採用の歩留まりとは?平均値や計算方法・改善に向けた取り組みを解説
採用活動を行ううえで、選考フェーズごとの次の過程に進んだ人数の割合を「歩留まり」と呼びます。この数値を正しく把握すれば、自社の採用活動における問題点の分析が可能です。当記事では、採用の歩留まりについて、計算方法や改善に向けた取り組みを解説しています。
・採用の歩留まりとは、採用フローにおいて各過程に進んだ人数の割合のこと
・歩留まり率が高いほどに辞退者や不合格者が少なくて採用活動の効率が良い状態と言える
目次
採用活動における歩留まりとは?計算式や平均値
採用活動の歩留まりとは、採用フローにおいて、各過程に進んだ人数の割合を示します。
具体的に、採用活動は、説明会・エントリー・一次選考・最終選考・内定・内定承諾という流れで行われます。その際、説明会参加率、エントリー率、一次選考通過率などを、それぞれパーセンテージで示したものが歩留まりです。
選考通過者は歩留まり率が高いほど多く、低いほど少ないということになります。例えば、内定承諾の歩留まり率が低いということは、内定が出たにもかかわらず辞退した人の割合が多いということです。会社側は、なぜ辞退者が多いのかを分析・改善する必要があるでしょう。
このように、採用フローの各過程の歩留まり率が分かることで、よりよい採用活動に向けて会社が改善すべき点が明らかになります。
歩留まりの計算方法
採用フローにおける歩留まりを算出するには、基本的に次の計算式を用います。
選考通過者数÷選考参加者数×100=歩留まり率
上記の計算式を基に、各過程の歩留まり率の計算式を以下の表にまとめました。
企業説明会参加率 | 説明会参加者数 ÷ エントリー数 × 100 |
選考応募率 | 選考応募者数 ÷ エントリー数 × 100 |
書類選考通過率 | 書類選考通過者数 ÷ 書類選考参加者数 × 100 |
面接通過率 | 面接通過者数 ÷ 面接参加者数 × 100 |
内定率 | 内定者数 ÷ 受験者数 × 100 |
内定承諾率 | 内定承諾者数 ÷ 内定者数 × 100 |
内定辞退率 | 内定辞退者数 ÷ 内定者数 × 100 |
例えば、受験者数50人、内定者数5人のときの内定率は、次のように計算します。
5(内定者数)÷50(受験者数)×100=10(%)
歩留まりを計算するためには、各過程の人数を記録する必要があります。歩留まりを算出し、採用課題の解決に活かしましょう。
歩留まりの平均値
ここで、採用の各過程における歩留まりの平均値をみてみましょう。書類選考から最終面接までの一般的な歩留まり率は以下のとおりです。
書類選考通過率 | 約50% |
一次面接通過率 | 約30% |
最終面接通過率 | 約50% |
また、株式会社リクルート就職みらい研究所による「就職白書2023」を基に従業員規模別に算出した、内定率および内定承諾率は以下のようになりました。
従業員規模 | プレエントリー数 | 内定出し人数 | 内定人数 | 内定率 | 内定承諾率 |
300人未満 | 7136.0 | 143.7 | 81.8 | 2.0% | 56.9% |
300~999人 | 7163.0 | 192.0 | 89.4 | 2.7% | 46.6% |
1,000~4,999人 | 5953.9 | 174.2 | 95.5 | 2.9% | 54.8% |
5,000人以上 | 6254.5 | 187.3 | 94.5 | 3.0% | 50.5% |
自社の歩留まりが平均値より大幅に低い場合、採用課題が潜んでいるかもしれません。適正な歩留まりを目指す際の参考にしてください。
[出典:株式会社リクルート 就職みらい研究所「就職白書2023」]
採用において歩留まりが発生する原因
採用の歩留まりが低下する原因として、次の6つが考えられます。
- 求職者1人あたりの内定獲得数の増加
- 求人内容と実態のギャップ
- 会社や社員の雰囲気・風土などのミスマッチ
- 家族や友人などからの反対
- SNSや口コミサイトによる影響
- 採用ブランディングが不十分
それぞれの要因を解説します。
求職者1人あたりの内定獲得数の増加
求職者1人あたりの内定獲得数の増加は、採用歩留まり率の低下に大きく影響しています。
採用活動において、複数企業の選考を並行して受ける求職者は少なくありません。そして、近年は売り手市場が続いている影響もあり、1人の求職者が複数の内定を獲得していることがほとんどです。しかしながら、実際に入社する会社は1つであるため、選考や内定の辞退が発生します。
例えば、A社の選考途中でB社から内定が出た場合、その時点でB社への入社を決定したならば、A社の選考は辞退するでしょう。このように、先に内定をもらった会社へ入社するケースは珍しくなく、企業の採用歩留まり率の低下につながっています。
求人内容と実態のギャップ
求人の掲載内容と面接での説明が異なると、求職者はギャップを感じ、選考・内定を辞退する可能性が高まります。
例えば、Webサイトの求人内容には「東京勤務」と記載されていたのに、面接で地方勤務の可能性があることを示唆されると、東京で働きたい求職者は入社を踏みとどまるでしょう。こうした齟齬が、結果として歩留まりの低下につながってしまいます。
特に、業務内容や残業時間、休日、勤務地などは、会社選びで求職者が重要視している条件です。情報の食い違いが発生しないよう、社内で事前に労働条件を共有する必要があります。
会社や社員の雰囲気・風土などのミスマッチ
会社の風土や社員の雰囲気とのミスマッチにより、感覚的に選考を辞退する場合もあります。
Webサイトでは自分に合う会社だと思っていたとしても、実際に企業の様子を見てみたらイメージと違ったというケースはよくあるものです。また、面接官や先輩社員の態度によくない印象を受け、採用を辞退することもあるでしょう。
社風や働く人との相性は人それぞれですが、企業のイメージダウンにつながらない対応を心掛けることが大切です。
▷採用ミスマッチが起きる原因とは?早期離職を防ぐポイントと事例について
家族や友人などからの反対
求職者が、家族や友人から「この会社・業界はやめたほうがいい」「本当に大丈夫なのか」などと、入社を反対されている場合があります。
特に、中小企業やベンチャー企業は知名度が低い場合が多く、不安を抱く人もいるでしょう。知名度で企業のよし悪しが決まるわけではありませんが、大企業に比べて信頼獲得が難しくなります。安心して入社してもらうためには、企業の魅力を求職者にしっかり伝えなければなりません。
SNSや口コミサイトによる影響
SNSや口コミサイトが発達し、企業で働く従業員や退職した従業員が、企業の印象やメリット・デメリットなどを発信できるようになりました。その際、マイナスな情報や噂を目にしてしまうと、入社をためらってしまうでしょう。
一方、SNSは、活用の仕方によって企業イメージの向上につなげられます。企業アカウントを作成して会社の様子を発信する、社員からの前向きな投稿を促すなどの工夫で、イメージアップを図りましょう。
▷採用マーケティングとは?進め方やメリット・フレームワーク、事例を解説
採用ブランディングが不十分
採用ブランディングが十分にできていなかったことにより、求職者に自社の魅力を伝えきれていないケースもあるでしょう。その場合、求職者が他社と比較をした結果、他社への入社を決める可能性が高まります。採用の歩留まり低下を防ぐためには、求職者に「この会社で働きたい」と思ってもらえるようなブランディングに注力しなければなりません。
採用サイトの充実化だけでなく、ブログやSNSの運用、交流イベントの開催などを通じて、自社のよさを伝えましょう。また、採用コンサルティングなどを活用し、プロに採用ブランディングを支援してもらうことも効果的です。
採用の歩留まりが低下しやすいフェーズ
エントリーから入社にいたるまでの採用活動の過程で、特に歩留まりが低下しやすいのは以下のフェーズです。
- エントリー〜説明会参加
- 書類選考〜面接
- 内定〜入社
なぜ歩留まりが低下しやすいのか、それぞれ理由を解説します。
エントリー〜説明会参加
採用活動の第一フェーズである、エントリーから説明会参加までの歩留まりは、特に低下しやすい傾向があります。
そもそも、エントリーは誰でも気軽にできるため、「志望度は低いけれど、とりあえずエントリーしておく」という求職者も多数います。エントリーから説明会実施までの間で企業に魅力を感じてもらえなければ、説明会に行きたいと思ってもらえず、参加者が少なくなってしまうのです。
興味を持ってくれた求職者が選考を受けたくなるよう、求人広告の強化や企業PRなどを積極的に行う必要があります。
書類選考〜面接
いざ書類選考を受けたものの、その後の面接を辞退してしまう求職者も多いものです。
理由としては、面接の日程が合わない、日程調整の遅さに悪印象を感じた、などが考えられます。また、事前準備の手間や対人での面接に心理的ハードルの高さを感じてしまったなど、求職者の個人的な問題もあるでしょう。
求職者が安心して面接に挑めるよう、迅速で誠実な対応を心掛けるほか、まずは気軽に話せるカジュアル面談の場を設けるなどの工夫をするとよいでしょう。
内定〜入社
最終選考を通過して内定をもらっても、入社までの期間に内定を辞退してしまう場合も多く、内定~入社の歩留まりも低下しやすくなります。
内定を辞退する理由として多いのは、並行して選考を受けていた他の企業への内定が決まったというケースです。求職者は複数社の選考を受けていることがほとんどであるため、内定の辞退者が発生することは仕方ない部分でもあります。しかし、競合他社よりも自社に魅力を感じてもらえるよう、ブランディングに力を入れなければなりません。
採用活動の歩留まり率を改善するための取り組み
採用活動の歩留まり率を改善するためには、自社の採用活動を見直すことが大切です。ここでは、歩留まり率改善に効果的な取り組みを紹介していきます。
歩留まり率を算出・分析する
自社の採用活動でボトルネックとなっている課題を割り出すために、まずはエントリーから入社までの各過程における歩留まり率を算出しましょう。その中で、特に歩留まり率の低い採用フェーズが、自社が改善すべき部分です。
どのフェーズを改善すればよいかが分かったら、なぜ通過者が少ないのかを分析しましょう。自社に課題がある場合もあれば、求職者や競合他社などの状況が影響している場合もあります。内的要因と外的要因の両方を分析しながら、改善策を考えましょう。
▷応募者を惹きつける採用キャッチコピー一覧!作り方やNG例を紹介
社内環境や制度を見直す
求職者に魅力を感じてもらえるように、社内環境や採用制度を見直すことも大切です。
例えば、求職者が職場を選ぶ際は、業務内容や給与だけでなく、福利厚生や会社の雰囲気が自分に合っているかも重要視しています。したがって、求める人材にニーズのありそうな福利厚生を充実させたり、働きやすい設備を整えたりすることも、人材獲得に有効です。
また採用制度を見直し、面接を受けるハードルを下げることで、歩留まり率の低下を防げます。例えば、オンライン面接を導入することで、遠方に住む求職者も面接を受けやすくなるでしょう。求職者の視点に立って、社内制度の改善に取り組むことが重要です。
採用に関する連絡や日程調整は迅速に行う
採用に関する連絡や日程調整は迅速に行わなければなりません。連絡が遅れている間に競合他社の選考が進み、自社の選考や内定を辞退する確率が高まってしまいます。また、円滑に連絡が取れない企業に対し、よくない印象を受ける求職者もいるはずです。そのため、選考日程の連絡や内定決定の連絡はできる限り早く行いましょう。
連絡スピードの目安としては、問い合わせへの返答は24時間以内、選考日程の案内や選考通過者の決定については数日以内に、対象者に連絡をするとよいでしょう。
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社風や職場環境への理解を深めるイベントの開催
求職者に自社に対する理解を深めてもらうために、懇親会や交流イベントを開催するのもおすすめです。
求職者と社員との距離感が縮まることで、面接に対するハードルが低くなるでしょう。また、実際に会社の雰囲気を体感することで、「ここで働きたい」という意欲を高められるほか、採用のミスマッチを防止する効果もあります。
求職者とのコミュニケーションを積極的に行い、入社までの不安を解消できるよう工夫しましょう。
採用管理ツールや採用代行の活用も検討する
採用活動には多くの工程があり、担当社員の業務負担も大きいものです。採用活動に課題を感じていても、リソースが足りずに改善ができないケースもあるでしょう。そのようなときは、一部の業務をアウトソーシングすることで、採用活動を効率化できます。
最近では、採用業務を管理できるツールや採用代行サービスなどが登場しているので、それらを活用することも可能です。プロの力を借りながら採用の効率化を図りましょう。
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歩留まり率の改善におすすめのコンサルティングサービス
採用における歩留まり率の低さに悩んだ際は、コンサルティングサービスを活用することで、効率よく改善できます。ここからは、おすすめのサービスを紹介していきます。
マイナビ研修サービス
マイナビ研修サービスは、株式会社マイナビが提供する、企業向けの研修サービスです。中でも、「採用力強化シリーズ」では、企業の採用活動に特化し、高精度な採用活動の実現をサポートする研修を多数提供しています。
採用力強化シリーズで提供している研修の例は以下のとおりです。
- 採用基準設計研修
- 説明会コンテンツ設計研修
- 説明会プレゼンテーション研修
- 面接官研修
- GD・GW評価者研修
- リクルーター研修
- 採用コンサルティング
コンテンツ設計から面接スキルまで幅広いサポートが用意されています。研修ではロールプレイングを行い、講師や受講生からフィードバックを得ながらスキルを高めていく点が特徴です。企業への講師派遣のほか、オンラインでも実施しています。
株式会社ジンジブ
株式会社ジンジブでは、高卒採用に特化した採用支援サービスを提供しています。高卒採用は、大卒採用とは異なるルールがあり、対応に苦慮している企業も多いものです。同社では情報サイトや就活イベントなどを運営しながら、企業にさまざまな採用ノウハウを提供しています。
例えば面接サポートでは、誰でもレベルの高い面接ができるよう、面接の上手な進め方や質問項目をマニュアルにまとめて提供。また、サーベイの活用によって選考者の性格特性や仕事の優先度を可視化し、採用のミスマッチ防止をサポートしています。
株式会社アールナイン
株式会社アールナインでは、経験豊富な採用のプロが採用業務を代行するサービスを提供しています。
あらゆる採用業務の代行を行っていますが、中でも以下のサービスが特徴的です。
- スカウト代行
- エージェントコントロール
- 面接代行
- 辞退者調査
同社のサービスは、採用担当者がいない企業や採用業務における社員の負担を減らしたい企業におすすめです。面接代行サービスでは、自社面接官向けの研修も提供しており、面接官スキルの向上も期待できるでしょう。
採用活動の改善には歩留まり率の把握が役立つ
本記事では、採用活動における歩留まりとは何か、具体的な計算方法を併せて解説しました。各採用過程の歩留まり率を把握することで、採用活動の課題解決に役立ちます。本記事を参考に歩留まり率を算出し、課題の分析・改善に取り組みましょう。
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