福利厚生に利用できる補助金・助成金|種類や活用の施策例を解説

2024/05/01 2024/05/01

福利厚生サービス

福利厚生の補助金

福利厚生に活用できる補助金や助成金があることをご存知でしょうか?具体的にどのような補助金・助成金制度があるのか、本記事では、福利厚生に利用できる補助金・助成金の種類や活用の施策例について詳しく解説します。

福利厚生には助成金や補助金が支給される

企業が従業員のために福利厚生を用意する際、特定の条件をクリアすれば、国や自治体から助成金や補助金を受け取れます。助成金や補助金は融資と違い、返済の必要はありません。福利厚生の充実は、従業員満足度の向上にもつながるので、助成金や補助金を活用して福利厚生を行いましょう。

補助金と助成金の違い

補助金も助成金も国や地方公共団体などが支給するお金ですが、受給しやすさに違いがあります。どちらも公的な資金が財源となっているため、誰でも受給できるわけではなく、受け取るためには審査を受けなければなりません。

助成金は審査の結果、一定の要件を満たしていると認定されれば、原則として受給できます。一方、補助金は支給枠が決まっているものが多いので、申請数が多ければ審査で落ちる場合もあります。そのため、助成金の方が受給のハードルが低いと言えるでしょう。

ただし、補助金と助成金に明確な違いが設けられているわけではありません。申請する際は、制度について十分に調べたうえで行うように留意してください。

[出典:中小企業基盤整備機構「ビジネスQ&A 補助金・助成金の違いや補助金活用における注意点について教えてください。」]

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助成金や補助金を福利厚生に活用するメリット

助成金や補助金は、受給するために申請書の用意など手間がかかりますが、福利厚生に活用することで、さまざまなメリットが得られます。代表的なメリットをお伝えしますので、参考にしてください。

返済する必要がない

助成金や補助金の受給メリットとしてまず挙げられるのが、返済が不要である点です。銀行などから融資を受けた場合には、必ず返済をしなければなりません。しかし、助成金や補助金は雇用保険料や税金が資金源となっているため、雇用保険料や税金を納めている企業は返済しなくてもよいのです。

ただし、助成金や補助金を受け取るには、特定の要件を満たしたり、国などが掲げる目標をクリアしたりしなければならないので、その点は注意しましょう。

職場環境を整備できる

助成金や補助金の受給は、職場環境の整備にも寄与します。制度を利用して福利厚生の充実に役立てることで、従業員の働きやすい環境を整えることにつながるためです。

整備にかかる費用負担を抑えられるだけでなく、スキルアップや柔軟な働き方といった従業員のニーズに応えられることで、従業員の満足度の向上も見込めます。

社会的な信用を得やすくなる

助成金や補助金の受給は、企業の社会的な信用にもつながります。国や地方公共団体から助成金や補助金を受け取るには、一定の要件をクリアしなければなりません。逆に言えば、助成金や補助金を受け取れる企業は、一定の要件を満たせている企業だと証明されたとも考えられるでしょう。

したがって、社会的な信用を得られるうえ、企業ブランディングにもプラスの効果が見込まれるので採用活動にも有効になります。

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福利厚生に利用できる助成金・補助金の種類一覧

福利厚生に利用できる助成金・補助金をご紹介します。福利厚生の充実を考えている企業は、自社に合った助成金・補助金を見つけてください。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、従業員の人材育成やスキルアップに必要な経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です。次の6つのコースがあります。

人材育成支援コース

「人材育成訓練」(10時間以上のOFF-JTによる訓練)、「認定実習併用職業訓練」(新卒者を対象としたOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練)、「有期実習型訓練」(有期契約労働者などを正社員に転換することを目的に行うOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練)が対象です。訓練内容と対象者によって経費助成率や賃金助成率は異なります。特に「人材育成訓練」は、幅広い訓練に活用しやすい助成金です。

教育訓練休暇等付与コース

3年間で5日以上の有給教育訓練休暇制度を導入し、従業員がその休暇を使って訓練を受けた場合に助成金が受け取れる制度です。制度導入・実施にあたっての助成額は30万円(賃金要件等を満たす場合は36万円)です。

人への投資促進コース

2022年度から2026年度までの期間限定の助成金です。「定額制訓練」「高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練」「情報技術分野認定実習併用職業訓練」「自発的職業能力開発訓練」「長期教育訓練休暇等制度」の5つのメニューが用意されています。メニューによって、経費助成率や賃金助成額は異なるので注意してください。「定額制訓練」は、サブスクリプション型の研修サービスを従業員が利用した際に助成が受けられるので、導入しやすいと言えるでしょう。

事業展開等リスクリング支援コース

新規事業の立ち上げを計画している企業におすすめの助成金です。事業展開を行うにあたり、新しい分野で必要な知識や技能を得る目的で実施する訓練に支払われます。また、企業でDXやカーボンニュートラル化を進める場合に必要な知識や技能を身につけるための訓練も対象です。経費助成率は大企業が60%、中小企業が75%、賃金助成額(1人1時間)は大企業が480円、中小企業が960円となっています。

建設労働者認定訓練コース

建設関連の認定職業訓練または指導員訓練を行った場合、対象経費の1/6が支給されます。また、建設労働者に対して認定訓練を受けさせた場合は、賃金助成3,800円/人日が支給され、賃金要件または資格等手当要件を満たせば増額されます。

建設労働者技能実習コース

若い世代に対し、キャリアに応じて技能実習を行った場合に受け取れる助成金です。中小建設事業主(20人以下)の場合、経費助成は3/4、賃金助成は8,550円/人日となっています。中小建設事業主(21人以上)の場合、経費助成は7/10、賃金助成は7,600円/人日で、いずれも賃金要件や資格等手当要件を満たせば増額されます。

建設関連コース以外はいずれも、紙の申請に加え、電子申請も受け付けています。申請手続きなどに関しては、各都道府県労働局の助成金申請窓口にお問い合わせください。

[出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」]

人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)

人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)は、中小企業が構成員になっている事業協同組合などを対象とした助成金です。事業協同組合などが、構成員である中小企業の人材確保や従業員の定着を支援するために「中小企業労働環境向上事業」を行った場合に、費用の2/3を助成します。上限額は構成中小企業の数によって異なるので、注意してください。

[出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」]

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者を正社員にしたり、処遇を改善したりした際に受け取れる助成金です。次の6つのコースがあります。

正社員化コース

有期雇用労働者などを正社員にした際に支給されます。

障害者正社員化コース

障害を持つ有期雇用労働者などを正規雇用労働者などに転換した場合が対象です。

賃金規定等改正コース

有期雇用労働者などの基本給の賃金規定などを改定し、3%以上増額した場合、助成金を受け取れます。

賃金規定等共通化コース

有期雇用労働者などと正規雇用労働者との共通の賃金規定などを新たに規定し、適用した場合が対象です。

賞与・退職金制度導入コース

有期雇用労働者などを対象に賞与もしくは退職金制度を導入し、支給した場合もしくは積立てを実施した場合、助成金を受け取れます。

社会保険適用時処遇改善コース(2026年3月31日まで)

有期雇用労働者などを新たに社会保険に適用させ、手当の支給や賃上げ、労働時間の延長などにより収入を増加させた場合が対象です。または、週所定労働時間を延長し、有期雇用労働者などを社会保険に適用させた場合も対象となります。

支給を受けるには、各コースを実施する前日までに労働局・ハローワークに「キャリアアップ計画」を提出しなければならないので、ご注意ください。

[出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金」]

両立支援助成金

両立支援助成金は、従業員が仕事と子育てや介護などを両立できるように環境を整えた企業に対して支給される助成金です。次の6つのコースがあります。ただし、対象は中小企業事業主のみなので、注意してください。

出生時両立支援コース

男性の従業員が育児休業を取りやすいように職場の環境や業務の体制を整えたうえで、男性の従業員が、子どもが生まれてから8週以内に育児休業を開始した場合に支給されます。1人目の子どもの場合は、支給額は制度利用者1人あたり20万円です。

育児休業等支援コース

従業員が育児休業をスムーズに取り、なおかつ復帰ができるように企業が取り組みを行った場合に支給されます。「育休復帰支援プラン」に基づいて、3か月以上育休を取得・復帰しなければなりません。育休取得時と職場復帰時に、それぞれ30万円ずつ支給されます。

育休中等業務代替支援コース

従業員が育児休暇を取得したり、育児のために時短勤務をしたりしやすいようにその間の業務体制を整える目的で、業務を代替する労働者への手当支給や代替要員の新規雇用を行った場合に支給されます。支給額は、育児休業中の手当支給には最大125万円、育短勤務中の手当支給には最大110万円、育児休業中の新規雇用は最大67.5万円です(休業取得/制度利用者1人あたり)。

柔軟な働き方選択制度等支援コース

従業員が育児期に柔軟な働き方ができるように制度などを導入し、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」で制度利用者を支援した場合に支給されます。支給額は、制度を2つ導入し、さらに対象となる従業員が制度を利用した場合、20万円です。

介護離職防止支援コース

「介護支援プラン」に基づいて、介護休業の取得・復帰や、介護と両立しやすい柔軟な働き方ができる制度の利用を支援した場合に支給されます。支給額は介護休業の取得時と職場復帰時にそれぞれ30万円、介護両立支援制度の利用で30万円です。

不妊治療両立支援コース

不妊治療のための休暇制度や両立支援制度を利用しやすい環境づくりに企業が取り組み、従業員が制度を利用した場合に支給されます。支給額は、環境の整備や休暇の取得などで30万円です。

いずれのコースも、要件を満たせば加算されるので、詳細は厚生労働省のWebサイトをご確認ください。また、制度利用者数に上限が設けられているコースもあるので、事前に制度の内容をチェックしたうえで活用しましょう。

[出典:厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」]

助成金や補助金が活用できる福利厚生の施策例

福利厚生にはさまざまな種類がありますが、ここでは助成金や補助金が活用できる福利厚生の施策例をお伝えします。福利厚生の充実を図るうえで、ぜひ参考にしてください。

食事補助

従業員に対する食事補助は従業員からのニーズが高く、助成金や補助金を活用して充実させたい福利厚生の代表例と言えるでしょう。食事補助には、食堂の設置や食事代の一部支給などがあります。福利厚生の中でも食事補助は、年齢や性別などに関係なく幅広い従業員が利用できるうえ、従業員の健康維持・増進にも有効です。

従業員が物価高を感じている今は特に、福利厚生の恩恵を実感しやすい施策なので、従業員満足度の向上も期待できるでしょう。

多様な働き方の推進

助成金や補助金を活用して導入しやすい福利厚生として、多様な働き方の推進が挙げられます。例えば、仕事と育児の両立ができるように時短制度を導入し、時短中の従業員の代わりに一部の業務を担う人材を雇用する場合に厚生労働省の助成金を活用できます。他にも、介護中の従業員が在宅で働けるように環境を整備する場合なども、助成金や補助金の活用で進められるでしょう。

多様な働き方の推進は、社員の離職防止にもつながるため、助成金や補助金を積極的に活用して環境を整えることをおすすめします。

リスキリング制度

従業員の技術やスキルを高めるためのリスキリング制度の導入にも、助成金や補助金を活用できます。研修の実施や資格取得にかかる費用だけではなく、リスキリング中の従業員への賃金の一部助成なども用意されています。従業員のリスキリングを後押しすれば、従業員の満足度が上がるだけではなく、企業の競争率の向上にも効果が見込まれるでしょう。

さまざまな業種やリスキリングの内容が対象となっているので、自社の事業に合った制度を導入し、自社の成長につなげてください。

福利厚生を充実させるメリット

福利厚生の充実は企業にとってさまざまなメリットがあります。代表的なメリットをお伝えするので、ご一読ください。

採用活動のアピールポイントになる

福利厚生の充実は、就活生に対するアピールとしても有効です。

株式会社マイナビは、2022年3月、2023年3月卒業見込みの全国の大学生や大学院生を対象に「マイナビ 2023年卒 大学生 活動実態調査(3月)」を実施しました。「企業に対して安定性を感じるポイント(当てはまるものすべて)」として最も多く挙がったのが、「福利厚生が充実」で53.3%でした。福利厚生が充実している企業は学生から「安定している」と見られる傾向があることが分かります。

[出典:株式会社マイナビ「マイナビ 2023年卒 大学生 活動実態調査(3月)」]

従業員満足度の向上につながる

福利厚生の充実は、従業員満足度の向上にも寄与します。

株式会社エデンレッドジャパンは2020年9月、全国の中小企業に勤める30~50代の正社員男女を対象に「働き方・待遇に関する意識調査」を実施しました。「今後、待遇・働き方について自社に望むこと」を聞いたところ、「基本給のアップ」「賞与額のアップ」「手当の充実」に次いで多かったのが、「福利厚生の充実」でした。「年間休日の増加」や「時差出勤・フレックスタイム制の導入」、「残業時間の削減」よりも、福利厚生を充実してほしいと考えている人が多いと分かります。

福利厚生を充実させれば、従業員の満足度が上がり、結果的に従業員の定着にもつながるかもしれません。

[出典:株式会社エデンレッドジャパン「働き方・待遇に関する意識調査」]

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助成金や補助金を活用する際の注意点

助成金や補助金の活用には多くのメリットがありますが、注意しなければならない点もあります。活用を検討する際に留意いただきたい注意点をご紹介します。

受給に時間がかかる

活用にあたって注意しなければならないのは、助成金や補助金の受給に時間を要する点です。助成金や補助金は申請したらすぐに受給できるわけではありません。基本的に後払いなので、申請してから受給まで1年以上かかるケースもあります。その間にかかる費用は、一旦企業が負担しなければなりません。そのため、キャッシュフローには注意してください。

また、助成金や補助金制度は事業期間が決まっているケースが多いため、事業期間外に支出した費用は経費としてみなされない可能性があります。経費としてみなされなければ、その分の費用は支払われません。制度を利用する場合は、計画的に進めるようにしましょう。

申請手続きに手間がかかる

助成金や補助金を活用するには申請が必要ですが、手続きに手間がかかる点にも注意しましょう。

まず申請には、決められた書類の作成・準備が必要不可欠です。制度によっては、申請したあとにも追加で書類の提出が求められるケースもあります。国などから問い合わせが来たら、対応しなければなりません。さらに、申請後5年間は書類を保管する必要もあります。申請前だけではなく申請後にも時間や労力がかかることに留意してください。

助成金や補助金を活用し福利厚生を充実させよう

福利厚生の充実にはコストがかかるものの、助成金や補助金を活用すれば、コストを抑えることができるでしょう。福利厚生の充実には、従業員満足度の向上や企業のブランディングなど多くのメリットがあるので、ぜひ助成金や補助金を活用して福利厚生を充実させてください。

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