雇用保険料とは?正しい計算方法や対象賃金・効率化する方法を解説

最終更新日時:2022/06/19

給与計算システム

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雇用保険料は、失業や育児、介護などの場面で給付金を受け取れるように毎月の給料の中から差し引かれています。本記事では、そもそも雇用保険とは何か、雇用保険料の正しい計算方法・雇用保険に加入できる人の条件や、給付される手当の種類などを紹介しているので、各種手当を受け取る際にも利用してみてください。

雇用保険とは

会社に勤務している方は、会社へ入社することによって健康保険などの社会保険へ加入します。

雇用保険はその一つで、失業などで仕事がなくなった時のため、再就職や起業するまでの間に必要な給付が受けられる労働保険の一種とされています

雇用保険は、労働者が安定して雇用と雇用の促進ができることを目的として設けられた社会保険制度の一つとされており、政府が管掌している強制保険制度となっています。

従業員は雇用保険に加入していることで、なんらかの理由により失業し、収入が減った時などに「基本手当」や「育児休業給付金」などの給付を受けることができます。

失業は突然のことになるため、急に給料がなくなると生活も大変になります。そうした時、雇用保険は労働者の生活を守り、同時に支援も行ってくれます。

雇用保険は毎月の給与から控除として雇用保険料が差し引かれ、これによって失業時の支援を受けるためのお金を用意することができるようになっています。

雇用保険にはどういった種類があるのか、条件を満たすことでもらえる給付金にはどんなものがあるのか紹介します。

雇用保険の種類

雇用保険は主に厚生労働省が管理をしています。雇用保険に加入していることによって給付されるお金の管轄は、各地のハローワークによって行われています。

雇用保険の手続きは基本的にハローワークで申請などをするようになるため、雇用保険を利用する場合はまずハローワークでの手続きをするようにしましょう。

雇用保険の中にもいくつかの種類があるため、給付手続きを間違えないように気を付けてください。

基本手当

まず基本手当から紹介していきます。労働者が失業したことによって給料がもらえなくなった期間が発生した時、この期間でも安定した生活ができることを目的とした給付金です。

失業中の生活費を保証するための手当で、一般的には失業保険や失業手当とも呼ばれています。基本手当は、会社を辞めて失業後にハローワークへ行き、求職の申し込みをすることによって、前職の給料を基準とした支給がされます。

基本手当の給付期間や支給金額は、労働者の年齢や雇用保険に加入していた期間だけでなく、退職理由などをもとにして変動します。

失業中に受け取れる手当の種類として、基本手当だけでなく、技能習得手当というものもあります。こちらは失業中の方が、再就職できるように公共職業訓練などを受講する際にもらえる給付金のことです。

技能習得手当の支給金額は、最大で2万円の受講手当と公共職業訓練をするための施設に通う交通費を含めた金額で、最高で42,500円となっています。

育児休業給付

次に育児休業給付です。出産してから1年間給付金を受け取ることができる制度です。子供を出産してから子供が1歳になるまでの間、労働者は育児休業を取得できます。

しかし、この育児休業中は仕事を休むことになり、給料は支払われなくなります。そのため、給料の代わりとして支払われる育児休業給付金によって、経済的に援助を受けられるようにこの制度が設けられています。育児休業給付金は、育児休業に入る前までの給料をもとにして計算されます。

教育訓練給付

キャリアアップを目指している労働者の応援をするための制度としてあるのが、こちらの教育訓練給付です。

教育訓練給付は、労働者が資格を取ることでもっと条件のいい職に就きたい、会社内でのステップアップを目標としたい、といった中長期的なキャリア形成を支援することを目的とされています。

そのため、教育訓練給付金の対象となる講座を受講した場合、その受講終了後または資格取得後に、受講した講座の費用の一部が支給されます。

自分が目指したいキャリアに合わせた教育訓練を行うことができるメリットもあるため、キャリアアップに挑戦したい方は複数ある講座の中から気になる講座を選択し、教育訓練給付金を活用してみてください。

雇用継続給付

雇用継続給付は、働き続けている方を応援する制度として設けられたものです。この場合、会社での労働のことを示すのではなく、育児や家族の介護などを理由にして一時的に働けなくなった場合に、一定期間だけ雇用保険から手当が発生します。

育児休業給付も雇用継続給付に含まれますが、ここでは他にもあてはまっている介護休業給付と高年齢雇用継続給付について紹介していきます。

まず介護休業給付は、職場復帰を前提としていることが給付条件の一つです。そのうえで、家族を介護するために介護休業を取得している方に対して支給される手当となっています。

介護休業給付金は男女や年齢を問わずに取得することができ、支給される金額の計算方法は以下のとおりです。

  • 休業開始時の給与の日額×支給日数40%

介護休業給付の支給期間は、最長で3ヶ月となっています。

次に紹介するのは高年齢雇用継続給付です。60歳で定年を迎えた労働者の中で希望する方は、65歳まで継続雇用が可能です。

これは平成25年4月1日に高齢者雇用安定法が改正された時に義務化されたことで決まりました。継続雇用された際、労働者の賃金は60歳時賃金の30%〜70%に低下するケースが多く、雇用保険で低下した賃金の一部を補うために高年齢雇用継続給付が設けられるようになったのです。

雇用保険料の給与計算方法

雇用保険は、健康保険や厚生年金といった社会保険と同じ社会保障制度の一つですが、それぞれ用途は違っています。健康保険は病院への通院時に適用されるもので、厚生年金は65歳以上の人が受け取れる年金制度となっています。

雇用保険は育児や介護、失業といった場面で労働者への支援ができるように、毎月の給与から雇用保険料を差し引きます。その計算方法は次のとおりとなっています。

  • 雇用保険料=給与または賞与額×雇用保険料率

仮に、給与を20万円、賞与を50万円とすると、計算式は次のようになります。

200,000×3/1000=600円

500,000×3/1000=1,500円

600+1,500=2,100

こうして算出された2,100円が雇用保険料になります。

雇用保険料を計算する際の注意点

雇用保険料を計算するうえで、注意する点がいくつかあります。雇用保険は労働者を対象にしている保険なので、使用者となっている会社の経営者や役員、個人事業主は雇用保険に加入できません。

また、雇用保険法によって労働者が加入すること自体は義務付けられているので、雇用保険の加入対象となっている方は全員雇用保険に加入しなければいけません。

もし故意的に雇用保険に未加入となっていると、罰則を課せられる場合もあるので注意が必要です。

雇用保険料の計算は、雇用保険に加入した時点から開始されます。また、雇用保険を計算する時に特に注意してほしいのは、雇用保険料の対象となっている賃金の範囲についてです。

雇用保険料の対象となっている賃金は以下のとおりです。

  • 基本給
  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 技能手当
  • 住宅手当
  • 皆勤手当
  • 休養手当

こうしたものが雇用保険料の対象となり、毎月の給与計算から控除として差し引かれます。また、雇用保険料の対象外になる賃金は以下のとおりです。

  • 役員報酬
  • 結婚祝い金
  • 退職金
  • 年功慰労金

このような突発的なものや、労働には関係ないものが対象外の賃金となります。

雇用保険料の支払いタイミング

労働者側は、毎月の給料から雇用保険料が差し引かれていくため、雇用保険料の支払い時期は給与をもらう時と同じです。

しかし、事業主側は労働者が支払った雇用保険料を納付する必要があるため、支払いのタイミングを忘れないようにしましょう。納付の時期として、6月1日から7月10日までに、一年分の雇用保険を収めることができます。

雇用保険の加入対象者

雇用保険は、誰でも加入できるわけではありません。きちんと条件が設けられているので、この条件にあてはまった労働者がいる場合は、必ず雇用保険に加入してもらう必要があります。

雇用保険の加入対象者となるのは以下の方です。

  • 満65歳未満の方
  • 1週間の労働時間が20時間を超えている方
  • 31日以上の雇用見込みがある方
  • 昼間学生ではない方

これらの方が雇用保険の加入対象者です。この条件にあてはまっていれば、正社員だけでなく、パートやアルバイトの方も雇用保険の対象となります。

ただし、学生でも雇用保険の加入対象となる特例があります。卒業後にも働く予定の事業所で、「卒業見込み」の状態で働く場合や、休学中に働いている方は雇用保険の加入対象となります。

端数が出た際の雇用保険料

雇用保険料の計算で1円未満の端数が出た時には、原則として50銭以下の場合は切り捨てて、50銭1厘以上の場合は切り上げます。

労使間で慣習的になっている端数処理などの特約により、すべて切り捨てることが決まっている場合は、従来通りの端数計算方法によって取り扱うことが認められています。

会社側にそうした特約があるかどうか、事前に確認をしておきましょう。端数処理の計算方法について紹介していきます。

例:給与総額が243,088円の場合の雇用保険料

243,088×3/1000=729.264

(端数が50銭以下であれば切り捨てて計算する)

729.264→729円

この計算によって算出された金額が雇用保険料になります。

雇用保険料の給与計算を効率化するには?

雇用保険料の計算を含めた給与計算は経理業務として重要なものですが、人力での計算などをしていると時間も手間もかかってしまいます。会社に勤めている従業員の数によっては、給与計算はすぐに終わらないこともあるでしょう。

そうした時は、労務管理をするために開発されているソフトウェアを導入してみましょう。労務管理ソフトを活用することで、雇用保険だけでなく、社会保険の計算がスムーズに行うことができます。

また、作業時間を大幅に削減することができるだけでなく、給与計算のために必要な情報を入力しやすくなるため、入力ミスを防ぐことができます。

従業員一人一人によって雇用形態や勤務日数なども変わってくるので、給与計算や手当、社会保険など計算方法が異なってきます。システムを利用すれば、大半の計算や作業が自動化できるため、生産性の向上につながります。

まとめ

毎月の給与から差し引かれている雇用保険は、失業や育児休業によって長期的に給料が入らなくなった時、生活支援のための給付金を受けとることができます。

用意されている手当も複数あるため、給料がなくなったことで生活に困ることがあっても、ハローワークなどで手続きをして給付金を受け取って対処できます。

雇用保険に加入することで受け取ることができる手当の種類などを把握し、事前に対処が取れるようにしておきましょう。

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