退職した社員の社会保険料を控除した給与の計算方法

記事更新日:2022/06/23

給与計算システム

退職者と給与計算

退職した社員の社会保険の控除には注意が必要です。社会保険料の計算は日割り計算をせず、退職日により異なるからです。特に給料は社員の生活に密接に関係しているため、社会保険料の計算間違いは許されません。ここでは、退職した社員の給与計算方法と注意点などを紹介します。

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退職時の給与計算方法

社員が退職したときは、通常の給与と計算方法が異なります。そのため、退職した月の給与を通常の給与と同様に計算すると、金額に間違いが発生するため注意が必要です。また、退職した社員とは、給与の振込後の対応が難しくなるケースもあります。

ここでは、退職時の計算方法として、総支給額、社会保険料、住民税などについて紹介します。

総支給額の計算

給与計算は、総支給額から総控除額を差し引いて支給します。退職時には、給料の起算日から退職日までの総支給額と総控除額を計算しなければなりません。

まず、総支給額を計算し退職月の給与がいくらであったかを明らかにします。総支給額を計算するときは、起算日から退職日までの日数を確認します。

その日数は、暦日での日数と出勤した日数の2通りあり、どちらかの日数を選ばねばなりません。どちらの日数にするかは会社で決めることができるので、就業規則を確認し同じ方法で日数を計算する必要があります。

例えば、月給30万円の社員が4月15日で退職するとき、暦日での日数と出勤した日数で、給与の額がいくらになるか計算をしてみます。

・暦日で出勤日数を計算する場合

30万円÷30日×出勤15日=15万円

・出勤日数により給与計算する場合※月20日勤務の場合

30万円÷20日×出勤15日=22万5千円

このように、暦日による計算では15万円、出勤日数による計算では22万5千円となります。

日数の計算方法により、給料の差額は

22万5千円-15万円=7万5千円

となるため注意が必要です。

社会保険料の計算

社会保険は、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つあり、まとめて、広義の社会保険といいます。

また、健康保険、厚生年金保険、介護保険などの3つをあわせて狭義の社会保険といい、雇用保険と労災保険などの2つをあわせて労働保険といいます。

狭義の社会保険と労働保険の2つについて、退職時の計算方法を紹介します。

社会保険料の退職時の計算

狭義の社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険などの3つをまとめた総称です。これらは、社員ごとに標準報酬月額を決定し、その額を毎月給与から徴収し国に納付します。

社会保険料は月単位で前月分を支払うのが特徴で、月の途中で退職するときは、前月分の1ヵ月を徴収すればよく、もし月末まで在職し退職するのであれば、前月分と当月分の2ヵ月分の社会保険料を徴収しなければなりません。

労働保険料の退職時の計算

雇用保険と労災保険などの2つをあわせて労働保険といいます。雇用保険料は、退職時の給与計算で支給額に一定の率を乗じると計算できます。

先に紹介した社会保険のように、前月、当月という概念がないのが雇用保険の特徴です。また、労災保険は会社負担となり、退職した社員は給与で保険料を負担する必要はありません。

住民税の計算

住民税は、6月〜翌年5月分までの金額を、毎月または数カ月分単位で支払います。この支払方法を「徴収」といい、徴収には普通徴収と特別徴収などの2つがあります。

普通徴収とは自らが住民税を市区町村に直接支払う方法で、特別徴収とは会社が社員から前月分の住民税を徴収し市区町村に納付する方法です。社員が退職するときは、納付先の市区町村に給与所得者異動届を提出し、社員が退職する旨を伝えます。

なお、特別徴収には退職した月により徴収の方法が変わるため、詳しく紹介します。

退職月が1月~5月のとき

退職月〜5月までの住民税を、給与や退職金などからまとめて特別徴収し、各市区町村に一括して納付します。ただし、まとめて徴収した額が給与や退職金より多いときは普通徴収とし、社員が住民税を納付します。

退職月が6月~12月のとき

社員から申し出があれば、給与や退職金などから翌5月までの住民税をまとめて特別徴収し、各市町村に一括して納付します。

社員からの申し出がなければ、前月分の住民税を給与や退職金などから特別徴収し、残りの住民税は退職した社員が普通徴収により納付します。

退職時の給与計算に必要な情報

社員が退職するときは、あらかじめ必要な情報を集めたうえで給与計算をします。

社員の給与は、個人ごとに状況や条件が異なるため、必要な情報に漏れがあると退職時の給与に間違いが発生し、後々のトラブルに発展しかねません。退職時の給与計算では、正しい情報を漏れなく集めることが必要です。

ここでは、退職時の給与計算に必要な情報として、給与形態、就業規則、社員の状況、保険の加入状況などについて紹介します。

給与形態の情報

給与形態の情報は、労働条件通知書と雇用契約書に記載してあります。給与計算では、それらの書類を確認し、給与計算の方法が給与形態と一致させなければなりません。

さらに退職月の給与が、月給から日給や時給などに変更がないかなど、給与形態の情報を必ず調べておきましょう。

就業規則の確認

就業規則には、社員の労働条件が記載されています。給与形態の規定や、通勤手当や職務手当などの諸手当、休日、退職金や退職の手続き方法などが記載されています。

社員が退職するときは、退職者やその上司から手続き方法などの問い合わせがあることが多く、常日頃から就業規則の記載事項は知識として持っておくことが大切です。

社員の情報

給与は社員ごとに計算するため、社員の個別情報を必ず確認します。以下の確認事項があるので漏れなく調べ、給与計算ソフトに反映しているか確認しましょう。

  • 職務手当が退職月に変動しているか。
  • 所得税や家族手当について、扶養家族に異動があるか。異動があれば扶養控除等申告書も修正する。
  • 交通費を前もって支給しているとき、通勤手当は適正か。退職月より後の交通費を支給しているときは、その金額を控除する。
  • 有給休暇は付与日数を超えて取得していないか。もし超過するときは欠勤控除する。

以上の確認事項に該当する内容があれば給与の金額は変動します。そのため、給与に関係する社員の情報は漏れなく集めなければなりません。

保険の加入情報

社会保険には、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険などの5つがあります。それらの中で、労災保険を除く4つの保険は社員の給与計算と関係していることを先に紹介しました。

特に退職月に標準報酬月額の変更があるとき、給与ソフトに反映されていないことがあります。社員が退職するときは、社会保険の加入情報を集めましょう。

月末退社日のみ注意が保険料計算に必要

健康保険や厚生年金保険、介護保険などの狭義の社会保険では、社会保険の資格喪失日は退職日の翌日になります。そのため、月末が退職のときは資格喪失日が翌月1日となり、退職する月の社会保険料を給与から徴収しなければなりません。

また、退職日が月末でなく月の途中のときは、通常の給与計算と同様に退職月の前月分の社会保険料を徴収します。このように、月末に退職するときのみ社会保険料の計算には注意が必要です。

社会保険料の日割りは不可

社会保険料は資格喪失日が退職日の翌日になることを先に紹介しました。社会保険料は日割り計算をせず月単位での計算となることに注意が必要です。

もし、社員が月の途中で退職し、その月の社会保険料を日割り計算して徴収すると、その日割り計算した金額は払い過ぎになります。

そのときは、社員に対し当該金額の返金処理をしなければなりません。社会保険料の日割りは不可なので、間違いのないよう注意しましょう。

退職後に加入する社会保険と注意点

社員が退職した後は、健康保険証を新しく作り直すことになります。健康保険証があると、保険料の1部を負担するだけで医療機関により診療や治療を受けることができます。

また、会社では厚生年金に加入していますが、国民年金に加入先を変更しなければなりません。退職することが決まった社員には、退職後に加入する社会保険と注意点などを正しく伝えないとトラブルにもつながります。

そして、退職後に加入する社会保険には種類があり、加入の際には注意することがあります。特に、健康保険証を取得する方法として、一定の条件があれば退職後に扶養に入ることもできます。ここではそれらについて紹介します。

加入する社会保険の種類

退職後に加入する社会保険には、さまざまな種類があります。再就職先が決まっていれば、そこで社会保険の加入手続きをします。再就職先の社会保険には、協会けんぽや職場の団体が運営する健康保険組合などがあります。

また、国民健康保険と国民年金などは、市町村が運営元となるため、役所の窓口で加入手続きをします。もし、社会保険を退職後も継続するのであれば、任意継続被保険者制度も利用できます。

国民健康保険や任意継続被保険者になる場合の注意点

社員が退職後に国民健康保険や任意継続被保険者になるとき、退職日により退職者の保険料は変わってきます。月の途中で退職するときは退職月の保険料は全額を退職者が負担し、会社が負担する必要はありません。

しかし、月末で退職するときは、退職月の保険料は会社がその半額を負担することに注意しましょう。

退職後、扶養に入る場合の注意点

退職後に扶養に入ることで、退職者の負担する社会保険料を減らすこともできます。ただし、退職日により社会保険の負担先が変わるので注意が必要です。

退職日が月末でないときに扶養に入ると、退職した月の社会保険料は扶養先の会社が負担するため、退職者の負担はありません。

しかし、社員が月末に退職するときは、会社から退職月の保険料を控除され、退職者は1ヵ月分の社会保険料を負担することになります。

おまけ:入社時の保険料の計算方法

社会保険料は日割り計算をせず、当月分の保険料は翌月の給与で計算され給与から控除されます。たとえば、給与の締日が25日で当月払い、6月1日に入社する社員がいたとき、6月1日〜25日の社会保険料は控除されません。

このように、入社日により社会保険料の計算方法が変わることに注意が必要です。

まとめ

社員が退職するときの社会保険の計算方法や注意すべき点、そして退職後に加入する社会保険などをここでは紹介しました。社会保険は日割り計算をしないこと、資格喪失日が退職日の翌日になることなどに注意が必要です。

もし、社会保険料を徴収しすぎたときは社員への返金処理が生じ、また、徴収に不足があれば、退職者からその金額を徴収しなければなりません。そうなると、無駄な作業が生じるだけでなく、会社の信用失墜につながります。

退職した社員から社会保険料を控除する際は、間違いのない給与計算をしましょう。

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