200万円までの低下であれば、赤字にはなりません。

ちなみに、安全余裕率は、「100%-損益分岐点比率」でも算出できます。

安全余裕比率は、数値が高いほど経営に余裕があり、安全性が高いといえます。反対に、安全余裕比率が低い場合には、赤字のリスクが高まっているため、収益に向けた施策を考える必要があります。

目標利益達成売上高の算出

目標利益達成売上高とは、目標利益を達成するために必要な売上高を示します。目標利益達成売上高の計算方法は、損益分岐点の計算方法を応用し、以下のように求めます。

目標利益達成売上高=(固定費+目標の利益)÷限界利益率

たとえば、目標利益500万円、実際の売上高1000万円、固定費100万円、変動費150万円と設定した場合、目標利益達成売上高は以下のようになります。

  • 限界利益=1000万(円)-150万(円)=850万(円)
  • 限界利益率=850万円÷1000万円=0.85(85%)
  • 目標利益達成売上高={100万(円)+500万(円)}÷85%=約705万円

目標利益達成売上高を算出することで、どれほど売上を上げれば良いかが可視化できます。目標を具体的に共有するために有効な算出方法といえるでしょう。

意思決定会計とは?意思決定の種類や必要性・差額収益分析について解説

損益分岐点を下げるための方法

経営を黒字化させるためには、損益分岐点を下げることがポイントです。損益分岐点を下げるためには、どうしたら良いのでしょうか。

損益分岐点を下げるための方法は、主に以下の3つです。

  • 変動費を下げる
  • 固定費を上げる
  • 商品単価を上げる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

変動費を下げる

余分な変動費を削減することで、損益分岐点の引き下げにつながります。原材料費は適正か、余分な外注費は発生していないかなどを見直してみましょう。

しかし、変動費を削減したいからといって、無理なコストカットには注意が必要です。たとえば、原材料費削減のために安価な材料に変えた結果、製品の品質まで下がってしまっては本末転倒です。顧客が離れ、売り上げが低下してしまう恐れがあります。

また、外注費用削減のためとはいえ、発注費の無理な値下げは委託先とのトラブルの原因となります。

変動費を削減する際は、顧客満足度やステークホルダーとの信頼関係まで低下させることのないよう十分気を付けましょう。

固定費を下げる

固定費は売上に関わらず一定に発生する費用のため、削減することで損益分岐点の引き下げにつながります。固定費は製品の品質に直接関わることが少なく、社内の協力によって削減できる見込みが高い点も特徴です。

ただし、変動費と同様に、どの項目を削減するかは慎重に考えなければなりません。特に人件費は固定費のなかでも大きな割合を占めますが、安易な削減は、従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下を招く恐れがあります。それにともない、生産性や品質まで低下する可能性は否めません。

人件費を削減する以前に、ほかの固定費を削減できる余地がないかを検討しましょう。たとえば、オフィスの利用状況を見直して無駄な水道光熱費を抑える、リモートワークを導入してオフィスを縮小する、業務を効率化して不要な残業をなくす、などの対策も検討できるはずです。

無理のない範囲で、できることから固定費の削減に取り組みましょう。

商品単価を上げる

経費削減のほかに、商品単価を引き上げる手段もあります。費用が従来と同じでも、商品単価を上げることで限界利益が上がるため、損益分岐点を下げられます。

材料費に対して商品単価が低ければ、なかなか利益を得られません。コスト削減に取り組んでいるのにもかかわらず、損益分岐点を下げられない場合には、商品単価の見直しも視野に入れましょう。

ただし、商品の値上がりは、顧客離れを引き起こす要素でもあります。市場状況を分析し、購買意欲を損なわないよう慎重に判断しましょう。

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自社の損益分岐点を算出し経営に活かそう

本記事では、損益分岐点の計算方法や活用方法について解説しました。損益分岐点は、「売上=費用」となる時点の値であり、企業の経営状況を分析するために役立つ指標です。

損益分岐点を算出して現状を把握し、今後の施策立案や目標設定に役立ててください。

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