システム開発におけるドキュメント作成の目的|種類一覧や書き方について
システム開発の現場では、作業工程ごとに多くの「ドキュメント」が作成されます。作成負担のある作業ですが、なぜ重要視されているのでしょうか?本記事では、システム開発におけるドキュメント作成の目的、その種類や作成ポイントについて解説します。
目次
システム開発におけるドキュメント作成の目的とは?
システム開発においては、ドキュメント作成の必要性を理解することが重要です。以下にその概要を解説します。
依頼側と開発側で共通認識を持つため
システム開発におけるドキュメントは、完成までの道のりを明確にし、依頼側と開発側の認識が食い違いを防ぐ役割を持っています。
例えば、予算、要件、デザイン、機能、納期など、プロジェクトの根幹をなす情報は多岐にわたるため、それぞれを他の要素と矛盾しないように整える必要があります。
もし、ドキュメント整備を怠ると、細かな認識のズレが蓄積し、プロジェクトが予定通りに進まなかったり、追加費用が多発するなどのリスクが高まるでしょう。したがって、情報のマスターとなるドキュメントを整理して、誰でも閲覧できる状況に置くことが求められているのです。
作業の引継ぎを円滑にするため
大規模なシステム開発においては、複数の開発会社で工程を分担したり、途中で担当者が変わることが一般的です。そのため、引継ぎに備えてドキュメント整備を行うことが大切です。
正確なドキュメントが保存されていれば、前任者がいつどのような作業を行ったのか、どのような情報をもとに判断したのかを一目で把握できます。
作業の引継ぎをスムーズに行い、プロジェクトの品質を維持するためには、詳細なドキュメントが必要不可欠です。
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システム開発のドキュメントの種類一覧
システム開発にはさまざまなドキュメントが必要です。以下に、一般的なプロジェクトで必要となる代表的なドキュメントと、その役割について解説します。
提案依頼書(RFP)
提案依頼書(RFP)とは、システム開発の目的や予算、ユーザーの要望など、システムの概要をまとめたドキュメントです。
以下のような情報がまとめられています。
- プロジェクトやシステムの目的
- 開発予算
- システムの要件、評価基準、制約条件
- 開発を依頼したい範囲(役割分担、機能、成果物など)
- 開発スケジュール
提案依頼書(RFP)はクライアントが開発会社に対して提出し、それをもとに開発会社が見積を起こすことが一般的な流れです。
要件定義書
要件定義書とは、提案依頼書(RFP)の内容から、開発するシステムが満たすべき性能や機能を具体化したドキュメントです。
以下のような内容が定義されます。
- システムの概要(目的、背景、課題、解決策)
- 性能要件(速度、容量など)
- セキュリティ要件
- 業務要件(業務フロー)
- 非機能要件(デザインなど)
要件定義書があることで、開発チームはクライアントの要望を正確に把握できます。
基本設計書
基本設計書とは、要件定義書でまとめられた内容を実現するために、各システムや個別のソフトウェアに実装すべき機能を具体化したドキュメントです。
開発の方向性を明確化するために、以下のような情報を含みます。
- 画面設計書
- 帳票設計書
- バッチ設計書
- データベース設計書
- 外部インターフェース設計書
このドキュメントをもとに、各システムの担当者は開発作業を進めていきます。
詳細設計書
詳細設計書とは、基本設計書の内容をさらに細分化し、具体的な技術仕様や内部構造を明示するためのドキュメントです。
具体的なアルゴリズムやパラメータの意図を引き継ぐことを目的とし、以下のような情報が記載されます。
- 各機能のアルゴリズムとロジック
- データフローの詳細
- インターフェースの具体的な仕様
- 使用するライブラリやフレームワーク
- テストケースの設計
日々の運用作業においては、最も多くの変更が発生するドキュメントの一つです。詳細設計書の質を担保することが、プロジェクトを適切に引き継いでいくための必須事項となります。
テスト仕様書
テスト仕様書とは、組み上がったシステムをどのようにテストするかを記したドキュメントです。
以下のような情報が定義されています。
- 単体テストの内容と範囲
- 結合テストの計画
- 総合テストの項目
- パフォーマンステストの基準
- テスト環境の構成
多くの場合、テストは単体テスト、結合テスト、総合テストと3つの段階に分けて実施されてます。そして、それぞれのテスト項目をまとめたものがテスト仕様書であり、テスト結果は別の報告書にまとめられることが一般的です。
運用マニュアル
運用マニュアルとは、クライアントがシステムを適切に運用できるように、操作手順や設定方法を説明したドキュメントです。
運用マニュアルの主な項目は以下の通りです。
- 業務マニュアル(システムの一連の概要、業務の流れを解説)
- 操作マニュアル(システム操作の具体的な手順を説明)
- 障害対応マニュアル(障害発生時の対応法を整理)
これらのマニュアルは日々の運用に重要な情報がまとめられており、クライアントがシステムを効果的に管理・運用をするために役立ちます。
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ドキュメントの書き方
質の高いドキュメントを作るためには、一定のポイントがあります。以下に詳しく解説します。
ドキュメント作成の目的を明確にする
ドキュメントを作成する際には、目的を明確にすることが重要です。目的がはっきりしていると、何を記載すべきかが明確になり、より分かりやすい資料を作成できます。
例えば、システム仕様書の場合、システムの設計情報を正確に伝えることが目的となります。また、運用マニュアルの場合は、利用者がシステムを正しく操作できるようにガイドすることが目的です。目的を定めることで、効果的なドキュメントが完成します。
読み手の読みやすさを意識する
ドキュメント作成時には、読み手の読みやすさを意識しましょう。
依頼者向けのドキュメントでは、専門用語を控えてわかりやすい表現を心掛けることが重要です。一方で、開発者向けのドキュメントでは、専門用語を適切に活用し簡潔に情報を伝えることが求められます。
また、文章だけでなく図表を使うことで視覚的に理解しやすくなります。全体をシンプルにまとめ、内容が一目で把握できるようにする工夫が必要です。
ドキュメントの大枠・構成から考える
ドキュメントを作成する際には、まず大枠や構成から整えていきましょう。
記載内容を整理し、どの項目をどの順序で配置するかを決めることで、各項目が書きやすくなります。これにより、情報の流れがスムーズになり、読み手にとって理解しやすい文書が完成します。
また、大枠を先に考えることで、全体のバランスを保ち、重要な情報が埋もれないようにすることができます。
既に共有されている前提事項も記載する
ドキュメントには、メンバーが既に認識している内容も記載する必要があります。
なぜなら、プロジェクトの担当メンバーは入れ替わるケースが多いためです。前提事項も記載することで、新たに参加するメンバーも、共通認識を持つことができます。
また、前提事項を明確にしておくことで、誤解や情報の抜け漏れを防ぐことができ、プロジェクトがスムーズに進行します。たとえ既知の内容であっても、正式な記録として残しておきましょう。
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テストで不採用になった事柄についても記載する
ドキュメントには、システムに実装しなかった事柄についても記載しておきましょう。そうすることで、同じアプローチが再度検討されるのを防ぎ、無駄な時間やリソースを節約するために役立つためです。
また、不採用となった理由も記録しておくことで、将来的な意思決定の参考となるでしょう。技術的な制約やコストの問題、リスク評価の結果などを記載しておけば、将来的にプロジェクトの運用を大きくサポートする材料となるかもしれません。
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ドキュメントの管理方法
ドキュメントの効率的な管理方法について、以下に詳しく解説します。
ファイル名はひと目で内容がわかるようにする
ドキュメントのファイル名は、誰でもひと目で内容がわかるようにしましょう。
例えば「プロジェクトX_設計書_2024_07」など、プロジェクト名や資料の内容、最終更新の日付を明示することで、どこに何があるかをチーム全員が理解でき、情報の共有や検索がスムーズに行えます。
また、ファイルの更新や管理もシンプルになり、効率的なプロジェクト進行に貢献します。
常に最新の情報を記載する
ドキュメントには、常に最新情報を反映させましょう。
とりわけ大規模プロジェクトにおいては、些細な変更であってもすぐにドキュメントを更新し、チーム全員が最新の情報を共有できるようにすることが大切です。
面倒だからとドキュメントの更新を怠っていると、誤解やミスを誘発するリスクが高まります。常に最新の情報を記載しておけば、信頼性の高いドキュメントを維持することができ、開発段階におけるプロセスの透明性が向上します。
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ドキュメントを作成しシステム開発をスムーズに進めよう
システム開発において、正確なドキュメント作成と管理は、プロジェクトをスムーズに進めるカギを握っています。
各自がドキュメントの目的を理解し、正しい知識で整備されていれば、プロジェクト全体のクオリティや信頼性を大きく底上げしてくれるでしょう。また、仕様変更などの際にもスムーズに対応できるため、トラブルを未然に防ぐことにも役立ちます。正しいドキュメントの作成と管理を行い、高品質なシステム開発や運用を目指しましょう。
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