外国人を採用する際の注意点|準備すべきポイントや必要な手続きを解説
人手不足の深刻化から需要が高まる「外国人採用」。貴重な労働力としてさまざまな業界で外国人採用が進んでいますが、雇用に関しては注意点もあるようです。本記事では、外国人を採用する際の注意点を、準備すべきポイントや必要な手続き、外国人採用の現状と併せて解説します。
目次
外国人採用の現状
近年、外国人労働者の採用は拡大の一途をたどっています。厚生労働省が発表している統計を基に、外国人採用の現状を解説します。
外国人労働者数は「200万人以上」
2023年10月時点で、日本国内で働く外国人労働者は200万人を超えており、前年に比べて22万人以上増加しています。
また、外国人労働者を雇用する事業所は30万以上となっており、こちらも前年に比べて約20,000事業所が増加しています。これらの統計データから見ても、日本国内における外国人労働者の需要が年々高まっていることは明らかです。
[出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」]
国別外国人労働者の割合は「ベトナム」が最も多い
外国人労働者の国別割合において、ベトナム出身の労働者が最も多いのが特徴です。
また、ベトナムに次いで中国、フィリピンが続いており、これら3か国だけで日本における外国人労働者の半数以上を占めています。統計データから、特にベトナムから来日する労働者数が著しく多いことが分かります。
[出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」]
外国人を採用する際の注意点
外国人を採用する際に、特に注意すべき点を3つ解説します。
雇用できない外国人がいる
外国人を雇用する際、すべての外国人が雇用可能というわけではありません。特定の資格や書類を持っていない外国人は、法律により雇用が認められていないためです。
以降では、雇用できない外国人の具体的なケースを紹介します。
在留カードを所持していない
在留カードを所持していない外国人は、雇用を認められていません。
日本に3か月以上滞在する外国人には「在留カード」の所持が義務付けられており、これは身分証明書としての役割も果たしているためです。企業は雇用前に必ず在留カードの有無や、不正がないかを確認する必要があります。
[出典:e-GOV「出入国管理及び難民認定法(第七十三条の二)」]
就労が認められる在留資格を持っていない
業務内容が在留資格に合致していない場合も雇用はできません。
具体的には、文化活動・短期滞在・留学・研修・家族滞在などの在留資格です。企業は雇用する外国人の在留資格を確認し、その資格で許可されている業務かどうかを慎重に判断する必要があります。
就労可能な在留資格と認められている活動範囲、在留期間は以下のとおりです。
在留資格 | 活動範囲 | 在留期間 |
技術・人文知識・国際業務 | 大学や母国の企業で得た知識や経験などと関連する活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
企業内転勤 | 同上 | 5年、3年、1年、3か月 |
介護 | 介護福祉士の有資格者が介護または介護の指導をする活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
技能 | 特殊な分野において熟練した技能を要する活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
高度専門職 1号・2号 | 「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類 | 5年または無期限 |
特定技能 1号・2号 | 1号:特定産業分野(14分野)に属する相当程度の知識・経験を要する業務に従事する活動 2号:熟練した技能を要する業務(2分野)に従事する活動 | 1号:1年、6か月または4か月ごとの更新、通算で上限5年 2号:3年、1年または6か月ごとの更新 |
技能実習 1号・2号 | 単純作業では修得できない技能を、実習によって習得するための活動 | 法務大臣指定の期間(1年もしくは2年を超えない範囲) |
興行 | 俳優、歌手、プロスポーツ選手などとしての活動 | 3年、1年、6か月、3か月または15日 |
医療 | 医師、歯科医師、看護師など、法律上資格を有する者が行うこととされている活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
研究 | 政府関係機関・企業等の研究者としての活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
教育 | 教育機関における語学教師などとしての活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
法律・会計業務 | 弁護士、公認会計士など、法律上資格を有する者が行うこととされている活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
経営・管理 | 企業等の経営者、管理者などとしての活動 | 5年、3年、1年4か月、3か月 |
外交 | 外国政府の大使などとしての外交活動、その家族としての活動 | 外交活動の期間 |
公用 | 外国政府の大使館・領事館の職員、その家族などとしての活動 | 5年、3年、1年、3か月、30日、15日 |
教授 | 大学などの機関における研究や研究指導などの活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
芸術 | 作曲家や作家、画家などの芸術活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師などとしての活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
報道 | 外国の報道機関の記者、カメラマンなどとしての活動 | 5年、3年、1年、3か月 |
在留期限が切れている
在留期限が切れている外国人を雇用することは違法行為にあたるため、特に注意が必要です。
違法な雇用が判明した場合、企業側も罰せられる可能性があるため、雇用する前にその外国人の在留期限をしっかり確認しましょう。
差別的待遇が禁止されている
外国人労働者に対する差別的な待遇は、日本の労働基準法・最低賃金法・同一労働同一賃金の原則に基づいて禁止されています。
外国人だからという理由で、日本人よりも低い賃金や不当な労働条件で雇用することは許されておらず、すべての労働者に対して公平な待遇を設けることが求められています。
違法な外国人雇用は日本人雇用と同じように罰せられる
企業が違法に外国人を雇用した場合、日本人の違法雇用と同様に厳しく罰せられることを理解しておかなければなりません。
罰則には罰金や営業停止などのほか、場合によっては経営者の責任が問われることもあります。違法行為にあたらないようルールを正しく理解し、法律の範囲内で適切に雇用することが重要です。
外国人を採用するうえでの準備
外国人労働者を採用するにあたり、雇用主は事前にさまざまな準備を行う必要があります。ここからは、外国人採用をするうえで行うべき準備について、5つの観点で解説します。
生活環境を整える
外国人労働者が日本で生活を始めるためには、基本的な生活環境を整える必要があります。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 住居の確保
- 印鑑の作成
- 携帯電話の契約
- ライフライン(電気・ガス・水道)の契約
- 銀行口座の開設
日本に慣れていない外国人にとって、これらの手続きは難しい場合が多いため、雇用主や担当者がサポートすることが望ましいでしょう。円滑な生活基盤を速やかに整備することが、スムーズな業務開始と定着につながります。
文化・習慣の違いを理解する
外国人の国籍や出身地にもよりますが、その多くは日本とは文化・習慣が違うことを理解する必要があります。
例えば、時間の感覚やコミュニケーションスタイル、上司との関係性など、国ごとに異なる文化的背景を持っているため、事前にこれらの違いを理解しておくことが重要です。文化・習慣に対する理解が浅いと、外国人労働者と日本人従業員の間で誤解やトラブルが発生する可能性があります。
一人ひとりがお互いの文化や習慣を理解することに努めるとともに、会社としても円滑なコミュニケーションが取れるよう職場環境を整備しておくことが大切です。
日本語レベルを確認する
外国人労働者の日本語能力は、業務を遂行するうえで重要な要素です。語学力には個人差があり、レベルによっては仕事上の支障が生じるかもしれません。
面接や採用時に候補者の日本語レベルをしっかりと確認し、業務に最低限必要なレベルの言語スキルがあるかを評価することが大切です。必要に応じて、日本語教育のサポートも検討しましょう。
労働条件を理解しているか確認する
外国人労働者が労働条件を正しく理解しているかどうかも確認しましょう。
給与・就業時間・残業時間など、労働条件に関する認識のズレは後々のトラブルの原因となる可能性があるためです。理解が浅いと思われる場合は、疑問点を確認したり、契約内容について今一度明確に説明する必要があります。
書面だけのやり取りや条件の確認を外国人労働者に委ねるのではなく、理解度を確認しながら対面で細やかに対応することが望ましいといえます。
教育体制を整える
外国人労働者に向けて、教育体制を整備することも検討しましょう。採用した外国人労働者が日本人と同じようにスムーズに業務を開始できるとは限りません。
文化や言語の違いで業務の進め方にギャップが生じる可能性もあるため、語学力や理解度など必要に応じて手厚くサポートすることが求められます。
外国人採用に必要な手続き
外国人労働者を採用する際に必要な手続きについて、3つのステップで解説します。
就労ビザの取得見込みがあるか確認する
外国人労働者を日本で雇用するには、就労可能な在留資格である就労ビザの取得が不可欠です。
就労ビザが取得できていなければ、採用したとしても労働はできません。面接や内定の段階で、応募者が就労ビザを取得できる見込みがあるかを確認することが重要です。
なお、特定の業種や業務内容によっては申請が難しい場合もあるため、事前にビザ取得の可能性を確認しておきましょう。
労働契約を締結・雇用契約書を作成する
採用が決まったら、労働契約の締結と雇用契約書の作成を行います。労働契約を締結することで、法的にも正式に雇用関係が成立します。
雇用契約書は、企業と外国人労働者の間で取り交わす重要な書類であり、労働条件・給与・就業時間・雇用期間などを明確に記載することが必要です。契約内容があいまいなまま雇用を開始すると後々トラブルになる可能性があるため、契約書の記載事項は分かりやすく詳細に作成しましょう。
就労ビザの申請をする
最後に、就労ビザの申請を行います。
就労ビザの申請手続きは原則として就労者本人が行いますが、雇用主が支援する形で進めるのが一般的です。必要書類の準備や申請プロセスを一緒に確認しながら、外国人労働者がスムーズにビザを取得できるようサポートしましょう。
就労ビザの申請が認められてはじめて、その外国人労働者は正式に日本での就労が可能となります。
外国人を採用するメリット
外国人を採用する主なメリットを3つ解説します。
人手不足の解消・労働力の確保ができる
日本では少子高齢化や人口減少に歯止めがかからず、日本人労働者の不足が深刻な問題となっており、特に若手人材の獲得は年々難しくなっているのが実情です。
このような問題を解決する方法のひとつが、外国人労働者の採用です。外国人労働者を受け入れることが、さまざまな業種での人手不足解消につながり、企業の生産性向上が期待できます。
また、外国人労働者の多様なスキルや特有の経験が企業に新しい視点をもたらし、サービスや業務の幅を広げてくれる可能性もあります。
補助金・助成金を活用できる
外国人を採用すると、国や地方自治体からの補助金・助成金を活用できる場合があります。これを活用することで、採用コストを大幅に削減できるのも企業側のメリットです。
具体例として、外国人雇用促進のための支援制度や、特定技能を持つ労働者を対象とした助成金などが挙げられます。上手く活用することで、企業は費用負担を軽減しながら、必要な知識・スキルを持った人材を確保できるでしょう。
インバウンドへの対策ができる
外国人労働者を雇用することは、インバウンド需要への対策にも役立ちます。
特に、観光業やサービス業などにおいて、外国人観光客との円滑なコミュニケーションが可能になるのがメリットです。外国人観光客に対するサービスクオリティの向上や、ビジネスの拡大も期待できるでしょう。
いまや企業の多言語対応は、企業としての競争力を高めるうえでも重要な要素です。
▷外国人を採用するメリット・デメリット|受け入れ方法や流れについて紹介
外国人を採用するデメリット
外国人を採用する主なデメリットを3つ解説します。
文化や習慣に違いがある
国によって内容や程度は異なるものの、外国人労働者は日本人とは異なる文化や習慣を持っているのが一般的です。
例えば、時間感覚やコミュニケーションスタイル、仕事に対する考え方などが異なるケースは多々あります。雇用主だけでなく上司や同僚も含めて、外国人労働者の文化や習慣を理解するよう努め、適切なフォローや環境整備を行う必要があります。加えて、日本の文化や習慣を伝え、ギャップを減らせるようサポートすることも重要です。
文化的な誤解を解消するために、定期的なコミュニケーションの機会を設けたり、研修を実施したりするのもひとつの方法です。
雇用までに時間がかかる
外国人の雇用は、日本人を雇用する場合に比べて時間がかかる点もデメリットと言えます。就労に必要な在留資格や就労ビザの取得などに時間を要するためです。
ビザの取得手続きが完了するまでに数か月を要することもあり、即戦力としてすぐに雇用できない場合があります。そのため、外国人労働者を採用する際には、手続きに要する時間を考慮した採用計画を立てることが重要です。
また、手続きに関する知識やサポート体制を整備しておくことで、雇用までにかかる時間を短縮できる場合があります。
従来とは異なる手法で採用する必要がある
外国人採用は、従来とは異なる手法で採用活動を行う必要があります。求人媒体の多くは、日本国内の日本人求職者を対象としているためです。
そのため、外国人労働者を募集する場合は、外国人求職者に対応しているもの、または特化している採用手法が必要になります。
グローバルに対応した求人サイトや海外向けのエージェントであれば、言語や採用プロセスの違いにも精通しているため、入社までの適切なサポートが期待できるでしょう。
▷飲食店でも外国人スタッフを採用できる?手続きの流れや在留資格について
外国人採用にかかる費用
外国人採用にかかる費用は、さまざまな条件によって変動するものの、おおむね日本人の採用と同程度と考えておきましょう。
外国人労働者を採用する場合であっても、同一労働同一賃金や最低賃金法を遵守する必要があります。そのため、基本的には日本人労働者と同等に扱い、同一の給与や福利厚生を提供しなければなりません。
このほか、就労ビザの取得手続きや生活環境の整備など、追加で発生する費用も考慮しておきましょう。
注意点や必要な手続きを理解し外国人採用を適切に行おう
外国人採用では、文化や習慣の違いを理解することや、適切なフォロー体制を整えることが重要です。
また、就労ビザの取得や雇用契約書の作成などの手続きがあり、日本人を採用する場合に比べて雇用までに時間がかかることも理解しておく必要があります。
日本人と同程度の費用が発生しますが、補助金の活用やインバウンド対策といったメリットも多いため、これらの点を正しく理解し、適切に外国人採用を行いましょう。
おすすめのお役立ち資料
採用管理システムの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら