給与計算とは?業務内容や計算方法・注意点をわかりやすく解説

最終更新日時:2023/05/02

給与計算システム

給与計算とは

そもそも給与計算業務とは何かについて解説しています。さらに、毎月行う業務の他に、各種税金や納付時期、起こりがちなミス、一般的な勘違いなども項目別に記載しています。正しい知識を身につけてより一層給与計算にミスがなく取り組めるよう、注意すべきポイントなども解説しますので是非チェックしてください。

鷹尾 大輔

監修者 鷹尾 大輔 特定社会保険労務士 社会保険労務士法人リオ・パートナーズ 特定社会保険労務士。 弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士の4法人で構成するリオ・パートナーズ総合事務所で人事労務分野のエキスパートとして活動。 企業や個人のクライアントに対して、法令遵守や問題解決へ導く労務相談対応を行っています。 また、各種規程の作成や人事労務デューデリジェンス、企業型確定拠出年金の導入支援等の業務にも携わっています。 お客様に寄り添い、的確なアドバイスを提供することを心がけています。

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給与計算とは

給与計算とは文字のとおり、社員や契約社員、アルバイトやパートなどの、毎月の給料を計算する業務のことです。

給与計算は一見すると毎月同じ作業の繰り返しで同額の支給にみえるかもしれませんが、従業員の給与を構成する項目ごとに毎月変動があったり、項目ごとの計算方法が複雑であったりするため、想像以上に大変な業務です。

まずは、給与とはどのような構成で決定されているのか、項目について概要をひとつずつ見ていきましょう。一般的に給与は、企業が従業員に支払うと取り決めた「支給額」から「控除項目」を差し引くことで計算します。

給与計算の初心者が抑えるべき重要ポイント【基礎知識まとめ】

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給与計算が複雑で大変な理由

簡単そうに見える給与計算業務ですが、給与計算の仕事自体は基本的にルーティンが決まっており、決められた給与支給日にしたがって、それぞれの分類された業務工程を期日までに行う必要がある、というルールが生じます。

給与計算は一見すると、単純作業とみなされがちですが、給与計算の仕事が難しいと言われるのにはいくつかの理由があります。ここからは難しさやイレギュラー時の対応について、ひとつずつ見ていきましょう。

  • 計算ミスが許されないため
  • 毎年のように基準変更があるため
  • 税金や法律についての仕組みを理解しておかなければならないため
  • 守秘義務を守らなければならないため

計算ミスが許されないため

従業員にとって給与とは、生活を支える源です。例えば何かの手違いで自分の給与が少なく振り込まれていては、たちまち生活が困窮してしまいます。

残業代や各手当が間違って計算されると、雇用保険料や所得税額等の控除金額も間違って算出されることになり、結果として差引の支給額が大きく変わってきます。そのため、給与というのは正しく振り込まれる必要があります。

他の経費と同様に、計算後の振込作業についても絶対にミスが許されない業務です。昨今では多くの企業が給与計算ソフトを導入しているとは言え、入力ミスや申請の処理を間違うとその修正に大きな負担が生じます。

単純に見える給与計算ですが、実はミスが許されないためとても重要な業務と言えます。

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毎年のように基準変更があるため

所得税として引かれる源泉徴収税や、社会保険料などの金額は定期的に料率改定が行われます。

また、社内における給与規定自体も改訂が行われる場合も多く見受けられます。そのため、給与計算担当者は常に最新の知識を理解しておく必要があります。

税金や法律についての仕組みを理解しておかなければならないため

給与計算をするにあたっては、総支給額に対しての控除額を計算しなければなりません。

所得税については、毎月控除額が変わることもあります。住民税については、毎年5月~6月頃に各市区町村から住民税額の通知書が郵送されますので、通知書記載の金額を給与から天引き(特別徴収)を行う必要があります。

そのため、あらゆる税金や控除の仕組みを理解し、法令に反していないかという点も遵守した上でおこなう必要があるのです。

守秘義務を守らなければならないため

給与計算業務をしていると、担当者は従業員の給与を把握することになります。企業における給与の金額というのは、一般的には関心の高い情報です。

そのため、情報を漏えいさせないことが重要な義務となります。

業務で得た個人の秘密を漏えいさせることは、懲戒事由にも該当するため、守秘義務を守る必要があります。

給与担当者は、重要な機密事項を扱っている認識を持つよう注意しましょう。

鷹尾 大輔監修者鷹尾 大輔

給与計算は、計算を間違うと会社・従業員の双方に大きな影響が発生し、時に信用問題にも繋がりかねません。限られた期間内に大量の人数を処理する必要があるため、あらかじめ業務フローを精査、確立しておくことでケアレスミスを防ぐことが出来ます。また、給与計算は労働基準法をはじめとして多くの法律と密接に関連があるため、あらゆる法律面にも精通している必要があります。

給与計算の業務内容・進め方

給与計算方法について、大まかな流れを解説します。

  1. 従業員の勤怠情報をデータ抽出し締め日ごとの労働時間を集計する
  2. 総労働時間から総支給額(基本給や残業代等)を計算する
  3. 各種保険料・税金を計算する
  4. 総支給額から各種保険料と税金を控除する
  5. 給与を振り込み、保険料と税金を納付する

給与計算は一般的な企業では、総務や人事の仕事と思われる傾向がありますが、経理業務のうちの重要な仕事のひとつともいえます。

会社で働く従業員の給与を確定する業務のため、給与計算担当者はそれぞれの工程についてきちんと理解しておく必要があります。

従業員の勤怠情報をデータ抽出し締め日ごとの労働時間を集計する

給与計算をする前に、従業員の勤怠管理情報から抜け漏れや不審な箇所がないかをチェックし、申請漏れなども確認します。

必要に応じて従業員や上長に確認と承認をとり、全従業員の全労働日について正しい勤怠情報がそろった時点で、勤怠を締めるところからスタートします。

勤怠を締めた後は、総労働時間や遅刻・早退の時間、欠勤日数や時間外労働時間、深夜労働時間、法定休日労働時間など、給与計算に必要な情報を項目ごとにチェックし、漏れのないように労働時間を集計します。

総労働時間から取り決められた総支給額を計算する

上記の手順通りに算出した各種の労働時間数をもとに、給与の総支給額を計算し決定します。

また、企業ごとに就業規則で規定されている「基本給」や「通勤手当」、「住宅手当」などの各種手当、そして締め日の対象期間中に発生した「残業(時間外労働)手当」、「深夜労働手当」、「法定休日労働手当」、「遅刻・早退控除」、「欠勤控除」などをもとに、総支給額の計算を行います。

各種保険料・税金を漏れのないように計算する

次の欠かせない業務として、総支給額から控除する社会保険料などの計算をします。社会保険料は主に「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」「雇用保険料」の4つの保険料が存在し、それぞれ項目別の計算が必要になります。

なお、「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」は、標準報酬月額に社会保険料率を乗じて算出し、「雇用保険料」はその月の総支給額に、毎年決定し発表される雇用の保険料率を乗じて算出します。

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総支給額から各種保険料と税金を控除する

次に国民であれば支払う義務がある、税金類の計算を行います。税金は主に「住民税」「所得税」の2つを計算します。住民税は国に対して納付するのに対し、所得税は都道府県と市区町村に納付します。

住民税は、毎年5〜6月ごろに従業員が居住する自治体から送られてくる「給与所得者等に掛かる市民税・県民税 特別徴収住民税額」をもとに、従業員の給与から差し引きます。

所得税とは?給与計算における所得税の基本から計算方法まで

差引支給額の計算

最後の計算項目として、上記のとおりに進めてきた給与の「総支給額」から「各種社会保険料や住民税・所得税」を差し引いた、「差引支給額」を算出します。

これが一般的に世間で言われる従業員の「手取り」の給与となります。

給与計算の差引支給額とは?~総支給額との違いや計算方法を解説~

台帳作成などの事務処理

給与計算業務は、支給する金額を計算するだけではありません。

従業員に支払うべき差引支給額(手取り)が決定したら、次に賃金台帳や給与明細の作成、各従業員への振込手続きをおこないます。

賃金台帳や給与明細は、のちに変更があると差し替える業務が発生するため、漏れやミスのないように慎重に行います。

従業員への給与振り込み

実際の振込作業を行います。給与計算業務の中でも、振込業務はミスがあると多大な影響があるため、慎重に行う必要があります。

給与支給日には、従業員ごとに定められた給与振込指定口座に手取り金額を振り込み、上記で作成した給与明細を個別に配布します。

給与を振り込みし保険料と税金を納付する

給与担当者の業務は、従業員への振込作業だけではありません。給与から控除したお金をそれぞれの納付先に支払う必要があります。手順としては以下のとおりです。

  • 所得税と住民税:翌月10日までに税務署に納付する。※従業員数が常時10人未満である場合は、「納期の特例」制度を利用し、6か月ごとの納付にすると毎月の手間が省け、効率的です。
  • 社会保険料:年金事務所からの納入通知を元に月末までに納付する。※口座振替納付も利用可能です。
  • 雇用保険料:毎年7月に1年度分(4月~翌3月)を一括で納付する(労働保険料年度更新)

このように毎月のみではなく期間がイレギュラーなため、給与担当者はきちんとスケジュールを立てて、納付漏れがないよう管理を行いましょう。

鷹尾 大輔監修者鷹尾 大輔

労働時間集計は計算の基になるため、この時点での集計作業を誤るとすべての値が不正確なものとなります。就業規則を参照しながら、どのような勤怠ルール(変形労働やフレックス等)で運用されているかを確認する必要があり、1分単位で実労働時間との乖離がないように集計することが重要です。

給与計算の担当者が理解しておくべきポイント

給与計算とは単に従業員の給与を毎月決まった金額のみ計算するのではなく、さまざまな業務が付帯してきます。

あらかじめ重要なポイントを理解しておくと、ミスなくスムーズな業務がおこなえるのでそれぞれチェックしてみてください。

業務範囲が多岐に渡る

企業によっては、給与計算業務を行うには担当部署が異なるケースが多く見受けられます。

一般的な企業では、総務部や管理部が一括して行う場合や人事部と経理部で手分けして行う場合など、企業ごとにいろいろなパターンがあります。

そのため、どの範囲まで担うかは上司や先輩に確認し、担当領域や業務範囲を把握して取り組みましょう。

賃金支払いの5原則を理解しておく

給与計算をする上で重要になるのは、労働基準法に定められている賃金支払いの5原則というルールについてです。

  • 通貨払いの原則
  • 直接払いの原則
  • 全額払いの原則
  • 毎月1回以上払いの原則
  • 一定期日払いの原則

給与計算業務の根幹とも言える重要な項目なので、目を通して理解しておきましょう。

割増賃金に気を付ける

現在の日本では、労働基準法により法定労働時間を1日8時間・週40時間と定めています。これを超える残業については割増率が定められています。残業手当の場合は25%、休日出勤手当が35%となっています。

また、夜の10時〜朝の5時までの時間帯は、別途「深夜労働」として25%割り増しする必要があります。さらに、労働時間を集計する際は、1分単位で集計する定めになっています。

例えば15分未満の労働時間があった場合でも、切り捨てて処理すると違法になるため、細心の注意が必要です。(月の総労働時間で集計する場合は一部例外あり)

割増賃金や労働時間は、必ずミスのないように正しく計算し、給与計算担当者は各賃金の加算を忘れないように慎重に取り組む必要があります。

鷹尾 大輔監修者鷹尾 大輔

給与計算で最も意識しなければならないポイントが”未払賃金”です。割増賃金についてはどの手当が割増単価に含まれるのかを確認することが重要です。家族手当や住宅手当等の名称であっても一律に一定の金額が支払われる場合には割増賃金単価に算入する必要があり、算入していない場合は未払賃金が存在している可能性があります。また、最低賃金を下回っていないかについても常に確認しておくことで未払賃金トラブルを回避することが出来ます。

夜勤手当の給与計算方法とは?時間帯の定義や割増賃金との違いについて

効率的に給与計算するには給与計算ソフトの導入がおすすめ

給与計算業務を効率化には、給与計算ソフトの導入がおすすめです。

給与計算ソフトがあれば、専門的な知識が乏しい従業員でも給与計算を担当でき、自社独自の給与計算の方法がある場合でもシステム上でカスタマイズを行い設定することが可能です。

さらに、社内で使用している既存の勤怠管理システムなどと連携できる給与計算ソフトを導入すれば、バックオフィス関連の業務全体の効率化を促進できます。

最近では給与計算業務をさらに効率化するために、給与計算ソフトの導入を検討する企業が増えおり、実際に導入している企業がほとんどです。

紙やエクセルでの給与管理では、人的ミスも起こりやすく修正に手間がかかるため、給与計算ソフトの導入をおすすめします。

おすすめのツールはジンジャー給与

給与計算システムの導入を検討している人には、クラウド上で全ての作業が完結するジンジャー給与がおすすめです。

ジンジャー給与では、給与体系ごとに正確でスピーディーに自動計算をしてくれるので、入力作業の負担が軽減されます。

年末調整の自動計算にも対応しているのもうれしいポイントです。

給与計算を理解して業務効率をアップ!

これまで、給与計算とは何か、またその計算方法や手順について項目別に詳しくお伝えしてきました。

働く上で従業員の生活に密接し、最もミスが許されない業務として重要な給与計算ですが、リモートワークやさまざまな働き方が求められるようになった最近の雇用情勢では、計算がより煩雑になっているのも現状です。

給与計算のシステムを変えるだけで、格段に業務の効率がアップします。

そのために給与計算ソフトや勤怠管理システムを導入することは、正しい知識を身につけることと同様に、これからの企業のあり方として早急に検討すべきことと言えるでしょう。

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