ボーナスは年末調整の対象?引かれる税金や還付金について
毎年年末に行われる「年末調整」。年末調整は、給与からあらかじめ天引きされた所得税を実際の収入に合わせて精算する手続きですが、ボーナスも年末調整の対象になるのでしょうか。本記事では、ボーナスは年末調整の対象になるのか、ボーナスからはどのような税金が引かれるのかなどをわかりやすく解説します。
目次
ボーナスは年末調整の対象に含まれる
ボーナスも給与所得に含まれるため、年末調整の対象です。そもそも年末調整とは、源泉徴収としてあらかじめ天引きした所得税額とその年の実際の給与総額を照らし合わせ、過不足を精算する手続きを指します。
年末調整書類の「給与所得」の欄には、ボーナスも含めた金額を記載しなければなりません。
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年末調整時に引かれるボーナスの税金
毎月の給与と同様に、ボーナスからも各種税金が引かれます。ここでは年末調整時に天引きされる税金の種類についてお伝えしましょう。
社会保険料
ボーナスから引かれる税金の一つが、社会保険料です。日本では、病気や失業、介護などに備えるために社会保険制度が設けられており、社会保険料はこの社会保険制度を維持するために使われています。
社会保険料は具体的に、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・労災保険料・雇用保険料の5つで構成され、ボーナスからは労災保険料以外の4つについて差し引かれます。
厚生年金保険料
厚生年金は公的年金制度の一つで、厚生年金保険の適用を受ける事業所で働いている70歳未満の会社員や公務員が加入対象です。厚生年金保険料は、厚生年金の財源であるといえます。勤務先の企業などと加入対象者が厚生年金保険料を半額ずつ負担する点が特徴です。
厚生年金保険料は以下のように計算されます。
- 標準報酬月額×厚生年金保険料率
- 標準賞与額×厚生年金保険料率
厚生年金保険料率は2004年から段階的に引き上げられてきましたが、現在は引き上げが終了しており、18.3%で固定されています。標準賞与額は税引き前のボーナスの額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額を指し、上限は150万円です。
健康保険料
健康保険とは、病気やけがによって治療を受ける際に、医療費の一部を国が負担する制度です。会社員や公務員は全員加入しなければなりません。この健康保険制度の財源となっているのが、健康保険料です。健康保険料も厚生年金と同様、勤務先の企業などと加入対象者が半額ずつ負担します。
健康保険料は以下のように計算されます。
- 標準報酬月額×健康保険料率
- 標準賞与額×健康保険料率
健康保険料率は、企業が拠点を置く自治体や加入している健康保険組合によって異なります。
介護保険料
介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支えるためにつくられた制度です。要介護認定や要支援認定を受けた高齢者は、介護保険によって介護サービスを受けられます。この介護保険は公費と介護保険料が財源であり、40歳以上を対象に、勤務先の企業などと加入対象者が半額ずつ負担する決まりです。
介護保険料は以下のように計算されます。
- 標準報酬月額×介護保険料率
- 標準賞与額×介護保険料率
介護保険料率は、加入している健康保険組合によって異なります。
雇用保険料
雇用保険は、労働者が失業したり収入が減ったりした際に失業給付などの給付を受けられる制度で、労働者の生活と雇用を安定させることを目的としています。この雇用保険の財源となるのが、雇用保険料です。雇用保険料は、一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業など、事業の種類によって事業主負担と労働者負担の割合が異なります。
雇用保険料は以下のように計算されます。
- 毎月の給与支給額×従業員負担分の雇用保険料率
- 賞与総支給額×労働者負担分の雇用保険料率
雇用保険料率は毎年見直されます。
例として、賞与80万円を受け取った場合の社会保険料の徴収額を見てみましょう。保険料は地域や業種、年齢によって異なりますが、仮に厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料・雇用保険料の労働者負担分の合計保険料率を15.315%とした場合、徴収額は12万2,520円です。
毎月の給与同様、ボーナスから社会保険料を徴収することは法律で定められています。企業によっては、ボーナスではなく、繁忙期手当やもち代、年末一時金といった名称を使っている場合もあるでしょう。
名称にかかわらず、労働の対価として年3回以下、一時的に支給されるものはボーナスと見なされます。さらに、ボーナスには自社製品などの現物支給も含まれるため、注意してください。
所得税
ボーナスからは、所得税と復興特別所得税も天引きされます。所得税は個人の所得に対する税金で、個人事業主は自分で確定申告をしますが、会社員の場合は会社が計算して納めるのが一般的です。
復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興に必要な施策の財源となる税金です。復興特別所得税の徴収額は源泉徴収される所得税の2.1%相当額とされ、2037年まで継続されます。
ボーナスから天引きされる所得税の計算方法は、次のとおりです。
(賞与総支給額-社会保険料の合計額)×所得税率ご自身のボーナスに適用される所得税率については、前月の給与から社会保険料を差し引いたうえで、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて確認してください。所得税率は給与額だけではなく、扶養家族の数によっても変動します。
12月のボーナスで年末調整を行うケース
12月に支給されるボーナスで年末調整を行うケースには2種類あります。それぞれのケースについて解説するので、ご一読ください。
年内最後の支給が12月のボーナスの場合
その年の最後に支給される給与よりあとにボーナスが支給される場合は、ボーナスで年末調整を行います。年末調整は年内最後に支給される給与で行うことが基本です。
例えば、11月の給与が12月前半、ボーナスが12月後半、12月の給与は年をまたいで1月前半に支払われる場合、ボーナスが年内最後に支給される給与に該当します。そのため、ボーナスで年末調整を行うのです。
任意で年末調整を12月のボーナスで行う場合
12月のボーナスが支給されたあとに年内最後の給与が別途支給されるケースでも、12月のボーナスで年末調整を行うことができます。
ボーナスで年末調整を行う場合、その後に支給される給与分については見積額と見積税額を基に計算することになります。そのため、ボーナス後に支給される給与が見積額と異なった場合、年末調整をやり直さなければならない点には注意が必要です。
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ボーナスによって還付金が増えるケース・減るケース
ボーナスによって、年末調整の還付金が増えるケースと減るケースがあります。年末調整はそれまでに源泉徴収した所得税額の過不足を精算する手続きであるため、実際の金額よりも多く徴収されていれば還付金が返ってくるのです。
ここでは、還付金が増えるケースと減るケースについて、詳細を見ていきましょう。
還付金が増えるケース
ボーナスの支給がある月の前月の給与が多かった場合、還付金が増える可能性があります。例えば、前月は残業が多く、通常よりも多く残業代が支給されたケースなどが考えられるでしょう。
前月の給与が多いと、ボーナスの税率が本来よりも高くなってしまいます。そこで、年末調整によって払い過ぎた分を還付するのです。
また、前回の年末調整が終わったあとに結婚した人や、子どもが16歳以上になった人もボーナスに対する税率が本来よりも高くなっているため、還付金が増えます。
還付金が減るケース
反対に、前月の給与の合計額よりもボーナスのほうが多い場合は還付金が減り、場合によっては追加徴税が発生することもあります。ボーナスの所得税率は前月の給与額を基準に決められるため、前月の給与額よりもボーナスの額が多ければ、所得税率がボーナス額に見合わないことになるためです。
この点の調整が年末調整で行われるため、還付金が減ります。
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ボーナスも年末調整の対象であることを理解しよう
多くの企業では、12月に支給される定期的な給与によって年末調整を行っており、この際12月のボーナスも年末調整の対象となります。年末調整が定期的な給与とボーナスのどちらを用いて行われているのか、この機会に改めて確認してみてください。
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