付加価値とは?ビジネスにおける正しい意味や計算・分析方法を解説

最終更新日時:2023/07/13

生産性

付加価値とは

他社との差別化を図る際によく用いられる付加価値という言葉。付加価値を高めることは企業にとって重要な課題ですが、果たしてビジネスにおいての付加価値とは、一体どのような意味なのでしょうか。本記事では、そんな付加価値について、意味や計算方法など解説していきます。

付加価値とは?

付加価値とは、主に企業における生産活動のうえで、製品やサービスに新しく付加された価値のことを意味しています。

また、付加価値には、日常の中で使われる場合と、ビジネスシーンにおいて使われる場合とで、その意味に違いがあります。ここでは、それぞれを詳しく説明します。

日常における付加価値の意味

付加価値という言葉には、大きく2つの意味があります。

1つ目は、「この商品は値段は高いがそれだけの付加価値がある」「この新しい機能は、他社にはない付加価値になる」というように、同様の商品・サービスにはない独自の価値や機能に対して使われる意味です。

そのような価値を戦略的に付加することで、商品の競争力を高め、消費者や取引先に選択される機会を多くすること。それは、商品と企業のブランディングにもつながり、商品・サービスの市場に大きな変革をもたらすこともあります。

もう1つは、ビジネスや経営の現場で使われる「付加価値」という言葉です。財務や会計用語としてしっかりとした定義があります。

ビジネスにおける付加価値の意味

ビジネスにおける付加価値とは、企業の生産性を表す指標のひとつです。具体的に、財務分析において生産性を図る際は、商品・サービスの材料や部品、外注費など外部から購入した価額を、売上高から差し引いて算出します。売上高に対する「粗利」をイメージすると良いでしょう。

例えば、製造業の場合は、売価15万円の製品の原材料が10万円だとすれば付加価値は5万円となります。そのため、外部から購入した額に比べ、加工や生産によって作り出す額が高ければ、付加価値も高まることになるのです。

付加価値の計算方法

付加価値の計算方法には、「控除法」と「加算法(積上法)」の2種類があります。

控除法では、商品・サービスの売上に対し自社の生産がどれだけ貢献しているかを知ることができます。一方の加算法では、自社が、商品・サービスを産出するために掛けたコストの合計を算出することで、外部購入費にどれだけの額をプラスすれば適正な価格になるかを判断することができます。

控除法

控除法は、中小企業庁方式とも呼ばれ、以下の式で算出されます。

  • 付加価値 = 売上高 - 外部購入価格

つまり、価格のうち、材料・部品や動力費など外部から調達したものにかかる金額を引いた額が、企業活動によって付け加えられた付加価値であるという考え方です。

外注費を抑え自社生産にするなど、外部購入価格を抑えることで付加価値が高まります。

また、競争力が高い、他社にはない独自性の高い商品・サービスを提供することで、販売価格を高くしたり、市場内のシェアを高めたりすることが可能になりますので、その場合も付加価値は高くなります。

加算法

付加価値の計算方法のもうひとつは、日銀方式とも呼ばれる加算法です。

  • 付加価値 = 経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課

企業がその商品・サービスを作り出すのに必要な社内のコストを加算したものです。これらの項目のなかでは、特に人件費が大きな部分を占めますので、人手や手間のかかる商品・サービスほど付加価値は高くなります。

逆に、小売や流通など、外部購入したものにあまり手を加えずに販売している商品・サービスの場合は、付加価値が低くなります。

付加価値生産性を分析する方法

企業の生産性を図る指標には、企業の従業員や資本がどれだけの付加価値を生み出しているかを分析する付加価値生産性もあります。

算出方法は、付加価値を従業員数か総資本額で割るというものです。

  • 付加価値生産性=付加価値÷従業員数(または総資本額)

従業員1人当たり、または資本1単位当たり、どれだけの付加価値を生み出しているかを把握できます。

この値が高ければ、従業員一人当たりの付加価値生産性が高いということになり、しばしば議論される世界規模で見たときの「日本の生産性の低さ」は、この付加価値生産性の低さが理由のひとつになっています。

付加価値を高める施策の具体例

付加価値を高めることは、企業の収益性を高めることであり、付加価値生産性を高めることにつながります。

外部購入価格を抑えることにより付加価値を高めることは可能ですが、そのかわり従業員の労働時間が長くなってしまっては、付加価値生産性が下がる結果となります。

では、付加価値を高めるための施策には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、具体的な方法をいくつかご紹介します。

同業他社との比較

付加価値は、自社の状態だけでは、それが良好な状態なのか否かを判断することはできません。

比較したい同業他社が上場企業であれば、財務諸表などの情報から付加価値を具体的に算出し、自社の分析結果と比較することで、自社の状況や市場における優位性を把握することもできるでしょう。

また、比較対象が非上場企業であれば、中小企業庁の「中小企業実態基本調査」などを利用して、業界における平均値を算出し、比較することもできます。

これらの比較結果は、戦略の立案や目指すべき指標の策定にも役立てることができるでしょう。

損益計算書の活用

付加価値は、損益計算書からも求めることができます。

一般的には、損益計算書に記載された「収益」や「売上原価」、「販売費及び一般管理費」などの情報から、控除法などを用いて算出することが可能です。

付加価値を向上させるためには、固定費に含まれる人件費を有効に活用し、販路開拓や営業、生産活動に注力した結果として売上高を増加させることと、販売手数料や配送料、材料費などの売上高に比例して変動する変動費を削減する方法があります。

自社の数年の損益計算書から、変動費と固定費のバランスを比較し、現在の状況を把握していきましょう。

また、固定費の内容を、削減可能な費用と重要な費用に分類することも大切です。付加価値の産出に関係のない諸費用を洗い出して削減できるかどうか検討すると良いでしょう。

分配率の確認

企業が得た付加価値を、従業員にどれだけ分配しているかを分析するための指標が労働分配率です。

労働分配率は、

  • 労働分配率(%)=人件費(給与総額)÷付加価値額×100

という式で求められます。

労働分配率の平均は、2020年のデータで大企業が57.6%であるのに対し、中規模企業で80%、小規模企業で86.5%と中小企業では高止まりの傾向が続いており、いずれも「付加価値に対して人件費の割合が高い」ことを示しています。

つまり、中小企業においては、現状の付加価値では、従業員の待遇を改善することは難しく、人件費を抑える、原材料や売価の最高などにより付加価値を高めるといった取り組みにより、キャッシュフローを見直す必要があります。

[出典:中小企業庁「2022年版中小企業白書・小規模企業白書概要」]

付加価値生産性が日本で低い理由

日本生産性本部の発表では、2021年の日本の労働者1人当たりの労働生産性は78,655ドルで、OECD加盟38ヶ国中28位となっており、上位国の常連である米国の労働生産性の55%程度でしかありません。

日本の付加価値生産性が低い理由には、労働時間の長さ、年功序列をベースにした賃金体系などが、その要因として挙げられています。

そのほかにも、アウトソーシングにより効率化が可能な業務を組織内で抱え、コア業務に注力できていないこと、残業ありきの商習慣、過剰なまでのチームワーク至上主義といった文化が根強く残ってしまっている点なども、大きく影響していると考えられるでしょう。

日本の付加価値生産性を改善するには、ITツールの導入などによる業務の効率化を図るだけでなく、ビジネス環境における文化や意識の改革も必要であると言えるのです。

付加価値の正しい意味と計算式を理解すること

普段何気なく使われている「付加価値」という言葉ですが、ビジネスシーンにおいては、企業の生産性や市場における競争力を分析するための重要な指標として使われています。

そのため、付加価値は、その意味と計算式を理解するだけでなく、その結果から適切な戦略をデザインできる思考が重要であり、事業成長の鍵となる点を認識しておく必要があると言えるでしょう。

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