家族手当とは?扶養手当との違いや支給条件、メリット・デメリットを解説

最終更新日時:2024/02/13

福利厚生サービス

家族手当とは

日本の給与体系に定着している「家族手当」。ところが、時代や働き方の変化に影響を受け、近年制度の見直しをする企業が増えています。本記事では、そもそも家族手当とはどのような福利厚生制度なのか、扶養手当との違いや支給条件、家族手当を導入するメリット・デメリットについて詳しく解説します。

この記事の要約

・家族手当とは、従業員が家族を養うための支援として会社から支給される手当の一種
・家族手当は法律で定められていないため、支援内容や対象者などは企業ごとに異なる
・大企業の家族手当は充実している一方で、中小企業では経営状況などから積極的に取り入れられていない傾向がある

家族手当とは?

家族手当とは、従業員が家族を養うために必要な支援として、企業から支給される手当の一種です。主に配偶者や子どもなど、従業員の家族が対象とされています。

家族手当は法律で定められた手当ではないため企業に支給の義務はありません。家族手当を支給する場合には、支給方法や支給額、対象となる家族の定義などについて企業が独自に決めることができるため、自分が所属する企業の制度を確認することが重要です。

扶養手当との違い

家族手当と扶養手当はどちらも従業員の経済的負担を軽減するための手当ですが、対象となる家族に違いがあります。扶養手当は、配偶者や未成年の子どもなどの「扶養家族」を対象としているのです。

そのため、家族手当であれば支給対象となる配偶者や子どもでも、共働きやアルバイトなどで一定以上の収入を得て扶養から外れている場合には、扶養手当の対象とはなりません。扶養手当も家族手当同様、細かなルールは企業が独自に定めています。

児童手当との違い

児童手当も名前をよく聞く制度ですが、こちらも家族手当とは異なります。最も大きな違いは、児童手当が国からの給付金であるという点です。

中学生までの子どもを持つすべての家庭が対象であり、子ども一人につき一定の金額が年齢区分に応じて支給されます。勤め先の企業を通じて受け取る手当ではなく、居住する自治体に申請することで直接受け取ることができるものです。

昨今は児童手当の見直しが進められているため、支給対象や支給額といった運用方法の変更について情報収集するようにしましょう。

家族手当導入の現状とは

現在、日本企業の多くでは、従業員の福利厚生の一環として家族手当を設けています。この家族手当の歴史は古く、始まりは大正時代にまでさかのぼるといわれることから、いかに日本の企業文化になじんでいるかがわかるでしょう。

家族手当は、従業員が配偶者や子どもといった家族を養っていることを考慮し、その経済的負担を軽減することを目的としています。

しかし、家族手当の導入の有無や支給額は、企業の規模や業種、地域などによって大きく異なるのが現状です。大企業では、その資金力を活かし、従業員の安定した生活を支えるために高額な家族手当を支給する場合があります。一方、中小企業では、経営状況などを考慮して、家族手当の導入を見送るケースもあるようです。

また、近年では働く人々のライフスタイルが多様化し、結婚や子育ての形態も変わってきていることから、家族手当の制度自体を見直す動きも出ています。これには、単身者をはじめとする、家族手当を支給されない従業員に対する不公平感を是正する狙いもあるでしょう。

具体的には、従業員一人ひとりの働き方や生活状況に応じた手当や福利厚生に切り替えることで、より公平で柔軟な働き方を後押しする企業が増えています。

こうした動きを踏まえると、家族手当は今後も働き方や社会情勢の変化によって捉えられ方や運用が変わっていくと予想できます。そのため、支給側である企業だけでなく、従業員自身も家族手当制度をしっかりと理解しておく必要があるのです。

家族手当が支給される条件

家族手当を受け取るためには、企業が定める条件を満たす必要があります。「家族手当」という名称からわかるとおり、多くの企業では、対象となる家族がいることが基本条件となり、配偶者や子ども、親などの続柄が当てはまります。

そのほかの条件の例としては、対象者が同居していることや、同一生計内で生活をしていること、子どもや親の年齢などが挙げられます。また、配偶者の年収が扶養の範囲内という条件を設けていることもあり、この場合は家族手当の名称であっても、実施的には扶養手当と考えてよいでしょう。

細かい規定については各企業で異なるため、就業規則などで確認する必要があります。

夫婦が同一企業で働く場合は?

夫婦が同一企業で働く場合、家族手当の支給がどのように扱われるかはその企業の規定によります。

夫婦が同じ企業で働いていても、それぞれが家族手当を受け取ることができる場合もあれば、一方だけが家族手当を受け取るという規定になっている場合もあります。このように、同一企業で働く夫婦が家族手当をどのように受け取れるかは、企業の規定次第なのです。

公務員に家族手当は支給される?

公務員に支給されるのは家族手当ではなく扶養手当です。支給対象となるには、職員に扶養されていることに加え、規定の年齢や続柄に該当している必要があります。

年収が130万円未満であれば扶養家族と認められ、子どもについては「満22歳到達後最初の3月31日まで」支給されます。親に関しては満60歳以上であることも条件です。これらの条件を満たす扶養家族について、続柄に応じて月額6,500円から1万5,000円が支給されます。

所得制限はある?

家族手当の支給について、所得制限が設けられている場合もあります。この場合、従業員やその家族の年収、もしくは世帯の年収が一定額を超えると、家族手当が支給されなくなります。所得制限の有無や基準となる額は企業によって異なります。

休業中でも支給される?

休業中でも家族手当が支給されるかどうかは、各企業の規定によります。自社の場合はどうか、就業規則などであらかじめ確認しておくとよいでしょう。

家族手当はいくらもらえる?平均支給相場について

家族手当の支給額は、企業の規模や業種、地域などによって大きく異なります。厚生労働省による令和2年の調査では、労働者1人年あたりの家族手当などの平均額は17,600円でした。

従業員数ごとの平均支給額を見ると、30~99人規模の企業の12,800円が最少で、反対に従業員数1,000人以上の企業は22,200円と最大でした。この支給額はあくまで平均値であり、企業によってはこれよりも高額な手当を支給している場合もあれば、これより低い額を設定している企業もあります。

また、調査対象には扶養手当や育児支援手当なども含まれており、同一対象者に対する支給額を比較しているわけではない点も理解しておきましょう。企業Aであれば家族手当の対象となる扶養内の子どもが、育児支援手当を実施している企業Bでは18歳以上を理由に対象から外れるといったこともあり得るのです。

従業員数労働者1人年あたりの家族手当、扶養手当、育児支援手当などの平均支給額
令和2年調査計17,600円
1,000人以上22,200円
300~999人16,000円
100~299人15,300円
30~99人12,800円

[引用:厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」より]

また、家族手当の支給額は企業の業績によっても左右されます。企業の業績が良い場合は、家族手当の額を増やすことで従業員のモチベーションを上げる効果を期待できます。一方、企業の業績が悪い場合は、経費削減の一環として家族手当の額を減らす可能性もあるでしょう。このように企業の業績に左右されるという性質は、家族手当が法定の手当ではないために発生します。

自社の家族手当について詳しく知りたい場合は、人事部門に問い合わせてみるとよいでしょう。また、転職活動を行う際には、家族手当の有無や支給額をチェックすることで、より自分に合った企業を見つけることができます。

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企業が家族手当を支給するメリット・デメリット

企業が家族手当を支給することには、さまざまなメリットとデメリットが存在します。ここではそれぞれを詳しく見てみましょう。

家族手当のメリット

まず、メリットとして考えられるのは、従業員のモチベーション向上や生活安定に役立つことでしょう。従業員への福利厚生の一環として家族手当を支給することで、従業員とその家族の生活を支えるという企業の配慮が伝わり、従業員の満足度や愛着を高めることができます。

対外的にも、従業員を大切にしている企業だというイメージを得ることができるため、企業の採用力が向上するというメリットがあります。福利厚生が充実している企業は求職者からの評価が高く、優秀な人材を引き寄せやすいのです。

家族手当のデメリット

一方で、家族手当の支給にはデメリットも存在します。その1つが、企業の負担増です。家族手当のために、それぞれの従業員の家族構成に応じた手当額を算出し、給与の一部として支出する必要があります。支給に伴う実際の支出のほかに、人件費も増える点を考慮しなければなりません。

また、家族手当の支給は、独身者や子どものいない従業員には不公平に感じられるかもしれません。なぜなら、家族手当は属性に基づく支給であり、仕事の成果とは関連がないからです。同一労働同一賃金の観点から見て、家族手当の支給の是非が問われる可能性もあります。

これらの点を考慮し、企業が家族手当をどのように設定・運用するかは重要な検討項目だといえるでしょう。

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家族手当を廃止する企業が増えている理由

家族手当の支給が従業員のモチベーションを保つ一方、家族手当を廃止する企業も増えつつあります。これには社会的な変化と法改正が影響しています。

ライフスタイルが多様化しているため

まず、ライフスタイルという観点から見ると、祖父母のいる三世代家族や核家族だけでなく、シングル、DINKS(Dual Income No Kids)など、働く人々の生活形態が多様化していることがわかります。

家族手当が一部の従業員に対する不公平を生む可能性が指摘されているため、全従業員が平等に受け取れる福利厚生を提供するために、家族手当を廃止する企業が増えています。

配偶者控除が改正されたため

次に考えられる理由が、配偶者控除の改正の影響です。平成30年1月施行の税制改正によって配偶者控除が見直され、それまで103万円だった配偶者控除の所得ラインが150万円に引き上げられ、201万円までは収入に応じた控除が受けられるようになりました。

手当の支給対象について配偶者控除と同一のラインを設けていた企業においては、制度の見直しにかかる人件費や適用範囲拡大に伴う経費が増加するために、廃止を選択する場合があります。

同一労働同一賃金が推進されているため

「同一労働同一賃金」とは、雇用形態にかかわらず、同じ働きをしている人は同じ賃金を受け取るべき、という考え方です。家族手当は従業員個人の属性によって支給額が異なるため、この原則に反する可能性があるため、制度の継続を見直す企業があるのです。

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家族手当を見直した企業事例

ここでは、具体的にどのような企業が家族手当を見直し、どのような措置をとってきたのか、2つの事例を紹介します。

家族手当を見直した企業事例①

従業員規模1万人以上の小売企業では、これまで扶養家族手当の支給対象を「世帯主」としていたため男性の対象者が多く、女性比率の高い職場であるため不公平感がありました。そこで、職能主義から役割や成果に応じた賃金体系へ変更する際、扶養家族手当も見直すことにしたのです。

「原子の総体は減らさずに社員への配分の仕方を変える」という考えのもと、係員の子ども以外に対する扶養家族手当を廃止。これまで手当として支給していた分は賃金などに組み込むことで、公平・公正を保つことにしました。

家族手当を見直した企業事例②

従業員規模1,000~4,999人の卸売企業では、成果主義の人事制度に転換を図る一貫として家族手当を廃止することにしました。従業員の理解を得られるようモデルケースを作成し、これまでの家族手当分を給与の中に入れ込む形を採用。1年間にわたる労使交渉の末、合意を得ることに成功したのです。

家族手当の代わりになる手当や制度

家族手当の代替として注目されているのが、両立支援手当や、能力・成果に対する手当です。家族手当が一部の従業員に対する支給に偏っていたのに対し、これらの手当は、多様な働き方や生活スタイルを持つ従業員全体を対象としています。。

両立を支援する手当

仕事と家庭の両立を支援するための手当として、たとえば子育てや介護などの負担を軽減するための支援や、育児休業からの復帰を促進するための手当などがあります。

これらの手当は共働きが増えている現状に合ったものであり、子育てや介護が理由で働きたいのに働けないといった人の助けになるでしょう。従業員が家庭生活と仕事を両立させ、生産性を維持しつつ働き続けられるようにする手当なのです。

仕事の能力・成果に対する手当

従業員の能力や成果に対して手当を支給する制度も増えています。従業員のスキルや成果を直接評価し手当を支給することで、従業員のモチベーションを向上させ、企業全体の生産性向上を目指すのです。

これらの手当や制度は、家族手当が主に家庭や扶養者を持つ従業員を対象としていたのに対し、個々の従業員の生活スタイルや能力・成果に応じるよう考えられています。こうした新しい手当や制度が積極的に導入されれば、多様な働き方を実現しながら、企業全体の生産性や働きやすさを向上させることができるでしょう。

家族手当導入の現状を踏まえ制度の見直しも検討しよう

家族手当は、企業が従業員の家族を支えるために導入してきた福利厚生の1つです。しかし、近年は従業員のライフスタイルの多様化や税制改正、同一労働同一賃金の推進など、社会の変化により、その適用や支給額を見直す企業が増えてきています。

企業は家族手当の見直しを行う際には、従業員の意見を聞いたり、労働組合と協議するなど、従業員の理解と協力を得ることが重要です。代替として、仕事と家庭の両立を支援する手当や、仕事の能力や成果に対する手当などの導入も考えられるでしょう。

家族手当の現状を踏まえ、企業は従業員の福利厚生について常に検討し、改善していきましょう。

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