キャリア採用とは?中途採用との違いや進め方・成功させるポイントを解説
採用手法の1つ「キャリア採用」。終身雇用制度の崩壊に伴い、キャリアアップを目的とした転職が一般的になったことから注目されています。本記事では、キャリア採用とはどのような採用手法なのか、中途採用との違いやメリット・デメリット、キャリア採用を成功させるポイントなどを詳しく解説します。
・キャリア採用とは、求めている職種での勤務経験や専門的な知識、スキルを持っている人材を採用する手法
・転職市場の流動性が高まっており、高いスキルを持っている人材を確保する目的があるため、キャリア採用への注目が集まっている
目次
キャリア採用とは?
キャリア採用とは、自社が属する業界や求める職種での勤務経験や専門的な知識、スキルを持つ人材を採用する手法を指します。これまでの経験や知識を基に、入社後すぐに即戦力となることを期待し、キャリア採用を行う企業は増加傾向にあります。
キャリア採用が増加している理由
ひと昔前までの日本では、終身雇用が当たり前とされていました。しかし、現在は転職に対するネガティブなイメージがなくなり、自分の能力やスキルを活かせる企業に転職し、キャリアアップを目指す人も増えています。
経験や知識が豊富な人材の流動性が高まるにつれ、企業側も即戦力となる人材の確保に力を入れるようになりました。その結果として、キャリア採用が活発化しているのです。
キャリア採用と中途採用の違いとは?
中途採用は、これまでに就業経験がある人材を募集する場合に広く使われる言葉です。特定の業界における就業経験や知識は問いません。一方のキャリア採用は、募集する職種やポジションにおける実務経験や専門知識を必要とするため、求める条件に明確な違いがあります。
一定水準以上の経験や知識を必要とする分、キャリア採用は中途採用よりも即戦力を意識した採用枠といえるでしょう。
▷中途採用とは?新卒採用との違いやメリット・デメリット、採用活動を円滑にするコツ
▷中途採用した人材が期待外れになる原因|能力を引き出す育成方法や活躍する人材の採用方法
キャリア採用のメリット
キャリア採用は、自分の経験や知識を新しい職場でも活かせるうえ、評価次第で希望する給与を得られるなど、求職者にとってメリットがあります。また、求職者だけではなく、企業にとってもさまざまなメリットがあるのがキャリア採用です。
ここでは具体的なメリットを解説していきます。
即戦力となりえる人材を採用できる
未経験者を採用した場合、その業界や職種で働くうえで必要な知識やスキルを身に付けるための研修を行う必要があります。知識やスキルを身に付けるには時間がかかるため、すぐに現場で働き、成果を出すのは難しいでしょう。これに対し、キャリア採用で採用した場合、すでに幅広い知見やスキルを持っているため、すぐに現場で活躍できます。
さらに、業界や職種とのミスマッチが起きにくいメリットもあります。未経験者の場合、実際に働き始めてから、入社前に持っていた職種へのイメージが実際とは異なっていたことに気づき、離職してしまう可能性があります。
キャリア採用の場合、すでにその業界で働いた経験があったり、一定期間その職種で働いたりしているため、イメージとのギャップを理由とする離職が起きにくいと考えられます。離職率を抑えられれば、長期的に見て採用コスト削減にもつながるでしょう。
新しいノウハウ・価値観を取り入れられる
キャリア採用で採用された人材は、自社に来る前にさまざまなノウハウを身に付けており、自社が持っていないノウハウも持っています。また、企業が異なれば企業風土も異なるため、プロパーの社員とは異なる価値観を持っている可能性もあります。
キャリア採用をすることで新しいノウハウや価値観が持ち込まれれば、新たなイノベーションの創出のきっかけになり、結果的に生産性の向上も期待できるでしょう。
キャリア採用のデメリット
キャリア採用は、求職者と企業の双方にさまざまなメリットをもたらす一方、デメリットもあります。ここでは、キャリア採用のデメリットを取り上げます。
採用コストがかかってしまう
企業によっては、未経験者の今後の成長に期待して採用する「ポテンシャル採用」を行っているところもあるでしょう。ポテンシャル採用の場合、未経験を理由に給与をある程度抑えることができます。
キャリア採用の場合、経験やスキルに見合った給与を提示しなければ、そもそも応募者が集まりません。さらに、管理職を募集する場合は、役職に応じた手当も必要でしょう。このため、キャリア採用はポテンシャル採用よりも採用コストがかかってしまいます。
社風に合わずにミスマッチが起きるリスクがある
仕事の経験が豊富で多くの知識を持つ人材の場合、明確な仕事観を持っているケースも見られます。そのため、本人の価値観と社風が合わないと、せっかくの経験や知識を活かせません。自分が活躍できない状況に不満を抱き、早期退職に至ってしまう恐れがあるのです。
求めている人材がなかなか見つからない
高度なスキルや豊富な経験を持つ人材は他社でも必要とされているため、売り手市場となり、競争率が高い傾向があります。
またキャリア採用では、高度なスキルに加えて、募集している業務内容に近い業務の経験があるかどうかが重視されます。そのため、要件に合致する人材がなかなか見つからず、採用が難航する恐れがあります。
採用スケジュールが遅れれば、その分事業計画にも影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
キャリア採用の進め方・成功させるポイント
ここからは、実際にキャリア採用を進めるプロセスや、キャリア採用を成功させるポイントを紹介します。
募集前
人材の募集を開始する前に、求める人材の明確化と、給与水準や労働環境の整備が求められます。具体的な手順を見ていきましょう。
求める人物像を明確にする
最初に、会社が求める人材像を明確にします。今後の事業計画などを踏まえ、どの職種でどんなスキルや経験を持つ人材が必要なのかを洗い出しましょう。必要とされるスキルなどについて配属予定の部署にもヒアリングを行うと、配属後に現場のニーズとのギャップが生じずに済みます。
気を付けなければならないのが、求める経験やスキルを細かく設定し過ぎると、条件に合致する求職者を見つけるのが困難になる点です。求める経験やスキルを「MUST(必須項目)」と「WANT(歓迎項目)」に分け、選考時に重視する項目をあらかじめ決めておきましょう。
さらに、採用を見送りたい要件を「NEGATIVE(不要項目)」と定め、評価しない・避けたいことについて明らかにするのもおすすめです。採用担当者が具体的な人物像を共有するうえでは、求める人材の年齢や経歴、スキルなどを詳細に示した「ペルソナ」の設定も効果的です。
給与水準・労働環境を整備する
高度なスキルや豊富な経験を持つ人材は、転職を通じて前職以上の給与を得たいと考えています。そのため、そうした求職者のニーズに合った給与水準を知る必要があります。採用サイトなどを確認し、求める人材に対し他社が支払っている給与を調べるなどして、給与相場を確認しましょう。
長時間労働が常態化しているなど、職場環境に問題がある場合は改善を図る必要があります。問題を放置したままでは、求める人材に応募してもらえなかったり、内定を出しても辞退されてしまったりするかもしれません。仮に求める人材が入社しても、職場環境に不満を感じて、早期離職につながってしまうかもしれません。
募集時
選考や受け入れの準備が整ったら、実際に募集を行いましょう。自社が求める人材に応募してもらうためのポイントをお伝えします。
自社の魅力をアピールする
求人サイトや自社サイト内の採用ページにて、仕事内容ややりがい、職場の雰囲気や福利厚生など、自社の情報を詳細に公開し、求職者に興味を持ってもらえるようにします。人材の獲得競争が激しさを増しているため、産休・育休取得率や福利厚生、キャリアプランなど、自社の魅力につながる項目は積極的にアピールした方がよいでしょう。
ただし、入社後のミスマッチを防ぐためにも、過度なポジティブアピールをしないように注意してください。
スカウトを実施する
求人サイトや自社の採用ページに求人情報を載せただけでは、すぐに応募があるとは限らないため、エントリーを待つだけでなく、スカウトも積極的に行いましょう。
また、スカウト代行サービスの活用も視野に入れると、スピーディーな人材獲得につながるでしょう。
募集後
応募者の面接を行い、内定を出しただけでは、採用活動は終わりではありません。ここでは、入社前から入社後までに行うべきフォローなどをご紹介します。
内定〜入社のフォローをする
採用を通知してから入社日までの期間、採用者に連絡を取らずに放置してしまうと、採用者は不安を抱えてしまう可能性があります。場合によっては、内定辞退にもつながりかねません。人事部などが定期的に連絡を取り、研修への参加を促す、社内報を送付して社内の雰囲気を知ってもらうなどしましょう。
採用フローを見直す
採用フローは定期的に見直しましょう。採用計画に沿って人材を確保できたかや、求めていた人材を獲得できたか、また、採用者が入社後に活躍できているのかなど、多角的にチェックします。採用活動において非効率な点が見つかった場合には、やり方を見直すようにしましょう。
キャリア採用の注意点
多くのメリットがあるキャリア採用ですが、必ずしも常に成果を上げられるわけではありません。キャリア採用を導入する際にはいくつかの注意点があります。ここでは具体的に3つを紹介します。
必ずしも即戦力になるわけではない
キャリア採用で入社した社員に対し、会社や周囲は即戦力としての働きを期待します。しかし転職直後は、新たな職場での仕事の進め方を学びつつ、上司や同僚との人間関係も構築しなければならず、本人には大きな負担がかかります。前職との仕事の進め方や社内ルールの違いに苦労する人もいるでしょう。即戦力として期待し過ぎると、プレッシャーを感じ、実力を発揮できないまま離職してしまうかもしれません。
キャリア採用で入社した社員については、スキルは高くても新入社員であることを忘れず、丁寧に教育を行い、フォロー体制を十分に整えるようにしましょう。
▷中途採用した人材が期待外れになる原因|能力を引き出す育成方法や活躍する人材の採用方法
オンボーディングの体制を整える
オンボーディングとは、新卒社員や中途入社などの新入社員に組織に定着してもらい、活躍してもらうまでのプロセスを指します。オンボーディング施策は入社前から入社後まで一貫して行い、ある程度職場に慣れてきたあとも1on1ミーティングなどを定期的に実施しましょう。新入社員の不安や不満の解消を図り、早く組織になじんでもらうことで、本人の能力を発揮してもらうのがオンボーディングの目的なのです。
オンボーディング施策の一例としては、以下のようなものがあります。
入社前
- 社員との交流会
- 会社見学
入社後
- 研修(理念研修、実務研修など)
- 歓迎会
定期的に実施
- メンター制度の導入
- 1on1ミーティング
スキルだけではなく人柄や価値観も重視する
キャリア採用は経験やスキルを重視する採用手法ですが、選考時に経験やスキルのみを重視すると、自社のカルチャーや経営方針とのミスマッチが生じる恐れがあります。求職者の人柄や仕事に対する価値観などが自社に合うかを見極めなければ、入社後に部署内でうまくコミュニケーションが取れないなどの問題が起きてしまうでしょう。
そのため、面接の際には、スキル面だけではなく人柄や仕事観もじっくり見極めるのが重要です。
▷採用プロセスとは?設計する方法や課題・改善に向けたポイントを解説
キャリア採用が多い職種
スキルや経験が重視される職種では、キャリア採用が多く行われています。ここでは、特にキャリア採用が多く行われている職種と、その特徴について紹介します。
営業職
一人で客先に営業に行き、売り上げを上げられる社員を育てるまでには、上司・先輩との同行や研修などの教育を行う必要があり、時間がかかります。そのため、即戦力を求めて、営業職をキャリア採用したいと考える企業は多くあります。
スキルや知識だけではなく、営業職として培ってきた人脈を次の職場で活かせるケースもあり、その点からもキャリア採用が多く行われているのです。
経理・財務
経理・財務も、キャリア採用が多い職種です。経理は法令などのルールに則って処理を行うため、帳簿付けや決算などの方法が多くの企業で共通しています。加えて、簿記や税理士などの資格、経理に関する知識は他業界や他社でも通用するため、経験者は即戦力として力を発揮しやすいといえます。財務職が持つ資金調達のノウハウも、異なる業種であっても活かせるでしょう。
人事職
人事職が扱う範囲は採用や育成、労務など幅広く、簡単にスキルや経験が身に付くものではありません。面接の場で応募者の人柄などを見極めるには、ある程度の経験が必要です。また、労務はどの企業においても法律に即した対応が求められるため、他業界に転職後もスキルや知識を活かしやすいといえます。
スキルや経験を身に付けるまでに時間を要するうえ、どの業界に転職しても活躍しやすいため、人事職もキャリア採用が進んでいます。
ただし、小規模の企業においては、一人の社員が人事労務すべてに対応するケースが多く、反対に、大企業であれば業務範囲は細分化されていることが一般的です。人事職をキャリア採用する場合は、前職での具体的な業務内容を確認し、求める要件に合っているかをチェックしましょう。
SE・プログラマー
高度なシステムを構築するには、SEやプログラマーにも高度なスキルが求められます。これは一朝一夕で身に付くものではありません。また、プログラミングの世界は日進月歩で、常に新しいスキルを学んでいく必要があります。
そのため、すでに高度なスキルを持っている人材や、自社にはないスキルを持つSEやプログラマーを求める企業は、キャリア採用を行う傾向にあります。
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キャリア採用を導入している大手企業事例
大手企業においても、キャリア採用が導入されています。ここでは3社の具体例を挙げ、各社が自社に合ったキャリア採用を行うために工夫しているポイントをお伝えします。
株式会社フジテレビジョン
株式会社フジテレビジョンは、自社の採用サイトに「新卒採用」と「キャリア採用」のページをそれぞれ用意しています。採用サイトには社員インタビューが豊富に掲載され、入社後の働き方や職場の雰囲気をイメージしやすくなっています。
キャリア採用向けのページでは、仕事内容や応募資格、選考プロセスなどが紹介されています。応募資格で注目すべきは、「必須(MUST)」と「歓迎(WANT)」がそれぞれ掲載されている点です。たとえば著作権部門の場合、「必須(MUST)」には「契約業務に関する経験」、「歓迎(WANT)」には「ビジネスレベルの英語力を有する」「チームワークを大切にする」と具体的に記載されています。
これにより、求職者に求めるスキルや経験が明確化され、求職者側も自分のスキルや経験が活かせるかがわかります。
参照元:株式会社フジテレビジョン
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社もキャリア採用を導入している大手企業の1つです。
自社ウェブサイトにて会社の雰囲気や仕事内容、福利厚生などを詳しく紹介しています。さらに、現場エンジニアによる業務紹介イベントや、他の自動車メーカーと合同開催するキャリア採用説明会などのイベントの告知も掲載しています。興味を持った人が足を運び、実際に話を聞けるように工夫しているといえるでしょう。
また、キャリア登録を実施している点も特徴です。その時に自分の経験やスキルを活かせる職種の募集が行われていなかった場合でも、キャリア登録をしておけば、適したポジションの募集が始まった際に連絡が来る仕組みです。
キャリア登録には、求職者だけではなく、会社側にとっても優秀な人材とのつながりを保ち続けられるメリットがあります。
参照元:トヨタ自動車株式会社
旭化成グループ
旭化成グループは、キャリア採用の特設サイトを設け、キャリア入社者のインタビュー記事を掲載しています。前職での経験の活かし方や入社前後の印象の変化などを載せ、求職者が入社後の自分の姿をイメージしやすくしています。
さらに、サステナビリティ関連職やDX技術職など、職種ごとに特設サイトをつくり、マネジメント層からのメッセージや仕事の内容を紹介しているのも特徴の1つ。グループ内において各職種が果たす役割から将来像まで伝えることで、入社後のキャリアプランを描きやすいよう工夫しています。
参照元:旭化成グループ
キャリア採用を成功させ組織力を向上させよう
スキルや経験を豊富に持つ人材を採用すれば、業績や組織力を向上させることができるでしょう。この記事を参考にキャリア採用を導入し、自社のカルチャーや経営方針に合った人材の採用につなげてください。
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