賞与(ボーナス)の計算方法とは?社会保険料の算出や賞与額の基準について

最終更新日時:2022/05/12

給与計算システム

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本記事では、給与計算で賞与(ボーナス)にかかる社会保険料や所得税の計算方法や気をつけるポイントを紹介しています。賞与の計算をする際は、保険料率や加入している保険がその年や年齢などで変化するので、会社側や、労働者側で賞与があった場合、その年や年齢などで変化するので、知っておくに限ります。また、賞与の支給額の基準についても触れています。

給与計算における賞与(ボーナス)とは

賞与(ボーナス)とは、会社の規定や自由意思によって支払われる確定されていない支給額です。会社に大きく貢献するなどでも賞与が支給される場合があります。

多くの収入を得られるということは、仕事への意欲や喜びにつながりますが、給与計算をする際には注意するべき点があります。

それは、一定で支給される給与と一緒にしてしまうことです。総支給額であることには間違いありませんが、賞与は給与とは別で計算することが決められています。給与計算をする際、知らずにいると計算間違いによるトラブルや時間のロスになり兼ねません。

給与と賞与にどのような違いがあるのか理解しておきましょう。

給与との違い

給与が賞与と違う大きなポイントは、支給額が確定されているのかに尽きます。給与というのは一定して支払いが発生する、つまり金額が確定されているということです。さらに、労働基準法第24条にも定められており、支払わなければ法律違反になります。

その点、賞与は労働条件などの会社の規定で決められていない限り、支払いの義務はありません。労働者は法律によって、賞与を支給されると社会保険料などの計算は必須となりますが、賞与を支給されない場合は必要がなくなります。

しかし、来年や再来年に賞与を支給されたときには、計算しなければいけません。給与に加えて賞与もあった際はまとめずに、分けることを頭に入れておきましょう。

決算賞与と通常の賞与の違い

決算賞与は「会社の業績」に応じて支給されますが、通常の賞与の場合は基本「会社への貢献度」によって発生することが多いです。この2点の賞与は、意味が分かるように用語として分類されていますが、確定されない支給額に含まれます。

決算賞与と通常の賞与とは別ものに感じますが、給与計算のときには給与と賞与を分けて計算するのとは違い、決算賞与と通常の賞与の2つの賞与があったときは合算して問題ありません。

賞与(ボーナス)の給与計算するときのポイント

賞与(ボーナス)が発生したときには、給与とは別に社会保険料や税金がかかってきます。給与のように、毎月計算をする必要がありません。

しかし、スムーズに対応するためには事前に賞与にかかる保険料などの計算方法や保険料率を知り、準備しておくことがポイントです。次の年には保険料率が変動するものや、年齢によっては発生しない保険料があります。

一度支払って来年も同様に計算してしまうと、忘れているものや間違いが起きてしまいます。申告書の提出納期のギリギリに調べ始めないようにしましょう。

賞与(ボーナス)の社会保険料の給与計算

賞与の手取りは、まず社会保険料を差し引き、次に所得税(源泉徴収税)を引いた金額になります。

社会保険料の支払いは、厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料・雇用保険料の4つですが、40歳以上でなければ介護保険料は払いません。年齢次第で3つまたは4つの保険料を払います。計算するときは、以下の式を使います。

標準賞与額×保険料率÷2=保険料

標準賞与額は、賞与額から1000円未満の端数を切り捨てた値です。保険料率は保険の種類によって違います。

また、年度や会社が適用を受けている都道府県が異なった場合にも変わってくるため、かかる保険料率は何%なのかその年ごとに確認しておくと良いでしょう。

また、被保険者と社長などの事業主が折半するのが基本なので、標準賞与額に保険料率をかけた値に2で割ることを忘れないようにしてください。

健康保険料の計算

健康保険料の計算は、健康保険料率に標準賞与額をかけた値になります。標準賞与額にする際は、賞与の1,000円未満の端数を切り捨てることが必要です。

健康保険料率は、中小企業が多数加入している「協会けんぽ」、自社またはグループ会社といった大企業が全体で設立し加入している「健康保険組合」、まずはこの2種類のどちらに加入しているかを理解することが必要です。

協会けんぽに加入している場合の健康保険料率は、会社がどの都道府県から適用を受けているのかで3%〜13%の範囲で異なってきます。

ちなみに東京都での健康保険料率は9.84%と定められています。東京都にある会社が、Aさんに賞与を30万円支払ったときの健康保険料の計算は以下のとおりです。

Aさんの健康保険料=300,000×9.84%÷2=14,760円

29,520円から事業主とAさんが折半するため、14,760円という健康保険料になります。健康保険組合の健康保険料率は、協会けんぽと比較すると低いのが一般的です。さらに、被保険者の負担を軽減する健康保険組合も中にはあります。

厚生年金保険料の計算

厚生年金の保険料率は、平成29年9月から18.3%で固定されています。他の都道府県でも変わらないため覚えやすいので、賞与の1,000円未満の端数を切り捨てる標準賞与額を間違わないようにしておきます。

ちなみにBさんの賞与が380,675円だった場合は、以下の計算になります。

Bさんの厚生年金保険料=380,000円×18.3%÷2=34,770円

賞与の675円は1000円未満の端数なため、標準賞与額は380,000円になり、厚生年金の保険料率である18.3%をかけた数値が69,540円となります。

加えて保険料を事業主と被保険者それぞれ負担するので、Bさんは34,770円の厚生年金保険料を支払う必要があります。

介護保険料の計算

40歳以上になったときに加入する介護保険の保険料率は1.80%と決められています。これは、協会けんぽの令和3年3月分からの保険料率です。ちなみに、介護保険の資格を取得する日は40歳になる誕生日の前日からです。

4月1日が誕生日ならば、前日が3月31 日となり、属する月である3月から介護保険料の徴収が始まります。もしCさんの賞与が30万円だった場合の介護保険料は以下の方法で計算します。

Cさんの介護保険料=300,000円×1.80%÷2=2700円

介護保険を計算する前に現在加入しているか知ることから始めましょう。必要ない場合は、時間を余計に使ってしまいます。

反対に加入しているのに忘れてしまうと、手取り額が大きく変わってしまい計算をし直すことになります。

賞与(ボーナス)の雇用保険料の給与計算

雇用保険料を計算するときには、以下の計算式を使います。

雇用保険料=賞与額×雇用保険料率

社会保険では、賞与額の1,000円未満の端数を切り捨てる標準賞与額でしたが、雇用保険料の場合は切り捨てません。賞与額が300,345円の場合そのまま計算します。次に雇用保険料率は、以下の3つに分けられます。

  • 一般の事業
  • 農林水産、清酒製造の事業
  • 建設の事業

事業に応じて労働者と会社側が負担する割合も変わってきます。会社の事業が何かをまず把握することが必要です。

令和3年度の一般の事業で、Dさんの賞与が35万円だった場合の労働者および会社側が負担する雇用保険料は以下になります。

Dさんの雇用保険料=350,000円×3/1,000=1,050円

会社側が負担する雇用保険料=350,000円×6/1,000=2,100円

賞与(ボーナス)の源泉所得税の給与計算

社会保険料の次に所得税の計算を行っていきます。以下の計算式を使い、賞与にかかる所得税を算出します。

賞与の源泉徴収税額=賞与から社会保険料を引いた金額×税率

社会保険料から金額を算出するのは、所得税を計算するために必要になるからです。一つでも保険料が違っていると所得税の金額も異なってしまうので、しっかりと確認をしてから所得税を調べます。税率を求めるためには、以下の2つを準備しておきます。

  • 前月の給与から社会保険料を引いた金額
  • 扶養親族などの人数

上記の2つから「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を見て税率を調べます。例えば、Aさんの前月の給与が30万円、扶養親族1人、賞与が50万円だった場合の源泉所得税は以下になります。

(1)前月の給与300,000円 ― 社会保険料(健康保険料+厚生年金保険料+介護保険料+雇用保険料(一般事業))=254,190円

  • 税率4.084%:扶養家族1人、(1)254,190円の場合
  • 賞与500,000円―社会保険料(健康保険料+厚生年金保険料+介護保険料+雇用保険料(一般事業))×4.084%=(500,000円―76,350円)×4.084%=17,301.866円

賞与にかかる源泉徴収税は、1円未満を切り捨てた金額になるので、「17,301円」となります。

源泉所得税の金額を計算したならば、Aさんの手取り額は賞与額―(社会保険料+所得税)で、

500,000円―(76,350円+17,301円)=406,349円

になります。

給与計算における賞与(ボーナス)の決め方

法的に、賞与の回数や支払いの時期などは決まっていません。ですが、賞与を支給している企業には、判断するための基準や決め方があります。どのような基準、もしくはルールがあるのかチェックしていきましょう。

賞与(ボーナス)の金額の基準の根拠

賞与の基準となりうる根拠は、大まかに就業規則、労働協約、労働契約の3つです。就業規則では企業側によって労働基準法などに基づいて作成が行われます。

労働協約は、企業と労働組合との間で結ばれ、労働契約では企業と労働者の間で締結されます。それぞれ賞与を支給するのか、支給額はいくらになるのかは企業によって条件を決められます。

基本の3つが賞与を支給する有無を判断する基準となっていることを覚えておきましょう。

基本給の額が一般的基準

賞与は基本給を基準として何ヶ月分または何%分といった表記で取り決めを行っているケースが多いです。

基本給の額とは、総支給額から手当などを引いた金額である給料のことを意味しています。労働者に理解されやすい形にすることで、誤解やトラブルを避ける効果を持つからです。

ちなみに、賞与の決定には年齢やスキル、職種といったものも考慮されて決定する企業が多数あります。

正当な理由なく減額はできない

賞与は、企業の自由意思で支給額を決められますが、労働契約や会社の規定などによって支給額を確約している場合は、正当な理由なく減額はできません。なぜなら、支払うことを義務付けられているからで、会社側の都合で減額や支給されなければ問題になりやすいからです。

また、賞与を明確に定めていなくとも、理由もなく賞与がいきなり下がれば信用度に関係してきます。遅刻などの勤務態度や懲戒処分といった理由を説明できなければ、賞与の大きな減額や不支給にすることは難しいです。

まとめ

本記事では、給与とは別に賞与(ボーナス)の計算する方法や、賞与の決め方について解説しました。

賞与は必ずしも支給されるものではなく、法律上でも必要であるとは明記されていません。しかし、従業員のモチベーションを向上させるなどを目的に、賞与の支給を明確にしている企業も少なくありません。

賞与がある際は、社会保険料、源泉所得税の計算に必要な項目を整理しておきます。年度や年齢によっても変動する方もいるので、その年ごとの保険料率や加入している保険のチェックをしておくことも大切です。

また、賞与の基準も把握しておくことで、賞与に関して会社と労働者の大きなトラブルを事前に防ぎ、信頼関係を強く結びつけることにつながっていきます。

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