変形労働時間制を採用した場合の給与計算方法とは?

2022/5/7 2022/05/07

給与計算システム

労働時間とタイムカード

繁忙期と閑散期のはっきりしている会社では、変形労働時間制を導入すると出勤スケジュールや労働時間の管理をしやすくなります。本稿では、変形労働時間制を導入した場合の所定内勤務時間や残業代などの給与計算方法をお伝えします。

給与計算に関連する変形労働時間制とは

労働基準法には、1日8時間、1週間で40時間までの法定労働時間の規定があります。この法定労働時間を超えると会社は残業代を支給しなければなりません。しかし、事業によっては、繁忙期には残業が多くなり、会社の残業代に要する経費が膨れ上がる可能性があります。

そこで、業務量に応じて労働時間を調整する、変形労働時間制という勤務形態をとることも労基法では認められています。ただし、変形労働時間制を導入するには一定の条件があるので注意が必要です。ここでは、変形労働時間制を導入した際のメリットやデメリットをお伝えします。

変形労働時間制のメリット

変形労働時間制を導入すると、従業員は出勤と休暇の予定をたてやすくなります。特に閑散期に多めの休暇を取ることで、仕事とプライベートの両立を図る機会を得ることができます。会社にとっては、例えば繁忙期の特定の日の所定労働時間を1日10時間勤務に設定し、また特定の週の所定労働時間を54時間に設定することなどが可能です。

その際の残業代については、1日の所定労働時間を10時間とした場合、2時間分の残業代を支払う必要がなくなるため、会社にとってコスト削減のメリットが生じます。特に閑散期と繁忙期の予測ができる業種では、時期によって人員を適切に配置できるため、この制度にはメリットがあります。

変形労働時間制のデメリット

変形労働時間制はメリットがありますが、デメリットもあります。まず、繁忙期に予定している労働時間を超えなければ、残業代は支給されません。繁忙期の長時間勤務により残業代の支給を目当てとしている従業員にはデメリットが生じます。また、変形労働時間制は対象となる期間内の所定労働時間を変更することができません。そのため、週所定労働時間を8時間以下と設定した閑散期に残業が生じた場合、その分の残業代を支給しなければなりません。閑散期でも残業代が発生することは会社にとってデメリットです。

そして、変形労働時間制で1番のデメリットは、会社による制度の悪用と誤用です。変形労働時間制は実務では運用が難しい側面があり、従業員それぞれで給与計算が異なります。会社は残業代を支給しなくて済むとの認識で、意図的に残業代を従業員に支払わない可能性があります。月単位や年単位で変形労働時間制を導入した場合でも、その期間内の労働時間は同じです。従業員は、会社による悪用や認識違いによる誤用によく注意する必要があります。

給与計算方法が違う類似した制度

変形労働時間制では、会社が労働時間を設定し従業員はその時間に勤務します。これに対し、変形労働時間制のなかには従業員が労働時間を選べるフレックスや裁量労働制などもあります。それらの制度は、月単位や年単位の変形労働時間制と内容が異なりますので、ここでお伝えします。

フレックスタイム制

従業員が出社時間と退勤時間を自由に決める制度がフレックスタイム制です。もともとフレックスという言葉には、柔軟に、の意味があるため、従業員の働きやすい環境を導入する目的でフレックスを使っています。フレックスには必ず出勤の必要なコアタイムを設定できます。コアタイムでは従業員同志の打ち合わせやコミュニケーションを図ります。なおコアタイムのないスーパーフレックスがあり、この制度を導入する企業もあります。

フレックスタイム制における正しい勤怠管理とは?重要性や注意点も解説

裁量労働制

職種によっては、従業員に労働時間の裁量を完全に任せる裁量労働制があります。裁量労働制は、みなし労働時間制ともいい、従業員ごとに労働時間は変化します。なお、1日8時間、週40時間などの労働基準法は適用されません。裁量労働制では従業員は自由に働けますが、過重労働の原因も懸念されます。この制度を利用する職種には、研究開発職、執筆編集者などがあります。

シフト制

事業所や業種によっては、1日24時間営業の店舗や、工場の製造ラインなど業務を中止できないことがあります。その場合は1日8時間の勤務時間をずらし、交代で出勤するシフト制を採用します。シフト制では従業員の希望する日に休日をとれない、希望する日に出勤できないなどの可能性があります。なお、1日8時間を超えて勤務した場合は残業代の支給が必要です。

給与計算における変形労働時間制の種類

変形労働時間制の種類は、労働時間の清算期間により分類できます。ここでは、1ヶ月ごとに給与を精算する1ヶ月単位の変形労働時間制と、1年間で繁忙期と閑散期により勤務時間を調整し給与を支給する1年単位の変形労働時間制についてお伝えします。

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月単位で1日当たりの労働時間を調整する制度です。1ヶ月の法定労働時間を超えなければ残業代を支払う必要はありません。この労働時間制を導入するには、まず1ヶ月の法定労働時間の範囲内であることが必要です。また1週当たりの平均労働時間を40時間以内に設定します。

なお、就業規則にこの労働時間制を採用している条項を設けなければなりませんが、労働基準監督署への届け出は不要です。1ヶ月単位だと勤務の計画を立てやすいため導入しやすい制度です。

1年単位の変形労働時間制

繁忙期が月をまたぎ、また季節ごとに異なる場合などに1年単位での変形労働時間制を導入するケースがあります。この制度を導入するには、1年間の就業カレンダーを作成する必要があり、さらに労働時間に細かいルールがあるため注意が必要です。まず、対象期間の1週あたりの労働時間が平均して40時間を超えないようにします。

次に、1日10時間かつ1週52時間以内の労働時間とします。さらに労働日数は連続して6日までとします。なお、1年単位の変形労働時間制を導入する際は、就業規則にその労働時間制を採用している条項を設け、さらに労使協定を締結し労働基準監督署に提出しなければなりません。

給与計算の際に変形労働時間制で注意すること

変形労働時間制を導入すると、閑散期と繁忙期で労働時間や給与計算が異なり、さらに就業規則も整備しなければなりません。ここでは給与計算の際に変形労働時間制で注意することをお伝えします。

残業時間の計算方法

変形労働時間制の残業時間の計算方法は通常の勤務形態と異なるので注意が必要です。なお、1ヶ月単位と1年単位の変形労働時間制では残業時間の考え方は同じです。まず1日単位では、所定労働時間が8時間を超えて設定している場合はその超えた部分が残業時間となり、所定労働時間が8時間を超えずに設定している場合は8時間を超えた分が残業時間となります。

次に1週間単位では、所定労働時間が40時間超えの場合はその時間を超えた分が残業時間となり、それ以外の週は40時間を超えた分が残業時間となります。そして1ヶ月単位では、週平均40時間である法定労働時間を超えた分が残業時間となります。

労働時間を繰り越せない

変形労働時間制を導入した場合、労働時間は設定された1日当たりの時間で清算されます。たとえば、1日の労働時間が8時間と就業規則に設定してある場合、9時間勤務し翌日1時間勤務時間を減らしても、平均して8時間労働したことにはなりません。この場合は9時間勤務した日は1日の超過勤務となり、翌日1時間勤務時間が短い分は1時間の早退扱いとなります。このように変形労働時間制では労働時間を繰越せない点に注意が必要です。

就業規則の記載をチェック

1年単位の変形労働時間制を導入している場合は、その期間の休日が少ない際には、設定した労働時間が法定労働時間を超えている可能性があります。その場合は、1年間で設定した労働時間が法定労働時間を超えている分の残業代を支払わなければなりません。そのため、就業規則に設定した労働時間が法定労働時間内に収まっているか、カレンダーや休日の項目などを確認する必要があります。

変形労働時間制の残業代給与計算方法

変形労働時間制を導入すると、残業代の削減に繋がることを先にお伝えしました。しかし、変形労働時間制でも一定の条件を満たせば残業代を支給しなければなりません。ここでは、1ヶ月単位と1年単位の変形労働時間制の残業代の支給方法ついてルールをお伝えします。

1ヶ月単位の変形労働時間制の場合

1ヶ月単位の変形労働時間制の場合の残業代給与計算方法は、次の基準①〜③のとおりです。

  • 基準①:1日単位では、労働時間が8時間を超えない場合は8時間を超えた分が残業の支給対象となり、労働時間が8時間を超える場合はその時間を超えた分が残業代の支給対象となります。
  • 基準②:1週間単位では、労働時間が40時間を超えた分が残業代支給の対象となり、それ以外の週では40時間を超えた分が残業代の支給対象となります。
  • 基準③:変形期間における法定労働時間の総枠では、1週間の法定労働時間×(変形期間の日数÷7日)を超えた時間(①、②の時間外労働となる時間を除く)となります。

1年単位の変形労働時間制の場合

1年単位の変形労働時間制の場合の残業代給与計算方法は、1ヶ月変形労働時間制の基準①〜③と同様です。

基準①〜③で計算した金額を合計して残業代を支給します。

なお、対象となる期間途中に採用された従業員や退職者などの残業代計算方法には注意が必要です。

この場合は、設定された労働時間が週40時間のみ勤務し、労働時間が週40時間未満の期間に勤務しない場合があります。週平均の労働時間が40時間を超える場合、単位期間内の総労働時間が法定労働時間を超えていなくても、残業代支払の対象となります。

まとめ

変形労働時間制を導入すると、従業員は勤務と休日の調整がしやすく、ワークライフバランスの実現につながります。また、事業者は残業代の支給を減らせるため、繁忙期と閑散期により人員を適材適所に配置できるメリットがあります。なお、変形労働時間制を導入する際は、就業規則の変更や労使交渉など労働基準法に準じた手続きが必要です。

変形労働時間制を導入する場合は、勤務カレンダーの作成や従業員それぞれの就業管理が発生し、そして給与計算も通常の労働時間制より複雑なため間違いの起きる可能性もあります。変形労働時間制の給与計算では、運用に必要な手続きをきちんと行い、従業員ごとの労働時間管理を正確に把握することが大切です。

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