中小企業における生産性向上の重要性と実現する方法とは?

記事更新日:2022/07/16

生産性

中小企業における生産性

グローバル化や労働人口の減少に伴い、「生産性向上」が各企業で共通の課題となっています。生産性向上は、中小企業においても重要なビジネス課題の一つですが、なぜそこまで重要視されているのでしょうか。本記事では、中小企業における生産性向上の重要性やメリットなどについて解説していきます。また、生産性向上のための具体的な方策や利用できる助成金・補助金などもあわせて紹介します。

中小企業に必要な生産性向上とは?

労働人口の減少により、国内の人手不足は今後より一層深刻化することが予想されています。これからは、少ない従業員で最大限の価値を生み出すための生産性向上が必要となります。

生産性向上を実現するためには、大企業だけでなく中小企業にも、業務の効率化やITツールの導入が求められているのです。

中小企業は、大企業と比較すると、資本、建物・設備、機械などのリソースの規模が小さいため、生産性向上につながる投資に限界があるのが現実です。そのため、補助金や助成金を利用したり、業務プロセスの改善や従業員のスキルアップなども重要なポイントになります。

また、大企業に比べて中小企業(特に100~299人程度の中堅企業)の離職率は高いため、従業員が効率よく働ける環境の提供やモチベーション維持のための施策も必要です。

[出典:厚生労働省「令和2年雇用動向調査」]

中小企業における生産性向上の重要性|日本企業の現状

生産性向上は、今や日本企業全体の課題です。日本生産性本部の発表では、2021年の日本の労働者1人当たりの労働生産性は78,655ドルです。OECD加盟38ヶ国中28位で、米国の労働生産性の55%程度でしかありません。

日本企業全体に占める中小企業の数は99.7%で、中小企業で働く従業員数は全体の68.8%にのぼります。多数の従業員が働く中小企業の生産性が向上しなければ、日本全体の生産性は改善されません。

では、どのように中小企業の生産性を向上させれば良いのでしょうか。まずは、中小企業が直面している課題について、4つの視点から解説していきましょう。

[出典:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」]
[出典:中小企業庁「中小企業白書 小規模企業白書(2021年版)」]

人手不足

中小企業が抱える問題点の一つ目は人手不足です。15歳から64歳の生産年齢人口は、ピークの2015年には7,629万人でしたが、2030年は6,773万人、2060年は4,418万人になると予想されています。

また日本の人口は2050年には、約1億人まで減少する見込みで、生産年齢比率(15歳から64歳までの人口が全人口に占める割合)は、今後さらに減少していきます。

こうした背景により、中小企業ではますます従業員の確保が困難になります。大企業も中小企業も入職率(採用数)は高い水準を維持してるものの、大企業より中小企業のほうが離職する人が多い傾向にあります。

人手不足は、中小企業の売上や利益の維持拡大だけでなく、企業の持続的な発展を妨げる深刻な問題となり得るでしょう。よって、中小企業は生産性を向上させることで人手不足に対応することが求められています。

[出典:総務省「情報通信白書(2017年版)」]
[出典:厚生労働省職業安定局「人手不足の現状把握について」]

グローバル化

中小企業もグローバル化に対応するための変革を求められています。人口減少にともない、今後さらに日本国内の市場が縮小していくことが推測されます。そのため、中小企業は海外市場への展開も視野に入れ、生き残り策を考えなくてはなりません。

日本企業同士であれば、実績や信頼関係に基づいて取引を進めることもできますが、グローバルなビジネスでは、価格や品質が重要な取引基準の一つとなります。コンシューマー向けの商品・サービスにおいても、国際規格への適合や品質管理が求められます。

国際競争力を高め、多くの企業や消費者から選ばれる企業になるためには、高い品質の商品・サービスを、効率的に産出する生産性向上が必要不可欠です。

IT技術の普及

IT技術の急速な発展により、ビジネス環境が大きく変化しています。中小企業が生き残るためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上や業務効率化、新ビジネスの創出などが求められています。

例えば、製造業においては、不良品の検出や品質管理を自動化するAI(人工知能)やIoT技術の導入が進んでいます。これにより、経験豊かな従業員だけでなく、経験の浅い人材でも高品質な製品づくり・品質管理が可能になる環境が整いつつあります。

また、クラウド化を推し進めることで、生産性向上を図ることもできます。クラウドサービスは比較的安価にシステムを導入できるので、資金に限りのある中小企業でも利用可能です。

例えば、データの共有・蓄積・分析や、勤怠や経理の自動化などを実現することで、時間と労力の削減が可能となり、業務環境の改善にもつながります。

企業の規模や業種によらず、クラウド、AI、IoTなどの先端テクノロジーの活用による生産性向上は、企業が持続的な成長を遂げるために真っ先に取り組むべき課題の一つといえるでしょう。

働き方の多様化

厚生労働省が推進する「働き方改革」では、少子高齢化による生産年齢人口の減少や、育児、介護などに携わる人々の働き方の多様化に対応するため、企業の生産性向上を実現することを求めています。

時間外労働の削減、休暇制度の多様化、テレワーク推進、同一労働同一賃金など、多様な働き方ができる企業においては、従業員のやる気が向上し、業務への集中力が高まり、生産性向上も期待できます。

これまで、従業員の過重労働や特定のハイパフォーマーのスキルやノウハウに頼っていた企業は、業務効率化、ノウハウや技能の共有、ITツールの活用などを推進する必要があるでしょう。

中小企業は、多様な人材が能力を発揮できる職場環境を構築するなど、大幅な組織変革の必要性に迫られています。

中小企業と大企業の生産性の差について

「中小企業白書」によると、2020年度の労働生産性(従業員1人あたりの付加価値額)の値は、大企業では製造業が1,180万円、非製造業が1,267万円であるのに対し、中小企業では製造業も非製造業も520万円となっています。大企業の労働生産性は中小企業の約2倍です。

業種別にみると、建設業や情報通信業、卸売業で大企業と中小企業の労働生産性の差は大きくなっています。

一方、得られた付加価値額を人件費として従業員に分配している比率を示す「労働分配率」を見ると、2020年においては大企業が57.6%であるのに対し、中規模企業は80%、小規模企業は86.5%と、中小企業では高止まりの傾向が続いています。これは、人件費が限界にあることを意味しています。

生産性を向上し、付加価値額を高めることで人件費や投資に余裕ができます。限られた人材と限られた投資のなかで、生み出す価値を高めるためにも、中小企業は生産性を向上させなければなりません。

[出典:中小企業庁「中小企業白書(2022年版)」]

中小企業が生産性向上を実現するメリット

中小企業が生産性を向上させるメリットは、次の5点です。

  • 人手不足への対応力強化
  • 離職率の低下
  • 国際競争力の強化
  • コスト削減
  • 働き方改革への対処

人手不足への対応力強化

労働力人口の低下により、多くの中小企業では慢性的な人手不足に陥っています。人材確保のためには、従業員の待遇改善が必要です。

前述の通り、中小企業の労働分配率(付加価値額のうち人件費に分配される額の比率)は、長年80%程度の水準で高止まりしています。

これは、人件費に拠出できる資金の余裕がないことを表しています。人件費には福利厚生費や研修費なども含むので、単に賃金の上昇に余裕がないだけでなく、社員の待遇やスキルアップへの投資も限界に近いということを示しています。

従業員への待遇を手厚くするには、付加価値額を高めなければなりません。従業員の業務や労働環境、働き方などを見直し、生産性を向上させることにより、付加価値額は上昇します。

賃金や待遇が高水準になれば、良い人材を獲得できるようになるでしょう。

離職率の低下

厚生労働省の「平成 30 年若年者雇用実態調査の概況」(調査時点で満 15~34 歳の労働者に対する調査)によると、初めての正社員勤務先を離職した理由は、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「人間関係がよくなかった」「賃金の条件がよくなかった」という回答が上位を占めています。

長時間労働が続く職場や、賃金など待遇面で劣る職場は、若年者だけでなく多くの労働者にとって、モチベーション低下や定着率低下の要因になり得るでしょう。

生産性向上や業務効率化などによって、長時間労働を是正したり、有給休暇を希望通り取得できる職場は従業員のワークライフバランスを向上させることにもつながり、既存従業員の離職防止にも寄与するでしょう。

また、仕事とプライベートを両立し、心身ともに健康な状態で業務に臨むことでパフォーマンスの最大化にもつながり、業績や利益拡大も期待できます。

[出典:厚生労働省「平成 30 年若年者雇用実態調査の概況」]

競争力の強化

生産性向上は競争力も高めます。企業が今後生き残り、更なる成長を目指すには、価格競争力で優位に立つこと、品質の高い商品・サービスを提供すること、その企業にしかできないアイデアを持つ独自の技術や価値を提供することなどが重要です。

これを達成するためには、労働者1人あたりの生産性を高め、アウトプットの量や生み出す価値を最大化すること、従業員の知恵と経験を集結させて綿密なリサーチと試行錯誤を行うことなどが求められます。

生産性向上により生産量や価値が増加すると商品・サービスが市場で選ばれ、業績拡大にもつながります。その結果、従業員に時間の余裕を提供できるので、企業独自の価値を生み出す業務に集中することも可能になります。

こうした好循環によって、さらに企業全体で付加価値を高めるための活動に注力できるようになるでしょう。

コスト削減

生産性向上に向けた業務の効率化やITツールの導入、従業員の働き方改革などにより、社内の無駄が少なくなります。

業務を見直し、会議時間を短縮したり紙の書類を削減することにより時間もコストも減少し、残業時間が減ることでオフィスの電気代などもカットできます。

リモートによる支社との会議や、遠方のクライアントとの商談などは、出張費の削減にもつながるでしょう。また生産性向上によって、従業員の残業時間が短縮することで余計な人件費の削減効果も期待できます。

働き方改革への対処

生産性が向上することで従業員1人あたりの労働時間を削減することができます。それにより、ワークライフバランスの改善にもつながるでしょう。

さらに、生産性の高い組織は、業務フローやマニュアルの共有化によって属人性を回避する仕組みを構築しています。結果、誰もが同様の時間で同様の品質の成果物を生産することができるようになります。

別の従業員に仕事を引き継ぐことが容易になるので、休暇を取得しやすくなったり、フレキシブルな働き方も可能になります。

生産性を上げることにより、テレワークや副業・兼業の奨励、有休取得率の改善、育児休暇・介護休暇の充実など、多様化する従業員のニーズに柔軟に応え、ES(従業員満足度)の高い企業を実現することができます。

中小企業が生産性向上を実現するための方法

中小企業が限られたリソースのなかで、生産性向上を実現するためには、さまざまな工夫が必要になります。ここでは、下記の5つの方法を解説していきます。

  • 職場環境の整備
  • 従業員のスキルアップ
  • 業務のアウトソーシング
  • 業務の効率化
  • ITツールの導入

職場環境の整備

高いモチベーションを維持し集中して業務にのぞめるように、職場環境を整備しましょう。部署内の人間関係を円滑にするためのコミュニケーション促進、就業ルールの共有、誰もが納得できる評価制度の導入なども重要です。

オフィスのレイアウトや働く場所の整備も大切です。例えば、テレワークやリモートワークが増えてきている現在は、デスクをフリーアドレスにすること、シェアオフィス型のサテライトオフィスを借りること、社内のフリースペースを充実させることなどが効果的です。

従業員のスキルアップ

企業にとって、人材は一番の財産ともいえるでしょう。従業員1人ひとりのスキルを高めることは、企業全体の生産性向上に寄与します。クライアントからの評価も高くなり、継続的な受注や引き合いの増加につながることもあります。

スキルは、ITツールの使い方からコミュニケーション能力、企画立案、案件の進行管理など多岐にわたります。

まずは、各従業員にとって必要なスキルを棚卸しましょう。その後、従業員が自ら目標を定め、現状で不足している部分を埋めるためのプログラムや支援策を会社が提供します。

スキルアップによって、業務にかかる時間の短縮や品質の向上を実現し、企業全体の生産性アップにつながります。

高いスキルを習得し生産性が上がった従業員に手当を与えたり、資格取得費やセミナーなどの費用を支援することも効果的です。

また、企業は従業員のスキルの達成度を客観的に評価する仕組みを構築することで、従業員のモチベーション維持や自発性を促すことできるでしょう。

業務のアウトソーシング

企業の付加価値に直結する重要なコア業務の妨げになるのが、ノンコア業務です。データ入力などの定型業務の多くはアウトソーシングできるものばかりです。

従業員の貴重な労働力をコア業務に集中させるために、外部の力を借りる手法も積極的に使いましょう。まずは従業員の業務を見える化し、かかっている時間を算出し、ボトルネックになっている業務を洗い出します。

その上で、どの業務をアウトソーシングすれば企業として生産性が向上するのかを検討した上で、効果的にアウトソーシングを活用していきましょう。

業務の効率化

業務効率化によって、生産性を向上させることができます。まずは、業務フローの棚卸しをすることで、内容が重複する業務や時間がかかる割に成果物に直接関与しない業務などが見えてきます。

習慣的に行われている会議や報告書の作成など、実際には不要な業務があるかもしれません。それらの無駄な作業を排除するだけで、業務は効率化します。

また、どのような業務にも回数をこなしていくなかで、時間を節約する方法が見つかるものです。手慣れた従業員から効率的な作業の進め方や判断基準を聞き、マニュアル化することも業務効率化に大きく寄与します。

ITツールの導入

近年はクラウドサービスなど、ITツールの導入費用が比較的安価になってきているため、中小企業でも利用しやすい環境が整ってきています。

ITツールのなかには、従業員の手で行ってきた業務を自動化できるものもあります。顧客への定型メールの送信や、セールス資料の作成など、手間のかかる業務を自動化することで、従業員の貴重な時間が節約できます。

また給与計算や経費計算、勤怠・労務管理なども、クラウドサービスを使えばデータ入力や申請・承認フローなどがスムーズに行えるようになり、業務の時短化や人件費の削減効果も期待できます。

中小企業の生産性向上における課題・注意点

中小企業の生産性向上には、企業の改革が伴います。経営者と従業員が一体となって取り組む必要があるでしょう。ここでは、生産性向上に取り組む上で直面しがちな課題・注意点を4つ紹介します。

  • 実現する目的の明確化
  • 業務の可視化
  • 意識の統一
  • 長期的な視点での取り組み

実現する目的の明確化

まずは、生産性向上の目的を明確化し、従業員全体で共有する必要があります。経営側のメリットばかりではなく、従業員にも働き方の多様化や待遇改善などのメリットがあることを伝える必要があるでしょう。

生産性向上により企業価値や企業のブランドが向上すれば、クライアントに対する自社のプレゼンスや評価も上がるでしょう。結果、従業員エンゲージメントの向上も期待できます。

共通の目的を持つことで、全社員が生産性向上の実現に向けて努力できるような組織づくりを目指しましょう。

業務の可視化

生産性向上のためにまず取りかかる必要があるのは、従業員が日常的に処理している業務を可視化することです。

従業員へのヒアリングやアンケートにより、業務の棚卸しを行い、どのような業務にどの程度の時間をかけているかを把握することが大事です。

どのような会議があるか、社内文書の作成にどれだけの時間をかけているか、商談はどう進められるか、どのような資料がつくられているかなど業務内容と方法、費やしている時間を明らかにします。

無駄な会議、参照されることのない社内文書や報告書・資料など、不要な業務は廃止、削減、フォーマット化して対応するなど、全社で徹底することで大幅な時間の短縮を実現できます。

意識の統一

経営側からのトップダウンでは、生産性向上の取り組みがスムーズに進まないケースも考えられます。従業員1人ひとりが自主的に取り組めるように従業員の意識を高めることが重要です。

生産性向上をテーマとしたミーティングを定期的に実施し、従業員と経営側の意識の統一を図ることや、従業員による業務効率化につながる要望を受け付けるなど、当事者意識を持ちやすい仕組みをつくりましょう。

業務効率化による生産性向上は、従業員が自主的に取り組んでこそ成功するものです。経営側は、その推進を手助けするためのIT投資、設備投資や環境の改善、評価制度を整備するなどして従業員を支援することも重要です。

長期的な視点での取り組み

生産性の向上は、効果が出るまで時間がかかります。初期の段階では、業務の棚卸しや個人のスキルの見える化など、準備に相当の労力と時間を使います。また、ITツールへの投資や設備投資など資金面でも大きな負担を強いられることになるでしょう。

生産性向上を実現するためには、長期的な視点が重要です。すぐに効果が上がらなくても、組織全体で持続的に取り組むことにより成果が出るようになります。

中小企業が生産性向上のために活用できる補助金・助成金

中小企業庁や独立行政法人中小企業基盤整備機構、厚生労働省などは、中小企業の生産性向上に向けた変革を支援する補助金や助成金事業を行っています。

ここでは、補助金・助成金制度を4つ紹介します。

1.ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(一般型・グローバル型)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業が働き方改革やインボイス制度導入などに向けて設備投資を図る際に利用できる補助金制度です。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。

[引用:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」より]

「一般型・グローバル型」では付加価値額向上と賃上げを実現するための3〜5年の事業計画を策定していることが利用条件となります。

事業計画は、付加価値額で3%以上増加、給与支給額を年率1.5%以上増加、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする、という3つの要件をすべて満たす必要があります。

補助金が使える経費は、「機械装置・システム構築費」「運搬費」「技術導入費」「知的財産権等関連経費」「外注費」「専門家経費」「クラウドサービス利用費」「原材料費」で、経費の種別により補助金割合が2/3か1/2と決められています。

補助金上限額は、年度により変動する場合がありますが、2022年(令和4年)8月締切の第11回締切では、従業員規模5人以下は750万円以内、6人から20人は1,000万円以内、21人以上は1,250万円以内となっています。

2.IT導入補助金(通常枠)

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上のため、企業のデジタル化、DX化推進の支援を行う補助金制度です。中小企業、小規模事業者の課題解決に向けたITツールにおける導入経費の一部が補助されます。

補助対象の経費は、ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大1年分)、導入関連費用となっており、補助率は経費の1/2以内です。

補助金には、A類型とB類型があります。

A類型は、「顧客対応・販売支援」「決済・債権債務・資金回収管理」「調達・供給・在庫・物流」「会計・財務・経営」「総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス」「業種固有プロセス」の6つの業務プロセスのなかで、1つ以上の業務プロセスを担うソフトウェアを導入し、補助金額が30万円以上150万円未満であることが条件です。

B類型は、上記6プロセスと、「汎用・自動・分析ツール」を合わせた7プロセスから4プロセス以上を担うソフトウェアを導入する必要があり、補助金額が150万円以上450万円以内であることが条件になります。

なお、IT導入補助金には「通常枠」以外にも、インボイス対応を見据えた補助金制度である「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」や、複数の事業者が連携して利用できる「デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)」もあります。

[出典:「IT導入補助金2022」]

3.業務改善助成金

業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引き上げを目的とし、その達成に向けて生産性向上につながる設備投資などを実施する費用を助成するものです。

事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が30円以内で、かつ事業場規模が100人以下の事業場が対象となります。事業場内最低賃金の引き上げ額に応じ、30円コース、45円コース、60円コース、90円コースの4つのコースが申請可能です。

助成額は、コースと何人の従業員の賃金を引き上げるかにより定められ、30円コースで1人の場合の30万円から、90円コースで10人以上の600万円までの上限額が設定されています。

助成率は、事業場内最低賃金900円未満の事業場の場合は4/5まで、900円以上の事業場の場合は3/4までとなっています。それぞれ、支給申請時の直近の労働生産性とその3年前の労働生産性を比較し、一定水準を超えた伸び率がある場合には、9/10までと4/5までに助成率が引き上げられます。

販路拡大のためのコンサルティング費用や、業務管理システムへの設備投資などにより、事業場内最低賃金を引き上げることに成功した事例もあります。

[出典:厚生労働省「[2]業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援」]

4.小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が直面する賃金引き上げ、インボイス制度などの制度変更などに対応して生産性を向上させるための販路開拓などを支援するものです。全国商工会連合会が運営しています。

対象となる経費は、機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出店費、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託・外注費です。

補助上限金額は、通常枠50万円、インボイス枠100万円、賃金引き上げ枠・卒業枠・創業枠・後継者支援枠の200万円と枠により定められ、補助率は2/3を上限としています。

[出典:「小規模事業者持続化補助金」]

中小企業による生産性向上の成功事例

ここでは、補助金を活用した設備投資により、生産性向上を成し遂げた中小企業の事例を紹介します。

業務管理システムの導入による報告業務と勤怠管理の効率化

熊本県に拠点を置く情報サービス業のA社は、従業員の勤怠管理と日報作成業務に重複が生じていたため、改善の必要性を感じていました。

補助金で業務管理システムを導入し、個別に行っていた2つの業務を統合し、結果、勤怠管理報告作業を月平均6時間短縮することに成功しました。管理者も従業員の残業時間や有給休暇取得率を把握できるようになり、フォローしやすくなりました。

高性能機器の導入による計測作業の効率化

栃木県にある電気工事業のB社は、太陽光発電機器の電圧等の計測作業で、旧式の電圧等計測器を使用していたため、計測エラーや計測の手間がかかっていました。

効率化のため、補助金で高性能の計測機器を導入しました。新しい計測機器により、計測の正確性が向上したほか、作業の手間もエラー回数も減少したことにより、作業時間を1〜2時間短縮することに成功しました。

ベルトコンベアの導入による弁当の盛り付け作業の効率化

新潟県で食品製造販売業を営むC社は、弁当製造業務における盛り付け時間の短縮を目指し、補助金でベルトコンベアを導入しました。

それまでは配膳台の周囲を、従業員がそれぞれのおかずなどを持って回りながら盛り付けていましたが、ベルトコンベアにより弁当自体を移動させながら従業員が盛り付ける方法に改善させました。

これによって盛り付け時間が25%も削減されました。同じ時間で10%多く弁当を製造することができるようになり、生産性が大きく向上し、従業員の賃金引き上げにつながりました。

[出典:厚生労働省「生産性向上の事例集」]

中小企業における生産性向上の重要性を理解すること

人口減少による人手不足の影響や、国際的な競争の激化などめまぐるしく変化する状況のなかで、生産性を高めるためには抜本的な改革が必要とされています。

特に重要とされているのが、国内労働者の68.8%が勤務する中小企業の生産性向上です。大企業とは違い、資本力や従業員数に限りのある中小企業や小規模事業者では、生産性向上のために打てる手段も施策も限られてきます。

旧来の労働環境や業務の進め方のままではなく、1人ひとりの生産性を高めるために、業務の棚卸しや、個人のスキル向上、職場環境やコミュニケーションの改善、無駄な業務の排除など、全社的な見直しと改善が求められます。

あわせて、従業員の業務を軽減し時間を節約するITツールの導入なども検討していかなければなりません。国や自治体、経済関連団体などが用意している補助金や助成金を戦略的に活用しながら、中長期的な長い目で、生産性向上を実現していきましょう。

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