労働保険とは?雇用保険・労災保険の加入方法や計算方法を解説

記事更新日:2022/05/22

給与計算システム

労働保険に加入する人たち

労働保険は雇用保険と労災保険の総称で、法律に規定があり労働者の雇用やけがなどを保障しています。ここでは、労働保険の押さえておくポイントや年度更新の方法や給与における労働保険料の計算方法、労働保険の対象とならない条件などを説明します。担当者の方はぜひ参考にしてください。

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労働保険とは

労働保険とは雇用保険と労災保険の総称で、従業員の雇用の安定と業務上の疾病の保障を行う公的な保険です。

労働保険は健康保険や厚生年金保険などと異なり、原則として従業員を一人でも雇う事業所は強制加入となります。ここでは雇用保険と労災保険について説明します。

雇用保険とは

雇用保険は従業員の雇用の安定と失業の保障を目的とします。雇用保険は原則として強制加入ですが、次の雇用条件で働く者は適用除外となります。

  • 4ヵ月以内の期間で働く者、一定の季節で働く者
  • 週の所定労働時間が20時間未満、かつ雇用期間が1年未満で働く者

雇用保険料は従業員それぞれの給与に保険料率を乗じて計算し、会社と従業員で負担します。

労災保険とは

従業員が業務上のけがや疾病、そして通勤災害を被った場合には労災保険が適用されます。

労災保険では正社員やパート、アルバイトなどの職位や年齢などには関係なく、一律に保障されるのが特徴です。労災保険料率は会社の事業によって異なっており、会社での労災が少ないと保険料率が低くなるメリットがあります。

労働保険の抑えておくべきポイント

労働保険は雇用保険法と労働災害保険法に規定があります。ここでは労働保険の適用事業と計算方法、そして1年に1度の年度更新について説明します。

適用事業は2種類

労働保険の事業には一元適用事業と二元適用事業の2種類があります。

・一元適用事業
雇用保険と労災保険の加入をまとめて行う事業を一元適用事業といいます。

・二元的用事業
雇用保険と労災保険の加入を別々に行う事業を二元適用事業といいます。

なお、農林漁業・建設業などが二元適用事業で、それ以外の事業が一元的用事業となります。特に二元適用事業である建設業では、元請業者が下請け業者の従業員をまとめて労災保険の対象とし、雇用保険では元請け業者と下請け業者が別々に加入するのが特徴です。このように事業の特性により適用事業が2つに分かれています。

給与を元に保険料を計算

労働保険料は給与の支給額に労働保険料率を乗じて計算します。給与の支給額とは毎年4月〜3月中に支給した給与の合計をいい、労働保険料率とは雇用保険料率と労災保険料率の合計をいいます。

雇用保険は会社と従業員で負担し、労災保険料は会社が全額負担するのが特徴です。

年度更新により保険料を納付

会社は労働保険の年度ごとに概算保険料を納め、3月末に給与総額が確定した後に確定金額を算出し精算します。これを労働保険の年度更新といいます。

年度更新において労働保険料の概算額が確定額より少ない場合はその差額を納付します。また、労働保険料の概算額が確定額より多い場合はその差額の還付を受けられます。

労働保険の加入手続きに必要なもの

労働保険に加入する際は、各届を労働基準監督署と公共職業安定所などに提出しなければなりません。労働保険の加入手続きは一元適用事業所と二元適用事業所で異なりますが、加入に関する各届の提出先は同じで労働基準監督署と公共職業安定所です。

ここでは、労働保険の加入手続きに必要な各届を、提出先ごとに分けて説明します。

労働基準監督署に提出するもの

労働基準監督署には、以下の書類を提出します。

・保険関係成立届
労働保険関係が成立してから10日以内に提出します。二元適用事業所はこの届を公共職業安定所にも提出する必要があります。

・概算保険料申告書
労働保険関係が成立してから50日以内に提出します。なお、この申告書は都道府県の労働局、または銀行や郵便局などの金融機関にも提出できます。

公共職業安定所に提出するもの

公共職業安定所には、以下の書類を提出します。

・雇用保険適用事業所設置届
雇用保険を設置した日の翌日から10日以内に提出します。

・雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険の資格を取得した日から翌月10日までに提出します。

給与計算には社会保険料控除も必要

雇用保険と労災保険の2つの加入方法や必要な申告書や届けなどを先に説明しました。給与計算では労働保険のほかに社会保険の計算も必要です。

社会保険には広義の社会保険と狭義の社会保険があるため、それらの違いと社会保険料の給与での控除方法などを説明します。

社会保険とは

社会保険には健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険などがあります。健康保険と厚生年金保険、さらに介護保険を総称して狭義の社会保険、雇用保険と労災保険の2つを加えた5つを総称して広義の社会保険といいます。

社会保険の窓口は、会社の場合、協会けんぽと年金事務所になることが一般的で、会社によっては事業所の運営する健康保険や企業年金などもあります。

なお、狭義の社会保険では自営業者の加入する国民健康保険と国民年金などがありますが、ここでは会社が加入する健康保険と厚生年金を合わせて広義の社会保険として説明します。

健康保険

健康保険は健康保険法により規定された公的な保険です。従業員の病気や怪我で仕事に起因しないものは、健康保険が適用されます。

健康保険には病院での治療費や高額となった治療費を一部負担し、休業し所得が減少した際に一定の割合で所得保障をする制度があります。また、条件を満たせば扶養家族として健康保険証の発行もできます。

健康保険料は標準報酬月額表に規定があり、都道府県によって異なります。給与計算では、会社と従業員で健康保険料を折半して従業員から控除した金額と会社の負担する金額を合計し、さらに介護保険料を合算して納付します。介護保険料は40歳〜64歳までの従業員が対象となり、負担率は毎年改正されます。

厚生年金保険

厚生年金保険は厚生年金保険法に規定された公的な年金です。厚生年金は国民年金の上乗せとなっているため、2階建ての制度ともよばれます。

厚生年金の支給は、原則として65歳から受給できます。一定の要件を満たせば60歳から前倒しで受給できますし、65歳以降にずらして受給もできます。

給与計算では、会社と従業員で厚生年金を折半し給与から控除した金額と会社で負担する金額を合わせて納付します。厚生年金保険料は標準報酬月額表に基づき計算しますが、標準報酬月額は都道府県により異なり一年に一度見直しがあります。

給与計算における労働保険料の計算方法

労働保険料は1年に1度概算保険料を計算し、保険期間の末月の3月給与が確定してから確定保険料を計算、確定保険料から概算保険料を差し引きしその差額を納付または還付となります。

労働保険料の計算には、雇用保険と労災保険の年度更新の計算と毎月の雇用保険料の計算があります。給与計算では、どのように計算し精算するのかをここで説明します。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料について、毎月の保険料控除と年度更新での計算方法を三つの事業に分けて説明します。保険料率は令和4年4月〜9月に適用となる率です。

・一般事業の場合
雇用保険料率は1,000分の9.5となり、そのうち労働者負担分は1,000分の3、事業主負担は1,000分の6.5です。

例えば給与を30万円支給した場合、雇用保険料がいくらになるのか、それぞれの負担率を支給額に乗じ計算してみます。

この場合、雇用保険料は2,850円、うち労働者負担分は900円、事業主負担分は1,950円です。この労働者負担分900円を給与から控除し、労働保険期間の預り金として計上します。

労働保険料を年度更新する際は、毎月計上した預り金の残高と労働保険の申告の際に見込計上した保険料を比べ、その差額を精算します。預り金の残高が見込み額より多ければその差額が還付され、預り金の残高が見込み額より少なければその差額を納付しなければなりません。

・農林水産、清酒製造の事業などの場合
雇用保険料率は1,000分の11.5となり、そのうち労働者負担分は1,000分の4、事業主負担は1,000分の7.5です。給与および年度更新では、一般事業の場合と同様の計算をします。

・建設事業の場合
雇用保険料率は1,000分の12.5となり、そのうち労働者負担分は1,000分の4、事業主負担は1,000分の8.5です。この事業の場合も、給与および年度更新では一般事業の場合と同様の計算をします。

労災保険料の計算方法

労災保険料は会社が全額負担し、従業員の負担はありません。毎月の給与計算で従業員から控除する金額は発生しないため、労災保険料は年度更新の際のみ計算します。

労災保険料は、1年間の給与総額に労災保険料率を乗じて計算します。労災保険は、正社員やパート、アルバイトなどの職位に関係せず、対象者の給与を全員分合算します。

年度更新においては、まず当年度の労災保険料の見込額を計算し、次に保険料年度の末月の給与が確定した際、その確定した給与より計算した労災保険料の差額を精算します。なお、労災保険料率は事業ごとに決まっており、さらに労災の発生率に応じて保険料率は変動をします。

例えば労災保険料は、令和4年4月において、林業は1,000分の60、建設事業は1,000分の9.5、食品製造業は1,000分の6、その他の各種事業は1,000分の3となっており、事業ごとに料率が異なっています。

被保険者にならない例外

社会保険は原則として従業員を雇用すると強制加入します。しかし、社会保険には被保険者とならない例外があるため、社会保険を労働保険と広義の社会保険などに分けて説明します。

労働保険の被保険者とならない例

労働保険の被保険者とならない従業員の雇用保険と労災保険について説明します。

・雇用保険
1週間の所定労働時間が20未満、継続雇用期間が31日未満である従業員、また、65歳となった後に雇用される従業員など。

・労災保険
従業員が同居の親族である場合。

社会保険の被保険者とならない例

広義の社会保険の被保険者とならない従業員の厚生年金保険と健康保険について説明します。

・厚生年金保険
所定内労働時間が通常の従業員の4分の3未満、2ヵ月以内の期間で雇用される従業員、70歳以上の従業員など。

・健康保険
所定内労働時間が通常の従業員の4分の3未満、2ヵ月以内の期間で雇用される従業員、75歳以上の後期高齢者医療の対象となる従業員など。

まとめ

労働保険には雇用保険と労災保険があり、労働保険は広義の社会保険とよばれます。労働保険は強制加入が原則ですが、被保険者にならない例外があります。

労働保険の加入事業者には一元適用事業者と二元適用事業者などがあり、事業の性質上、雇用保険と労災保険を別々に加入するケースがあります。特に労働保険料は毎年、年度更新するのが特徴で、保険料を概算額で計算し、確定額と精算し納付します。

労働保険料のうち、雇用保険は従業員と会社で負担し、労災保険料は全額を会社負担します。また、雇用保険料率と労災保険料率は事業により異なり、労災保険料率は労災の頻度により変動があることに注意が必要です。

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