出精値引きとは?書き方や法律違反になるケースや見積書への記載方法
企業側の努力でサービスの品質を落とさず行う値引きを「出精値引き」と言います。一般的な値引きと異なる点もあり、具体的な内容を知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、出精値引きの特徴や見積書への記載方法、法律違反になるケースなどを紹介します。
・出精値引きとは企業の努力によって行われる値引きのことで、取引先との関係性を向上させるために実施される
・出精値引きを実施する場合、法律違反や商品やサービスの価値を低下させてしまうリスクがある点に注意すべき
目次
出精値引きとは?
出精値引きとは、企業努力によって行われる値引きのことを言います。取引先と良好な関係を築いたり、発注を後押ししたりすることを目的に、商品やサービスの質に影響しない程度の値引きを行うのが特徴です。また、端数を丸める目的で使われることもあります。場合によっては、値引きの限界額を伝える意味合いで出精値引きを用いることもあるでしょう。
なお、値引き額が大きすぎると、取引先から不信感を持たれる可能性があります。原価を下回ると商品やサービスの品質にも影響するため、値引き額には十分な検討が必要です。
一般的な値引きとの違い
出精値引きと一般的な値引きの違いは、値引きを行う理由にあります。一般的な値引きは、以下のような理由で行われます。
- 提携値引き
- 納期遅延
- 品質劣化
- キャンペーン
- 大量購入
- クレーム対応
一方、出精値引きは上記のような実質的な理由がありません。主に取引先との関係構築を目的に行われます。
出精値引きの書き方
出精値引きをするときには、見積書にその旨を記載する必要があります。ここでは、出精値引きの書き方でとくに注意すべきポイントを3つ紹介します。
記号を用いて分かりやすく記載する
出精値引きをするときには、「▲」もしくは「-」の記号を用いて記載しましょう。「▲」や「-」は、値引きを示す記号として一般的に知れ渡っているため、誰が見ても値引きと認識することが可能です。
もしも「▲」「-」以外を使って表記すると、認識に齟齬が生まれるリスクがあります。取引を円滑にするためにも、出精値引きをするときは必ず「▲」もしくは「-」を使うようにしてください。
例えば、5,000円の出精値引きをする場合は以下のように記載しましょう。
- ▲5,000円
- -5,000円
値引き前の金額を記載する
見積書には、出精値引き前の金額の記載も忘れずに行ってください。記載がないと、出精値引きをした記録が残らなくなるからです。取引をした担当者しか出精値引きの事実を知らないため、第三者が誤った解釈をする恐れがあります。
見積書の内容と金額もあっていないため、混乱を招くリスクもあるでしょう。さらに、見積書だけでは本当に値引きされているのか判断できず、不信感をもたれる可能性も高まります。
このようなリスクを避けるためにも、見積書には必ず出精値引き前の金額を記載してください。記載方法についての明確なルールはありませんが、誰が見ても出精値引きの事実がわかるようにすることが重要です。
値引きの理由を記載する
出精値引きをする際には、見積書に値引きの理由も記載することが重要です。担当者以外でも値引き理由がわかる状態にしないと、認識の齟齬が生まれてトラブルにつながる可能性があります。
「出精値引き」もしくは「貴社特別割引価格」などと記載しておくことで、誰が見ても値引きの理由を理解できるでしょう。あわせて「本来の価格から5%割引」などと詳しい内容を記載しておくと詳細の把握に役立ちます。
出精値引きを提案する際の注意点
ここからは、出精値引きを提案する際に知っておきたい注意点を2つ紹介します。
商品やサービスの価値を下げてしまう
出精値引きには、商品やサービスの価値を下げるリスクがあります。取引先が値引きされた額での購入に慣れてしまうと、本来の価格での取引をためらう可能性があるでしょう。
出精値引き後の価格で取引すると売上額が下がり、その分利益額も減少します。一時的な値引きなら問題ありませんが、値引き額での取引が続くことは経営状態に影響するため、できる限り避けるべきです。
値引き幅を大きくしすぎないこと、値引きでの取引を続けないことを意識しながら出精値引きを行うことが重要です。経営に無理のない範囲で行うことを心がけましょう。
法律違反になるケースもある
取引先から過度な値引き交渉を受けた場合には、下請代金支払遅延等防止法(下請法)に違反する可能性があります。下請法とは、下請事業者が親事業者から不当な要求をされないように設けられた法律のことです。
第1条
この法律は、下請代金の支払遅延等を防止することによって、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護し、もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。
[引用:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法」]
下請法では、理由なしに下請代金を不当に値引きしたり、著しく低い価格での取引を求めたりすることを禁じています。
第4条
三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
五 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。
[引用:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法」]
取引先からの申し出を断れずに値引きに応じた場合も法律違反とみなされる可能性があるため、十分に注意してください。
そもそも出精値引きは、企業側が自発的に値引きを行う場合に成り立つものです。そのため厳密には、取引先から値引きを強制された時点で、出精値引きとは別の扱いになります。
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出精値引きを効果的に行うポイント
ここからは、出精値引を効果的に行うポイントについて見ていきましょう。
自社の現状をしっかりと把握する
出精値引きを行う前に、自社の現状把握を行いましょう。具体的には、取引先との関係性を確認することや、コスト削減の余地を分析することが挙げられます。
出精値引きは、長期的な関係構築の一環として行われるものです。取引先のニーズや今後の展望、過去の取引履歴や交渉時の傾向などを事前に調べることで、双方にとって納得のいく価格交渉を進めやすくなるでしょう。
また、あらかじめコスト削減の余地がないか分析することも重要です。生産プロセスの改善や仕入れ値の交渉、不要な機能・サービスの取り止めなどで経費を削減できれば、効果的な出精値引きを提案しやすくなります。
値引きの提案は慎重に行う
出精値引きの提案は、慎重に行うことが大切です。長期的な関係を築くためには、企業の価値を維持しながら値引きを行う必要があるため、むやみやたらに価格を安くすればよいわけではありません。商品やサービスの品質を保てる範囲で値引きすることを意識するとよいでしょう。
また、値引きの際には具体的な金額を示しつつ、理由を明確に伝えることも重要です。理由がないと、お願いすれば値引きをしてもらえると勘違いされる可能性があります。長期的な目で見ると、値引き取引が続くことは経営の悪化につながるため、理由を伝えずに出精値引きをすることは避けましょう。
なお、提案を受け入れてもらえたあとは、取引条件を調整したり、合意内容を書面に残したりすることを忘れないでください。
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出精値引きとは企業努力で自発的に行う値引き
出精値引きとは、取引先との良好な関係を築いたり、発注を後押ししたりするために企業努力で行う自発的な値引きのことです。納期遅延やクレーム対応、大量購入などの実質的な値引き理由なしに行える点が、一般的な値引きと異なります。
出精値引きは商品やサービスの価値を下げたり、やり方によっては法律違反になったりするリスクがあるため、安易に行うものではありません。コストの削減余地や取引先との関係性を確認したうえで、慎重に提案しましょう。
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