年末調整の計算方法と流れ〜スケジュール・必要な書類について解説〜

最終更新日時:2022/05/22

給与計算システム

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本記事では、年末調整とはそもそも何か、また計算に必要な情報や書類についてわかりやすく解説しています。税の負担を減らす控除の書類はどのようなものがあるのか、年末調整を行わなかった場合のペナルティなど、知っておくべき重要なポイントや注意点にも触れていますのでぜひチェックしてください。

給与計算における年末調整とは

年末調整とは、給与を支給されている所得者の所得税を調整することを言います。所得税というのは毎月差し引かれているものですが、算出された額はおおよその金額です。加えて保険料控除など適用された際、書類を申告することで控除されます。

控除額も年末調整で計算するため、税金を払い過ぎた場合返金されることや反対に税金を追加して支払うケースもあります。正しく税金を納めるために年末調整を行うのは重要ですが、同様に正しく年税額を確定するために行われる確定申告があります。

場合によって年末調整と確定申告の2つの手続きが求められます。一体どのような違いがあるのか確認していきましょう。

年末調整と確定申告の違い

年末調整は、働き先である会社を通じて手続きを行います。会社が代行して源泉徴収を行い、毎月源泉所得税を納めます。年末に源泉徴収された源泉所得税を調整していきます。確定申告の場合は、個人事業主またはフリーランスなどが対象となり、自ら税務署を通じて手続きを行います。

1年間の収入や課税所得などの申告を会社ではなく自分でしなければなりません。また、中には年末調整をしてもらいますが、確定申告が必要な方や確定申告を行うことで税金が戻ってくる可能性がある場合、両方を行うことがあります。トラブルを防ぎ、戻す税金を増やしたいならば、何の手続きが求められるのか確認しましょう。

給与計算における年末調整のスケジュール

年末調整の業務がスタートするのは、大体11月頃からになります。年末調整の初めは、年内に支給する給与が決まり、申告書などの書類の回収をしていきます。書類の中には、記入間違いなどの不備があることもあるので、個別で修正依頼をして間違いを正していきます。

12月頃には、年末調整の計算をし、所得税の過不足分があったとき還付や追加徴収をします。また、年末調整関連の源泉徴収票や支払調書などの書類の準備もします。1月に年末調整した源泉所得税の納付や準備した書類を提出していきます。

年末調整の給与計算に必要な書類

年末調整をする際に求められる書類は、「扶養控除等申告書」、「配偶者控除等申告書」、「保険料控除申告書」などがあります。

これらは、納税額を減らせる控除に関する申告書です。内容次第では税の負担が減り、手取り額が増えます。適用されるのか知るために、書類がどのようなものなのか紹介していきます。

扶養控除等申告書

扶養控除等申告書とは、従業員にその年の最初の給与が支給される前日までの提出が求められます。この申告書で重要なポイントは、世帯に以下のような対象者がいるのかを確認することです。対象者や人数に応じて控除される額などが変わってきます。

  • 源泉控除対象配偶者
  • 控除対象扶養親族(16歳以上)
  • 障害者や勤労学生など

配偶者控除等申告書

配偶者控除等申告書に加えて令和2年から「配偶者控除等申告書」、「所得金額調整控除申告書」の3つが一緒の様式となっています。

適用されやすい合計の所得金額に応じて差し引ける基礎控除を初め、「配偶者控除および配偶者特別控除」や「所得金額調整控除」の控除対象に当てはまるならば、申告書を提出することで適用されます。

保険料控除申告書

保険料控除申告書は、社会保険料など以外の保険料に対して控除するために提出するものです。控除対象となる保険料は以下の通りです。

  • 個人年金保険料
  • 一般の生命保険料
  • 介護医療保険料
  • 地震保険料

保険料ごとに合計の金額を計算した後、決められた方法で控除額を計算していきます。申告書に記載がないと、保険料はないものと扱われてしまい、払うはずのなかった税金を負担することになります。

年末調整の給与計算方法

年末調整の手続きは1年間で、従業員に支給した給与や源泉徴収して納めた源泉所得税の再計算を行い、出た不足分を調整します。

年末調整を会社に任せるだけでなく、自ら各金額の集計や控除を差し引く計算方法を認知しておくと、どのようにして算出されたのかが分かります。年末調整でトラブルを減らすためにも確認しておきましょう。

給与金額の集計

会社で勤務しており、給与や賞与などを支給されている場合の給与金額は、手取り額ではありません。源泉徴収などで天引きされた額なので、給与金額を求める際は天引きされる前の金額で集計します。

個人事業ならば、売上金額が収入金額となります。給与は働き方で変わるので、集計する金額は何かを把握しておきます。

社会保険料等の集計

社会保険料の集計は、給与と賞与それぞれ計算して集計する必要があります。給与の計算式では「標準報酬月額」で、賞与では「標準賞与額」を用います。計算式にすると以下のようになります。

  • 給与の各社会保険料=標準報酬月額×各社会保険料率÷2
  • 賞与の各社会保険料=標準賞与額×各社会保険料率÷2

保険率は保険の種類によって異なり、改定をされるときもあるので年度ごとに確認が必要です。2で割っているのは、会社側と従業員がそれぞれ負担するためです。

場合によっては折半しないこともあります。また、賞与がないときは、給与のみの計算になるので注意しておきましょう。

給与所得控除後の給与等の金額

給与所得額を求めるためには、まず年間の収入額を計算していきます。天引きされていない金額または個人事業の売上金である収入額を算出した次に給与所得控除額を調べていきます。

年間収入額に応じて控除される金額も変動していきます。給与控除額は、2020年度から変わらない表に計算方法が記されています。ここまで計算ができたならば、以下の方式を用いることで給与所得額を求められます。

  • 給与所得額=年間収入額ー給与所得控除額

所得控除額の差し引き

給与所得額を求めた後、所得控除額を差し引いたものを課税所得と言います。所得控除の種類は以下のようなものがあります。

  • 社会保険料控除
  • 基礎控除
  • 配偶者控除 など

控除申告書を元に所得控除額が差し引かれるので、当てはまる控除を調べて提出をしなければいけません。控除額を知ることで、給与所得からどれほど引かれるのか実感できます。課税所得を計算する際は、以下の式を用いることで算出できます。

  • 課税所得=給与所得額ー所得控除額

所得税率の掛け算と控除額の差し引き

課税所得を計算するならば、所得税額(年調所得税額)を求めることが可能になります。以下の方式を用いて計算していきます。

  • 所得税額(年調所得税額)=課税所得×税率ー控除額

課税所得から、税率や控除額が分かる所得税の速算表というものがあります。税率は、5%〜45%で控除額の場合0円〜479万6,000円まで課税所得の金額次第で変わります。

住宅ローン控除額の差し引き

従業員が住宅ローン控除を受けたとき、差し引いた額が年調所得税額です。計算の仕方は以下のようになります。

  • 年調所得税額=所得税額ー住宅ローン控除額

住宅ローン控除が適用されたならば、住宅借入金等特別控除申告書など必要な書類への記入や提出が必要です。

源泉徴収税額と年調年税額の比較

最後に年調税額を求めて、1年間で源泉徴収を行った所得税額と比較をします。年調税額を求めるには、復興特別所得税の102.1%を掛けることです。

  • 年調年税額=年調所得税額×102.1%

2つの税額を比較して、源泉徴収額より少ないならば超過分を還付し、反対に多い場合は不足している分を追加徴収します。

年末調整の給与計算例

年末調整の計算を2パターン例に挙げて解説をしていきます。具体的に給与金額、控除額などを算出し計算をしているので、給与計算の流れや計算式だけでは理解しにくい部分がイメージしやすくなります。

例1

既婚者で夫のみ収入があり、17歳の子供がいるケースの計算例を解説していきます。

  • 年間収入額:450万円
  • 税額:107,000円

年間の合計金額450万円から107,000円を源泉徴収しています。以下の情報を元に計算していきます。

  • 給与所得額 316万円
  • 社会保険料控除額 378,570円
  • 生命保険料控除額 67,850円
  • 配偶者控除額 38万円
  • 扶養控除額38万円
  • 基礎控除額 48万円

社会保険料や生命保険料の控除額は、各種保険の計算に従い求めていきます。基礎控除額は納税者本人の合計所得金額、配偶者控除額はさらに控除対象配偶者が誰かによって決まります。

扶養控除額の場合は、扶養親族の一般、特定などの区分で控除額が分かります。

まず、給与所得額の求め方を確認していきます。年間収入額は450万円なので、給与所得控除額の計算は、収入金額×20%+44万円となります。

  • 給与所得額=450万円(年間収入額)ー134万円(給与所得控除額)=316万円

課税所得を計算していきます。算出された金額の1000円未満は切り捨てます。

  • 課税所得=316万円(給与所得額)ー168万6,420円(所得控除額)=147万3,000円(580円切り捨て)

次に所得税額を計算していきます。課税所得が195万円以下のため、税率が5%で控除額が0円となります。

  • 所得税額=147万3,000円(課税所得)×5%(税率)-0円(控除額)=73,650円

最後に、年調年税額を求めていきます。100円未満の端数は切り捨てます。

  • 年調年税額=73,650円(年調所得税額)×102.1%(復興特別所得税)=75,190円(6.65円切り捨て)

源泉徴収して納めた107,000円と比べると31,810円超過しています。この超過した額は、本人に還付されることになります。

例2

既婚者で夫と交通事故によって後遺症が残った妻がいる場合

  • 年間収入額:450万円
  • 税額:107,000円

例1と同様の年間収入額と税金ですが、障害を持った配偶者がいる場合どのように金額が変わるか見ていきます。

  • 給与所得額 316万円
  • 社会保険料控除額 438,570円
  • 生命保険料控除額 46,850円
  • 配偶者控除額 38万円
  • 障害者控除27万円
  • 基礎控除額 48万円

例1と比べると、16歳以上19歳未満の子供がいないため、扶養控除が適用されません。しかし、配偶者や扶養親族に障害がある方がいるため、障害者控除が適用されます。

給与所得額は例1と同様なので、次の課税所得を計算していきます。

  • 課税所得=316万円(給与所得額)ー161万5,420円(所得控除額)=154万4,000円(580円切り捨て)

課税所得の次に、所得税額を求めます。

  • 所得税額=154万4,000円(課税所得)×5%(税率)ー0円(控除額)=77,200円

最後に年調年税額を求めて源泉徴収した所得税額と比較していきます。

  • 年調年税額=77,200円(年調所得税額)×102.1%(復興特別所得税)=78,820円(1.2円切り捨て)

源泉徴収して納めた107,000円と比べると28,180円超過しています。超過した額が還付されます。

年末調整の給与計算で気を付けるポイント

年末調整の給与計算で知っておくべきポイントがいくつかあります。注意点を理解せずにいると罰金や税務署との大きなトラブルに発展する恐れがあるため、どのような点を注意するべきなのか確認していきましょう。

年末調整を行わなかった場合

年末調整を行わない、もしくは納付をせずにいた場合、数十万または数百万円近い罰金か懲役といった刑罰に処されてしまいます。

さらに、刑罰を受けたことにより会社の評判にも影響を与えてしまいます。年末調整を適切に行わず、納付しないことが厳しいペナルティとなります。

年末調整で使用した書類はいつまで保存する?

年末調整関連の書類は、7年間保存すると決められています。年末調整の年の翌年である1月10日の翌日から期限まで保存します。保存するのは、税務署から請求された場合に提出するためです。

書類の不備があると税務署とのやり取りで、問題が大きくなる可能性があります。税務署から書類を求められたとき、対応できるように整理しておきましょう。

年末調整での端数処理

年末調整で金額に端数があったときの処理を間違えると、算出される額が変わってしまいます。年調年税額を算出する際は、100円未満の端数は切り捨てます。

中には端数を切り上げる計算もあるので、計算式だけでなく求めた金額の端数にも注意が必要です。

まとめ

本記事では、年末に再計算し、調整をする年末調整の基本や計算の仕方などを解説していきました。年末調整の計算をスムーズに進めるためには、給与支給額や社会保険料、源泉徴収税額などの金額を集計してから始めます。何を計算するのか把握していないと、異なった額を算出することになります。

また、年末調整をせずにいた場合、大きなペナルティを負ってしまいます。計算式や控除額、必要な書類など年末調整のときに慌てないように、事前に準備しておくことで対応しやすくなるでしょう。

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