給与計算を自動化・効率化するには?メリット・デメリットを徹底解説

給与計算ソフトや給与計算システムの導入メリットについて、メリットやデメリットなどを解説します。給与担当者の負担軽減や効率化だけではなく、企業として経費削減のコツやポイントなどを考えていきます。実際の業務効率化手順や各種ソフトについても詳しく解説しています。
目次
給与計算業務が非効率になってしまう理由
給与計算は一般的に毎月の勤怠データ(出勤・退勤・遅刻・早退)の登録、及びその登録に伴う確認作業など、給与計算担当者から各個人へ確認する事案が多い事が見受けられます。
これらの登録や確認作業を終えた後で実際の給与データ登録作業に入るため、実際の給与計算作業やその後の入力チェック、明細書の作成、振込依頼業務、各部門との連携作業に遅れやヒューマンエラーが発生する可能性があります。
では毎月必ず行われる給与計算についてどのようにすればもっと効率化してミスなく処理できるのか、非効率になってしまう理由ともっとも作業を効率化するための手順をチェックしていきましょう。
従業員情報の更新作業
給与計算の流れとしては、最初に従業員データの更新作業から始まることがほとんどです。従業員からすれば毎月必ず振り込まれて当然の給与ですが、そのための登録作業ひとつでも膨大な量のデータが必要です。
例えば毎月の勤怠状況をはじめとし、昇格や扶養家族の付加情報、社会保険の情報、引っ越しに伴う住所変更、及び各種手当の支給額の入力が必須となってきます。
企業によっては住宅手当や通勤手当(交通費)の計算も毎月更新する必要があり、従業員が多い企業ではこのデータ更新作業だけでも大変な手間となります。いくら社内で給与計算システムがあるとはいえど、このようなデータは個人によって違いが生じるため、自動化できず人的な作業が必要になります。
複雑な給与計算が必要
一般的に多くの企業では、規定で決まっている基本給の他に、さまざまな手当が存在します。簡単に考えられるだけでも、残業手当、休日及び深夜手当、特別手当などの支給する側のデータ登録の他に、遅刻や休暇取得など、これらに伴う賃金の控除(差し引き)作業も発生します。
さらに毎月更新される昇格や昇給で基本の支給ベースが変更になる企業もあり、企業によっては日割り計算も発生します。これらのデータをもとに社会保険料や税金額が決定するため、とても複雑な計算が必要となり、必ず人の手で確認と更新をする作業が必要です。
雇用形態によって支払いスケジュールが異なる
雇用形態によって支払いスケジュールが異なることも、給与計算時における特徴です。
例えば正社員の場合は、20日締めの翌月末支払いであったとしても、パート・アルバイト従業員においては月末締めの翌月末支払いなど、雇用形態によってさまざまな取り決めがあることが一般的でしょう。
給与計算担当者はこのような異なる支払いスケジュールも加味して、給与計算作業に取り掛かる必要があるため、複雑な作業に手間がかかることもあります。
給与計算業務を効率化・自動化するために必要なこと
では上記でお伝えした複雑な給与計算を効率化・自動化するためには、一体どのようなことが必要なのか考えていきましょう。
ここまで複雑な作業を効率化するためには、いくつかのポイントがあります。このポイントを知ることで今まで複雑化していた給与計算を効率化することが可能になります。各種ポイントを見ていきましょう。
入力業務を減らす
情報登録から給与データ作成まで、これまで従業員が紙に手書きした情報やエクセルに入力した後で給与担当者へ申請していました。その後、給与担当者から人事部を経由していたデータを、システムへ一括登録することによって各部署による入力作業を削減します。
給与計算に必要な情報の一元化
一般的な企業での給与計算方法は、各部署の担当によってエクセルなどの表計算ソフトや部署ごとのシステムを用いていくつもの部署を経由し、そのたびに人的なチェックを行いデータの管理更新を行なってきました。こうした統一されていない仕組みを作ってしまうと、後の作業が煩雑になり時間も大幅に取られてしまいます。
日本の税金や福利厚生の複雑な仕組みに対応するシステムへ、一括されたデータへ一元管理を行うことによって、各部門担当者の給与計算における負担が大幅に削減されます。
給与計算ソフトの導入
では給与計算の一元管理を行うにはどうすれば良いのか、具体的な方法について考えていきましょう。まずは給与計算ソフトを導入することをおすすめします。
各担当者が行っていた独自の管理方法ではミスやチェック漏れを引き起こす可能性がありますが、給与計算ソフトを使用することによって、ヒューマンエラーが起きにくくなり圧倒的に作業の効率化が進みます。
チェックする側にとってもフォーマットに基づいてマニュアル通りに行えるため、大幅な時間短縮が可能となります。
給与計算ソフトによって自動化できること
現在ではたくさんの給与計算ソフトが世に出回り、一体何が自動化できて何ができないのか、戸惑う方も少なくありません。まずは具体的に給与計算ソフトを導入すると一体どのようなことができるのか、以下の項目をもとに見ていきましょう。
請求書作成
たくさんの項目がある請求書も、多数のフォーマットが用意されているため、今まで作成していたエクセルを用いた請求書よりもデザイン性などの見栄えも良くなり、肝心な金額の部分に目が行きやすくなります。
あらかじめ設定しておいた発行日に基づいて自動で作成される機能もあるため、より効率的に請求書の発行ができます。
次月の更新処理
毎月の給与計算には、月次処理が発生します。当月の給与処理をいったん計算し支給した給与を確定することにより、次月分の給与計算へ自動でフォーマットが作成されます。
この更新処理をミスすることで生じる累計額の差異をなくすために、月次処理を自動で更新してくれることは、従業員の作業フローも正しく導くことができます。
経費の個人申請
今まで紙やエクセル、口頭で行っていた経費の申請も、各個人が申請フォーマットへ入力することにより、経費の申請漏れを防ぐことができます。
またソフトによっては、申請に漏れがないように、あらかじめアラートや通知をしてくれる機能も搭載し、従業員自身が申請漏れを防ぐように手助けをしてくれます。
社会保険の月変処理
毎月の給与額に大きな変動があると、社会保険料を計算する際の基礎となる「標準報酬月額」を変更の届け出をする必要が出てきます。昇給や降給など、月の給与に大きな差があった場合は、過去のデータを参照しながらの計算も効率化する必要があります。
給与計算
給与計算ソフトを使用することで、エクセルに数式を設定しなくても、支給額から控除額に至るまでを個別に自動で計算してくれるため、毎月の給与計算実行業務にかかる時間が削減され作業が効率化されます。
給与計算ソフトによって自動化できないこと
給与計算ソフトを導入するにあたって、業務は効率化されますが、いくつかの作業は自動化ができない場合もあります。自動化できない事案については給与の管理がしやすいように、業務フローを作成する必要があります。
一体どのようなことが自動化できないのか、以下の項目ごとに見ていきましょう。
勤怠打刻
現在のところ、多く出回っている給与計算ソフトでは、従業員の打刻修正について従業員が修正申告したものを給与計算担当者が手動で修正する仕組みになっているシステムが主流です。
将来的にはパソコンの起動状態のチェックや、企業への出入りに用いるセキュリティカードなどのデータと連携できるように、自動化・効率化の余地があるプロセスとなっています。
人事発令・給与の更新
人事異動や退職、また昇格や昇給など、理由もさまざまな情報はマニュアル化することが厳しいため、自動化は困難と考えられています。こういった事案は給与計算担当者が手入力で更新していくことがほとんどです。
イレギュラーな処理
経営状態や勤怠状況の変化、例えば正社員からアルバイトへ、アルバイトから正社員への勤務形態の変更など、人事によって采配される事案については、イレギュラーな処理になるため、自動化はできません。このような場合は、給与担当者が手動で入力する必要があります。
給与計算ソフトのメリット
給与計算ソフトを導入すると、今まで手作業でしていた作業のヒューマンエラーが解消され、時間も大幅に短縮できることからさまざまなメリットがあり、現在では多くの企業が給与計算ソフトを取り入れています。
担当者の負担軽減やその他の項目も併せて、給与計算ソフトを導入するメリットについて下記の項目から考えていきましょう。
複雑な給与計算が効率的になる
給与計算業務とひとくちに言っても作業内容は大変多く、毎月の支給金額のみを計算するだけではありません。内容的には給与処理・賞与処理、社会保険処理・社会保険更新、年末処理、明細書発行、振込手配業務などさまざまな業務が含まれています。
このような作業を自動化することにより、給与計算担当者の負担が減り、また締め日などに集中する人材の確保がこれまでより容易になります。雇用を最適化するためにも給与計算の自動化は大変メリットが多いと言えるでしょう。
法令改正へのスムーズな対応
給与計算を自動化することによって、頻繁に制度が改正される社会保険や税制など法令改正へのスムーズな対応が可能です。
たとえば、税制改正による源泉所得税率の変更や、厚生年金の保険料率の変更などがあった場合でも、手作業で計算式を変更する必要はなく、通常の給与計算処理だけで自動的にシステムが改正に対応した計算をしてくれます。
従業員ごとにカスタマイズできる
昨今の雇用情勢は多岐に渡ります。一般的な正社員だけではなく、契約社員やアルバイト、パート、派遣社員、役員、また個人で残業代が異なる管理職など、その雇用形態は実にさまざまになってきています。
日本では現在、今後もこういった雇用形態が多用されることが見込まれており、給与計算と単純に考えることはできず、さまざまな雇用形態に対応する必要性があります。こうした観点からも昨今では給与計算ソフトを導入する企業が増えています。
人事システムと連携すれば組織づくりにも役立つ
上述した通り、給与計算を自動化するメリットについては多岐に渡りますが、中でも人事システムとの連携で実現する組織作りは特筆すべき点でもあります。勤務形態などの掌握から人員を決定することができ、最適な人材の采配が可能です。
各部門との連携ができる給与計算ソフトは、成長する企業を作る上でデータを可視化できる基礎となるため、欠かせないシステムと言えるでしょう。
必要に応じた簡単な印刷が可能
現在多くの給与計算ソフトでは、帳票の印刷も簡単に行えるようになっています。これまで手間がかかっていた個別の帳票印刷ではなく、自動でミスのない印刷が可能になるためメリットしかありません。
最近では専用のプリンターを使えば、圧着式の帳票も作成できるものが多く、印刷したものを封入する作業が不要となっているものもあります。業務の効率化を考えるのであれば、このような点にも着目して考えてみることをおすすめします。
給与計算ソフトのデメリット
上述してきたとおり、給与計算ソフトを導入するメリットはたくさんありますが、ここではデメリットについて下記の項目ごとに考えていきます。
セキュリティ体制を構築する必要がある
データを一元管理すると便利な反面、万が一の情報漏えいやデータ破損にも備える必要があります。全従業員の個別データを管理している特性から、セキュリティには万全を尽くし、そのためのフローやマニュアルの作成も視野に入れる必要があると言えるでしょう。
システム運用の人材を育成しなければいけない
新しいシステムを導入し実際の運用に至るまでは、使い方や運用スキルを磨く必要があります。またこういった事案を扱える人材を育成する期間も考慮すべき点といえます。
自動化するにあたって、これらを一任できる人材の確保は他部署との連携業務も含まれるため、給与計算ソフトだけに限らず企業の責務と言えるでしょう。
おすすめの給与計算ソフト3選
現在の日本では、その需要の高まりからさまざまなソフトがあります。どの会社のソフトを選べばいいのかわからないといった声も多く存在します。
給与計算とひとくちに言っても、「業務範囲」「自動計算」「システム連携」「課金体系」「帳票の種類」まで、自動化でできることは各ソフトによって多少の異なりはあります。そこで以下の項目では各社のソフトごとにその特徴を見ていきましょう。
マネーフォワード クラウド給与(株式会社マネーフォワード)
給与計算をもっと簡単にというコンセプトのもと考えられた給与計算システムで、公式サイトでは資料のダウンロードや無料シミュレーションもできます。
- 主要機能:給与(給与・賞与、Web明細発行)、税金・社会保険料の自動計算(所得税・雇用保険料)
- 外部連携サービス:会計・確定申告、勤怠、経費、社会保険、マイナンバー、人事管理、銀行振込
- 料金:月額2,980円(5人まで)~。6人以上は300円/人
さまざまなバックオフィス業務の自動化を手掛ける「マネーフォワードクラウド」シリーズの一つ。保険料率・所得税率などの税制・法令の改正にも自動で対応可能なため、面倒な更新業務は不要です。
また、社会保険手続きや年末調整に関しても書類の作成、回収、申請などすべてオンライン上で完結可能なことが特徴です。銀行との振込連携ができるのもポイントとなっています。
マネーフォワードシリーズはもちろん、他社の様々な勤怠管理システムとも連携でき、連携可能な外部サービスは業界最多クラスで有名なソフトと言えるでしょう。
人事労務freee(freee株式会社)
人的な労務ミスをゼロへというコンセプトのもと、業務の短縮化を売りにしたソフトです。
- 主な機能:給与計算、勤怠管理、給与明細、年末調整、労務管理、入退社管理
- 外部連携サービス:アプリストアにて、打刻システム、人事労務ソフト「SmartHR」、各種勤怠管理システムなどと連携しています。
- 料金:月額1,980円(3人まで)~
給与計算だけでなく、勤怠管理や入退社手続きも含めて人事労務全般を一貫して管理できるクラウドサービスです。打刻方法もPC・スマホ・アプリなどから選択できるのもポイントです。
給与計算の他、従業員の入退社手続き、法定三帳簿の作成(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)、マイナンバーの収集・管理などの人事・労務管理にもしっかり対応しています。
「人事・労務をできるだけ少人数で行いたい企業」に最適なソフトとなっており、実際、同社は自社プロダクトを活用して、従業員450名分の労務の定型業務を実質1名体制で行っている実績があります。
ジョブカン給与計算(株式会社Donuts)
給与計算の業務コストを圧倒的に削減することをコンセプトに、【ITトレンド2021】では上半期ランキングも取得しています。
- 主な機能:給与(給与・賞与・Web明細・複数口座振込)、年末調整、マイナンバー管理、適用事業所管理(開発予定)
- 外部連携サービス:勤怠管理、労務管理、経費精算(ワークフロー、採用管理もあり)
- 料金:月額400円/人、初期費用なし ※無料プランあり
CMでもおなじみの「ジョブカンシリーズ」の一つで、社労士監修のもと、現場の給与計算担当者の要望に応える細かい機能が満載です。支給・控除一覧表をカスタマイズでき、あらかじめ出力したい項目をフォーマットとしても登録可能なところが便利です。
社会保険料や労働保険料の企業負担分や課税対象額、部署ごとの支給・控除項目なども出力できることも特徴と言えるでしょう。月額変更届や算定基礎届も自動作成可能で、改定後の標準報酬月額をそのまま従業員マスタに反映させるところまで自動化してくれる人気のソフトです。
給与計算を自動化することで業務の効率化を図れる
これまでの給与計算方法ではエクセルで計算式を設定し、ミスが起こりやすい人的な入力でおこなってきた給与計算作業で、手間も確認も膨大な時間と費用が必要でした。そのため、締め日などにかかる給与計算担当者の負担も相当なものがありました。
これからは給与計算ソフトを導入しほぼ全ての給与計算にかかる業務を自動化して、担当者の負担を軽減することで経費の削減にも大幅に貢献でき、業務の効率化を図るだけではなく、企業そのものの新しい組織作りができます。
まとめ
リモートワークやさまざまな働き方が求められるようになった昨今の日本の雇用情勢では、ひとつひとつの業務に関わる工数を考えることも、これからの企業にははずせない視点です。
単に作業の効率化だけではなく、そこにかかる担当者負担の悩みを解決し、人材の育成や働き方のサポートを考えることも可能になります。そのために給与計算ソフトやシステムを導入することは、これからの企業のあり方として考えていくべき点と言えるでしょう。
次に読みたいおすすめ記事
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームまたは、お電話からお問い合わせください。
お問い合わせはこちらTEL:0120-987-053(無料)
【受付時間】10:00~18:00(土日祝を除く)